虚偽情報のブロックとアザロフの告発

今日はこの話題です。
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1.ロシアのマスコミ排除


ロシア軍のウクライナ侵攻が続く中、情報戦も激しさを増しています。

3月4日。ロシアのプーチン大統領はロシアの軍事行動に関する「虚偽情報」を流布した者に最長で禁錮15年を科す法律に署名し、発効させました。

法律は、「虚偽情報」を故意に広めた場合、最高で150万ルーブル(約140万円)の罰金または最長で禁錮3年を科すというもので、更に「重大な結果」を引き起こす虚偽情報と見なされれば禁錮10~15年が科される場合もあるとのことです。

この日、ロシア政府はフェイスブックへのアクセス遮断を決めたほか、ツイッターも制限。イギリスBBC放送やアメリカのボイス・オブ・アメリカ(VOA)、ドイツ国際公共放送ドイチェ・ウェレのサイトも遮断されました。

これに対し、アメリカのCNNテレビやブルームバーグ通信などはロシアでの活動停止を表明。CNNは声明で「ロシア国内での放送を停止し、状況を見定めて今後の活動のあり方を検討する」と発表しました。

更に、カナダ放送協会(CBC)、ドイツ公共放送連盟(ARD)、ドイツ第2テレビ(ZDF)も5日までにロシアでの活動の一時停止を決定。アメリカのABCテレビもロシアからの中継を一時中止すると発表しています。

また、BBCもロシアでの活動停止を表明し、BBCのデイビー会長は、問題の法律は「独立した報道のプロセスを犯罪とみなしているようだ……取材活動を一時停止する以外の選択肢はなかった」と説明しました。

ただ、BBCは「正確で独立した情報へのアクセスは基本的権利で、ロシア国民がそれを否定されるべきではない」として、今後もロシア語版のサービスを継続し、ロシア国外から運営するとしています。


2.YouTubeの反撃


一方、欧州連合(EU)は、3月2日、今回の侵攻に関して偽情報を広めているとして、露国営メディアの「ロシア・トゥデイ(RT)」やロシア・トゥデイ(RT)傘下の通信社である「スプートニク」によるEU圏内での放送や配信を禁止すると発表しています。EUのボレル外交安全保障上級代表は声明で「ロシア政府による組織的な情報操作や偽情報がウクライナ攻撃の道具として使われている」と非難し、偽情報は「EUの秩序や安全に対する重大かつ直接的な脅威でもある」と述べました。

また、YouTubeもロシア軍のウクライナ侵攻を受け、2月末にロシア・トゥデイ(RT)のYouTubeチャンネルの収益化を停止。さらに、3月2日にはロシア・トゥデイ(RT)とスプートニクのYouTubeチャンネルをヨーロッパからアクセスできないようにブロックしています。

更に、YouTubeはロシア・トゥデイ(RT)やスプートニクのYouTubeチャンネルのブロックをヨーロッパ全土から全世界に拡大することを発表しました。

YouTubeによると、最新のポリシー更新以降、悪意のある表現に関するポリシーや誤った情報やグラフィックコンテンツに関するポリシーに違反したということで、これまで1000を超えるチャンネルと1万5000本を超える動画を削除してきたとし、ロシアのすべてのYouTube広告を一時的にブロックしているとも発表しています。

これで、ロシアのクリエイターはYouTube上で収益化することができなくなっている訳ですけれども、これもある意味で経済制裁の一種であると思います。


3.アザロフの告発


ただ、ロシアにとっては、経済制裁どうこうよりも、自身の主張をブロックされることの方がずっと嫌であるはずです。なぜなら、情報戦における対外向けの「拡声器」を潰されたことになるからです。

そんな折、ある人物の告発が世界で話題になっています。

ウクライナのニコライ・アザロフ元首相です。

アザロフ元首相は、ヤヌコビッチ政権下で、2010年から2014年まで首相を務め、ヤヌコビッチ大統領の側近として強い政治力を保持した人物です。2010年3月11日付のイギリスのガーディアン紙では、彼を新政権の中で最もロシア好きな人物であると紹介しており、親ロシアの政治家として知られています。

3月4日、アザロフ元首相はfacebookで、北大西洋条約機構(NATO)がロシアへの核攻撃を計画していると主張するメッセージを公開しました。

その主な主張は次の通りです。
・2021年12月以降、ロシアはNATOがウクライナに4個軍事旅団(陸上2個、海上1個、航空1個)を配備する計画について知らされていた。そのうちの一つは核弾頭を搭載する可能性がある航空旅団だ。

・NATOは2022年夏の国連安保理でこの兵力配備について合意したいと考えていた。おそらく年末までには紛争を誘発し、核兵器を使ったロシアへの本格的な軍事行動を開始していただろう。つまり、NATOはロシアに対して核兵器による第三次世界大戦を繰り広げようと計画していたのだ。

・その重要な役割を担ったのが、アメリカに支配された現在のウクライナの支配層と民族主義者達だ。

・第三次世界大戦や核兵器によるロシアへの攻撃を防ぐため、ロシア政府は事態を収拾し、ウクライナに秩序をもたらすことを決定した。

・欧米はソーシャルメディアなどを通じて、ロシアが攻撃してきたという情報を流している。彼らは自分たちの計画が台無しになったことに腹を立てているが、今やロシアはウクライナに居る。ウクライナの犠牲の上に彼らを核兵器で破壊することはできない。

・プーチンの言葉によると、ハリコフからモスクワまで弾頭が飛ぶ時間は3分、報復攻撃の時間はない。アメリカからなら30分だから報復する時間はある。

・今こそ、ルガンスク人民共和国(LNR)とドネツク人民共和国(DNR)の領土で、住民の破壊を伴う裏切りの攻撃とそれに続く挑発の準備に関する情報を公開するチャンスだ。

・国家治安部隊を中心とするウクライナ軍(AFU)は、2月25日にドンバスで軍事作戦を開始する準備を進めていた。ルハンスクのある北部では、ウクライナ軍(AFU)が右派セクターを隠れ蓑にして活動し、ルガンスク人民共和国(LNR)とドネツク人民共和国(DNR)をロシアとの国境から切り離す予定だったのだ。

・2つ目のグループは、ルーマニアのストライカー旅団(装甲車)の兵士1000人だ。このグループは、トランスニストリアを封鎖し、南方経由でオデッサに進出できないようにする作戦を担っていた。

・すべては、2月24日から25日にかけての夜に始まる一連の行動だった。この計画はNATOのハンドラーと共同で立案されたと考えられている。

・プーチンは、キエフと西側諸国の計画を文字通り一足先に察知し、戦略的イニシアチブを握ることでこれら共和国の数十万人の命を救ったのだ。

・なぜ(ウクライナは)あんなにヒステリックなんだろう? なぜなら、領土を奪取するための準備はすべて整っていたのに、1日前に突然、ロシア軍の支援を受けたルガンスク人民共和国(LNR)とドネツク人民共和国(DNR)の部隊が活動を開始したからだ。まず、飛行場や滑走路が攻撃され、アメリカなどの兵器を積んだ輸送機が着陸できず、管制センター、防空システム、レーダー基地、対空ミサイル部門などが機能停止に陥ったのだ。
凄い話です。アザロフ元首相が親ロシアであることを考慮しても、「作り話」というには具体的に過ぎます。もし、これが本当であれば、ロシアのウクライナ侵攻という構図がひっくり返りかねません。


4.埋め込まれた時限爆弾


衝撃のアザロフ元首相の告発ですけれども、その中には、なぜNATOがウクライナに4個軍事旅団を配備しようしたのかという動機が書かれていませんし、筆者としては、アザロフ元首相の主張に全面的に同意は出来ませんけれども、主張そのものは筋が通っていると思います。

ただ、先にも述べたとおり、これが「作り話」である可能性も否定できません。

1月22日、イギリス外務省はロシアがウクライナに親ロシア指導者の擁立を画策しているとの声明を発表しました。

声明は指導者候補の1人として、元最高会議議員のムラエフ氏を名指した上で、他にもロシア情報当局が関係を維持するウクライナの元政治家が多数いるとして、2014年に首相代理を務めたアルブゾフ氏やヤヌコビッチ元大統領の首席補佐官も務めたクルエフ氏、国家安全保障・国防会議元副議長のシブコビッチ氏、そして、アザロフ元首相の名前を挙げています。

声明では元政治家らの一部について、ウクライナ侵攻を計画するロシア情報当局者らと接触中だと主張しているのですけれども、これが本当であれば、この時期にロシア政府がアザロフ元首相に工作して、今回の告発をするように吹き込んだことも考えられなくもありません。

その意味では、Youtubeを遮断され、また、西側マスコミを追い出した結果、「拡声器」を失うことになったロシアは、他国の親ロシア政治家や著名人を使って自身の主張を代弁させることだってあり得ます。

一方、先日、フランスのTVでウクライナから脱出した女性を生出演させたところ、その女性が「家族はまだキエフです。戦争が起こるとは思わなかったが噂が広がり4日前脱出した。紛争の元は2014年から始まり、日々の暮らしがひどくなってる。今年は燃料費が最上昇、賃金の半分が消える。あのパペットのせいだ」と発言。その他にも「反政権のテレビ局4つを閉鎖、ジャーナリスト数人死亡」とか「ロシア侵攻を歓迎」などと言い出して、放送が打ち切りになったという話がネットに上がっています。

その真偽はさておき、自分達の意図とは逆の内容が話されたとき、それが虚偽情報だと確認できなかったとしても、放送打ち切りにするなんて事は現実にあります。

今回のアザロフ元首相の告発は海外メディアで結構話題になっているようですけれども、果たしてこのアザロフ元首相の投稿や動画チャンネルをFacebookがフェイクニュースだとしてブロックするのかどうかも、筆者は一つの注目点にしています。

まぁ、今後、この真相が明らかになることはないかもしれませんけれども、このアザロフ元首相の告発は、埋め込まれた時限爆弾のように後になって大爆発するかもしれませんね。




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