アメリカの諜報抑止力とNATO加盟を諦めるウクライナ

今日はこの話題です。
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1.ロシア軍のミサイル演習


2月19日、ロシア軍はプーチン大統領の指揮下で大陸間弾道ミサイルと極超音速ミサイルの発射演習を行ったと報じられています。

大統領府によると、演習には航空宇宙軍のほか、北方艦隊や黒海艦隊が参加し、艦艇や潜水艦からの発射も行われ、極超音速弾道ミサイル「キンジャール」や極超音速巡航ミサイル「ツィルコン」、ICBM「ヤルス」、地上発射型ミサイル「イスカンデル」、巡航ミサイル「カリブル」などが発射されたとのことです。

大統領府は「すべてのミサイルが目標に命中した」と表明し、任務が「完全に遂行された」と強調しました。国防省は、ミサイル発射演習が以前から計画されていたもので、核戦力部隊を含む「戦略的抑止力」の演習と説明。プーチン大統領は大統領府の作戦司令室から指揮。訪ロ中のベラルーシのルカシェンコ大統領も同席したとしています。

これらミサイルには核弾頭が搭載できるのですけれども、NATOと比べて通常戦力で劣るロシアにしてみれば、抑止力としての核兵器は手放せないものになります。実際ロシアは、大量破壊兵器で攻撃された場合だけでなく、通常兵器で国家の存立が脅かされた場合も核兵器を「先行使用」できるとの基本方針を堅持しています。

今回の演習は、ロシア自身の核兵器使用基準が低いことを示してNATOを萎縮させ、ウクライナへの軍事支援を踏みとどまらせて「将来の加盟国候補」との間に楔を打ち込む狙いではないかと見られています。

実際、ロシアが昨年12月に示した提案には、欧州でのミサイル配備制限も盛り込まれていて、米欧もこれに応じる方向だとされていますから、ウクライナへの軍事圧力に加えて、今回の演習で更なる譲歩を引き出したいものと思われますし、裏を返せば、交渉が続いている、終わっていないことも示唆していると思われます。


2.激化する非難合戦


既にウクライナ軍と親ロシア武装勢力との紛争が続くウクライナ東部のドネツク、ルガンスク両州で銃撃や砲撃などの停戦違反行為が相次いでいると報じられています。

17日、ウクライナ軍は、東部の停戦ライン周辺で、現地時間17日夕の時点で、親露派武装勢力からの停戦違反行為が少なくとも39件を確認。このうち30件で迫撃砲などの重火器が使用され、付近の幼稚園などが被害を受け、兵士2人のほか、民間人5人が負傷したと公表しました。

一方、タス通信によると親ロシア勢力側は、ウクライナ軍による周辺集落への銃撃や砲撃が、17日朝の約2時間だけで約160回あったと発表。「民間人を守るために反撃を余儀なくされた」と主張しました。

更に、18日午後には「ドネツク人民共和国」を名乗る親ロシア派組織のトップであるプシリン氏が支配地域内の住民に向け、「この1ヶ月でウクライナ軍部隊の数が急増している。すべての境界線に沿って秘密裏に重火器が持ち込まれている。狙いは平和な住民、子供たちだ……間もなくゼレンスキー大統領が全軍に総攻撃を命じる」などと発言。ただちにロシア南部ロストフ州へ避難するよう訴え、住民を避難させ始めました。

これに対し、ウクライナ側は攻撃する意図を否定。欧米は、親ロシア派がウソの情報で危機感をあおり、その裏にウクライナ攻撃の口実を探すロシアの意向が働いているとみて、警戒を強めています。

ウクライナ政府と親ロシア勢力とで、非難合戦、情報戦の様相を呈しています。


3.奇襲できなくなりました


2月18日、アメリカのバイデン大統領は「ロシアが今後数日のうちにウクライナを攻撃する根拠がある」とした上で、ウクライナの首都キエフが攻撃の対象になると強調しました。

そして、翌19日、アメリカのオースティン国防長官は、訪問先のリトアニアで「この数ヶ月、ロシアはベラルーシを含むウクライナ周辺で軍を集結させているが、今、個々の隊に分けて攻撃態勢を取っている……まさに攻撃するために取らなくてはならない態勢だ」と警告し、リトアニア、ラトビア、エストニアの国防相らとロシア軍の動きへの対応を協議しました。

アメリカは、先週もメディアを中心に「16日にロシアはウクライナに軍事侵攻する」となどと報じていたのですけれども、結論として進攻は起こりませんでした。

では、アメリカの情報発信は嘘だったのかというと、諜報を活かした戦争抑止だという見方もあります。

経済評論家の上念司氏は、アメリカは先回りしてロシアの軍事進攻計画をわざと情報公開することで、手出しさせないようにしていると指摘しています。

また、自民党の青山繁晴参院議員は、アメリカはロシアが16日に、チェルノブイリ原発の立ち入り禁止区域を突っ切って、キエフを電撃進攻する計画があることを掴んだが故に、16日に軍事侵攻すると発信することで、それで奇襲攻撃を食い止めたと述べています。




4.NATO加盟を諦めつつあるウクライナ


青山議員の指摘が本当だとすると、ある意味、アメリカは情報戦、諜報活動によってロシアの軍事侵攻を食い止めたことになるのですけれども、渦中のウクライナはというと、必ずしもアメリカの行動を歓迎している訳でもないようです。

2月19日、ウクライナのゼレンスキー大統領はドイツで行われたミュンヘン安全保障会議で演説し「ウクライナを本当に助けるためには、侵攻される可能性がある日を話す必要はありません。ウクライナは平和を望んでいる……ロシアの大統領が何を望んでいるのかわからないので、会うことを提案する」とロシアのプーチン大統領と直接、対話する用意があると述べました。

そしてウクライナのNATO加盟について、「加盟までには距離がある」との認識を示しつつ、「それまでの間の安全の確約が欲しい……ヨーロッパと世界の安全保障のシステムはもはや機能していない。修正を検討するには遅く、新しいシステムを構築すべきだ」としてウクライナの安全保障の新たな枠組みについて国連安保理の常任理事国やドイツ、トルコなどを交えた協議を呼びかけました。

更に、ウクライナ軍が東部の親ロシア派武装勢力からの砲撃で兵士2人が死亡したと発表したことについても、「何に反応し、反応してはいけないかはよくわかっている」と自制する意向も示しています。

NATO加盟に距離があるとし、ヨーロッパと世界の安全保障システムは機能していないという発言は、もう半分以上「NATO加盟は諦めた」という意味に聞こえてしまいますし、ウクライナの安全保障の新たな枠組みについて国連安保理の常任理事国やドイツ、トルコなどを交えた協議をしたいという発言は、ロシアも含めてウクライナの安保について協議したいということですから、かなり妥協というかロシアに寄っていっている印象を受けます。

この提案に対し、プーチン大統領がどう応えるのか。注目ですね。


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