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1.ロシア軍迫る
ウクライナ情勢について、アメリカ国防総省の幹部は、首都キエフ周辺のロシア軍について、北西方向から近づいている部隊は、過去24時間で5km進軍し、キエフ中心部まで残り15kmに迫っていると明らかにしました。
また、別の部隊が北東部からキエフに迫っていて、キエフ中心部から40キロの地点にいるとしています。
さらに、ロシア軍が戦力の90%を維持しているとし、今後、キエフ中心部など市街地への無差別攻撃が激化する可能性も指摘しています。
またイギリス国防省は、ロシア軍がキエフなどへの新たな攻撃に向け、数日かけて部隊の態勢を整え、今後、総攻撃を仕掛けてくるのではと危機感を強めているとしています。
こうした中、ロシアのプーチン大統領は外国からの志願兵について、ショイグ国防相が「大部分は中東からで、1万6000人を超えます」という発言に「お金のためではないのなら、あなたは志願兵を戦闘地帯に移動することを助ける必要がある」と彼らを投入する考えを示しました。
他国の志願兵を投入しなければならないとなっている時点で、ロシアにとって戦況が思わしくないものであることは否定できません。
2.要塞と化したキエフ
これに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は「シリアの凶悪犯をわれわれに対し傭兵として輸入することを思いついた。異国の地に人を殺しに来る」と述べ、勝利の達成にはまだ時間と忍耐が必要で、ウクライナのパートナーからさらなる制裁が必要だと協力を呼び掛けています。
既に首都キエフでは住民が防御網の強化に加わり、武器を手にして見張りに立つなど要塞化を進めながら決戦に備えています。
南からキエフに通じる高速道路を囲む森の中には塹壕が深く掘られ、道路沿いには大きな金属材を使った戦車を阻む障害物。全ての出口には砂袋やコンクリート破片を積んだ封鎖手段が準備されています。
市中心部に近いほど防衛網はより手厚く、検問所では軍兵士らが目を光らせ、戦車や武器もキエフの主要道路に沿って配備され、複数の広場を軍車両の出動拠点としています。
また商業地区の境界線には砂袋などで出来た障壁が築かれ、普段は交通情報や広告を伝える電子掲示板には今や、北大西洋条約機構(NATO)に対して空域閉鎖を求め、「ウクライナに栄光あれ」の字句が流れているそうです。
ウクライナ軍の参謀本部によると、ロシアの侵攻が始まった後の最初の2日間で領土防衛隊に加わった志願者は約4万人で、予備役兵も含め武器を手にすることを促した際には1万8000人がこれに応じたそうです。
あまりにも希望者が多くて入隊出来なかった住民もいるほどで、彼らは火炎瓶づくり、バリケード用の迷彩ネットの縫製、見張り番らへの食料や飲み物、たばこの配達。更に軍支援の資金集めや路上の障害物構築のほか、侵攻軍を妨害する目的で交通標識に塗料で細工もするなど、首都防衛に貢献しているとのことです。まさに総力戦です。
3.防衛装備移転三原則
ウクライナは世界各国に支援を求めていますけれども、日本にも支援を求めています。
3月4日、岸田総理は総理官邸で国家安全保障会議(NSC)を開き、ウクライナに対する支援方針を固め、防弾チョッキやヘルメットのほか、防寒服、テント、カメラ、衛生資材、非常用食糧、発電機などを提供することを明らかにしています。
ただ、これらは、条件付きで武器輸出を認める「防衛装備移転三原則」で定める防衛装備品にあたります。日本政府は提供が禁じられる「紛争当事国」にウクライナは当たらないとしたようですけれども、現実に武力攻撃を受けているウクライナを「紛争当事国」でないとするなら、ロシアとウクライナは紛争あるいは戦争をしていないことになります。流石にこの理屈には無理があります。
けれども、ウクライナ政府は日本にもっと支援を要請していました。
2月末、ウクライナのレズニコフ国防相は、大使館ルートを通じて岸防衛相に支援を求める物資のリストを書面で提出していたのですけれども、この中には対戦車砲のほか、地対空ミサイル、小銃の弾薬も含まれていたのだそうです。
けれども、いくら要請されたからといって無条件になんでもかんでも提供できる訳ではありません。
自衛隊の装備品を無償提供する法的根拠として、自衛隊法116条3項に次のように定められています。
(開発途上地域の政府に対する不用装備品等の譲渡に係る財政法の特例)このように、116条の3では、航空機や艦艇などが提供の対象に含まれる一方、「武器(弾薬を含む。)を除く」と武器の除外が明記されています。今回、ウクライナへの支援で防弾チョッキなどになったのは、こうした制約があったからです。
第百十六条の三 防衛大臣は、開発途上にある海外の地域の政府から当該地域の軍隊が行う災害応急対策のための活動、情報の収集のための活動、教育訓練その他の活動(国際連合憲章の目的と両立しないものを除く。)の用に供するために装備品等(装備品、船舶、航空機又は需品をいい、武器(弾薬を含む。)を除く。以下この条において同じ。)の譲渡を求める旨の申出があつた場合において、当該軍隊の当該活動に係る能力の向上を支援するため必要と認めるときは、当該政府との間の装備品等の譲渡に関する国際約束(我が国から譲渡された装備品等が、我が国の同意を得ないで、我が国との間で合意をした用途以外の用途に使用され、又は第三者に移転されることがないようにするための規定を有するものに限る。)に基づいて、自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度において、自衛隊の用に供されていた装備品等であつて行政財産の用途を廃止したもの又は物品の不用の決定をしたものを、当該政府に対して譲与し、又は時価よりも低い対価で譲渡することができる。
4.行き過ぎたお願い
けれども、ウクライナ政府はそれだけでなく、ありとあらゆる支援を求めていました。
3月10日、ウクライナ大使館はロシアの自治体と「姉妹都市」などの提携関係にある日本の42自治体が記載されたリストの写真をツイッターに投稿し、「ウクライナが卑劣なロシア侵攻を受けるなか、ロシアの町との『姉妹関係』を保ち続けるのは偽善のように思われます。当館が日本の都道府県及び市に対して、ロシアの地域及び市との姉妹都市関係の断絶を呼びかけました」と呼びかけました。
また別のツイートでは、日本の大学27校が記載されたリストを投稿し「ウクライナに対するロシア侵攻を非難するとともに、世界各国の大学がロシア連邦の教育機関との協力を停止しています。当館が日本の大学にも侵略国との協力関係の断絶を呼びかけました」と投稿しています。
これらの投稿に、ツイッターで議論が沸騰。翌11日朝には署名サイト「change.org」で「日本の大学とロシアの教育機関との関係断絶を阻止しよう!」と、ウクライナ大使館の呼びかけに抗議する署名が立ち上がり、20時50分までに120人近い署名が集まったそうです。
けれども、その日の18時30分ごろ。 ウクライナ大使館は一連のツイートを削除したうえで、「ロシアの大学や自治体との交流停止を求めたことについて、様々なご意見をいただきました……確かに行き過ぎたお願いだったかもしれません」と弁明しました。
いったい、どのような"様々な"意見が集まったのか分かりませんけれども、「行き過ぎた」といっているところから見ると、それなりに大学や自治体から「巻き込むな」などと咎められたのではないかと思われます。
5.ウクライナが中国と結んだ密約
ウクライナはなりふり構わず世界に支援を求めています。
3月9日、アメリカのワシントン・ポスト紙は、ロシアから攻撃を受けているウクライナでは、戦略パートナーシップを結んでいる中国が強力な支援を行っていないことに失望感が広がったと伝えています。
その記事によると、ロシアが侵攻した後、ウクライナ政府は、「ウクライナは長年にわたり、中国発の国産空母、中国海軍の対ミサイルレーダー技術、高度なジェットエンジンなど、他国では手に入らない重要な軍事技術を中国側に提供した。また、ウクライナは、トウモロコシやヒマワリ油などの農産物を中国に供給する重要なサプライヤーでもある」と、中国の「近代的な軍隊の構築に貢献した国」として中国に助けを求めました。
けれども、中国当局はいまもロシアを非難しておらず、ワシントン・ポスト紙は、中国のロシアへの依存度はウクライナとの関係より高いことを反映したとし、ウクライナが近年、欧州の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)への加盟を目指しているため、中国当局はウクライナと距離を置くようになったと指摘しています。
更に、3月11日、アメリカのウォールストリートジャーナル紙が「Under New Scrutiny: China’s Nuclear Pledge to Ukraine(中国のウクライナへの核公約)」という記事を掲載しています。
それによると、2013年中国は、1994年にウクライナが米英露からの安全保障と引き換えに、ソ連時代の数千個の核兵器を放棄する契約を結んだことを歓迎し、「中国は非核のウクライナに対し核兵器を使用せず、使用するとも脅さないこと。そしてウクライナが核兵器で侵略、またはそのような侵略の脅威がある場合に安全保障を提供することを無条件に約束する」という密約を結んでいたとしています。
ウクライナの専門家によると、ゼレンスキー政権は現在もロシアとの停戦に向けて中国が介入することを望む一方で、2月初め、中露両国が共同声明を公表してから、ウクライナ政府の中国側に対する「信頼が大幅に低下した」と述べていますけれども、8年前にこのような密約が結ばれていたのだとすると、確かに今の中国の態度はウクライナにとって失望に値するものでしょうね。
ただ、このようなウクライナのところかまわず支援を求める姿勢は、国を護る気持ちの表れであり、彼らにしてみれば当然のことであるかもしれませんけれども、一歩間違えば世界中を巻き込む世界大戦に繋がりかねないともいえ、安易になんでもかんでも支援することには一定の注意が必要なのではないかと思います。
6.ロシアを後方支援する中国と北朝鮮
けれども、ロシアのウクライナ侵攻は既に世界の多くの国を巻き込みつつある懸念も出て来ています。
韓国の市民団体である北朝鮮民主化ネットワークが発行するインターネット新聞「デイリーNK」によると、北朝鮮当局は最近、ロシアに派遣された労働者を対象に、ロシアのウクライナ侵略に関連する政治学習資料を配布したそうです。
その資料では「ロシアは、同じ国だったウクライナに派兵した……必要に応じて、我々も南側を占領できる……我々は南朝鮮を一気に攻撃できる……南朝鮮にはむしろ我々の祖国統一を待つ住民も多い」などと主張しているとのことです。
また、資料は「ロシアが優越した軍事力をもってしても、一気にウクライナを占領しないように、われわれも南朝鮮の事情を考慮してやっている」と述べ「戦争はロシアの勝利で終わるだろう」と締め括っています。
北朝鮮の国内向けメディアは、ロシアのウクライナ侵攻について報じていないのですけれども、現在世界から制裁を受けている影響で、ルーブルが大暴落し、インフレなどが起きているロシア国内の状況を考慮すれば、ロシアに派遣した北朝鮮労働者はロシアメディアの報道を通じてそのことを知っているだろうとの前提で、彼らの動揺を抑える目的で書かれた資料だと思われます。
資料では、「ウクライナにあった核兵器を返還せよと要求したのはアメリカで、今更ロシアを刺激して戦争を起こしたのもアメリカ……自衛的国防力だけが平和を守れる」という記述もあるそうで、北朝鮮の核保有を正当化する意図があると見られています。
昔からロシアを関係が深い北朝鮮ですけれども、ジャーナリストの鳴霞氏によると、どうもロシアは北朝鮮の兵士数十万人を金で雇って、後方支援を行わせていると述べています。そして、中国も貨物列車で食糧を休みなしでロシアに供給しつづけているそうです。これが本当であれば、表向きの舞台はウクライナですけれども、裏では、既に多くの国が関わっているということです。
7.戦争終結の5つのシナリオ
3月7日、BBCは、ウクライナでの戦争の結末には5つのシナリオがあるとする記事を掲載しました。
その5つのシナリオは次の通りです。
・シナリオその1 「短期決戦」記事ではそれぞれのシナリオについて解説した上で、シナリオ2ないしシナリオ3の可能性が高く、その他のシナリオが成立するためにはいくつかの条件があると述べています。
・シナリオその2 「長期戦」
・シナリオその3 「欧州戦争」
・シナリオその4 「外交的解決」
・シナリオその5 「プーチン氏失脚」
週末には、キエフを包囲したロシア軍が大攻勢をかけるのではないかとも言われており、それこそ、火力にものをいわせてキエフを焦土にしてしまえば、短期決戦で終わることも考えられなくもありませんけれども、そこまでやるのかどうか。
首都キエフでどこまでウクライナが徹底抗戦するかにもよりますけれども、シナリオ3が拡大して世界大戦に発展しないようにどこかでストップできないと非常に危険な段階に進む可能性も出てきたのではないかと思いますね。
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詠み人知らず