リスクを取って名を上げた国民民主と岸田総理の毛針

今日はこの話題です。
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1.国民民主が予算案賛成


2月22日、政府の2022年度予算案が、衆院本会議で自民、公明両党と野党の国民民主党などの賛成多数で可決しました。

予算案は即日、参院に送付されたのですけれども、当初予算案の衆院通過としては1999年の2月19日に次いで過去2番目に早く、憲法の衆院優越規定で、送付後30日で自然成立するため、21年度内の成立が確実となりました。

今回の予算案については、立憲民主、日本維新の会、共産、れいわ新選組は、武漢ウイルス対策が不十分などとして反対したのですけれども、野党の国民民主が賛成に回ったことで話題となっています。

野党が当初予算案に賛成するのは異例のことなのですけれども、国民民主の玉木雄一郎代表は賛成討論で「コロナ禍という緊急事態で予算の早期成立が求められている」と説明しました。そして、賃上げを重視する岸田文雄首相の姿勢と「方向性は同じ」と語り、ガソリン税を軽減する「トリガー条項」発動について「首相が検討することを明言し、実現に向けた方向性が明らかになった」などと賛成理由を述べました。




2.覚悟を決めて賛成した


予算案が衆院を通過したこの日の夕方、国民民主の国会控室で審議へのお礼を述べて立ち去ろうとした岸田総理に玉木代表が「我々もある意味、覚悟を決めて賛成した……積極的にこれから色々な提案をしていきたいのでよろしくお願いします」と声をかけると、岸田総理も「ご指導をしっかり受け止めて、丁寧に政治を前に進めていきたい」と応じ、玉木代表と肘タッチを交わしました。

国民民主が予算案賛成理由の一つに挙げたトリガー条項について、国民民主は2021年秋の衆院選で、「トリガー条項」の凍結解除を追加公約として掲げ、今国会でも主張を続けていました。

2月18日の衆院予算委員会では、岸田総理は玉木代表に対して「トリガー条項の凍結解除も検討から排除しない。しっかりと検討した上で、必要な措置を行っていく」と答弁。21日の衆院予算委員会では、「トリガー条項も含めてあらゆる選択肢を排除せず、さらなる対策を早急に検討したい……法改正が必要かどうかは議論の中で検討していく課題だ」と述べています。

ガソリン平均価格が3か月連続で1リットル当たり160円を超えた場合、25.1円の課税を翌月から停止する「トリガー条項」は、旧民主党政権時代に設けられたのですけれども、東日本大震災後、復興財源の確保のため凍結されています。政府はこれまで、急激な価格変動による混乱回避や税収への影響などを理由に、凍結解除に慎重な姿勢を示していました。

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3.岸田総理と直接話をしている


2月22日、国民民主の玉木代表は定例会見で、トリガー条項凍結解除実現について「確信を持っている理由」を問われると、次のように述べました。

岸田総理と私が直接話をしている。それぞれ政党を代表するトップ同士が話をしたことが全てだと思う。今は予算案の審議中で、もし何かやると決めたら、それを踏まえた予算に組み替えるという話が当然出てくる。外で言えること、対外的に発表できることに限界があることも私はよく理解しているので、その意味では、曲がりなりにも自民党総裁、一国の総理と、小さい政党ではあるが、公党の代表である私との間で結んだことが全てだと思う。

このように玉木代表は岸田総理と直接話をしたことを明かした上で、トリガー条項の凍結解除できるとの考えを示しました。

また、玉木代表は、今回の予算案賛成について岸田総理との人間関係も関係しているのかと問われると、「最後はトップ同士の真摯なやり取りと信頼だと思います。紙がないだとか、本当に出来るのか、どうなんだとか、それはお互いですね、正念場ですよ、これは。その中で政治家同士が向き合い、何かを決めていくそのことを、互いに信じて進むしかないと思う。そこから生じる全てのことは政治家が政治家として責任をとる、そういうことだ」とリスクのある判断であることを吐露しています。

玉木代表が予算案に賛成を決断した際、前原誠司代表代行が反発したのですけれども、国民民主としては、党の方針に沿わない人物に質疑させられないと判断し、採決前の締めくくり総括質疑で質問予定だった前原氏から玉木代表に質問者を差し替えることとなりました。

これにより、永田町の一部からは、前原氏は離党するのではと噂になっているそうです。

その意味では、確かに玉木代表は、離党者を出すかもしれないというリスクを含んだ判断であったと言えます。




4.岸田総理のトリガー条項検討発言は毛ばりに過ぎない


果たして、岸田総理は本当にトリガー条項の凍結解除が出来るのか。

これについて、嘉悦大学教授の高橋洋一氏は、予算案について、国民民主を賛成に回すために、トリガー条項の凍結解除を「検討」すると発言しただけで、検討の結果、やらなくてもウソをついた事にはならないと述べています。

高橋氏は、岸田総理の「検討」発言について、萩生田光一経産相が「今後、国際情勢等を含めて国民の皆様にどういう影響を与えてくるのか、それを最小限に抑えるために現在執行中の激変緩和措置をしっかりやっていく。長期化すればあらゆる選択肢を排除しないと申し上げている。今の段階ではトリガー解除は考えていない」と答弁したことを取り上げた上で、「トリガー条項」の凍結解除については法改正が必要であること、そして、地方税源が1000億円の減収となるので、地方公共団体との協議や予算措置も必要であることを列挙して、そのハードルの高さを指摘しています。

更に、3月中に成立するであろう今年度予算の補正予算を4月早々に行うのはかなり無理があるとし、4月以降の国会は予算非関連法案の審議をしなければいけないことや、7月の参院選を控えて会期延長しにくい点を指摘しています。

つまり、審議する法案の内容や国会日程を考えると、トリガー条項の凍結解除は事実上不可能だというのですね。

これらのことから、高橋氏は、岸田総理の「検討」発言は、第三極経験の未熟な国民民主を籠絡させるために、予算早期成立で政権基盤を固めたい老獪な自民が放った「毛ばり」ではないだろうかと締め括っています。

果たして、岸田総理の発言が「毛ばり」なのかどうか分かりませんけれども、国民民主の玉木代表が「トリガー条項」の発動について、岸田総理と直接話をしたこと、それを条件として予算案に賛成したことを公言したことを考えると、もしもトリガー条項を発動しなければ、国民民主から責められることは間違いありません。もちろん、トリガー条項を発動したら国民民主の手柄になります。

となると、参院選に向けて原油価格が今の様に高止まり、あるいは更に上昇するのかどうかが一つのポイントになるように思いますけれども、どうも、岸田総理は先延ばししているうちに原油価格が下落して、結果、トリガー条項凍結解除しなくてもよくなることを期待しているのではないかとさえ筆者には思えてきます。

例えば、参院選で自民党の公約にトリガー条項凍結解除"検討"を入れておく、そして参院選が終わったら、審議日程を盾に、年内に法案提出を目指すとかなんとか言っているうちに、ウクライナ問題がおちついて、原油価格が下がるのを待とうとしているのではないかとさえ。

ただ、筆者は原油価格どうこうは度外視して、「減税」をするという事実が非常に大きいと思います。というのも、財務省を相手に政治家、それも岸田総理が減税を実現したということになるからです。政治家の"リーダーシップ"をアピールするのにこれほど大きなことはありません。

ただでさえ、財務省のポチと呼ばれ、増税しか頭にないと指摘されている岸田総理です。

なんでも先延ばしして、何もしないと言われる岸田内閣にそれだけの決断と実行力があるのか。それがなければ、何もしないまま岸田内閣は終わってしまうかもしれませんね。




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