計画通りに進むロシア軍の軍事作戦

今日はこの話題です。
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1.プーチン・マクロン会談


3月3日、ロシアのプーチン大統領はフランスのマクロン大統領と電話会談し「いかなる状況でもウクライナにおける軍事作戦の目的を達成する」と言明したとの声明をロシア大統領府が発表しました。

声明では「ウクライナ政府が交渉を長引かせ、時間稼ぎをするようであれば、ロシアはウクライナに対しさらに要求を突きつける」とし、ウクライナでの「特殊軍事作戦」は「計画通り」進んでいるとした上で、ロシア軍が首都キエフを爆撃しているという情報は「反ロシア偽情報作戦」で、ロシアは民間人の保護に尽力していると強調しています。

フランス政府高官によると、会談でプーチン大統領はマクロン大統領に対し、外交であれ武力であれ、ウクライナの中立化と非武装化を目指すという考えを改めて強調したとのことで、「プーチン大統領の発言から安心感は得られなかった」としています。

これに対し、マクロン大統領はプーチン大統領に「自分にうそをついている……自国に多大なコストを負わせることになる。ロシアは孤立、弱体化し、長期間にわたり制裁下に置かれる」と牽制したそうで、会談を受け、フランス大統領府は「プーチン氏は目的達成を決心している。ウクライナ全土の支配を目指していて、今後、状況がさらに悪化する」という見解を示しています。

会談でのプーチン大統領の発言からは、政治目的の達成の為ならば、武力でも外交でも何でも使うという意思を感じさせます。


2.軍事作戦は計画通り進んでいる


プーチン大統領はウクライナでの"軍事作戦"は計画通り進んでいると話したようですけれども、実際のところはどうなのか。

これについて、ウクライナ国防省はロシア軍部隊から押収したウクライナ占領作戦資料を公開しました。

国防省の説明によるとウクライナ軍の攻撃でパニックを起こしたロシア軍部隊は機密資料を残したまま逃亡し、ウクライナ軍は第810独立警備海軍歩兵旅団(黒海艦隊)に所属する戦術大隊が持っていた作戦命令書、コールサイン表、指揮管制用コード表、秘密コード表、人員リスト表など入手したのだそうです。

この資料を分析した国防省は「機密資料を所持していた敵戦術大隊は作戦初日にロシア海軍の揚陸艦でアゾフ海に面したザポリージャ州という小さな集落に上陸、別の部隊と合流して最終的に州都メリトポリの封鎖及び占領に加わる予定だった」とし、作戦承認が「2022年1月18日」で、作戦開始日が2月20日だったことやウクライナ占領に「15日間」を予定していることを明かしています。

実際の作戦開始が2月24日ですから予定から4日遅れであるものの、作戦承認が1月18日にされていたことは注目に値します。

アメリカのバイデン大統領が例の「小規模な侵攻(minor incursion)」発言をしたのが翌19日であることを考えるとあるいは、この作戦承認されたことも諜報活動で掴んでいた可能性があるからです、

プーチン大統領が述べた「計画通り」というのが事実であれば、今のウクライナ侵攻も、4日シフトさせて3月10日には終わる計画だということになります。

ただし、プーチン大統領は先月、ロシア軍の参謀本部長を解任したという情報もあることを考えると、この作戦計画も既に変更になっている可能性もあります。

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3.軍事的に最悪の状況だ


2月28日、アメリカの衛星運用会社マクサー・テクノロジーズが撮影した衛星写真で、キエフの北で64キロにわたる車列が確認されたとロイター通信によって報じられました。

国防総省の高官によると、ロシア軍はウクライナ北部からキエフに向かっており、数日以内に、キエフを包囲して複数の方向から圧力をかける狙いとみられています。

けれども、これについて、イギリスの、デイリー・テレグラフ紙は「ロシア軍は軍事的に最悪の状況だ」と指摘しています。

デイリー・テレグラフ紙によると、ロシア軍上層部は侵攻開始と同時に首都近郊のホストメル空港をヘリに分乗した特殊部隊、スペツナズで強襲、IL-76で空挺部隊を供給して戦力を増やしたのち、キエフ中心部に侵攻してゼレンスキー大統領など政権主要メンバーを拘束、現政権を転覆させて親ロシア政権を樹立する計画だったらしいのですけれども、実際はスペツナズを乗せたヘリとIL-76が撃墜されホストメルの確保に失敗しました。

さらにホストメル空港の滑走路が大きなダメージを受けた影響で、航空輸送が難しいと判断。首都攻略は地上からの侵攻に切り替わったのですけれども、ここでも制空権の確保に失敗。そこに、西側諸国が供与した対戦車ミサイルを担いだウクライナ軍兵士が後方に浸透して車列を襲撃して焼き払った為、後ろから次々とやって来る部隊は先にも後にも進めなくなって、長大な車列が完成してしまったというのですね。

イギリス軍情報部のフィリップ・イングラム元大佐は「制空権が確保されていない交戦地域のど真ん中で部隊が立ち往生するなんて軍事的に最悪でカモにされるだけだ。ウクライナ人はロシア軍の補給部隊の位置を完全に把握しているので大軍が態勢を立て直すのを全力で阻止するだろう。ロシア軍はこれほど大規模な部隊を一度に南下させるべきではなかったんだ」とコメントしていますけれども、制空権が確保されていない状況でキエフに乗り込んでも、それこそ無人機や榴弾砲などの格好の標的となってしまいます。更に、現地に留まり続けても補給部隊をウクライナ軍に削られて消耗していく可能性もあります。

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4.弱くなったロシア軍


2月27日、アメリカの国防総省の高官は、ロシア軍は士気の低下と燃料・食糧不足に悩まされているウクライナの一部のロシア軍は、戦闘を避けるために、集団降伏したり、自分たちの車両を破壊したりしていると発表しました。

国防総省高官によると、ロシア軍の大部分は、訓練が不十分で、総攻撃に備えていない若い徴兵兵であり、ロシア軍は戦闘を避けるためか、意図的に車のガソリンタンクに穴を開けたケースもあると述べています。

更に、ロシア軍は燃料や食料、スペアパーツの不足に直面し、キエフに向かう機甲部隊を率いるロシア軍司令官は、戦闘計画を「再編成して再考」する事態になっているとしています。

国防総省当局者は、ウクライナ国境に配備されている15万人以上のロシア軍の80%が戦闘に参加していると述べたそうですけれども、いくら兵と武器があっても、食糧・弾薬が不足してしまったら、計画した作戦行動など取れる筈もありません。

自民党の青山繁晴参院議員は、ロシア軍は昔に比べてかなり弱くなっていて、中国軍の10分の1くらいになっていると述べていますけれども、本当にそうだとすると泥沼化になりそうな予感さえしてきます。

それでも、ロシア軍はじわじわと進軍を続けているようです。




5.インフラ破壊に着手


既に、ロシア軍は空爆やミサイル攻撃など激しい攻撃を始めています。

3月3日、ウクライナメディアは、キエフ郊外のチェルニコゴフで石油施設のタンクがロシア軍の砲撃を受けて炎上している映像を報道しました。それによると、3000立方メートルのディーゼル燃料タンクが燃えたとのこと。

また、ウクライナのクレバ外相は、南部のザポロジエ原発がロシアの砲撃を受け、火災が発生していると明らかにしました。ザポロジエ原発はヨーロッパ最大級の原発とされ、クレバ外相は「もし爆発すればチェルノブイリの10倍の被害が出る」としてロシア側に直ちに攻撃を止めるよう訴えていますけれども、ロイター通信は現地当局の話として、ロシア軍がザポロジエ原発を制圧したと報じています。

更に、北部チェルニヒウでは、学校や集合住宅が空爆にさらされ、33人が死亡したとされ、ロシア国防省は、人口およそ30万人の南部の都市ヘルソンの制圧を発表しています。

このように、ロシア軍はインフラの破壊に手を付けています。

ここで筆者がポイントだと思うのは、なんといっても原発です。

原発を抑えてロシアが電力をコントロールするということは、ウクライナの生活を止められるということです。これは停戦交渉でのカードというか圧力の一つになります。

けれども、それ以上に気になるのは、「核」を人質に取ったという点です。

いつでも原発を破壊できるのだぞと、ウクライナへの脅しになるのは勿論のこと、今後、ロシアが戦術核を使うための前準備にもなる可能性があります。例えば、原発を破壊しておいてから戦術核をつかって放射能が検出されたとしても、原発が壊れたからだと屁理屈を捏ねることだって出来るからです。

また、2回目の停戦交渉で、市民らの避難のための「人道回廊」の設置で合意したと伝えられていますけれども、それとて、今後核攻撃をするとき人的被害を抑えるためのものではないのかと穿ってしまいます。

こうしてみると、ロシア軍は、ウクライナのインフラを破壊して、民間人を難民として国外退去させようとしているように見えます。それによって、ウクライナ民兵を削り取っていく戦略に切り替えたのではないか。

果たしてプーチン大統領がどこに落としどころを設定しているか分かりませんけれども、戦闘および交渉が長期化すればするほど、民間への被害が増えていくことになるのではないかと思いますね。


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