腰のひけた決議と岸田外交の限界

今日はこの話題です。
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1.人権状況決議採択


2月1日、衆議院本会議で中国の新疆ウイグル自治区などでの人権侵害を念頭においた非難決議を採択しました。

決議文は次の通りです。

新疆ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議

近年、国際社会から、新疆ウイグル、チベット、南モンゴル、香港等における、信教の自由への侵害や、強制収監をはじめとする深刻な人権状況への懸念が示されている。人権問題は、人権が普遍的価値を有し、国際社会の正当な関心事項であることから、一国の内政問題にとどまるものではない。

この事態に対し、一方的に民主主義を否定されるなど、弾圧を受けていると訴える人々からは、国際社会に支援を求める多くの声が上がっており、また、その支援を打ち出す法律を制定する国も出てくるなど、国際社会においてもこれに応えようとする動きが広がっている。そして、日米首脳会談、G7(先進7カ国)等においても、人権状況への深刻な懸念が共有されたところである。

このような状況において、人権の尊重を掲げる我(わ)が国も、日本の人権外交を導く実質的かつ強固な政治レベルの文書を採択し、確固たる立場からの建設的なコミットメントが求められている。

本院は、深刻な人権状況に象徴される力による現状の変更を国際社会に対する脅威と認識するとともに、深刻な人権状況について、国際社会が納得するような形で説明責任を果たすよう、強く求める。

政府においても、このような認識の下に、それぞれの民族等の文化・伝統・自治を尊重しつつ、自由・民主主義・法の支配といった基本的価値観を踏まえ、まず、この深刻な人権状況の全容を把握するため、事実関係に関する情報収集を行うべきである。それとともに、国際社会と連携して深刻な人権状況を監視し、救済するための包括的な施策を実施すべきである。

右決議する。
決議文を見れば、中国の人権侵害が念頭にあることは明らかなのですけれども、決議には「中国」という具体的な国名は一切ありません。

もっとも、ウイグルやチベット、南モンゴル、香港を挙げ、深刻な人権状況への懸念が示されていると指摘し、深刻な人権状況について、国際社会が納得するような形で説明責任を果たすよう強く求め、日本政府に対しては、国際社会と連携して深刻な人権状況を監視し、救済するための包括的な施策を実施するよう要求しています。

けれども、大事なことは、深刻な人権侵害を止めさせることです。この決議文では、説明しろ、状況を見守るぞ、といっているだけで、人権侵害を止めさせるための行動をどうするかについてほとんど触れられていません。ただ見てるだけ。


2.腰のひけた決議


今回の採択については、当初、全会一致を目指していたのですけれども、れいわ新選組のほか一部議員が反対した為、全会一致とならなかったのですけれども、れいわ新選組は自身のサイトで決議に反対した理由を述べています。一部引用します。
衆議院・れいわ新選組は、2月1日の衆議院本会議で行われる予定の上記決議に反対する。

いかなる国でも人権侵害は許されない。
もちろんこの決議で言及された新疆ウイグル、チベット、
香港などで行われている人権侵害を許してはいけないことは言うまでもない。

ウイグル自治区での大量拘束や拷問、大規模監視や宗教と文化の抹殺、強制労働や生殖に関する権利の侵害などを直ちに停止し、拘束された人々を解放することを目指し、国連などの独立した調査官や記者等の自治区への入域を受け入れるよう、中国に対して求めるべきである。

ではなぜ反対するのか。

簡単に言えば、
「腰のひけた決議を、やってる感を出すためだけにやるな」、である。
そうならぬよう内容の修正を求めたが、かなわなかった。

人権侵害を行う国に対しては、
それがどこであれ最も厳しく、はっきりした表現で指摘し、改善を求めなければならない。

明白な人権侵害があるのに、決議文では
それを人権“状況“と言い換え、非難すべき国の名前すら入っていない。
「行間を読め」「空気を読め」と言わんばかりの生ぬるいものだ。

オリンピック前になんとか開催国の顔に泥を塗り、
参議院選挙前に対中強硬派アピールをしたい勢力と、
穏健派との間で拮抗し、角の取れた決議文が生み出されたのだ。

【中略】

ある国に対しては生ぬるい決議を出し、
ほかの国の人権侵害には決議どころか、忖度して目をつぶる。
これが人権を重んずる国の議会がやることだろうか。

当然、人権を重んずるならば、
今足元で続いている日本の人権侵害についても厳しく問わねばならない。
昨今のコロナ感染拡大では、多くの人が本来受けるべき検査や医療を受けられていない。
第5波の後、第6波への備え(PCR検査拡大、保健所・医療供給体制の拡充など)も
本気でやらず、空港など水際での検査も3、4割を取りこぼすと言う抗原検査にこだわり続け国内への感染拡大を許し、感染者や疑いがある者は自宅に放置され、
支援物資も届かず、餓死寸前に追いやられる人達もいる。

コロナは災害であるのに、中途半端な財政出動に終始。
補償が受けられる者、受けられない者を作り出し、分断している。
25年の経済政策の失敗とコロナ災害を自己責任ベースで乗り越えさせようとするその姿こそ、まさに人権侵害そのものではないか。

【中略】

繰り返すが、新疆ウイグル、チベット、香港などでの人権侵害は断固として許さない。
その考え方については、今回の決議に共鳴する部分はある。

それと同時に、自国や同盟国に対しても人権侵害の是正と、
被害者救済を厳しく求め続ける。
このように、れいわ新選組は、決議内容が生温いこととを反対理由とし、返す刀で、自国や同盟国に対しても人権侵害の是正と、被害者救済を求めよと主張しています。実に真っ当な主張です。


3.足手まといの公明


国会決議とは、国会の各議院が発表する公式な宣言のことで、衆議院または参議院の各議院において、法律とは別に本会議で可決される決議のことを指します。多くの場合は、法的な拘束力はなく、国内または海外へ向けて発信するメッセージという意味合いが強いとされています。

これまで、1971年に衆議院で決議された非核三原則をはじめ、首都機能移転に関する国会決議や地球温暖化防止に関する国会決議など、さまざまなテーマで多くの決議が出されています。通常は、全会一致の可決により決議されるのですけれども、1995年の「戦後50年の国会決議」や今回のように、一部の反対意見がある中で過半数の賛成により決議される場合もあります。

今回の決議は、4日に始まる北京冬季五輪前の採決をめざして、与野党が調整していたそうなのですけれども、決議を持って、海外へのメッセージとすたいという意図が働いていたものと思われます。

既に色んなところで指摘されていますけれども、元々決議案は昨年6月の時点で一次案が出来上がっていました。

この一次決議案は、日本維新の会、国民民主党、立憲民主党や自民の外交部会が決議案の了承手続きを終えていたのですけれども、決議に慎重な公明に配慮し、自民執行部の判断で見送られました。

そして12月の臨時国会では、古屋圭司衆院議員が会長を務める「日本ウイグル国会議員連盟」や高市政調会長が会長の「南モンゴルを支援する議員連盟」など複数の議連による原案をもとに調整が行われ、野党側からは大筋合意が得られていました。

ところが、この案に公明党が反対。公明幹部の要請を丸吞みし、非難決議の名称から「非難」の言葉を削り、人権侵害の即時停止を求めた部分を、中国当局に人権状況の説明責任を果たすよう求める内容へと変更するなど、大幅に表現を弱めました。

それでも、自民の茂木幹事長は、採決を求めた古屋、高市両氏らに「内容はいいが、タイミングの問題だ」と述べ、北京五輪をめぐる外交的ボイコットについて、政府対応が注目されているからとという理由で採決を認めませんでした。

そして2月になってのようやくの採択です。

これでは、確かにれいわ新選組が「腰の引けた決議」だと批判するのも道理です。


4.岸田外交の限界


今回の決議が採択されたことについて、中国外務省の趙立堅報道官は「決議は真実を顧みず悪意を持って中国の人権状況を中傷するもので、中国の内政に乱暴に干渉し極めて悪質だ。日本の一部の政治家が両国関係の大局を考えずに決議を強引にまとめたことは、中国人民に対する重大な政治的挑発だ」と強く反発し、すでに日本側に厳正な申し入れを行ったとし、「中国はさらなる措置を講じる権利を留保する」と述べ、状況によっては何らかの対抗措置をとる可能性を示唆しました。

決議文のどこにも「中国」の文字がないのに「真実を顧みず悪意を持って中国の人権状況を中傷する」と反発した。語るに落ちるというか、自国で人権侵害をしていると自白したも同然です。

もっとも、中国政府の反発コメントの中に、「日本の一部の政治家が纏めた」とか、「さらなる措置を講じる権利を留保する」とか、半歩程引いたような表現が入っているところを見ると、公明の横槍で決議文の表現を弱めたことを中国政府は受け取ったという返答だともいえるかと思います。

ただ、海外からは、日中で一種の出来レースというか、ポーズを取っているだけと受け取られるかもしれません。

大事なことは決議を受けて、政府がどういう行動を取るかということです。

決議だけで行動が伴わなければ、やはり口だけだった、ポーズを取っただけだったと見做されることになります。

これについて中国側は「さらなる措置を講じる権利を留保する」と先手を打ってコメントしています。つまり、日本が具体的な行動に出れば報復するぞと牽制している訳です。

岸田総理にその積りはないかもしれませんけれども、どちらにもつかず、二股外交を取っている限り、こうした状況に陥ることになります。

今は有事です。どちらも取ろうとすると、虻蜂取らずでどちらも失うことになりかねません。

岸田外交の限界は意外と早くやってくるかもしれませんね。


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