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1.衆院憲法審査会
昨年12月16日、衆院憲法審査会は、岸田政権発足後初めてとなる自由討議を行いました。
討議で自民党の新藤義孝元総務相は、9条への自衛隊明記など自民党が掲げる4項目の改憲案実現を目指す考えを示し「緊急事態条項は議員任期延長やオンライン国会など国会機能維持の論点を含む。国民の関心も高い」と強調しました。
また、公明党の北側一雄副代表は「大災害など国家の危機に国会機能を維持することは重要だ。緊急の立法措置や予算の速やかな成立は国会最大の責務だ」と指摘し、国民民主党の玉木雄一郎代表は「危機において国家にどこまで力を持たせるかというルール作りは国民投票を必要とする憲法がふさわしい」と述べました。
そして、維新の馬場伸幸共同代表は、統治機構改革や教育無償化など3項目の改憲案を説明。岸田総理が具体的な改憲日程を示し、「精力的な審査をリードすべきだ」と語りました。
これに対し、立民の奥野総一郎氏は「憲法の足らざるところを調査し、白紙から一歩一歩議論すべきだ。4項目ありきの議論に反対だ」と表明。「国民投票の公平公正を確保するため、CM規制の議論優先をお願いしたい」と主張しました。
このように、与党と国民民主党、維新が憲法改正に前向きな一方、立憲民主党は慎重な姿勢です。
2.改憲四項目
憲法審査会の議論と平行して、自民党内でも議論が進められています。
昨年12月21日、岸田総理は、自民党本部で開かれた憲法改正実現本部の初会合に出席しました。
岸田総理は挨拶で「我が党の改憲4項目には、国民の皆さまのために、早急に実現しなければならない内容が盛り込まれております
憲法改正において、国会での議論と国民の皆さまの理解は車の両輪です。自民党の総力を結集してまいります」と述べました。
岸田総理が触れた改憲4項目とは安倍政権下の2018年3月に自民党の憲法改正推進本部が出したもので、その概要は次の通りです。
1.安全保障にかかわる「自衛隊」の明記と「自衛の措置」の言及何でも党の憲法関連の会合に総理が出席するのは異例だそうなのですけれども、憲法改正実現本部は、改憲に取り組んできた安倍晋三元総理、麻生太郎副総裁らを最高顧問に選任した上で、総理が出席したということはそれだけ本気であると内外に示したことになります。
・4憲法改正により自衛隊をきちんと憲法に位置づけ、「自衛隊違憲論」は解消すべき
・現行の9条1項・2項とその解釈を維持し、自衛隊を明記するとともに自衛の措置(自衛権)についても言及すべき
2.大地震が発生した時などの緊急事態対応を強化
・緊急事態においても、国会の機能をできるだけ維持する
・それが難しい場合、内閣の権限を一時的に強化し、迅速に対応できるしくみを憲法に規定
3.参議院の合区解消、各都道府県から1人以上選出
・地方・都市部を問わず、選挙において「地域」が持つ意味に目を向ける
・住民の意思を集約的に反映するよう、都道府県単位の選挙制度を維持
4.家庭の経済的事情に左右されない教育環境の充実
・人口減少社会では“人づくり”の重要性はますます高まる。教育の重要性を国の理念として位置づけ、国民誰もがその機会を享受できるようにする
・私学助成の規定を現状に即した表現に変更する
3.改正時期は明言せず
ただ、岸田総理はこの4項目を全部一気に改正する積りもないようです。
昨年11月19日、岸田総理は朝日新聞などとのインタビューで、「一部が国会の議論の中で進むならば、4項目同時にこだわるものではない」と実現可能性なども踏まえ議論を進めていく考えを示しました。
また、インタビューで、4項目で優先的に考えているものを問われた岸田総理は「4項目とも現代社会において必要な改正だと思っている。しっかりと国会でも議論してもらいたい」と明言を避けています。
ただ、昨年11月19日に自民党は総裁直属の憲法改正推進本部を憲法改正実現本部に名称変更しています。これについて岸田総理は「新しい体制になってしっかりやるんだという決意、覚悟を示していかなければいけない」と説明し、改正について「具体的な改正を考えると、これから先、主戦場は国会での議論」と述べ、世論への働きかけを強め、機運を盛りあげていく必要性を強調しました。
岸田総理は想定する改憲のスケジュールについては「私の立場で申し上げるべきではない」と明確にしなかったのですけれども、昨年9月の総裁選に出馬した際「少なくとも総裁任期中にめどはつけたい」と述べていますから、そのくらいの幅で改正を想定しているものと思われます。
ただ、岸田総理は自民党で「リベラル勢力の牙城」とも言われる宏池会の領袖です。それが憲法改正を掲げるのには違和感を覚える向きもあり、ある閣僚経験者は「本来、改憲には慎重なはず……安倍氏ら党内保守派の支持取り付けを狙った陽動作戦」と述べています。
一方「国会での憲法論議が本格化するのは、リベラル派の首相が旗振り役になった場合」との指摘もあり、立民、共産両党も含めた改憲反対勢力が憲法審での本格的論議に参加すれば、「国会の審議で具体的な改憲条項で合意し、初の国民投票が実現する」との見方も多いようです。
実際、立憲民主のある幹部は「改憲に前向きな世論の動向などから、今後は衆参両院の憲法審査会での改憲論議には参加せざるを得ない」と漏らしていますから、自民公明の与党に維新、国民民主など衆院の改憲勢力は約4分の3となっています。
したがって、憲法審の展開次第では、岸田総理の任期中の憲法改正実現も「十分可能」とみられているようです。
4.機運醸成されてきた
12月15日、自民党の安倍元総理は、時事通信のインタビューで憲法改正について「だいぶ機運は醸成されてきた」と述べ、今後の展開に関しては「憲法審査会に任せた方がいい」という認識を示しました。
また、岸田政権については「最大の試練だった衆院選で大勝を収め、安定政権となる基盤ができたのではないか。これからは実行力が問われる」と述べています。
安倍元総理は昨年4月に現在の憲法改正実現本部の前身である憲法改正推進本部の最高顧問に就いていたのですけれども、就任を依頼された際、喜んでと、快諾したそうです。
それだけに、維新の躍進で憲法改正の条件が整いつつある現状には期待を寄せているのかもしれません。
岸田総理は第2次政権発足を受けた記者会見で「自民党総裁としては憲法改正が重要な課題。茂木幹事長に党内の体制を強化するとともに、国民的議論のさらなる喚起と国会における精力的な議論を進めるよう指示した……改正を実現するためには、与野党の枠を超えて3分の2以上の賛成が得られるように、しっかりと努力を続けていくことが大事だ」と強調しています。
現在の衆院の各党議席数は自民261、立民96、維新41、公明32、国民11で、自公維国で345、衆院3分の2は310議席ですから余裕で超えます。更に自維国でも313となり、改正に慎重な公明を抜いても310を超えます。
もっとも、宏池会前会長の古賀誠元幹事長は「改憲実現に突き進むのは、宏池会の理念から大きく外れている」と厳しく批判するなど、岸田総理の足元には不安が残ります。
もっとも岸田総理は、外相当時の2015年に「当面、憲法9条の改正を考えない」と語っていました。今回の改憲推進との整合性を問われた岸田総理は「違憲論争に終止符を打つ意味で重要だ。矛盾することではない」と答えています。
岸田総理が件の改憲4項目について「4項目とも極めて現代的で、現代社会で必要な改正だ」と述べていることから考えると、あるいは2015年当時と今とでは世界情勢が変わり、改憲は必須なのだと考えを変えたのかもしれません。
果たして憲法改正が出来るかどうか。岸田総理の手腕が問われます。
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日本男児