

1.建物39棟に撤去命令
中国不動産開発大手・中国恒大集団が中国南部の海南島で手掛けるリゾート施設「海花島」をめぐり、地元当局が39棟の建物の撤去を命じたことが明らかになりました。
海花島は三つの人工島から成るリゾート施設で、総投資額1600億元(約2兆9000億円)に及ぶ巨大プロジェクトです。
約800ヘクタールの海を埋め立て、総径間約6.8キロメートル。上空から俯瞰すると、独立した3つの人工島が海上に咲く花のようなデザインとなっています。
人工島には、国際会議場や遊園地、ショッピングモール、ホテル、住宅など未来テイストたっぷりなデザインの各建築物が随所に点在しており、そのゴージャスさから「中国版ドバイ」と呼ばれているそうです。
昨年12月30日、中国恒大集団建物39棟について、海南省儋州市当局は「城郷規画法(都市農村計画法)」第40条の規定に違反する状態が存在するとして、恒大集団傘下の儋州信恒旅遊開発に対し、建物を10日以内に撤去するよう命じる行政処罰決定書を発行しました。
これを受け、恒大童世界集団(旧海花島産業集団)は1月3日夜、「海花島所有主に宛てた手紙」の中で、次のように答えました。
儋州市総合行政執法局は2021年12月30日、当社に海花島の39棟の建築物に関する「行政処罰(期限付き取り壊し)決定書」を送った。この決定書は2号島の2-14-1エリアの39棟のみを対象としており、海花島のその他のエリアは含まれない。つまり交付済みの6万567人の所有主、未交付の628人の所有主の土地と建物は含まれない。当社は決定書の案内に基づき、積極的に意思疎通し、適切に処理する。
このように恒大童世界集団は適切に処理すると述べていますけれども、対象となる不動産の価値は総額77億元(約1400億円)と試算されており、経営危機に直面する恒大集団にとって新たな重荷になると思われます。
2.不動産株価指数下落
1月3日、香港取引所は、中国恒大集団の要請で恒大株式の取引を停止しました。恒大は中身を明かさずに、内部情報を開示するまで売買を止めると発表していますけれども、一部では、海南省の地方当局が海花島にある恒大物件の解体を命じたことが原因だとも噂されています。
これについて、光大新鴻基のストラテジスト、ケニー・ヌン氏は「海南省のプロジェクトは中国全土に及ぶ恒大の戦略の中で重大なものではないが、信用面に大きな影響を及ぼすだろう」と述べています。
また、ブルームバーグの試算とアナリストの推計によれば、中国の不動産開発業界は1月に少なくとも1970億ドル(約22兆6800億円)の支払いが必要になるそうで、シティグループのアナリストは、上場不動産開発31社の契約販売は昨年12月に前年同月比26%減少し、恒大は至っては99%減と最も大きく減らし、前月比でも7%少なかったのだそうです。この減少具合を見る限り、既に信用は落ちているのではないかと思います。
3.小企業がバタバタ倒産
急激に経営が厳しくなっているのは、大手企業ばかりではありません。中小企業も同じです。
昨年12月31日、中国国家統計局は、12月の経済状況を示す3つの主要指標である製造業購買担当者指数、非製造業営業活動指数、総合PMI生産指数を発表しました。
製造業購買担当者指数は50.3%、非製造業営業活動指数は52.7%と11月と比べてそれぞれ0.2ポイント、0.4ポイント上昇しました。そして、製造業と非製造業を合わせた総合PMI生産指数は52.2と先月から変化ありませんでした。
PMIは50が一つの分岐点で、50を超えると景気拡大、50を下回ると景気縮小を意味するとされています。上述のPMIはどれも50を超えていますから、弱いながらも景気はまだ拡大しているように見えるのですけれども、その内訳を細かくみるとそうでもない実態が浮かび上がってきます。
中国国家統計局の発表によると、大企業と中堅企業のPMIはともに51.3%であるのに対し、小企業のPMIは46.5%にとどまり、その差は5ポイント近く開いています。
つまり小企業では景気は後退しているということです。
昨年1月から11月までに中国で登録された小企業は132万社あるのですけれども、倒産した小企業は437万社にもなるそうです。
中国の李克強首相は、中国の中小企業は国の税収の50%以上、GDPの60%、技術創造の70%、都市部の雇用の80%、企業数の90%に貢献しているとしばしば発言しているのですけれども、小企業がバタバタ倒産すると当然、税収にも響いてきます。
恒大集団に象徴される中国不動産バブルが弾けると、貧困層どころか4億人いるともいわれる中間層を直撃します。
中国中央政府は、中国経済をハードランディングさせるのか。注意が必要です。
この記事へのコメント