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1.対等な立場での停戦交渉
2月27日、ウクライナのゼレンスキー大統領は、ウクライナの代表団がロシア側と会談することを明らかにしました。
両国の会談については、25日にウクライナのゼレンスキー大統領がプーチン大統領に停戦交渉を呼び掛けたのに対し、プーチン大統領はウクライナの中立化と非軍事化を条件として、ベラルーシの首都ミンスクでウクライナ側と協議することを提案しました。
これに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は安全上の理由から難色を示し、ポーランドの首都ワルシャワでの協議を逆提案したようです。
当初、ロシアが会談を行う条件とした、親ロシアのベラルーシの首都でウクライナの中立化と非軍事化というのは、要するに、武装解除・降伏してから会談にやってこいということであり、完全にロシアペースで交渉が進むであろうことは目に見えています。
けれども、結局会談は、前提条件なしで会うことで合意され、会談場所もプリピャチ川(Pripyat River)近くのウクライナ・ベラルーシ国境となりました。これは、ほとんど対等な立場での会談ということであり、これもウクライナ側が徹底抗戦し、キエフをはじめとする各地で奮戦、健闘したからこそ実現できたことだと思います。
このように会談一つとっても、バックに"力"があって始めて対等な会談が出来るのであり、彼我の軍事力と戦力差を考えると、ウクライナは勝ちに等しい引き分けまで持ってこれたのではないかとさえ思います。
2.10日頑張ればロシアは破産する
これはロシア側からみれば、負けに等しい引き分けになるのではないかと思いますけれども、ロシアはロシアで長期戦は無理だったからだという見方もあります。
2月27日、ジャーナリストの木村太郎氏はフジテレビ系「Mr.サンデー」に出演し、ロシアのウクライナ侵攻について「ウクライナ側の発表なので正確には分からないが、ロシアは相当損害を被っている……ウクライナ市民の士気の高さ。ゼレンスキー大統領が避難しないで、ずっとキエフに残ったまま、投稿ビデオを通じて色んなメッセージを出している。これが効いている……コメディアンからなった大統領と随分揶揄されたが、実際に危機になったらとんでもない指導力を発揮していると評価されている」とコメントしました。
そして、ウクライナ国防総省の試算として「ロシアは1日に150億ドルの戦費を使っている。10日続くと戦費がなくなっちゃうだろうと。だから10日頑張りゃいいんだと言い出している。そうしたらロシアは完全に破産しちゃうし、弾薬もなくなっちゃうと言っている……アメリカでもベトナム戦争でも死体の兵隊たちが帰ってきて、それがきっかけになってドンと、反戦ムードが巻き起こった。ロシアでもボディバッグ(遺体)が帰りだしたら、相当プーチン大統領への反発が高まるのでは」と指摘しています。
ウクライナ国防省が発表したロシア側の損害は、27日午後7時現在で、兵士4300人死亡、戦車146台、装甲車両706台、戦闘機27機と、ウクライナの徹底抗戦が予想以上だとも見られています。
確かにこれだけ被害を出して戦費も尽きるとなれば、停戦を急ぐのも道理です。尻に火がついた状態で、顔だけ凄んで見せるのも中々難しい。停戦交渉で、ウクライナのNATO加盟阻止と東部の親ロシア地域の国家承認あるいは自治、またはミンスク合意の履行。このあたりが落としどころになるのではないかと思います。
3.SWIFTから排除
米欧は、戦費に頭を悩ますロシアに追い打ちをかけるように金融制裁を掛けています。
2月26日、欧州連合(EU)と米英などは経済制裁として、国際送金システムを担うSWIFT(国際銀行間通信協会)からロシアの銀行を締め出す措置をとることで合意したと発表しました。
SWIFTとは、「Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication」の略で、国境を越えた迅速な決済を可能にし、国際貿易を円滑に行うためのシステムです。現在、200以上の国や地域で、11000以上の金融機関を繋ぐ金融メッセージプラットフォームとして使われ、SWIFTに接続する銀行は、安全とされるSWIFTメッセージを利用して支払いを行い、大量の取引を迅速に処理できるとされています。
既にSWIFTは国際貿易における資金送金の標準的な手段となっており、2020年の年次報告によると、SWIFTプラットフォーム上で、毎日約38000万件の送金メッセージがやり取りされ、年間では何兆ドルもの資金がSWIFTで送金されているとのことです。
このSWIFTからロシアの銀行が排除されると、ロシアは世界中の金融市場へのアクセスが制限されることになります。畢竟、ロシアの企業や個人は、輸入品の支払いや輸出品の受け取り、海外での借り入れや投資が難しくなります。
また、輸出企業にとっては、ロシアへの商品販売のリスクとコストが増加することになります。ロシアは製造業製品の大口購入国で、世界銀行のデータによると、オランダとドイツはロシアにとって2番目と3番目の貿易相手国だそうです。従って、両国にとってはロシア銀行をSWIFTから排除することは諸刃の剣であり、返り血を浴びることも覚悟しなくてはいけません。
4.SPFSとCIPS
大手メディアはSWIFTからロシアを排除することで、ロシアに大打撃を与えるなどと報じていますけれども、ロシアはロシアで、クリミア併合時にSWIFT排除の脅威があったことから、国内と旧ソ連邦一部をカバーする支払いシステムSPFS(System for Transfer of Financial Messages)を構築しています。
2017年にはSPFSでの最初の取引が行われ、2018年には銀行を主とする400以上の金融機関が参加。2020年の終わりには、アルメニア、ベラルーシ、ドイツ、カザフスタン、キルギスタン、スイスから23の外国銀行がSPFSに接続しています。
似たようなシステムは中国も独自に構築しています。
2015年、中国人民銀行は人民元建ての貿易・投資に関する決済を促す金融インフラとして、クロスボーダー銀行間決済システム(Cross-Border Inter-Bank Payments System/CIPS)を稼働させました。
このシステムを利用する海外の間接参加銀行は中国国内の直接参加銀行を通じて、人民元建てのクロスボーダー貿易取引、直接投資、融資、個人送金などの国際決済を行うことができ、更にSWIFTを経由しないといういわばSWIFTと競合する関係にあります。
当初、19の中国および外国の銀行と、6つの大陸および47の国と地域をカバーする176の参加者から始まったCIPSは着実に参加行を増やし、2021年現在、直接参加銀行は53行、直接参加銀行に決済を委託する間接参加銀行は1100行を超え、その半数以上は中国大陸外からの参加となっています。
当然ながら、ロシアは、SWIFTから排除されたときの代替としてSPFSやCIPSを使うことを想定していた筈です。
5.時間はロシアに味方しない
けれども現実はもっと早く展開しています。
2月26日、アメリカ、イギリス、欧州、カナダはロシアの一部銀行を国際銀行間の送金・決済システムのSWIFTから排除することで合意しました。ロシア中央銀行の外貨準備の使用も制限することになります。
翌27日、プーチン大統領が核戦力を含む核抑止部隊を高度の警戒態勢に置くよう軍司令部に命じたことを受け、ルーブルが大暴落。一時1ドル=120ルーブルまで下げています。
ロシア中銀は27日、国内市場を支えるための一連の措置を発表。国内市場での金購入の再開や無制限の資金供給、銀行の為替持ち高の制限緩和も行うとし、更に28日には、主要政策金利を9.5%から20%へと引き上げると発表しました。
ロシア中銀は声明で「ロシア経済の外部環境が大幅に変わった……政策金利の引き上げで、預金金利がインフレリスクの高まりなどの影響をカバーできる水準に確実に上がるようにする。金融・物価の安定を支援し国民の預金の目減りを防ぐために必要な措置だ」と説明しました。
更にロシア中央銀行と財務省は、外貨建て収入の80%を売却するよう企業に指示しています。
これに対し、28日、アメリカ財務省はロシアへの追加制裁として、アメリカ国内のロシア中央銀行の資産を事実上凍結すると発表。アメリカ人やアメリカ企業によるロシア中銀やロシア財務省、政府系ファンドとの取引を禁じました。
強烈な金融制裁です。
これでは時間が経てば経つほど、ロシアは不利になってきます。
正直言って、もう潮時だと思います。プーチン大統領は被害を最小限にしつつ退くしかないと思いますけれども、ここから逆転を狙うには、それこそ大量破壊兵器を持ち出してくるしかなくなります。下手をすれば、最大の危機を迎えるかもしれません。要注意です。
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