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1.岸田総理の記者会見
2月17日、岸田総理は官邸で記者会見しました。
会見の内容はこちらで公開されていますけれども、その殆どはオミクロン株対策に関するものでした。
対策の基本方針として「慎重さを堅持すると同時に第6波の出口に向かって徐々に歩み始める」と表明。昨年11月下旬に強化した水際対策の緩和と、「蔓延防止等重点措置」の5県解除を打ち出しました。
岸田総理は、現在原則停止している外国人の新規入国について「観光目的以外は認める」と述べ、ビジネスの短期滞在者、留学生、技能実習生などに門戸を開く方針を発表。受け入れ企業や学校が管理を徹底することを条件として、入国・帰国者の1日当たりの上限を3500人から5000人程度に拡大することとしました。
また、日本人帰国者らの入国時に原則7日間としている待機期間は、検査の陰性を条件に3日間に短縮するとし、3回目のワクチンを接種済みで、感染が落ち着いている国からの入国者については、待機期間をなくす方針を示しました。
更に、オミクロン株の流行地域からの入国者に義務付ける指定施設での待機も、最大6日から一律3日に短縮するとしました。
そして、蔓延防止等重点措置については、20日に重点措置の期限が切れる21道府県のうち、山形、島根、山口、大分、沖縄の5県について解除する方針を表明し、北海道、青森、福島、石川、長野、静岡、大阪、兵庫、福岡、鹿児島などその他の16道府県と、27日が期限の和歌山県は3月6日まで延長するとしました。
また、3回目のワクチン接種に関しては、1日当たり100万回以上の目標を「安定的に達成できるよう全力を尽くす」と語りました。
2.薄い根拠
3回目ワクチンの1日当たり100万回以上接種については、記者質問があったのですけれども、それに対する岸田総理の答えが、筆者には少し気になりました。
件の質問と答えを抜粋すると次の通りです。
(記者)岸田総理は3回目接種について、更なる接種の加速化に向けて努力するといった直後に、イギリスやイスラエルなどでは3回目接種をしても感染者が増えていると指摘し、そのあとに、それらの国々と比べて日本の感染者数は格段に少ないと述べています。
同じく幹事社のTBSテレビ、室井と申します。よろしくお願いします。
ワクチンの3回目接種についてお伺いします。総理は、先ほどVRSへの入力ベースで1日100万回ペースというふうに述べられましたが、接種率は、今日公表分ですけれども、11.9パーセントと世界的に見ても低水準です。諸外国は早期に前倒し接種にかじを切り、オミクロン株への対応を急いだにもかかわらず、なぜ日本は遅れたと考えていらっしゃいますでしょうか、お伺いします。
(岸田総理)
御指摘の点については、まず、我が国においては、諸外国に比べてワクチンの1回目、2回目の接種の開始が遅かったという事情がありました。昨年を振り返りましても、秋の段階、10月、11月の段階でも1回目、2回目の接種を行っていた。こうした事情がありました。そして2回目の接種から6か月以上の間隔を空けなければならないという事情の中で3回目の接種を進めているというのが我が国の状況であります。3回目の接種については、11月11日に薬事承認を得た後、12月から開始をしたということであります。今、申し上げた事情の中で手続を進めていったということであります。
先ほど御指摘がありましたように、この3回目の接種については、2月に入って接種が本格化していった、ペースも1日100万回程度まで上がってきた、こういった状況であります。これから職域接種も本格化していきます。接種券の送付の前倒しも進めていただいているところでありますので、更なる接種の加速化に向けてしっかり努力をしていきたいと思っています。
なお、一つ加えるならば、イギリスやイスラエルなど3回目接種を先行した国であっても感染者数は大変増えてしまっている、こういった国もあります。こういった国々と比べた場合、我が国は感染者の数は各段に少ないということは指摘をしておきたいと思います。
意味が分かりません。
3回目接種しても感染者が増えるのなら、3回目接種する意味は薄れます。そして、日本の感染者数が少ないというのは3回目接種の割合が12%程度と進んでいない段階での数字の筈です。2回目接種時点の数字と3回目接種後の数字を比較して感染者が少ないと言われても、それを持って3回目接種の理由とするのは、ちょっと無理があります。
やるべきことは、重症化を抑え、感染者を減らしていくことの筈です。ワクチン接種を勧めるのは結構ですけれども、根拠の説明が薄弱のような気がしてなりません。
3.ワクチン効果はどれくらいあるか
では、3回目のワクチン接種にどれだけ意味があるのか。
これについて、国立感染症研究所は2月16日現在の「新型コロナウイルス感染症の直近の感染状況等」報告でワクチン効果について次のように述べています。
【ワクチン効果】「発症予防効果は著しく低下するが、入院予防効果は一定程度保たれている」ということですから、巷で言われている「重症化は防げる」というのは間違いなさそうです。けれども、問題はその程度です。
初回免疫によるオミクロン株感染に対する発症予防効果は著しく低下するが、入院予防効果は一定程度保たれている。また、ブースター接種によるオミクロン株感染に対する発症予防効果や入院予防効果が回復することも海外から報告されている。また、国内における新型コロナワクチンのオミクロン株への有効性に関する症例対照研究の暫定報告があった。
発症予防効果は著しく低下して、入院予防効果がある程度あるというのは、裏を返せば、自宅待機ないし自宅療養が増えるということです。したがって、自宅療養が増える分だけ経済活動は鈍り、経済的なダメージを被ることになります。
予防効果の程度については、同じく国立感染症研究所が「新型コロナワクチンの有効性を検討した症例対照研究の暫定報告(第三報)」で報告しています。
これをみると、2回接種後2ヶ月で有効率(1-[ワクチンを接種した人で、発病した割合/[ワクチンを非接種で、発病した割合])が0.5程度まで下がり、3回目ブースターを接取して0.8程度まで上がるという結果になっています。
このデータを見る限り、ブースターはそれなりに効果があることが分かります。けれども、この有効率0.8が絶対必要なのかという点についての政府の見解というか方針の説明が薄いように感じます。
4.丁寧な説明が必要
既に、北欧諸国では、相次いで武漢ウイルス対策の規制の全面解除を始めています。新規感染者数は高止まりしているものの、高いワクチン接種率を背景に死者・重症者数を低く抑えられているというのがその根拠です。
また、2月16日放送のBS‐TBS『報道1930』では、ワクチン先進国イスラエルが、感染者、重症者共に過去最高を更新する中、ワクチンを打てる態勢などを用意した上で、打たない人や期限切れとなった人については自己判断と割り切っていることを伝えています。
これに対して、岸田政権は現状をどう捉えているのか。
もし、ワクチンの有効率0.8が絶対必要なのだとするのならば、有効率0.8を維持するために、2ヶ月毎にブースター接種を繰り返さなくてはなりません。
一方、ワクチン接種後2ヶ月以上経ち、有効率0.5に下がった状態がずっと続いたとしても、医療逼迫が起こらないのであれば、極端な話、一日100万回とか目標を掲げて接種するとかしなくてもよいわけですし、なんとなれば、北欧やイスラエルのように全面解除に踏み切ってもよいわけです。
2月11日のエントリー「厚労省の流出動画と本当の事を書き始めた新聞」のコメント欄で、かりんパパ様がワクチン接種のメリットとデメリットについて専門家の立場から説明されていますけれども、ここまでやって"丁寧な説明"になるのではないかと思います。
勿論、総理がここまでのレベルで直接説明する必要はなく、どこそこで開示していると提示できれば十分だと思います。
マスコミは今回の岸田総理の記者会見で、「初めて"出口"に言及した」などと報じていますけれども、岸田総理が口にしたのは「第6波の出口」であって、武漢ウイルスの出口と言った訳ではありませんし、中には「第6波の出口があるのなら、第7波の入口があるのか、あるならいつ頃なのか」と思う人もいるかもしれません。
ワクチン接種は「努力義務」だと、任意なのか義務なのか分からない言い方をするのではなく、もう少し国民に分かるように伝えることも必要なのではないかと思いますね。
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