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1.破れた非核5原則
3月5~6日に掛けて、JNNが行った世論調査で、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が今後、中国による台湾や尖閣諸島での「力による現状変更」に繋がると懸念している人が86%に上ることが明らかになりました。
内訳は「非常に懸念している」が45%「ある程度懸念している」が41%「あまり懸念していない」が9%「全く懸念していない」が2%で、「非常に懸念している」の多さが目につきます。
また、アメリカの核兵器を自国の領土内に配備して共同運用する「核共有」について聞いたところ日本も「核共有に向けて議論するべき」が18%「核共有はするべきではないが議論はするべき」が60%「核共有の議論はするべきではない」が18%となりました。
2月28日、岸田総理は「核共有」について、「非核三原則を堅持するという、わが国の立場から考えて認められない」と述べましたけれども、これについて、高市政調会長は、日曜報道で「『持ち込ませず』に関して、極端なものだと有事でも『領海内の通過もダメ』『上空を飛んでもダメ』という議論まである。それでは「いざとなったら核抑止が全く機能しない」と言ってるのと同じ。有事の時に持ち込ませるという事については、自民党内で議論したいと思う」と述べていますし、また、安倍元総理も「独や伊も核シェアをしている。日本はNPTの加盟国であり、非核三原則もあるが、世界で現実にどう安全が守られているかの議論をタブー視してはならない。かつて中川昭一さんが『議論すべき』と言ったら物凄いバッシングを浴び、議論が委縮している状況だが、議論は行うべき」と述べています。ですから、それなりに議論はされるのではないかと思います。
【非核三原則 1/3】
— ピーチ太郎2nd (@PeachTjapan2) March 6, 2022
高市早苗「今議論すべきは(核シェアより)非核三原則。日本は『持たず』『作らず』は出来ないと考えるが『持ち込ませず』については歴代政権の考えを私は踏襲している。民主党政権時代に岡田克也外務大臣は、緊急時の核持ち込みについて『その時の政府の判断の問題』と答弁」 pic.twitter.com/HV2lQ05HOC
【核の議論】
— ピーチ太郎2nd (@PeachTjapan2) February 27, 2022
安倍元総理「独や伊も核シェアをしている。日本はNPTの加盟国であり、非核三原則もあるが、世界で現実にどう安全が守られているかの議論をタブー視してはならない。かつて中川昭一さんが『議論すべき』と言ったら物凄いバッシングを浴び、議論が委縮している状況だが、議論は行うべき」 pic.twitter.com/16M4tfzweO
また、維新の会の足立康史議員は国会で「露の『力による現状変更』という歴史の岐路にあって、日本だけがタブー視して議論を入口から封じるのは、極めて非民主的で有害。非核三原則に加えて『考えさせず』『語らせず』という非核五原則はおかしい」と述べ、ネットで一部話題を集めていますけれども、日本は「非核三原則」どころか「非核五原則」だと長らく揶揄されてきました。
ただ、今回の世論調査で、核について議論すべきが合わせて78%に達しているところをみると、「非核五原則」のうち「考えさせず」「語らせず」の二原則についてはようやく、破れてきたとみてよいのではないかと思います。
【非核 ”五” 原則】
— ピーチ太郎2nd (@PeachTjapan2) March 3, 2022
足立康史「露の『力による現状変更』という歴史の岐路にあって、日本だけがタブー視して議論を入口から封じるのは、極めて非民主的で有害。非核三原則に加えて『考えさせず』『語らせず』という非核五原則はおかしい」
『ギャァァァ』
”議論しよう”
という意見にすら野次😩 pic.twitter.com/svc2XGhINy
2.憲法9条があればいいというお花畑論
今回の世論調査でも明らかなように、ロシアによるウクライナ侵攻は、日本人に国を護るとは何かについて考えさせる切っ掛けになったことは間違いありません。
共産党の志位委員長が「プーチン氏のようなリーダーが選ばれても、他国への侵略ができないようにするための条項が、憲法9条なのです」とツイートした途端、「外国が攻めてきた場合はどうするのか」などと散々叩かれましたけれども、「憲法9条があれば日本を守れる」という主張が欺瞞であったことが明らかになったのは大きいと思います。
3月3日、安倍元総理は自民党安倍派の会合で、共産党の志位委員長が「プーチン氏のようなリーダーが選ばれても、他国への侵略ができないようにするための条項が憲法9条」とツイッターに投稿したことに対し、「空想の世界だ……問題は武力行使をいとわない国が隣国にある場合、どうなるかではないか」と批判しましたけれども、多くの国民がこれを認識した訳です。
嘉悦大学教授の高橋洋一氏は、国防について、「自国でできることは、防衛力を高めることと、同盟関係を結ぶこと、そして相手国の民主度を高めることだ」と述べ、軍事予算を減らす方針であったドイツですら、GDP比2%に引き上げる方針転換を行ったとし、日本の防衛費のGDP比1%程度では、相手に侵攻を躊躇させるだけの迫力はないと指摘。
更に、核の威嚇に対しては核抑止力でしか対抗できないとして、憲法9条があればいいというお花畑論は、核共有を国民的に議論することで葬るべきだと述べています。当然のことかと思います。
3.日本が核保有する3つの条件
2006年9月、日本政府は非公式に「核兵器の国産可能性について」の内部文書を作成しました。その中で、日本が国産の核兵器を持つまでには、専門家らの試算によると、小型核弾頭試作まで3年~5年、2000億~3000億の予算と技術者数百人の動員が必要になるとされたそうです。
仮に、日本も核武装すると決めたとしても、現状を考えると3年も5年も待つことは出来ないでしょう。従って核共有というのは現実的な選択ではないかと思います。
ただ、ようやく非核五原則の中の「考えさせず」「語らせず」の二原則を止める止めない云々という状況で、どうなったら、核保有するという国民的合意が出来るのか。
これについて、国際政治学者の三浦瑠璃氏が、2017年に日本が核保有する3つの条件というのを論じています。
それは次のとおり。
・核保有してもアメリカと敵対しないという「安心感」このうち「韓国による核武装」について、三浦氏は、韓国が独自の核武装に踏み切ることで、「韓国より格上だ」という日本人のプライドが核保有論議を進ませると述べているのですけれども、筆者にはちょっと理解できません。
・北朝鮮が実際に核攻撃してくるかもしれないという「十分な恐怖」
・韓国による核武装
あるとすれば、プライドではなく、韓国の反日を下地とした核攻撃してくるかもしれないという「十分な恐怖」ではないかと思います。
4.巻き込まれ論と見捨てられる論
三浦氏が挙げる日本が核保有する3つの条件について、筆者はつまるところ、核保有してもアメリカと敵対しないという「安心感」と、他国が核攻撃してくるかもしれないという「恐怖」の2点に集約されると述べましたけれども、誤解を恐れずにいえば、前者の「安心感」というのは、有事の際にアメリカは日本を見捨てるかもしれないという疑い又は恐れの裏返しではないかと思います。
アメリカが日本を見捨てるのであれば、日本が核武装に向かうのは必然であるし、それに反対することはできないだろうという理屈です。
2月4日、アメリカのトランプ前政権で、国家安全保障問題を担当したボルトン元大統領補佐官は、アメリカの民間団体・米韓問題研究所主催のオンラインイベントで講演し、北朝鮮の核開発が進んだ場合に日本で核武装論が浮上する可能性を指摘。「中国は日本の核武装を望まないはずだ。北朝鮮の非核化に向けて行動するようアメリカから働きかけるべきだ」と述べています。アメリカからみれば、こういう見方が普通だと思います。
日本も国防体制を充実させるべきだという話がでると、必ずといっていいほど、あっち界隈から反対の声として上がるのが「戦争に巻き込まれる」論です。
2015年の安全保障関連法制定の際、「日本は自国の安全に関係のないアメリカの戦争に巻き込まれる」などという反対論が出ていました。
これについて、2019年2月の予算委員会公聴会で、立憲民主の本多議員が公述人として呼ばれた三浦瑠璃氏に質問しています。そのやり取りを一部引用すると次の通りです。
○本多委員 この問題は本当に深刻だと思います。もう進めちゃって、これだけ金融緩和が進んでいるものを、どうやめていくのか、やめられるのか、その議論はしっかりと国会でもしていかなければいけないと思っています。ありがとうございます。このように、三浦氏は尖閣有事で、アメリカが
ちょっと三浦先生にも一問質問させていただきたいと思います。
きのう委員部から、先生の、最近、これは月刊誌に書かれた資料を読ませていただきました。
きょうの説明とはちょっとだけ離れるんですけれども、私にとっては非常に関心のある安全保障に関するポイントなので、質問させていただきます。
先生は、「およそ国家で抑止を考えない国はありません。しかし、これに対して「巻き込まれ」の懸念で反論しようとする人びとがいます。「巻き込まれ」の懸念とは、同盟国の戦争や武力行使に巻き込まれてしまう懸念のことで、現在でいえば、米国が北朝鮮の核施設を先制攻撃した場合、日本にある米軍基地や日本の国土・国民そのものが北朝鮮の反撃ターゲットとなってしまうリスクを指します。あるいは、」ここまでのところは、昨年までの状況ではあり得たんだけれども、最近ちょっと低まっているかなと。
ここからはまだあると思っているんですが、「あるいは、米国が台湾海峡において中国と武力衝突し、それがエスカレートしていって米軍基地を置く日本も攻撃されるというリスクです。」と。この巻き込まれの懸念。割と私は巻き込まれの懸念を強く感じる方なので、ここ、ぴくっとひっかかったんですね。
先生、その後に、「しかし、考えていただければすぐに分かるように、現状のリスクはむしろ拡張主義をとる中国や、核武装に加えて挑発を繰り返してきた北朝鮮から万が一攻撃を受けたときに、日本や韓国が見捨てられる懸念の方です。」と。
もうこれ、二つのリスクを比較して、巻き込まれよりも、何らかのことを北朝鮮や中国がしかけてくる危険が高いと。そのときに、アメリカに見捨てられる危険をちゃんと見ろよという、いい御指摘をいただいていると思うんですが、実はここで先生に質問したいのは……
○野田委員長 本多さん、質問時間が終了しているので、簡潔にお願いします。
○本多委員 両方リスクだと思っているんですよ。先生、後者の方が高いと言っているところ、この理由だけ説明してください。
私は両方のリスクがあると思っているんです。だから、両方のリスクに備えなきゃいけないんだけれども、後者の方が高いと先生が考える理由を教えてください。
○野田委員長 三浦公述人、申しわけありませんが、簡潔にお願いいたします。
○三浦公述人 御質問ありがとうございます。
日本で尖閣諸島をめぐる有事を想定したときに、米国が実力で助けに来てくれると考える人の調査もしているんですね。それは、実は一五%に満たないんです。それが年々下がってきているということは、日本国民の民意を見ても、恐らく、核抑止、核の傘は提供してくれているけれども、実際に辺境における、彼らからすると辺境で、我々にとっては辺境ではないんですが、限定的な武力衝突の場合には来てくれないと考える人が非常に多いということですね。これは、韓国でいうと、五五%から六割の人が、年によってぶれるんですが、朝鮮半島有事で米軍が駆けつけてくれると思っているのと好対照をなしています。
それで、どうして巻き込まれの懸念よりも見捨てられる懸念が大きいかといいますと、やはり、我々は利害の同盟を組んでいるわけです。そうすると、米国としては、どうしても日本を助けなければいけないというような、例えばメキシコやカナダにおいて紛争が起こるのとはちょっと違った民意というもの、さめた民意というものが存在します。それを戦略的な判断として上回る、米国の国益のために日本を助けるという判断ができるかどうかというところで、やはり我々は民主的な国と同盟を組んでいる、その中で、日本は、実は、見捨てられ、巻き込まれだけじゃなくて、フリーライダーという懸念が同盟には存在するんですが、それは、米国がフリーライダーだと我々を見ているというところの形で具象化されているんですね。
そうすると、やはり民意上は、それに立脚する政治家としては、ますます日本を助けてあげるという気がなくなるということで、自主的、主体的な努力をしなければ、恐らくその傾向はどんどん高まるんではないかなと思っておりますし、北朝鮮と劇的に融和したトランプ政権の態度を鑑みるに、巻き込まれるというのが米国主導で起きる懸念が非常に低まったということがやはり近年の変化だと思います。
ありがとうございます。
これはそうだろうと思います。
5.武士の精神が国を護る
2月7日、ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ問題に関してのフランス・マクロン大統領との会談で「ロシアは核保有国だ。その戦争に勝者はいない」と述べていますけれども、プーチン大統領は勝者になることがないと知っているにも関わらず、核兵器使用をチラつかせることによる脅し、核抑止力については認めている訳です。
勝てないと分かっているのに、相手を怯ませることができる。何故それが出来るのかというと、要するに、核兵器というのは「刺し違える為の武器」だからではないかと思うのですね。
死なば諸共。刺し違えてでも倒す。それがあるからこそ、相手も怯む。それが抑止力の根本にあるのではないかということです。
ウクライナは、自分の国を護らんがために苛烈に抵抗しています。それこそ、刺し違えてでも倒すという気迫を見せています。それがNATO諸国をして、ウクライナ支援に変えさせた。そう思います。
つまり、核を持つためには、そういう精神が必要であり、武士(もののふ)でなければならないのではないかということです。
共産党は、プーチンのようなリーダーでも、他国へ侵略ができないようにするために憲法9条があるのだと嘯いていますけれども、彼らの心には「刀を持てば、みんな殺人鬼になって、人を斬ってまわるのだ」という考えが根底にあるのではないかとさえ思えてきます。
けれども、そういう輩は、決して武士とはいえないですし、共産党のこの考え方は武士の存在を否定するものです。
刀を帯び、手入れも修練も怠らないが、決して抜かない。勝海舟は刀鞘に紙縒り(こより)を結んで抜けないようにしていたといわれています。人にはそういう精神がある。
日本の平和は憲法9条ではなく、アメリカの核の傘によるものだというのは、普通に考えれば当たり前のことだと思いますけれども、その奥には、いつでも刺し違える覚悟があってこそのものであることは忘れてはいけないのではないかと思いますね。
銃撃を受けながらロシア兵に向かって行進するウクライナ人。みんなこのビデオを見なければならない。@daitojimari https://t.co/S0DiXBvIMe
— Nなし🇯🇵 (@nnasiastrologer) March 5, 2022
この記事へのコメント
オーツ
日比野
ご指摘ありがとうございます。修正しました。
「助けてくれない」と書いた積りでしたが、逆になってました。論旨そのものは変わらないです。
それにしても韓国は、アメリカが助けてくれると思う人が多数なのは何なのでしょうね。
今後ともよろしくお願いいたします。
Naga
他人を巻き込むのに逆の場合巻き込まれたくないというのは余りに身勝手な言い分だと思います。
NATOを見ても分かるように加盟国に対する攻撃は自国への攻撃とみなすという「巻き込まれ」に基づく条約になっています。