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1.1日100万回接種指示
2月7日、岸田総理は衆院予算委員会で、武漢ウイルスワクチンの3回目接種について「2月のできるだけ早期に、1日100万回までペースアップすることを目指して取り組みを強化してまいりたい。岸田政権としましても明確な目標を掲げ、政府一丸となって、一日も早く希望する方々への接種を進めていきたいと考えております」と述べ、自衛隊の大規模接種会場の接種能力を昨年並みに引き上げ、2月中のできるだけ早い時期に、1日あたり100万回接種が達成できるよう関係閣僚に目標達成への対応を指示したことを明らかにしました。
また、岸田総理は、保育所や学校などで感染が拡大している現状を踏まえ、教職員や保育士、警察官、消防職員といったエッセンシャルワーカーへの接種を進める意向も示しています。
この答弁に対し、立憲民主党の大串博志衆院議員が「できるだけ早い時期にというのはいつですか、今週ですか来週ですか」と問うたところ、岸田総理は「2月の後半、職域接種等も始まるその中で達成できる数字であると考えております」と、2月後半になるとその時期も明言しました。
これまで岸田総理は、ワクチン接種に関して1日の接種目標を示すことに消極的だったのですけれども、与野党双方から「接種目標を掲げるべきだ」との声が高まったことから、方針を転換した形です。
内閣官房によると、ワクチンの3回目接種を終えた人は7日現在で全人口の5.9%に当たる746万人。ここ1週間の1日当たりの接種回数は平均約48万回で、目標の半分程度に留まっています。
一応、政府は自治体の97%が2月中に希望する高齢者への3回目接種を終えると説明しており、計画通りなら1日100万回は達成可能としています。
2.人気がないモデルナ
ただ、現場はそう計算通りには進んでいません。
2月7日、全国知事会会長の平井伸治・鳥取県知事は、政府とのオンライン会議で「現実にはモデルナの予約がなかなか埋まらず、ペースアップがしにくい」と指摘。1、2回目と異なる種類のワクチンを打つ交互接種への懸念払拭へ積極的に情報発信するよう求めています。
実際、3回目接種をする人の殆どはファイザーを希望し、モデルナは人気がないのだそうです。
例えば、東京都目黒区では、ファイザーは予約がほぼ埋まったのに対してモデルナは約3割にとどまっていますし、千葉県富里市ではファイザーの予約が9割に対し、モデルナはわずか1割です。
なぜそんなにファイザーが人気なのかというと「2回ファイザーを打ってて、同じ会社の薬で打ちたい」と3回目だけ違うメーカーになるのは避けられたとか、また「熱が出たり、アームが出たりするの怖い」、「39度8分が40時間続いて割と死ぬ思いでした」など、モデルナの副反応を嫌がられているなどの理由が挙げられています。
であれば、平井伸治・全国知事会会長が要望しているとおり、政府が交互接種の懸念を払拭する情報発信をするか、ファイザー製ワクチンを大量確保するしかありません。
1月24日、岸田総理は自ら3回目の接種について「これまで2回はファイザー社だったが、3回目はモデルナ社のワクチンを接種したい……交互接種の有効性については、十分な抗体価の上昇が報告されている……交互接種の安全性効果については、英国の研究でも確認されている」と、交互接種の安全性をアピールしていましたけれども、今のところ、それが交互接種の増加に結び付いている様子は見られません。あとは実際に3回目を接取する場面をテレビで流してどうかというところだと思います。
ただ、そうして交互接種の希望が増えたとしても、ファイザーやモデルナのワクチンは-70℃とか-20℃の低温管理が必要ですし、3ヶ月かそこらで消費期限が来てしまいます。ですから、これらワクチンは、必要な所に、必要な場所に、必要な数だけ用意できなければ、最悪破棄することにもなりかねず、接種は進みません。
ところが、この接種に関する政府の体制も岸田政権になって、お粗末になっているようなのですね。
3.それじゃ私だって仕事できないよ
2月5日、自民党の河野太郎広報本部長は、オミクロン株の感染拡大で3回目のワクチン接種の遅れがクローズアップされる中、国会答弁などで野党から批判されている後任の堀内詔子ワクチン担当相の状況について「堀内大臣のことをいろいろ言う人がいるが…私の時と比べてワクチンチームの人数が激減。私の時はチームは大臣室の隣にいたけれど、今は隣の建物の地下。厚労省が情報を出さない。最終的な決定権がない。都道府県とのリエゾンチームが解散させられた。ワクチンメーカーとの交渉が一元化されていない」、「それじゃ私だって仕事できないよ」と同情のツイートをしています。
河野広報本部長がツイートした「リエゾンチーム」というのは、政府と都道府県の橋渡し役になる組織のことです。
実際、ワクチン接種を行う母体は各都道府県なのですから、政府と都道府県の連携が取れていなければ効率的な接種など望むべくもありません。
ところが、河野広報本部長によると、このリエゾンチームが解散されたのですね。なんでも、昨年2月に厚労省内で発足したチームは最大52人に拡大したものの、感染状況が落ち着いた12月に解散していたのだそうです。
ある自民党の中堅議員は「1月初旬に感染拡大兆候が見えた時点で、チームを再編成しなかったのは、やはり危機感が薄いからだろう。菅政権時は"ワクチン一本足打法"と批判されたが、厚労、総務など関係省庁が横断的に全国の接種状況をチェックし、毎日官邸に報告していた。そこまでやって『1日100万回』を達成できた。今さら『1日100万回』なんて遅すぎる。周囲に『目標を示せ』と言われて、慌てて出しただけだろう」などと漏らしたそうです。
堀内大臣のことをいろいろ言う人がいるが…
— 河野太郎 (@konotarogomame) February 5, 2022
私の時と比べてワクチンチームの人数が激減。私の時はチームは大臣室の隣にいたけれど、今は隣の建物の地下。厚労省が情報を出さない。最終的な決定権がない。都道府県とのリエゾンチームが解散させられた。ワクチンメーカーとの交渉が一元化されていない。
4.戦場を間違った岸田政権
それ以前に、岸田政権の武漢ウイルス対策をみると、いろいろやっているように見えて、大枠の戦略レベルでは菅政権のときと殆ど変わっていません。
筆者が時折、物事の分析に「戦略の階層」を用いることがあります。これは、アメリカの戦略家、エドワード・ルトワックが体系化し、レディング大学のコリン・グレイ教授の手が加わって概念化された考え方です。
かいつまんでいえば、「戦略には上下の階層があり、上位のものが下位のものを決定する」という考え方です。筆者のブログでもいくつかのエントリーで、この考えを使って分析したものがあります。
この「戦略の階層」を使って、岸田政権の武漢ウイルス対策を整理するとおおよそ次のようになるのではないかと思います。
この図のうち、上の戦略、すなわち「世界観」=「ウィズコロナ」、政策=「ワクチン接種、経口薬、人流抑制」は、経口薬が追加されたくらいで、菅政権からほぼ変わっていません。
「戦略の階層」の考え方からいくと、その下の戦略階層もこれら世界観と政策の枠内でのものと成らざるを得ません。
大戦略階層から下の階層をみて、筆者が気になったのは次の点です。
・大戦略 :リエゾンチーム解散で機能低下。経口薬も指定医療機関への配布で止まっており、一般人は簡単に入手できない。緊急事態宣言も蔓延防止措置も他国のロックダウンのような強制力もなく、効果は薄い。なんだか、もう大戦略から間違っているような気がしないでもないですけれども、一番のポイントは作戦階層である"戦場の設定"が間違っていることではないかと思います。武漢ウイルス感染症における戦の主戦場は家庭内感染です。家庭内感染は4割とも6割とも言われており、東京都内での感染経路は昨年8月上旬時点で「家庭内」が61%に達したと報じられています。
・軍事戦略:大戦略でファイザーワクチンを確保できていない影響で、交互接種を余儀なくされている。2類指定相当を維持しているため、早期診断、早期治療ができず、感染爆発により医療崩壊中。
・作戦 :感染拡大の中心が家庭内感染なのに、家の外で戦おうとしている。戦場設定の誤り。
・戦術 :オミクロン株出現で、効果は一層低下。社会が回らなくなる懸念から隔離期間もなし崩し状態
・技術 :初期株対応のmRNAワクチン、精度に難があるPCR検査。まったく頼りない。
にも拘わらず、"マンボウ"だのなんだの、家の外の人流抑制をどうこうしたところで収束できるとも思えません。
そして、個々人が家庭内で戦うにしても、与えられた武器といえば、初期武漢株対応のmRNAワクチンという、今となってはレインコートに成り下がった鎧に、擬陽性、偽陰性を頻発する当たらない弓矢。これでは戦えません。
挙句の果てには、みなし陽性とかいって診断だけで陽性判定させてしまう始末です。
ですから、もし本当に岸田政権が、早期に収束させたいのであれば、主戦場を家庭内に設定しなおして、家庭で戦える武器を与えるべきだと思います。例えば、ワクチンではなく、経口薬を予防的に投与できるよう入手しやすくする。あるいは2類相当を5類に落として、町医者で診察・診断させて早期治療を出来るようにするなど、いくらでもやり方はあると思います。
つまり、主戦場を見直して、適切に設定することで、対策の有効度が格段に上がるのでないかということです。
このままだとおそらく、みんな一通り感染して集団免疫を持ち、"自然の摂理"で収まるのを待つだけ、ということになると思いますね。
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