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1.液化天然ガス確保に奔走するバイデン
2月3日、アメリカのバイデン政権は欧州に液化天然ガス(LNG)を融通できるかアジアの主要な輸入国に打診したと報じられています。
ブルームバーグによると、バイデン政権はウクライナ情勢の悪化を受け、ロシア産ガスに依存する欧州の分散調達を支援するため、日本や中国、韓国、インドの各政府と協議したとしています。
欧州は天然ガス消費量の3割をロシア産に依存しているのですけれども、米欧はロシアがウクライナに再侵攻すれば大規模な金融・経済制裁に踏み切る構えで、ロシアが対抗措置として欧州向けの天然ガスを停止する恐れがあります。
今回のガスの分散調達支援も、こうした事情を反映してのことです。
けれども、一口に分散調達と言っても、中国とは初歩的な協議にとどまっているようですし、日本政府も3日、松野官房長官が記者会見で、ブルームバーグの報道について「承知している。米国や欧州各国との間で日頃より様々なやりとりをしているが、外交上のやりとりの詳細は差し控えたい」と明言は避けています。
また、アメリカ政府は、企業にも直接ネゴっているようで、シェブロン社やエクソンモービル社を含むエネルギー企業とも話をし、更に、カタール、ナイジェリア、エジプト、リビア、アルジェリアなどのガス生産会社に、敵対行為が発生した場合の増産について打診したと伝えられています。
また、1月31日、バイデン大統領はホワイトハウスでカタールのタミム首長と会談し、LNGの安定供給策を協議したほか、中東や北アフリカなど複数国とも欧州向けLNGの供給増加について協議を進めています。けれども、カタールのエネルギー相が、欧州が必要とする量はどの国からも提供されないと述べていることを考えるとそうそう簡単に調達できる話ではないようです。
2.液化天然ガス輸出大国のアメリカ
石油と違って、世界の天然ガス市場にはほとんど余力がないのが実情です。実際、どの生産者も短期間でこれ以上採掘できるとはコメントしていません。そのため、国務省のエネルギー安全保障担当上級顧問であるアモス・ホクスタイン氏が率いるバイデン氏のチームは、ガス消費者に対しても、ヨーロッパに転用できるガスの供給を見合わせるよう働きかけているそうです。
世界のLNG輸出国のトップは、長らくオーストラリアとカタールが争ってきました。
ところがここに食い込み、抜き去ろうとしているのが、当のアメリカです。
2021年12月、アメリカ産の液化天然ガス(LNG)の輸出量は月次ベースで世界一となりました。
CNNなどによると、アメリカの2021年12月の月次輸出量は約770万トンで、700万トン台のカタールとオーストラリアをわずかに上回ったのだそうです。
その背景には、2000年代後半に始まったシェール革命を受けてアメリカ国内では安価なガスが大量生産されるようになったことがあります。アメリカ南部でプラントが相次いで稼働し、2021年は天然ガス価格が高騰する欧州向けの輸出が増えています。
2022年も建設中のプラントの稼働が始まり、LNGの生産能力も世界一となる見通しとされています。アメリカ・エネルギー情報局(EIA)によると、アメリカのLNG生産能力は2022年末までに前年比2割増の日量139億立方フィート(年産約1億100万トン)となりそうで、オーストラリアの日量114億立方フィート(年産約8300万トン)とカタールの日量104億立方フィート(年産約7600万トン)を追い抜くと見られています。
他国からの分散調達が難しいとなると、バイデン政権は結局は自国のシェールガスを増産して、欧州に輸出するしか手がないと思われます。
もっとも、これについて、インドの国営ガス会社GAILは、アメリカから受け取った輸入品をしばしば欧州に販売しており、緊急時にはそのプロセスを迅速化できると、この問題に詳しい関係者は述べているそうで、結局はアメリカ産のガスが巡り巡って欧州に供給されるケースもありそうです。
3.液化天然ガス輸入大国になった中国
翻ってLNGの輸入大国はというとその筆頭に上がるのは日本です。日本は1970年代からずっとLNG輸入量世界一の座を守ってきました。
けれども、2021年には、日本のLNG輸入量は前年比0.2%増の7500万トンであったのに対し、中国が前年比17.8%増の8140万トンで初めて日本を抜き、国別の輸入量で世界最大となっています。
資源エネルギー庁のエネルギー白書2021によると、日本では、2019年度に天然ガスは電力用LNGとして約60%、都市ガス用LNGとして約34%が使われ、天然ガスは、一次エネルギーの供給源多様化政策の一環として、その利用が増加。
特に2011年3月の東日本大震災以降、原子力発電所の稼動停止を受け発電用を中心に増加したのですけれども、2015年度は原子力発電所の再稼動や再生可能エネルギーの普及などにより、減少に転じました。2017年度は発電用需要が減少、また2018年度、2019年度には都市ガス用、発電用ともに需要が減少したことにより、天然ガスの消費量は3年連続で減少しています。
昨年のLNG輸入量が増えたといっても前年比0.2%増ですから、概ね安定して輸入し、安定して使用されているとみてよいかと思います。
それに対し、中国は、「大気汚染防止行動計画(2013~17年)」や「北部のクリーン暖房化計画(17~21年)」など石炭から天然ガスへの転換政策の影響もあり、輸入が急増しています。
4.島根・山口県沖合の石油・天然ガス試掘
こうしたことを考えると、SDGsとかなんとかいって、石炭火力を止めようとしても、その全てが太陽光などの自然エネルギーで代替できる筈もなく、原発やLNG火力に振り分けられることは明らかです。
また、中国のエネルギー消費量は、日本の8倍に相当するのですけれども、日本の1次エネルギー構成全体の中に占めるLNGの割合は2割強であるのに対し、中国はわずか2-3%しかありません。その中国が今後LNGの比率を高めれば、中国との日本とでLNGの奪い合いが起こる可能性も考えられます。
1月17日、国際石油開発帝石(INPEX)は、島根・山口県沖合で、石油及び天然ガス賦存の可能性を探るため試掘調査の実施する予定だと発表しました。
国際石油開発帝石(INPEX)は、2010年代初頭から島根県から福岡県の沖合海域の地質物探評価作業を実施していたのですけれども、それに基づいて、2016年、経済産業省資源エネルギー庁から基礎試錐を委託され、島根・山口県沖合で調査作業を実施しました。
その結果、島根・山口県沖合で石油・天然ガスの賦存が期待できるということになり、今回本格的な試掘調査を行うことになったということです。
試掘場所は、山口県北沖合約150キロメートル、島根県北西沖合約130キロメートル、水深約240メートルの地点で、試掘時期は2022年3月~7月を予定んしているとのことです。
もし、ここで、石油・天然ガスの商業生産ともなれば、日本のエネルギー自給率の向上に寄与するになります。
上手くいくことを期待したいですね。
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