ゼレンスキーの連邦議会演説の余波

今日はこの話題です。
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1.ゼレンスキー大統領のオンライン演説


3月17日、世界各国でオンライン演説を行っている、ウクライナのゼレンスキー大統領が、日本政府に対し「国会でオンライン形式で演説を行いたい」と申し入れたことが分かりました。

この日、ウクライナのコルスンスキー駐日大使は国会を訪れ、衆参の議長に対し、ゼレンスキー大統領の国会での演説を正式に申し入れしました。

関係者によると、コルスンスキー大使は両議長との面会で、およそ18万人の日本人がウクライナへ寄付金を寄せたことに触れ、ゼレンスキー大統領の演説では感謝を伝えたいとしたほか、さらなる支援を訴えたいと述べました。

両議長とも実現に向け前向きな回答だったということですけれども、オンライン演説は日本の国会では前例がなく、また本会議場にはリモート演説用の設備がないため、大型モニターを持ち込むことや議員会館の会議室を使用することなどが検討されているとのことです。

翌18日には、自民党と立憲民主党の国対委員長が会談し、ゼレンスキー大統領の国会演説を早期に実施する方針で一致。会談後、自民の高木国対委員長は記者団に、「速やかに、なるべく早くやるということが肝要だ」と述べ、立憲の馬淵国対委員長は「『週明けの出来るだけ早いタイミングで』と話した」としています。

今のところ、衆参両院は国会内の会議室で23日に実施することを決めたと複数の与党幹部が明らかにしています。

ゼレンスキー大統領のオンライン演説実現には、岸田総理の意向も少なからず働きました。

17日の参院予算委員会で、立憲民主党の蓮舫参院議員が、ゼレンスキー大統領のアメリカ議会でのオンライン演説について触れ、日本の国会での演説について、岸田総理の認識を問いただしていたのですけれども、この質問に岸田総理は「ゼレンスキー大統領が世界各国に向けて協力を求めている……日本においても国会でゼレンスキー大統領の演説をリモートで行いたいという意向がウクライナ側から示されている……技術的な問題等があるとは承知しているが、是非国会で議論していただき、前向きに対応していただければと政府の立場からも考えている」と答弁しています。


2.共産と立憲が及び腰だった理由


けれども、ここまですんなり話が決まった訳ではありません。

16日、立憲民主党の泉健太代表は「他国指導者の国会演説は影響が大きい」とし、演説実施は首脳会談と共同声明を出すことが絶対条件で、演説内容もあくまで両国合意の範囲」にすべきだとツイートしていました。

この発言に、共産党の穀田恵二国対委員長は「一つの見識だ」と評価してみせたのですけれども、「ロシア寄りなのか」、「国際的な信用を損失する」などの批判も多数寄せられました。すると、翌17日、立憲の小川淳也政調会長は17日の記者会見で「形式的に首脳会談や共同声明を必須条件とすることに意味はない。下準備は必要だ」と釈明に追われています。

なぜ、国会で演説することに首脳会談が必要で、両国合意の範囲にしなければならないのか、よく分からなかったのですけれども、これについて嘉悦大の高橋洋一教授は、「もし万が一、①核を廃棄した、②同盟がない、③軍事力が弱いから隣国に侵略されたと演説されたら、立憲・共産党は真っ青だよ」とツイートしています。そして「①核を廃棄→核シェリングの議論をするな。②同盟がない→安保法制・集団的自衛権なんていらない。③軍事力が弱い→防衛費を削れというのが立憲共産党だよな」と付け加えています。

なるほど、自らのスタンスを否定されてしまうから、わざわざ「両国合意の範囲」と前もって言わせないようにしていたのだな、と妙に納得してしまいました。

批判されて、ゼレンスキー大統領のオンライン演説支持に回った、立憲ですけれども、未だに小川淳也政調会長が「下準備は必要だ」と述べているところをみると、まだ未練があるというか、言わせないように工作しようとしているのではないかという疑いを捨てきれません。


3.ゼレンスキーのパールハーバー発言


これまでゼレンスキー大統領は、日本以外のG7先進国でオンライン演説を行ってきました。

8日には、イギリス議会でオンライン演説を行い、16日にアメリカ、翌17日にはドイツでオンライン演説を行っています。

ただ、その中で、とりわけアメリカでの演説に対し日本で賛否両論が沸き起こっています。

件のオンライン演説で、ゼレンスキー大統領はロシアを強く非難した上で「1941年の真珠湾攻撃を思い出してほしい。空からの攻撃で街が戦場となった……9月11日を思い出してほしい。2001年、悪があなたの都市、独立した領土を戦場にしようとした恐ろしい日、罪のない人々が空から攻撃された日、そう、誰も予想していなかったように、あなた方はそれを止めることができなかったのだ……我が国は毎日同じことを経験しているのだ。今この瞬間も、3週間前から毎晩、マリウポリやハルキフなどウクライナの様々な都市で、ロシアはウクライナの空を何千人もの人々の死の源に変えてしまったのだ」と述べたのですね。

勿論、アメリカの感情に訴えるには一番良かったかもしれませんけれども、真珠湾が9.11と同列に扱われた訳ですからね。真珠湾では民間人を狙っていないことは明らかになっています。

この発言に対し一部からは反発の声が噴出。ネットでは、これまで応援していた人からも「もう冷めた」といった批判的なコメントが多数寄せれました。高須クリニックの高須院長は「ゼレンスキー大統領が嫌いになった。アメリカ人のウケ狙いで真珠湾攻撃を引き合いに出して日本国民に恥をかかせてる(怒)」とツイート投稿した。

一方、ジャーナリストの江川紹子氏は「ゼレンスキー大統領が米議会演説で真珠湾攻撃を挙げたことに反発する人がいるが、日本での演説が実現したら、米軍による各地への空襲に言及するのでは?シベリア抑留とか北方領土とかもだけど。各国の人々の心に刺さる話題やことばを盛り込み、共感を呼び、今以上の支援を引き出すための演説なのだから……ゼ氏はメディアを味方につけ、世界に支持者を増やしている分、さらに巧み。一方、国営テレビで専ら国民向けに演説という、古いコミュニケーションを続けるプーチン大統領。この対比がすごい!」称賛しています。



4.事実を知らない彼に訂正を


他方、ゼレンスキー大統領の認識が間違っているのは普通のことだという指摘もあります。

ウクライナ人政治学者のグレンコ・アンドリー氏は「他国の首脳、まして、ヨーロッパの国の首脳に、大東亜戦争について正しい理解を期待するのは無理な話です。日本が強くなって、これから世界における大東亜戦争のイメージを変えればいいです。それまで、間違った認識の持ち主を叩いても仕方ない。……間違った認識に基づいて、間違った発言をしたゼレンスキーに対して、日本は外交筋で訂正を求めるべきです。事実を知らない彼には、正確な認識を持つ貴重な機会になると思います。同時に、ヨーロッパ諸国の首脳の殆どはこういう認識であることも理解すべきです。日本は積極的な対外発信を行うべきです」とツイートしています。

要するに対外発信を怠っていたからだというのですね。まぁ、このあたりが公平な見方かもしれません。ただ、一国の大統領がそれを公に発言した以上、知らなかったでは済まされません。それなりの責任が発生します。日本政府はウクライナに対し抗議と訂正を求めるべきです。

これについて、立憲の松原仁・衆院議員は、「アメリカ議会での『パールハーバー(真珠湾)』発言について、日本側は事前調整で大統領に正しい認識をレクチャーするべき。」とツイートしていますけれども、それこそ立憲の小川政調会長が言った「下準備」とやらでレクチャーすべきかと思います。

また、先に取り上げたグレンコ・アンドリー氏は、ウクライナ政府関係者と思われるフェイスブックアカウントに訂正を求めるコメントをしてくださったようです。まぁ、これがゼレンスキー大統領に伝わるかどうかは分かりませんけれども、日本の国会でのオンライン演説では、どのような例えを持ち出してくるかには注目したいと思います。




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