プーチン政権は崩壊するか

今日はこの話題です。
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1.プーチンの内部粛清


3月11日、ラトビアに拠点を置く独立系ニュースサイト「メドゥーザ」は情報・治安機関のロシア連邦保安局(FSB)の対外諜報部門のトップらが自宅軟禁に置かれた可能性があると報じました。

報道によると、自宅軟禁処分となったとみられるのはFSBの「第5局」と呼ばれる部署の局長らです。彼らは旧ソ連諸国を中心とした対外諜報活動を担当しており、容疑は資金の着服のほか、ウクライナの政治状況に関する誤った情報を報告したことが挙げられているそうです。

FSBは侵攻直前にウクライナの政治状況をプーチン大統領に伝える役割を担っていたとみられるのですけれども、「第5局は指導者を怒らせるのを恐れ、プーチン大統領が聞きたいことだけを報告していた」と指摘しています。

以前、FSBからの内部告発文書がリークされて話題になりましたけれども、そこでも「要求に合わせた報告書を作成しなければならないというプレッシャーがある」とか「勝利の女神のような文体で書く必要がある」とか綴られていることはそれを裏付けているように思います。

9日、ウクライナ政府はロシア軍将官の8人前後がすでに解任されたとの見方も示していて、戦況次第では、今後もさらに「粛清」が続く恐れがあるとも指摘されています。

真相はどうか分かりませんけれども、本当に粛清が行われているとするならば、プーチン大統領は、今回の進攻作戦は失敗したと判断していることになります。


2.側近の裏切り


プーチン政権はキエフを短期間で陥落させ、ゼレンスキー政権を崩壊させる「電撃戦」を狙っていたとみられています。日米情報当局関係者によると、侵攻開始から12時間でウクライナの制空権を確保し、36時間でウクライナ軍の通信網を破壊。48時間で首都キエフを包囲し、72時間でゼレンスキー政権を転覆させるというものだったようです。

このとき、ロシア側は、ウクライナのゼレンスキー大統領以下二十数人の暗殺と、「反露」の政治家、ジャーナリストなど500人超を拉致、監禁、拷問し、「ゼレンスキー政権がロシアへの核攻撃を準備していた」「ウクライナ東部で『ジェノサイド(民族大虐殺)』が起きていた」などと、虚偽証言させるという作戦と、ゼレンスキー大統領らの暗殺作戦と同時に、予め用意していた新大統領役のウクライナ男性と仲間が決起し、カメラの前で、ロシアを救世主と称え、「親露」新政権樹立を宣言する作戦の2つの極秘作戦を用意されていたと言われています。

けれども、結果は、未だに主要都市の多くを制圧できておらず、制空権(航空優勢)も確保できていません。プーチン大統領は侵攻2日目の2月25日にウクライナ軍に対してクーデターを呼びかけましたけれども、まったくクーデターは起きていません。

日米情報当局関係者によると、プーチン大統領はロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)に何度か、『新大統領役の男たちに決起させろ』と命令したのですけれども動かなかったようです。

また、ゼレンスキー大統領暗殺計画についても、4日、イギリスのタイムズ紙が少なくとも3度の暗殺未遂が起きたと報じていますけれども、それを阻止したのは、なんと侵攻に反対するロシア連邦保安局(FSB)関係者の情報リークだとしています。

ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)のトップは、プーチン大統領の腹心であるセルゲイ・ショイグ国防相。ロシア連邦保安局(FSB)トップのアレクサンドル・ボルトニコフ長官は、プーチン大統領と同じKGB出身者で、最側近の一人です。

彼らが本当にプーチン大統領を裏切っているのだとしたら、政権内部が揺らいでいることになります。


3.オリガルヒの警告


プーチン大統領に対する疑義は財界からも上がっています。

3月10日、ロシア最大の富豪で金属大手ノリリスク・ニッケルの社長のウラジーミル・ポターニン氏は、ロシア大統領府がウクライナ侵攻を受けて、ロシア事業撤退を表明した企業の資産差し押さえを示唆したことについて、欧米企業や投資家に対して門戸を閉ざせば、1917年の革命以前の混乱した時代に逆戻りする恐れがあるとして、資産接収に関しては極めて慎重に対応するよう警鐘を鳴らしました。

ボターニン氏はテレグラムに投稿したメッセージで、資産接収に動けば「今後数十年にわたって世界の投資家からロシアに不信感が向けられる結果になる」と指摘する一方、ロシア事業を停止するという多くの企業の決定はやや感情的なものであり、海外世論の圧力を受けた結果として下された可能性があると述べ、撤退した企業はまた戻ってくる可能性が高いとの見方を示した上で、「個人的にはそうした機会を残しておきたい」と述べました。

ノリリスク・ニッケル社はパラジウムや高品位ニッケルの世界最大の生産者で、プラチナや銅に関しても主要な生産者だそうで、今のところ、ノリリスク・ニッケル社やその主要製品は今のところ西側諸国の制裁対象になっていませんけれども、将来はどうなるか分かりません。

西側の経済制裁に対抗するプーチン大統領の政策は、ロシアの富豪に眉を顰めさせる事態を引き起こしているようです。

また、国民生活もルーブルも大暴落、インフレ、金利上昇に見舞われ、ロシアの大手銀行が国際銀行間通信協会(SWIFT)の決済ネットワークから排除されました。

それでも、多くのロシア人は過去30年間に取り付け騒ぎを何度も経験しているためか、2月25日に銀行システムから約1兆4000億ルーブル(約1兆6400億円)が引き出された後は、落ち着きを取り戻しているようです。


4.プーチンと一蓮托生のオリガルヒ


果たしてプーチン政権は崩壊するのか。

これについて、10年間ロシア外交に携わった元外交官の亀山陽司氏は、ニュース番組『ABEMAヒルズ』の取材に次のように答えています。
――今回のウクライナ侵攻、ロシア国民はどう考えている?

「今回ロシアがウクライナに侵攻したということで、2014年のクリミアとロシアが併合したときとは異なり、ロシア国内でも批判や疑念がかなり高まっている。ロシアとウクライナは人の行き来も多いので、親戚や友人がウクライナにいるということがある。そのことから、ロシア国民にとっても受け入れがたい面があるというのは否定できない。一方で、プーチン大統領の発言が正しいと思っている人もかなり多いと考えている。というのも、ロシア社会で、プーチン大統領への批判より、アメリカに対する不信感のほうがはるかに高いという事情がある。『ウクライナとは戦争したくない。でも背後にいるアメリカやNATOを許せない』こういった意見も影響していると思う」

――経済制裁などで、世界から孤立に向かっているロシア。ロシア国民は、現実として受け止めている?

「ロシア人というのは、愛国心も強く、社会も非常に保守的。そういう中でロシアがアメリカと対峙していることやNATOの統合拡大によって、ロシアの安全保障が脅かされていることをプーチン大統領は、数度にわたって長い演説でロシア国民に語りかけている。この内容をそのまま受け止めている層が一定数いる。そういう人たちからすると、制裁を受けている現状がプーチン大統領の正当性を図らずしも証明してしまっているという側面もある」

――世界はプーチン大統領への批判が高まり続けているが、プーチン政権の内部崩壊はありえる?

「私は懐疑的だと思っている。ロシアにおけるプーチンの統治システムというのは非常に強固。ソ連が崩壊したときに、ロシアは経済的にも社会的にも不安定だった。そうした中で、プーチン大統領は、ロシアを復活させた功績がある。多くのロシア国民は、そのことをよく理解している。さらにロシアの政治体制を見てみると、日本やアメリカなどと違い、野党が非常に弱く、そもそも政党政治がうまく機能していない。その中で、プーチン大統領を支持している軍や警察、諜報機関などの実力部隊(シロヴィキ)に加えて、新興財閥(オリガルヒ)の元で、巨大な官僚機構が行政を執行しているという構図になっている。この構図から、短い期間で内部崩壊が起きることは考えられない」

――オリガルヒが、プーチン大統領に提言することで踏みとどまることは考えられるか?

「プーチンが大統領になったときに、ロシアの政界に批判的なオリガルヒは追い出された。現在残っているオリガルヒは、プーチン大統領を掲げて生き残っているというところもある。なので、彼らがプーチン政権に批判的な態度を取ったり、プーチン大統領の方向性を変えようとすることは、自らの立場を弱めたり、生き残れなくなる危険性もある。オリガルヒの生存基盤というのは、プーチン政権自体にあるとも言える。プーチン大統領の中では、『ロシアあってこそのオリガルヒ』というわけで、ロシアの安全を守るという大義の前では、オリガルヒの権力は限定的なものになる」

――プーチン大統領の歴史観についてはどう考えている?

「第2次世界大戦の結果を神聖視している。彼の頭の中では『第2次世界大戦は、過ぎ去った過去』ではない。第2次世界大戦でウクライナは、ナチスに占領されている時期がある。また、ウクライナの民族主義者も武装勢力があり、ソ連の赤軍と戦っていた。なので、ソ連の歴史観を引き継いでいるプーチン大統領からすれば、『ウクライナの民族主義者は、ナチの手先である』というふうに見ている節がある」

――何かのきっかけで終戦とするか、ロシア内部では決まっているのか?

「やはりロシア内部の事情となると難しい。一方で、停戦協議がまとまりはしないものの続いている。ロシアは今キエフを包囲しようとしていて、アメリカなどからは、『キエフ陥落は間近』とみられている。そうなった場合、アメリカとイギリスは、ゼレンスキー大統領を亡命させ、亡命政権を樹立させようという計画を模索している。これは難しいところで、ゼレンスキー大統領がキエフ陥落などの状況によって、プーチン大統領の要求に屈服したとなると、ウクライナを支援してきたNATOやアメリカなどは、今までやってきたことを失った上で、介入するきっかけを失ってしまう。そうなるくらいなら亡命政権を樹立して、引き続きロシアとの対立を続かせるという可能性もあるとみている」

――ロシアは、日本を非友好国に認定したことがわかった。岸田総理は北方領土を日本固有の領土と表現を変えたが、この先の日本とロシアとの関係はどうなるか?

「日本は、安全保障上や経済的な問題でロシアを重視してきた。また、歴史上でも無視できない隣国である。一方でこういう自体になった今、日本における選択肢は限られていて、現政権が言っている通り、G7と連携してやっていく選択肢以外ない。その中でロシアとの関係を狭めていかざるを得ないというふうに思う。その中で、北方領土の交渉をする機会も減っていく局面にあるというのも言わざるを得ない」
このように、ロシア国民はプーチン大統領への批判より、アメリカに対する不信感のほうがはるかに高く、国内のオリガルヒ(新興財閥)もプーチン大統領と一蓮托生の関係にあることから裏切る可能性は低いと述べています。


5.プーチン政権は内部崩壊しない


また、ロシア経済やオリガルヒに関する論文や著作を発表している、アメリカのサウスカロライナ大学のスタニスラフ・マルクス准教授は、オリガルヒがロシア社会に与える影響について次のように述べています。
ジェフ・ベゾス氏やイーロン・マスク氏のように、一般人とは比較できないくらいの資産を持つ人はたくさんいますし、アメリカでは経済格差も大きな問題となっています。ただし、ロシアと大きく違うのは、ベゾス氏やマスク氏といった実業家はゼロからのスタートで、世界的な企業を作り上げたということです。大統領やその側近らによって、成功を確約された状態でビジネスをしてきたわけではないのです。これがロシアとの大きな違いです。ロシアではベゾス氏やマスク氏のような実業家が誕生するのは、構造的に非常に難しいのです。

ロシアでもウクライナでも、ソ連崩壊後に国営企業の民営化の過程で、うまくチャンスを手にした者がオリガルヒになりました。ロシアでは90年代にオリガルヒが莫大な資金力を背景に政治に介入するようになり、それぞれの事業に有利な法案を通過させ、自治体のトップになる人物もいました。この構造を変えようとしたのがプーチンですが、結果的に自らにとって都合のいいオリガルヒを残すだけになりました。ウクライナではゼレンスキー大統領が誕生するまで、オリガルヒに対する規制などがほとんど行われてきませんでした。前任のポロシェンコ大統領やティモシェンコ元首相は有名なオリガルヒです。

オリガルヒが結束して反プーチンの姿勢を明確にしたとしても、それがすぐにプーチン政権の終わりを意味するとは思えません。また、プーチン大統領に背を向けることは、彼らの将来の終わりも意味するため、リスクが非常に高いのです。現実的ではないですね。ただし、確率としては非常に低いですが、オリガルヒではなく、軍のような大きな力を持つ組織がプーチン大統領に背を向け始めた場合は、話は大きく変わってきます

私はソ連崩壊後のロシアとウクライナが『ピラニア資本主義』の犠牲になってきたと考えています。政府や自治体、民間企業がまとまった予算を出しても、オリガルヒや官僚がピラニアのように集まり、中抜きや賄賂という形で食い荒らしていくのです。ピラニアに食い荒らされた社会が30年も続いているのです。
もう20年以上も前の話になりますけれども、プーチン大統領は大統領就任から2ヶ月ほどたった2000年7月に当時のオリガルヒ21人を集め、プーチン政権の経済政策などについて話し合いを行いました。

けれども、その実態は、今後の経済政策などではなく、プーチン大統領に忠誠を誓うかどうかの踏み絵をさせ、残す者と排除する者を決めるものだったとされています。

冒頭で取り上げたニュースサイト「メドゥーザ」は、プーチン大統領とオリガルヒの関係について、「オリガルヒはロシアの実権を握ったことはない。彼らは完全にプーチンの支配下にあり、彼は常に彼らを現金輸送車のように扱ってきたのだ」と述べています。

他のメディア報道では、プーチン政権は内部崩壊するのではないかという見方も報じられていますけれども、筆者は、亀山氏やマルクス准教授の見解を見る限り、相当な何かがない限り、プーチン政権の内部崩壊の可能性は低いことになります。

ただ、気になるのは、ロシア兵の死傷者の多さです。死亡に至っては数千人とも一万人にも及ぶとも言われています。ロシア国内では戦争反対を唱えた一般人をどんどんしょっ引いて押さえつけていますけれども、いつまでそれでもつのか。

経済制裁がつづけは、国民生活に影響もでてきます。

それを考えると、たとえ、プーチン政権が揺らぐことがなかったとしても、国民からの支持を失ってしまう可能性は十分あるのではないかと思いますね。


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