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1.北朝鮮が弾道ミサイル発射
1月5日、岸防衛相は、防衛省の幹部会議のあと臨時記者会見を行い、北朝鮮が5日午前8時7分頃に弾道ミサイルの可能性があるものを東方向に発射し、およそ500キロ飛行して、日本のEEZ(排他的経済水域)の外に落下したと推定されることを明らかにしました。
岸防衛相は、記者会見での質疑で次の様に述べています。
まず、ミサイル発射について。北朝鮮は本日5日8時7分頃、北朝鮮の内陸部から弾道ミサイルの可能性のあるものを東方向に発射しました。詳細については、現在分析中であります。なお、現時点においてわが国の航空機や船舶への被害等報告等の情報は確認されておりません。岸防衛相は、北朝鮮がここ数年で40発のミサイルを発射したと述べていますけれども、今回の弾道ミサイル発射は昨年10月19日に新型潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)試射以来、78日ぶりのことです。弾道ミサイル技術を使った発射は国連安保理違反となるため、日本や韓国の軍当局はこれを検知すれば、速やかにメディアを通して発表しています。
なお、詳細については現在分析中ですが、通常の弾道軌道だとすれば約500km飛翔し、落下したのはわが国の排他的経済水域の外と推定されます。
また、防衛省から、政府内及び関係機関に対して、速やかに情報提供を行いました。北朝鮮は令和元年5月以降、これまでに約40発もの頻繁な発射を繰り返しており、その目的がミサイル技術の向上にあることは明らかであります。昨今の北朝鮮による弾道ミサイル等の度重なる発射はわが国を含む国際社会全体にとっての深刻な課題であります。
総理には、本件について直ちに報告を行い、情報収集・分析に全力を挙げ、国民に対して、迅速・的確な情報提供を行うこと、航空機、船舶等の安全確認を徹底すること、不測の事態に備えて、万全の態勢をとることの3点について指示がありました。
これを受けて、私は「引き続き、情報収集・警戒監視に万全を期せ」との指示を出しました。その後、関係幹部会議を開催するなど、対応に万全を期しているところであります。防衛省としては、引き続き関連情報の収集と分析に努めるとともに警戒監視に万全を期してまいります。
米国、韓国をはじめとして関係国と緊密に連携をとりながら国民の生命、そして平和な暮らしを断固として守り抜く決意であります。さらにこうした状況を踏まえ、いわゆる敵基地攻撃能力の保有も含め、あらゆる選択肢を検討し、今後も防衛力の抜本的な強化に取り組んでまいります。以上であります。
金正恩総書記は昨年1月の朝鮮労働党大会で「国防科学発展および兵器システム開発5カ年計画」を示し、「核兵器小型化」「極超音速ミサイル導入」「新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発」「原子力潜水艦やSLBMの保有」「軍事偵察衛星の運営」などを列挙。これに伴い、昨年9~10月には、極超音速ミサイル「火星8」型や新型SLBMなど、多様なミサイルの試射を繰り返してきました。
また、昨年末に開かれた党中央委員会総会では「現代戦に相応した威力ある戦闘技術機材の開発、生産を力強く推し進め、国家防衛力の質的変化を強力に促して、国防工業の主体化、現代化、科学化の目標を計画的に達成しなければならない」と述べていて、今回のミサイル試射はこれを具体化したものではないかとも見られています。
2.アメリカを催促した金正恩
これまで北朝鮮は軍事力強化のプロセスを進めてきたのですけれども、「最大の主敵」と批判してきたアメリカについても、ここのところは「主敵は戦争そのもの」と主張を引っ込めていました。
更に、最近のミサイル試射についても金総書記本人は立ち会わず、挑発を避けてきました。
具体化はいいとしてもなぜこのタイミングで発射したのか。
これについて、ジャーナリストの西岡省二氏は、米朝間で朝鮮戦争の終戦宣言をめぐり水面下交渉が進んでいるようだとし、北朝鮮側は交渉に応じる条件として、アメリカによる敵視政策や二重基準の撤回を求め、具体的な措置として米韓合同軍事演習の中止や経済制裁の緩和などを挙げているようだとの観測を示しています。
これに対しアメリカ側は、米朝間のシンガポール共同声明を「継承する」意向を明確にして対話姿勢を強調しているのですけれども、北朝鮮側はアメリカの動きが鈍いことに苛立っているようで、「この出発点となるような、アメリカによる何らかの行動」とか「自国の発言を裏付けるような措置」を求めています。
西岡氏は、今回の弾道ミサイル試射はアメリカからの回答を促す目的ではないかと述べています。
3.人民がお前のせいで餓死している
一方、ミサイル発射は国内の批判を逸らすためだという見方もあります。
デイリーNKジャパン編集長の高英起氏は、平壌の平川区域で昨年12月22日、マンションの外壁に「金正恩の犬野郎、人民がお前のせいで餓死している」とする落書きが見つかり、当局は衝撃を受けているとの現地情報を伝えています。
北朝鮮でこんなことをすればただでは済まない筈なのに、こんな状況になるということは、北朝鮮の人民は相当追い込まれているということになります。
高英起氏は、金正恩氏の指導に対する国民の疑念が強まれば、独裁体制だけに、国家のすべての活動の停滞につながりかねないとし、それを払拭できる手立ては、金正恩氏が形を持って誇示できる、ほとんど唯一の「成果」であるミサイルの性能向上を見せる他ないのだというのですね。
けれども、ミサイルは食えるわけではないですからね。その時は気分が良くなるかもしれないですけれども、半日も経てば腹も空いてきます。ですから月に1本ミサイルを打ったとしても、そんなので、国民の不満が解消されるとも思えません。
4.除け者の韓国
北朝鮮のミサイル発射の影で、密かにあせっているのが韓国です。
6日午前8時、ミサイル発射からわずか2時間後、アメリカのブリンケン国務長官と日本の林芳正外相は電話会談を行いました。
林外相は北朝鮮問題について、「北朝鮮による核・ミサイル活動は、日本、地域、国際社会の平和と安定を脅かすものである」と述べ、両外相は安保理決議に沿って、北朝鮮の完全な非核化が実現するよう、引き続き日米で緊密に連携していくことで一致したとしています。
これについて朝鮮日報は、「アメリカの主要高官は、ほとんど例外なく韓国より先に日本と電話や対面協議を行った。バイデン大統領が指名したラム·エマニュエル新駐日米国大使が上院の承認を受け、まもなく赴任する予定だが、駐韓米国大使はまだ指名すらされていない」と指摘し、「日本が中国·ロシア·北朝鮮など世界と地域のほぼすべての問題でアメリカの確実なパートナーとして位置づけられている」と嘆いています。
まぁ、筆者にしてみれば、岸田政権とて、岸田総理と林外相がアメリカ側との対面での会談を断られている時点で「確実」とは思われていないパートナーになっているのではないかと思うのですけれども、韓国からはそうは映らないようです。
今回のミサイル発射で米韓会議も行われず、駐韓大使も選ばれないままだとすると、北朝鮮問題は韓国抜きで話を進めているのかとも勘繰られても仕方ありません。
先程、西岡省二氏が、米朝間で朝鮮戦争の終戦宣言をめぐり水面下交渉が進められていると述べたことを取り上げましたけれども、もしこの話も韓国抜きで話が進んでいるのであれば、完全にアメリカから見放されてしまっている可能性すらあります。
もしかしたら半島情勢は韓国抜きで動いていくのかもしれませんね。
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