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1.奮闘するウクライナ
2月25日、アメリカ国防総省の高官は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の状況について、最新の分析結果を明らかにしました。
それによると、ロシア軍はウクライナの国境周辺に展開する地上部隊のうち、およそ3分の1の戦力をウクライナ国内に投入し、引き続き主に3つの方向から前進しているということです。
このうち、ウクライナ北部と国境を接するベラルーシから首都キエフに向かうルートでは、キエフに向かうロシア軍に対し、ウクライナ側がロシアの想定よりも激しく抵抗していると分析し「ロシア軍はキエフへの前進を引き続き試みているが、彼らが予想していたほど速くは移動できていない」と、キエフへの侵攻がロシア側の想定よりも遅れているという認識を示しました。
また、ウクライナの北東方向から国境を越え、第2の都市ハリコフに南下するルートでも、ハリコフで今も戦闘が続いているということです。
さらに、ウクライナ南部のクリミアから北上するルートでは、これまで確認されていた北西方向にある都市、ヘルソンに向かうルートに加えて、新たに北東方向に進む部隊が確認され、これらの部隊は東部ドネツク州のマリウポリなどがある地域に向かっているとしています。
また、アゾフ海に面するマリウポリの西側では、ロシア軍による水陸両用作戦が行われ、数千人の部隊が上陸している可能性があるとしています。
2.流れが変わるウクライナ支援
2月25日、アメリカはウクライナへの軍事支援として最大で3億5000万ドル(約400億円)を拠出するようバイデン大統領がブリンケン国務長官に指示したと発表していますけれども、ウクライナ側の奮戦の背景には、それ以前からの防衛力の強化が挙げられます。
アメリカのトランプ前政権で2017年から2019年まで国務省のウクライナ政策担当の特別代表を務めたカート・ボルカー氏は「ウクライナはアメリカなど外国からの支援を得て強力な軍を作り上げた。装備も能力も格段に向上した」とウクライナ軍の戦力は2014年当時と比べ強化されていると指摘しています。
ボルカー氏によると、ウクライナ軍はロシアがクリミアを一方的に併合した2014年の時点までは、訓練や装備が十分ではなく、士気も低下していたのですけれども、その後、アメリカなど外国の支援を得て、軍備の強化を進めてきたそうです。
そして、2018年に当時のトランプ政権はウクライナの防衛力強化を理由に対戦車ミサイル 「ジャベリン」の供与を決定しました。
「ジャベリン」は戦車などの装甲を貫通する強力なミサイルを標的に向けて自動で誘導する精密兵器で、兵士が1人で持ち運べる機動性の高さからアメリカ軍などが実戦で使用してきました。ウクライナ軍はこの対戦車ミサイルを使って首都キエフに迫るロシア軍の戦車部隊に応戦しているものとみられ、AP通信は、ウクライナ軍からの情報として26日、首都キエフの近くでロシア軍の車列が破壊されたと伝えています。
ボルカー氏は、「ウクライナ軍は8年間、東部で親ロシア派の武装勢力と散発的な戦闘を続けてきた。多くの人たちが軍を経験し、予備役も多い」と述べ、実戦経験も豊富だと分析する一方、ロシアとウクライナの軍の戦力は圧倒的な差があるとしたうえで「ウクライナ軍はある程度までは自分たちを守るための戦闘ができるだろう。しかし、必要な防空能力や沿岸警備力、サイバー攻撃への対応能力などを備えておらず、難しい戦いになるだろう」と述べています。
けれども、このウクライナの粘りに西側各国の支援の流れが変わってきつつあります。
26日、欧州各国はウクライナへの軍事支援を相次いで発表しました。ロイター通信によると、フランス軍報道官は防衛装備品を提供することを決めたと表明。チェコやオランダも新たな武器を供与するとしています。
また、ドイツのショルツ首相は「ロシアの侵攻が転機になった。露軍に対するウクライナの自衛支援は、われわれの責務」とする声明を発表。ウクライナに対戦車兵器1000基、携帯型地対空ミサイル「スティンガー」500基を供与すると発表しました。
これまではウクライナへの武器供与を拒否し、ヘルメットを送っていたドイツが手の平を返しました。
3.領土防衛部隊
ウクライナ政府は、2014年にクリミア半島がロシアに併合されたことを機会に徴兵制を復活させ、国防省は国内全土に「領土防衛部隊」を結成しています。
2月24日、この「領土防衛部隊」について、ウクライナのレズニコウ国防相は、ウクラインシカ・プラウダ通信への寄稿で、次のように説明しています。
領土防衛部隊は、複数の要素で構成されている。一つ目は、平時の人員であり、1万人からなる。これは職業軍人であり、領土防衛部隊における契約で従事する。彼らは、大隊と旅団の運営・管理の核を形成する。平均すると、平時には、各大隊は約50名の職業軍人を、旅団は90~120名の軍人を抱える。
第二の要素は、特別時の人員だ。合計で13万人を超える。これは、選考を経て、領土防衛予備兵力の契約を結んだ民間人だ。彼らの数は、大隊にて最大600人となる。彼らは、軍人の指揮下に入る。国家は彼らに武器を提供し、訓練と調整を行う。
レズニコウ国防相によると、領土防衛部隊の骨格となるのは、25個旅団(各州とキエフ市に1個)で、これが大隊150個強(各地区1個配備)を統括するようです。さらに90万人以上の都市である、ハリコフ、ドニエプル、オデッサでは個別の旅団を形成することが法律で認められているそうです。
その他、240万以上の人口を有す地域(ドニプロペトロフスク州、ドネツク州、リヴィウ州、ハリコフ州、キエフ市)では、追加部隊の設置が可能となっているとしています。
レズニコウ国防相は、「かなりの程度で、領土防衛は、外部からの侵略を予防する手段だ。敵は、突如の侵攻のメリットがないことを知ることになる。国境を越えた途端に、敵の足元から大地が燃え上がる。敵はいかなる街も通過できない。あらゆる十字路で敵が待ち伏せされるのだ。その間に、ウクライナ軍の基本勢力が展開される。そのため、敵は100回熟考することになる」と述べています。
もう最初から市街戦を想定しているかのような構えです。ウクライナは24日に国民総動員令を出していますから、おそらく領土防衛部隊も最大の13万人とはいわなくても、平時の一万人以上は動員されているものと思われます。
それにしても、街中のあらゆる十字路で対戦車ミサイルをもったウクライナの民兵が待ち伏せしているとなると、ロシア軍の進軍が鈍るのも理解できます。
4.必要なのは弾薬であり逃げるための乗り物ではない
ここまでウクライナが頑張れるのは、なんといっても、国のリーダーが国民を鼓舞しているからだと思います。
26日、ゼレンスキー大統領はこの日の夜に公開したビデオ声明で「国を解放するまで戦い続ける……強く、勇敢なウクライナ人を世界中が見ている。ウクライナは国を守る用意がある……真実は私たちの側にある」と演説しました。
キエフ攻防戦の最中、ロシアのメディアは「ウクライナの政権幹部は首都から退避した」と報道したのですけれども、ゼレンスキー大統領は、すかさず首相や官房長官と共に「キエフに留まっている」という証拠の映像をツイッターに投稿しています。
更に、ゼレンスキー大統領はアメリカ政府からキエフから退避するよう勧告されたのに対し、「私に必要なのは弾薬であり(乗って逃げるための)乗り物ではない」とその申し出を拒否したと伝えられています。
タリバンが首都カブールに迫るなか、いち早く逃げ出したどこかの大統領とは全然違います。
リーダーがこういう姿勢を示せばこそ、軍や国民の士気も高まるというものです。
BBCニュース - 「私たちはここにいる、独立を守る」 首都からウクライナ大統領が政府幹部とhttps://t.co/wuk56VwWi1 pic.twitter.com/faTGvHa2BE
— BBC News Japan (@bbcnewsjapan) February 26, 2022
25日、キエフで、国際NGO連合代表として紛争予防と平和構築活動に取り組むアンドレ・カメンシコフ氏は、時事通信の電話取材に応じ、次のように述べています。
―キエフの状況は。カメンシコフ氏は、「国民が自分たちの大義のために命を捨てる覚悟があるのなら、それは巨大な利点だ」と述べていますけれども、ウクライナの頑張りを見るにつけ、「領土防衛部隊」など国防の充実に努めていたこともあるにせよ、その通りだと思います。
私は南郊に住んでおり、比較的静かだ。北西の方で戦闘が起きていると聞いたが、戦闘機が見えたり、爆撃音が聞こえたりということはない。(心配で)眠れないが、あまり出歩かず、家に居るようにしている。食料も数週間分備蓄してある。
―これから何が起きるか。
希望的観測では、ウクライナ軍ができるだけ(戦線維持で)踏ん張れば、プーチン大統領の侵略戦争は計画通りに進まなくなる。私自身は何度も出国を助言されたが、個人的にここにいる決断をした。(そうすることで)人々に精神面での支援を提供したい。
―プーチン氏は何がしたいのか。
ロシア指導部は(侵攻で)重大な軍事的勝利を果たし、それを通じてより強力なロシアの「仲間」を作れると信じている。軍事目的を達成した後で(西側と)交渉し、ある程度の譲歩を示して制裁を緩めさせる。そのようにして状況を自分たちに好ましい形で固定化するのがロシアの狙いだ。
―戦争の行方は。
長期的に見れば、この戦争でロシアは負ける。軍事対立の行方を左右する主な要素は、経済・軍事力や人口ではなく、心理的なものだ。国民が自分たちの大義のために命を捨てる覚悟があるのなら、それは巨大な利点だ。ウクライナは軍事的には不利だが、人々は国を守るために抵抗している。ロシア軍が首都や軍事拠点を制圧したとしても、国を完全に征服することはできない。
―国際社会ができることは。
ロシアの人々は物価が急上昇するなど、既に痛みを感じており、制裁強化で打撃を与えられるのは確かだ。ただ制裁は長期的には効果があるが、短期的には効果を望めない。(制裁以外にできるのは)各国指導者が直接ロシア国民に向けて、「あなた方は敵ではない。犯罪的な戦争をしているのはあなたの政府だ」とメッセージを発すること。それにより人々の目が政権へと向き、プーチン氏に対する(国内的な)圧力となり得る。
やはり、国を護るのは憲法九条なのではなく、国を護る意志であり、愛国心なのだと強く感じます。
早かれ遅かれキエフが陥落することになるとしても、ここまで徹底抗戦した上での停戦交渉ならば、ウクライナに100%不利なことにはならないのではないかと思いますね。
この記事へのコメント
Naga