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1.我が政府はいかなる提案に対しても開かれている
2月10日、韓国の文大統領は、聯合ニュースと海外通信社による合同書面インタビューで、世界文化遺産登録を目指している佐渡金山に初めて言及しました。
文大統領は、佐渡金山登録申請について「歴史問題の解決と未来志向的な関係の発展を模索すべき時なのに憂慮される」と語り、「外交的に解決しようと努力したが、まだ接点を見いだせず、残念だ」と述べました。
また、歴史問題の本質は人類の普遍的な価値である人権の問題とした上で、「問題解決には被害者が受け入れることができる方策が必要だ。それが国際社会で確立された原則だ……被害者が納得できる解決策を見つけて真の和解を図るためには、歴史に対する誠実な姿勢と心が何よりも重要だ」と述べました。
その一方、「わが政府はいかなる提案に対しても開かれており、対話によって問題を解決していくことを期待する……韓日両国は北東アジアと世界の平和・繁栄に向けても協力すべき最も近しい隣国だ……歴史問題の進展に向けた努力とともに、韓日間の未来の協力課題を強化していく必要性は一層増している……日本の首相との意思疎通に関し常に開かれた立場であることに変わりない」と強調しました。
2.首脳会談の予定はない
文大統領の対話要請に対し、日本政府は静観の構えです。
2月10日、松野博一官房長官は午後の記者会見で、文在寅大統領が岸田総理との対話を呼びかけたのに対し、文大統領の発言に関する内容は承知しているがコメントは差し控えるとした上で「首脳会談の予定は何ら決まっていない……日韓関係を健全な関係に戻せるように、日本の一貫した立場をもとにして韓国側に適切な対応を強く求める方針には変わらない」と述べました
松野官房長官は、徴用工や従軍慰安婦などに触れつつ、「国家と国家間の約束を遵守するのは国家間関係の基本だ」と述べていますから、条約破りの韓国がそれを解消しない限り相手にしないと述べているも同然です。
1月26日、アメリカのマーク・ランバート国務省日韓担当副次官補はアメリカのシンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)の対談に出演し、日韓関係について「文在寅大統領の東京オリンピックでの訪日に期待していたがご破算になった……明確なことは、韓国と日本が協力しなければ日米韓のすべてにおいて安全性が低いということだ……文在寅大統領の残された時間は少ないが、状況を進展させるために少しは支援もできるだろう。サプライチェーンの弾力性やレアアース・半導体需給などの分野で、韓国と日本が協力すれば最善の結果をもたらすことができる」と指摘しました。
そして、岸田総理に対しては「日本の岸田首相は外務大臣だった2015年、慰安婦合意において重要な役割を果たしたと記憶している」と述べ、日韓関係については「楽観的に考えている」としました。
これについて、著名ブロガーの「楽韓web」殿は「アメリカから『北朝鮮政策をどうにかしたいなら日韓関係を修復しろ』って言われているアレはまだ生きているということなのかな」と指摘していますけれども、筆者もそうなのではないかと思います。
3.強制労働とは無関係
また、松野官房長官は、文大統領が佐渡鉱山のユネスコ世界遺産登録に懸念を表明したことについて、「文化遺産として素晴らしい価値が評価されるよう、韓国を含む国々と冷静かつ丁寧な議論を行っていく」と言及しましたけれども、2月1日、政府は滝崎成樹官房副長官補をトップとするタスクフォースを設置し、初会合を開きました。
チームは、外務省や文化庁の担当者で構成し、金山の歴史的経緯などを調査するとしています。佐渡金山は、江戸時代を中心に16~19世紀の産業遺産としての価値をアピールするものです。
佐渡金山について、韓国は「朝鮮半島出身者の強制労働の現場」と訴えていますけれども、林外相によると「江戸時代にわが国固有の伝統的手工業を活用し、大規模かつ長期に継続した希有な産業遺産だ」と強調していることから、「戦中の朝鮮半島出身者の強制労働とは無関係」と訴えていくとみられています。
登録の可否は、21ヶ国からなる世界遺産委員会が判断します。全会一致が原則であるものの反対意見があれば、3分の2以上の賛成でも登録が決まるとのことですけれども、外務省関係者によると、関係国が委員国に「ロビー活動」を行うことも可能ということですから、まぁ、かの国は、ガンガンロビー活動するでしょうね。
日本は韓国を論破するだけでなく、広く世界を相手にかの国のウソと言い掛かりを周知させ、世界を味方につけなければならないと思います。
4.韓国流「易地思之」は解決策ではない
かつて韓国は日韓関係で自分が不利になると、世界を相手に広報活動を行い、アメリカには、自身が反共の盾なのだと主張することで、アメリカから圧力を掛けさせる形で日本に妥協を迫ってきました。
けれども、マーク・ランバート国務省副次官補の発言をみても分かるとおり、バイデン政権は、日韓関係悪化の原因は韓国にあるとみています。その意味では、文在寅政権は、アメリカに圧力を掛けさせるというこれまでの構図を破壊したと言えるかもしれません。
このことは、韓国自身にも自覚があるようで、昨年3月、中央日報は「『韓国防波堤論』は日本に通用しない」という論説記事を掲載しました。関連部分を一部抜粋すると次の通りです。
ところで米国圧力カードは通用するのだろうか。最近「バイデン側が日本にいら立ちを見せている」という言葉がワシントンから聞こえる。韓日関係改善要求に日本が応じないためということだ。日本は2015年当時、バイデン副大統領の仲裁で慰安婦問題をめぐり韓国と合意した。バイデン氏は後に「韓日間の離婚相談役のような役割をした」と打ち明けたこともある。しかし結果がどうであれ、当時官房長官だった菅義偉現首相が誰よりもよく知っている。このように、日本では韓国を防波堤と見る雰囲気は消えているから、米国への圧力という古い手法を使っても通用するはずがない、と述べています。それを打開するためには、「易地思之」の解決策提示が必要だと主張しています。
さらに韓国の安全保障上の重要性を見る日本の目が変わった。過去の日本は韓国を北朝鮮の脅威を防ぐ「防波堤」と考えていた。1980年代に盧信永(ノ・シンヨン)元首相が出した「防波堤論」は、中曽根政権が借款40億ドルを出す力になった。2年前の韓日軍事情報包括保護協定廃棄問題で韓日関係が歪むと、文大統領が防波堤論を取り出したりもした。
しかし最近はこの論理が色あせている。昨年末、日本ではリチャード・ローレス元米国防副次官の主張が話題になった。ローレス氏は韓半島(朝鮮半島)の未来について3つのシナリオを提示した。(1)核保有国として振る舞う北朝鮮に韓国が政治的に従属する(2)韓国が韓米同盟から離れて独自の核武装を追求する(3)南北が緩い連邦制の形態に進む--という見方だ。いずれにしても日本は韓半島から核の脅威を受けることになり、中距離核戦争力(INF)が必要というのが彼の結論だった。要するに、韓国という防波堤がなくなるため、独自の抑止能力を備えるべきということだ。
このように最近の日本では韓国を防波堤と見る雰囲気は消えている。その代わり米国・オーストラリア・インドとの4カ国協議体クアッド(QUAD)で脅威に対応しようという声が高まっている。こうした情勢を把握できず米国への圧力という古い手法を使っても通用するはずがない。文大統領が述べたように易地思之の解決策提示が韓日関係改善の第一歩だ。
易地思之については、昨年3月4日のエントリー「日本といつでも対話するという韓国は自ら解決策を出さない」で取り上げていますけれども、「相手の立場に立って考える」という意味です。
「易地思之」は、韓国語では(ヨクチサジ)と呼ばれるのですけれども、その意味するところは日本のそれとは違い「相手は常にこちらの身になって考え、こちらの事情を考慮しないといけない」という意味になるそうです。つまり、「日本は韓国のいうことを聞け」という意味になるということです。
文大統領は先の書面インタビューで、わが政府は如何なる提案に対しても開かれており、云々と述べていますけれども、「如何なる提案に対しても」とは、日本が韓国に提案し、韓国側がそれを諒とするか判断するということです。要するに、日本に解決案を持ってこいと要求しているのであり、韓国流の「易地思之」の考えがその根底にあるということです。話になりません。
「易地思之」という言葉は去年の3月1日、ソウルでの「三・一運動」記念式典で文大統領自ら口にした言葉ですけれども、あれから1年、その思考は何も変わっていないようです。
日本政府は、残り短い文政権に対して、これ以上何もすることも、何も期待することもなく放置の一択でよいのではないかと思いますね。
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