ラムザイヤーの反論と学問の自由を否定する日本学術会議

今日はこの話題です。
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1.ラムザイヤーの反論


1月5日、ハーバード大学ロースクールのマーク・ラムザイヤ―教授が、ロースクールのホームページに「太平洋戦争における性契約:批評に答える(Contracting for Sex in the Pacific War:A Response to My Critics)」という反論を掲載しました。

件のラムザイヤ―教授の論文「太平洋戦争における性契約」という論文については、去年3月9日のエントリー「論点がズレているラムザイヤー論文への批判」で取り上げたことがありますけれども、その内容は、慰安婦が売春婦だったことを立証するために書かれたものではなく、売春婦と慰安婦の契約の特殊性を論じたものです。けれども、そこから「慰安婦が性奴隷」ではなかったことを示すことが可能なことから、まぁ、韓国が顔真っ赤にして反論している訳です。


ラムザイヤ―教授は反論文の概要(Abstract)で次のように述べています。

この論文は、多くの批判を浴びた。しかし、私の経済分析に反論する人はほとんどいなかった。実際、ほとんどの評論家は、私の論文の焦点であり、IRLEに掲載された根拠であったにもかかわらず、契約条件に関する私の分析にさえ触れていない……

殆どの批評家は、慰安婦制度の不道徳性を強調している。 特に、一部の評論家は、一部の女性が騙されて慰安婦になり、慰安所売春宿の経営者に騙されたり、その他の虐待を受けたりした事実を私が無視したと主張しています。 実際の拙稿を読まれた方は、これらの点について私が言及したことをご記憶だろう……

評論家の多くは、朝鮮半島で日本軍によって多数の朝鮮人女性が強制的に徴用された(銃を突きつけられたり、意に反して連行されたりした)と主張している。私のIRLEの記事はこの問題を扱っていないが、この回答でそれについて述べる。この主張は誤りだ。 朝鮮人女性は、朝鮮半島の日本兵によってプログラム的に強制的に慰安所労働に徴用されたわけではない。 強制的に徴用されたという同時代の証拠書類はない。 1945年の終戦後、35年以上にわたっても証拠はない。 1980年代後半になってようやく、一部の韓国人女性が強制徴用されたと主張し始めたのだ。

重要なのは、1983年に吉田清治という日本人作家がベストセラーになった本で、彼と一群の兵士が銃剣を突きつけて韓国人女性を強姦し、性的奴隷として送り出したと主張していることだ。 1996年に出された国連の有名な「朝鮮人女性の徴用に関する報告書」は、この本に依拠している。この本をきっかけに、少数の朝鮮人女性が、以前は違う証言をしていたにもかかわらず、自分は徴用されたと主張するようになったのである。吉田は生前、この本がすべて捏造であることを認めていた。吉田の捏造は、ニューヨーク・タイムズ紙をはじめ、アジアや海外で大きな注目を集めた。

慰安婦問題は、吉田の詐称から始まったのである。しかし、この驚くべき決定的な捏造については、私の評論家の多くが日本や韓国の専門家であり、確実に知っているにもかかわらず、誰一人として言及していない。

このようにラムザイヤー教授は、自分に対する批判の殆どは、慰安婦制度の不道徳性を強調するばかりで、契約条件に関する分析には触れてさえもいないと反論しています。


2.ちゃぶ台返しと論点ずらし


ラムザイヤー教授の「契約条件に関する分析には触れてさえもいない」という指摘は、おそらく「契約書がないから慰安婦ではない」という批判に対するものと思われます。

これについては、先に述べた去年3月9日のエントリー「論点がズレているラムザイヤー論文への批判」でも取り上げましたけれども、韓国の経済史学者で、『反日種族主義』の共同執筆者である李宇衍(イ・ウヨン)氏が「批判の中核は、契約の関係を立証する契約書、つまり契約内容の書かれた紙を提示できないということだ。ここには、合意内容を必ず文書に残す欧米の契約文化と、口頭契約の依存度が高かった韓国の契約文化との違いを理解していないという背景がある。契約書がないという批判は、契約自体なかったという確信がベースにある。契約がないのだから契約書も当然ないという論理だ。批判者たちに共通しているのは、女性たちは契約ではなく日本の軍人や警察、官吏などに強制連行されて慰安婦になったという認識である。強制連行だったのになぜ契約書や契約の話が出てくるのかと責めているのだ」と指摘しています。

要するに、ラムザイヤー教授の分析に真っ向から反論できないものだから、論文の命題そのものが正しくない、とちゃぶ台返しするか、慰安婦制度が悪なのだ、と論点ずらしをしているということです。

実際、ラムザイヤー教授の反論について、1月6日、韓国外交部の当局者は記者団に対し「今更の主張に対し、政府が対応する価値自体がない……慰安婦問題は世界に例のない戦時の女性の人権蹂躙であり、普遍的人権侵害の問題だ……数多くの被害者の証言と国際機関の調査などによって立証された歴史的事実だ」とこれまでの立場を主張しました。

韓国政府もラムザイヤー教授に反論できず、慰安婦制度が悪なのだ論で論点ずらしして逃げています。


3.学問の自由を否定する日本学術会議


ラムザイヤー教授の論文を巡っては、昨年、署名を集めて撤回要求を突きつけるという事件にまで発展していますけれども、論文の中味で議論せず、署名を集めて撤回させるというのは、ただの言論弾圧です。これが認められてしまうと「学問の自由」など無くなってしまいます。

これについて、昨年6月、国際歴史論戦研究所が日本学術会議に公開質問状を出しています。

その質問内容は次の通りです。
【質問 1】日本学術会議の「学問の自由」に関わる一般的姿勢についてお伺いします。学術共同体の真理探究の方法として、学術論文として表明された学説に対する批判は、①学術論文を通した反論によって遂行されるべきであると考えますか。それとも、②反対者の人数や外部からの圧力によって撤回を強いて異説を封じるという形態も、学術共同体の真理探究の方法として、認容されるとお考えですか。(本質問に関して明白なご回答をいただけない場合、日本学術会議は②を拒絶されないものと理解されます。)

【質問2】前項の質問へのご回答は今回のラムザイヤー論文に対しても適用されると考えてよろしいでしょうか? もし異なる場合は、今回のラムザイヤー論文においていかなる特殊事情があるのか、ご明示ください。(本質問に関して明白なご回答をいただけない場合、日本学術会議は恣意的な二重基準をも否定しない機関であるものと理解されます。)

【質問3】論文の撤回要求という「学問の自由」の根本に関わる、本事案に関して、今まで日本学術会議として何の見解も表明してこなかったのは、いかなる事情によるものでしょうか。

ご回答いただきましたのち、ご回答を公表させていただきます。よろしくお願い申し上げます。
ラムザイヤー慰安婦論文の成否ではなく、純粋に「学問の自由」に対する姿勢を問うています。日本学術会議は総理大臣が所管する機関であり、その会員は特別国家公務員です。そこに対し、「意見を圧力によって封殺することを許容するのか」と質したのですね。普通は答えに迷うことなく、即座に「否」の一択です。

けれども、日本学術会議はこの公開質問に一切返答しませんでした。

そこで、7月9日、国際歴史論戦研究所は記者会見を行い、再度、日本学術会議に対して公開質問状を突きつけました。

そして、驚くことに、日本学術会議連携会員に、ラムザイヤー論文への撤回要求運動に賛同し、署名している研究者が3名いることを公開しています。

その3名とは次の通りです。

・駒澤大学教授 姉歯暁
・東京大学教授 松島斉
・明治大学教授 西川伸一

これについて国際歴史論戦研究所は、「日本学術会議連携会員は、日本学術会議法第十五条第二項の定めにより、日本学術会議会長が任命した者です。さらに日本学術会議会則の第十五条には、手当を給付することも定められています。日本学術会議が学術論文の撤回要求運動を明確に否定せず、上記のとおり事実上黙認する態度に出たのは、会長が任命した日本学術会議の連携会員の中に学術論文の撤回要求運動に参加している者がいることを踏まえたからではないかと推測されます。もしそうだとすれば、日本学術会議は学術論文の撤回要求運動に加担していることになります。これは国費で賄われている日本学術会議として決してあってはならないことです」と厳しく追及しています。

「学問の自由」を否定し、言論封殺をすることに賛同して署名する研究者を「特別国家公務員」として国が抱えるのは流石に問題だと思います。

この再度の公開質問に対する回答について、日本学術会議のサイトも検索してみたのですけれども、見つけることはできませんでした。

菅政権のときに、その存在意義が問題視された日本学術会議ですけれども、岸田政権も本格的にその扱いを見直す必要があるのではないかと思いますね。

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