ブログランキングに参加しています。よろしければ応援クリックお願いします。
1.日米豪印の精神
3月3日、日米豪印のクワッド首脳テレビ会談を行いました。クアッド首脳会談は、ロシアのウクライナ侵攻して以来初めてのことです。
岸田総理は会談で「ロシアによる侵略は国際社会の秩序の根幹を揺るがす」と訴え、力による一方的な現状変更をインド太平洋で許容しない方針で一致しました。
会談後、日米豪印首脳共同声明「日米豪印の精神」が公表されましたけれども、一部抜粋すると次の通りです。
1.我々は、豪州、インド、日本、米国の間の4か国協力に対する我々のコミットメントを再確認するために会議を開催した。我々は、多様な視点を持ち寄り、自由で開かれたインド太平洋のための共通のビジョンの下で結束している。「威圧によって制約されることのない地域のために尽力する」とか「領土の一体性を支持する」とか、明らかにロシアのウクライナ侵攻を意識した内容になっていると同時に「インド太平洋」と明示したことで中国をも牽制している内容になっていると思います。
我々は、自由で開かれ、包摂的で健全であり、民主的価値に支えられ、威圧によって制約されることのない地域のために尽力する。
我々は、この積極的なビジョンに向けた我々の共同の取組が2004年の津波という国際的な悲劇から生起したことを想起する。今日、新型コロナウイルス感染症によってもたらされた地球規模の災厄、気候変動の脅威、そして地域が直面する安全保障上の課題が、我々を新たな目標と共に結集させた。日米豪印として初の首脳レベルの会議という、2021年3月12日の歴史的な機会に際して、我々はこの時代を特徴づける課題についての協力を強化することを誓う。
2.我々は、インド太平洋及びそれを超える地域の双方において、安全と繁栄を促進し、脅威に対処するために、国際法に根差した、自由で開かれ、ルールに基づく秩序を推進することに共にコミットする。
我々は、法の支配、航行及び上空飛行の自由、紛争の平和的解決、民主的価値、そして領土の一体性を支持する。
我々は共に協力し、そして様々なパートナーと協力することにコミットする。
我々は、ASEANの一体性と中心性、そして「インド太平洋に関するASEANアウトルック」への強い支持を再確認する。潜在性に満ちた日米豪印は将来を見据える。日米豪印は、普遍的価値に基づき、平和と繁栄を支持し、民主的強靭性を強化することを追求する。
2.世界はどの国が自由や主権のために立ち上がるか見ている
3月5日、アメリカのブリンケン国務長官は中国の王毅外相と電話会談し、ロシアの侵攻を止めるため、中国に対し欧米と足並みをそろえるよう求めました。
ブリンケン国務長官は「世界はどの国が自由や主権のために立ち上がるか見ている……世界はロシアの侵攻を否定するため結束して行動している」と、ロシアに対する圧力を強めるよう、中国に迫ったのですね。
これに対し、王毅外相は、「今日のような事態に発展することは、中国は望んでいない……ウクライナ危機は最終的には対話によってしか解決できない。情勢緩和と政治解決につながるすべての努力を、中国は支持する」と強調した上で「我々はロシアとウクライナの直接交渉を奨励しているが、交渉は順調に進むわけではない。だが、国際社会は平和を生むまで持続的に協力・支持しなければならない……アメリカ、NATO、EUがロシアと対等に対話することも奨励する」と対話を促す一方で、「NATOの東方拡大のロシアへの悪影響を重視すべき」とロシアの懸念に寄り添う姿勢も見せました。
けれども、当初、中国はロシアをがっつり支持し、アメリカを批判していました。
2月23日、中国外務省の華春瑩報道官は記者会見で、「アメリカはウクライナに武器を送り、緊張を高め、パニックを起こし、戦争の可能性を誇張して伝えている……ここで重要なのは、現在のウクライナを取り巻く緊張の元凶であるアメリカがどのような役割を果たしたかということだ」……火に油を注ぎ続けながら、他人が火を消すために最善を尽くしていないと非難するならば、その行動は明らかに無責任で不道徳だ」と、アメリカが緊張を高めたといっていたのですね。
それが3月5日の米中外相会談では、「情勢緩和と政治解決につながるすべての努力を中国は支持する」と一歩、二歩引いて見せています。
3.上海コミュニケ五十周年
2月28日、中国は、ニクソン大統領訪中ならびに上海コミュニケ調印50周年を祝う記念行事を行いました。
記念行事について、中国の趙報道官は10日の記者会見で「上海コミュニケは米中の調印した最初の共同コミュニケであり、これによって両国が互いの関係発展において従うべき原則が確立された。特に『一つの中国』原則は米中関係正常化および両国の国交樹立の政治的な基礎となった。私の知るところでは、米中双方は近いうちに一連の記念行事を催し、共に歴史を振り返り、未来を展望する。関連情報について、中国側は適時発表していく」と述べています。
また、王毅外相もこのイベントに寄せたビデオメッセージで「より質の高い公共財を世界に提供するために、より良い世界の再建構想との調整を検討する用意がある」と、昨年G7が提唱した、世界に質の高い公共財を提供する「ビルド・バック・ベター・ワールド」構想で、アメリカと協力することに前向きな姿勢を示しました。
この「上海コミュニケ」50周年イベントについて、人民日報は「中米『上海コミュニケ』50周年、歴史から経験と知恵を汲み取る」という記事を掲載し、次のように述べています。
今年2月28日は中米「上海コミュニケ」発表50周年記念日だ。50年前のニクソン米大統領訪中と中米「上海コミュニケ」発表によって、長く続いた両国間の対立と隔絶が打ち破られ、中米関係正常化のプロセスが始まった。今日、「上海コミュニケ」の精神に立ち返り、この歴史的文書の体現する「中米双方が相互に尊重し合い、対等に付き合い、小異を残して大同につくという原則を堅持して両国関係を処理する」という重要な共通認識を胸に刻むことは、米国各界が中米関係を正しく捉え、中米関係を実務的・理性的な発展の軌道へ戻す後押しをするうえで、重要な現実的意義を持つ。
アメリカがパニックを引き起こしたなどと批判した舌の根も乾かぬうちに、「上海コミュニケ」の精神に立ち返り双方互いに尊重しなどと、掌返しも甚だしい。
更に中国は、「上海コミュニケ」宣言時、ニクソン大統領一行の送別会として政府主催の晩餐会を開いた上海市の錦江飯店は、50周年記念活動として当時のメニューを再現したそうです。
人民日報の記事といい、錦江飯店のメニュー再現といい、思いっきりアメリカに擦り寄ってきています。
4.出足から躓いた習近平二股外交
これについて、評論家の石平氏は、中国がロシアと距離を取り始めたとし、その原因はロシアへの経済制裁だと指摘しています。
石平氏によると、2月28日の「上海コミュニケ」50周年イベントは、ロシアのプーチン大統領が沈没したときに備えての米中関係改善のキャンペーンであるとし、さりとて、プーチン大統領が勝利する可能性も捨てきれないことから、習近平主席は「二股外交」をしていると述べています。
けれども、石平氏は、中国の「上海コミュニケ」50周年イベントに対し、アメリカは全くの無反応であり、「習近平二股外交」は出足から躓いたと指摘しています。
また、国際政治学者の島田洋一氏も中国の対露姿勢について「中国の本音は『ロシア支持』だろう。ただ、ロシアの暴挙が続けば、国際社会で中国のイメージまで傷つくと考えている。微妙な立場のため、表向きはロシア側にも欧米側にも立たない『両にらみ戦略』を取っている。ウクライナの仲裁要請にも『関係国すべてが自制すべきだ』などと、きれいごとを言うだけだろう……北京五輪直前の首脳会談で、世界各国は『中国=ロシアの味方』という印象を持った。金融・経済面で対露包囲網が敷かれるなか、中国の事業展開も抑えられ、間違いなく一帯一路にもマイナスの影響が出る。結果、国際社会での地位低下も免れない。習氏は、ロシアが孤立する姿に『こんなはずでは…』と痛感していることだろう」と述べています。
ロシアと違って資源輸入国の中国がswiftからの排除など、経済制裁を食らおうものなら、大ダメージです。
5.約束通り台湾に侵攻しろ
アメリカに擦り寄ろうとしている中国に対し、アメリカは、先に取り上げた米中外相電話会談で「世界はどの国が自由や主権のために立ち上がるか見ている」と、こちらに来たいのであれば態度で示せと踏み絵を迫りました。
アメリカも中国という国の本性をようやく自覚したのでしょうか。中国のラブコールを袖にしています。
では、中国は更にアメリカに接近するかというと、それも厳しい。自分から離れていくのをロシアが許さないからです。
ジャーナリストの鳴霞氏によると、習近平主席は3月1日にプーチン大統領と電話会談を行ったのですけれども、その会談でプーチン大統領から「約束通り、早く台湾に侵攻しろ」と迫られたのだそうです。
なんでも、ロシアがウクライナを侵攻し、中国は台湾を侵攻するという密約を結んでいたようなのですね。
3月3日、台湾で、ほぼ全土に及ぶ大規模な停電が発生しました。台湾経済部によると、南部・高雄市の火力発電所の人為ミスによるトラブルが原因とのことですけれども、鳴霞氏は台湾進攻時前に電力網を破壊するのではないか、今回の大規模停電はそのためのテストではないかと指摘しています。
もし、このプーチン・習密約が本当であれば、まさに有事が接近していることになります。
更にいえば、台湾進攻時に、中国が北朝鮮に指令を下して、日本の離島かどこかにミサイルを撃ち込ませることで、日本の自衛隊のリソースをそちらに割かせ、台湾支援の妨害をすることも考えられます。
風雲急を告げるのは目の前なのかもしれませんね。
この記事へのコメント