トヨタを止めたサイバー攻撃

今日はこの話題です。
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1.トヨタ工場停止


2月28日、トヨタ自動車は3月1日に国内の全14工場28ラインの稼働を停止すると発表しました。

理由はトヨタ車の部品をつくるサプライヤーがサイバー攻撃を受け、部品供給を管理するトヨタのシステムが影響を受けたためです。トヨタがサプライヤーのシステム障害で全工場を止めるのは初めてのことです。

サイバー攻撃を受けたのはトヨタの主要なサプライヤーの1社で、樹脂部品を手掛ける小島プレス工業です。小島プレス工業は「サイバー攻撃とみられるきっかけでシステム障害が生じたのは事実」としています。

小島プレス工業のサーバーがダウンしたのは2月26日の21時すぎ。翌27日の昼にかけて、社内のすべてのサーバーを停止したのですけれども、28日夜23時でも状態は変わらず、社内メールは見れず、企業WEBサイトもダウンしたままです。

この事態にトヨタからは情報システムやBCP(事業継続計画)担当者など数名が応援にかけつけ、懸命な復旧活動をしているとのことです。

直接取引をする1次供給先だけで約400社を抱えるトヨタは「かんばん方式」と呼ばれる部品を必要最低限しか持たなくて済む生産管理システムを築いており、多くのサプライヤーがこのシステムにつながっています。

けれども、トヨタのような大手はいざ知らず、中小サプライヤーが数多くのシステム要員を抱えられるはずもありません。

従業員数1651名の小島プレスでも、情報システム要員は30人を超える程度なのだそうです。

26日夜に感染を確認し27日に遮断したということですけれども、遮断迄の間に小島プレス工業以外のサプライヤーに感染が広がってしまっている可能性も否定できません。

既に部品会社がデータを管理する暫定の仕組みを立ち上げ、トヨタは2日からすべての国内工場の稼働を再開すると発表しています。

流石、トヨタ。どこかの銀行とは違います。


2.ランサムウェア


サイバー攻撃を受けた小島プレス工業ではウイルスへの感染のみならず、脅迫メッセージも確認されたそうなのですけれども、警察関係者によると、サイバー攻撃はランサムウェアによるものとみられているようです。

ランサムウェアとは、身代金を意味する「Ransom」と「Software」を組み合わせた造語で、暗号化などによってファイルを利用不可能な状態にした上で、そのファイルを元に戻すことと引き換えに身代金を要求するマルウェアを指します。

2017年には、ランサムウェアの一種である「WannaCry」が世界中のコンピューターに感染し、大規模な被害をもたらしました。WannaCryの感染によって工場が操業停止に追い込まれた企業が複数あるほか、イギリスでは国営医療サービス事業を行っているNational Health Serviceが被害を受け、手術の中止や診療が行えないといった事態が発生しています。

今や、世界中でサイバー攻撃が行われています。

2月20日、アメリカの物流大手エクスペダイターズ・インターナショナル社が、サイバー攻撃によりシステムの大半が停止したと明らかにしました。

また、先週、アメリカのチップ設計会社エヌビディアもランサムウェアと思われる攻撃を受け、今年1月にはMabanaftとOiltankingが、昨年12月にはHellmann Worldwide Logisticsが攻撃されています。


3.バッテリーEV戦略


では、一体だれがトヨタにサイバー攻撃を掛けたのか。

最初に思い浮かぶのは、やはりロシアでしょう。ロシアのインタファクス通信は、プーチン大統領は西側諸国によるロシアへの経済制裁に対して、報復制裁を命令したと伝えています。

2月23日、岸田総理はロシアによるウクライナ東部の親ロシア派地域の独立承認を踏まえ、この地域に関連するロシア関係者への資産凍結や渡航制限、輸出入禁止と、ロシア国債や政府機関債など「ソブリン債」の発行・流通も禁じる制裁を発表しました。

また、28日にはロシア中央銀行との取引を制限する追加制裁を発表しています。

実際、ロシアのガルージン駐日大使は、日本がロシアへの追加制裁を発表したことに対し「日本の行動に対して、我々は応答する。恐らくは、重い対応になるだろう」と報復を示唆する発言をしています。

それ以外に考えられるのはEUおよび中国です。

昨年12月14日、トヨタは「バッテリーEV戦略に関する説明会」を行い、バッテリーEV専用車としてbZシリーズを発表しています。

これまで、トヨタは、EVに否定的でカーボンニュートラルに消極的な企業だと言われ、一部では、カーボンニュートラルはEUと中国の陰謀によるトヨタ潰しだという声も囁かれていたのですけれども、そのタイミングでのトヨタのEV戦略発表に、どこぞの国が脅威を覚えてもおかしくありません。

特に、今のタイミングなら、サイバー攻撃してもロシアのせいにも出来ますからね。可能性としてはゼロではないと思います。




4.多国間サイバー防護競技会


3月1日、陸上自衛隊は、サイバー攻撃に対処する能力を各国で競い合う、「多国間サイバー防護競技会」を主催しました。

日本からは陸上自衛隊の「サイバー防護隊」のチームなど所在駐屯地・基地等からリモートにて参加し、海外からは、オーストラリア、フランス、アメリカ等あわせて6ヶ国が参加しました。

競技は、攻撃された状況を与え、その事態を解明するとともに、対策を案出するる防護演習形式で実施されたようです。

陸自の足立吉樹・幕僚監部指揮通信システム・情報部長は、「多国間の安全保障協力の枠組み、サイバーという分野ですが、まさに新しい分野でこういったことをやっていけるということも、意義あることではないかと思っております」と語っていますけれども、サイバー攻撃に対するノウハウを蓄え、国内企業を守るために活用していくことを期待します。


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この記事へのコメント

  • 白なまず

    お久しぶりです。白なまずです。仕事の都合で関東へ引っ越しました。半導体の有無が国の存亡に関わると思い立ち、老体に鞭打って半導体設計者に復帰しました。DXの加速で工場やサプライチェーンの電子化とビックデータ収集が加速していて、皮肉な事に半導体設計者が少なくなった現在、半導体設計が増加し、これにAI化なども加わり半導体設計の難易度も上がってます。職場の平均年齢は定年間近のエンジニアばかりですが日本の老人エンジニアは元気な人が多く中国、韓国へ流れた人材とは比較出来ない程の優秀エンジニアばかり生き残っています。半導体は最先端プロセスじゃなと商売できないと思われるかもしれませんが、スーパーコンピューターやPCなど処理能力が差別化のデバイスはそうですが、自動車や工場で使われるセンサーとか日本製品が得意とする範中の半導体はそこまで必要なく、既存のラインで十分で、かなり金額の半導体を占めています。ですから、日本の半導体はこれからも不滅です。特にアナログ電子を得意とする日本の半導体はハイブリッドやEVでは他国を圧倒しています。問題は情報通信、AI分野ですね、、、ここは台湾、米国と連携です。そして最先端プロセスに投資するより暗号通信とかOS・ソフトウェアの強化が重要です。今後のネットワークのセキュリティ確保は個人認証の仕組みと暗号通信、非クラウド化が独自の技術が重要で此れがで出来ない国はサイバー戦争で負けると思います。
    2022年03月05日 23:02
  • 日比野

    白なまずさん。こんにちは。

    ご無沙汰してます。お久しぶりですね。

    御健勝そうでなによりです。

    半導体設計の現役に復帰されたとのことで、日本にとってはよいことかと思います。
    ご指摘のとおり、世の半導体は最先端プロセスのものばかりではないですからね。

    家電やその他に乗るようなものレベルであれば、一世代、二世代前でもまだまだ使えます。

    TSMCが熊本に工場を作りますけど、もしもの台湾有事に備えてのリスクヘッジではないかと考えています。

    今回の御復帰で関東に引っ越されたとのこと。これからの益々の御活躍をお祈りいたします。

    今後ともよろしくお願いいたします。
    2022年03月06日 09:54

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