

1.エコノミスト紙の「世界はこうなる 2023」
イギリスの経済紙『The Economist』が今年も『世界はこうなる』シリーズを発行しました。
『世界はこうなる』シリーズは、その年の12月に発行され、来年一年間の未来予想が綴られます。
エコノミストの編集者トム・スタンデージ氏は、『The World Ahead 2023』について、「パンデミックが当面の未来を形作る影響力を持ってから2年後、現在の主な原動力はウクライナでの戦争だ。今後数ヶ月間、世界はウクライナの戦争が地政学と安全保障に与える影響をめぐる予測不可能な事柄に取り組まなければならない」と語っています。
スタンデージ氏は新型コロナウイルスによる世界的な災いとロシアとウクライナの戦争が、インフレを制御するための闘争、エネルギー市場の混乱、さらに中国の脅威など厄介な事態をますます複雑化していると指摘し、来年注目するテーマとして次の10項目を挙げています。
1.ウクライナに注目ここで10項目の新しい専門用語についてですけれども、エコノミスト紙は、2020年と2021年、世界は疫学とワクチン学の短期集中コースを受講し始め、「曲線の平坦化」、「ウイルス負荷」、「スパイクタンパク質」、「mRNAワクチン」などの新しい表現は、公の議論の一部になったとし、その後、2022年には、ウクライナでの戦争により、「HIMAR」や「対砲兵射撃」などの新しい用語を習得することが非常に必要になったと解説しています。
エネルギー価格、インフレ、金利、経済成長、食糧不足など、すべて今後数か月で紛争がどのように展開するかにかかっている。ウクライナによる急速な進歩はウラジミール・プーチンを脅かす可能性があるが、膠着状態が最も可能性の高い結果であるように思われる。ロシアウクライナ支持を弱体化させることを期待して、紛争を長引かせようとするだろう。
2.不況の到来
パンデミックの後遺症であるインフレを抑えるために中央銀行が金利を引き上げ、現在はエネルギー価格の高騰が原因で、主要国は景気後退に陥るだろう。アメリカの景気後退は比較的穏やかなものになるはずだ。ヨーロッパはもっと残酷だろう。ドル高は食料価格の高騰ですでに打撃を受けている貧しい国に打撃を与えるため、痛みは世界的なものになるだろう。
3.気候の明るい兆し
各国がエネルギー供給を確保しようと急ぐ中、汚染された化石燃料に逆戻りしている。しかし中期的には、独裁者が供給する炭化水素のより安全な代替手段として、戦争によって再生可能エネルギーへの転換が加速するだろう。風力や太陽光だけでなく、原子力や水素も恩恵を受けるだろう。
4.中国のピーク
4月のある時点で、中国の人口は約14億3千万人となり、インドに抜かれる。中国の人口が減少し、経済が逆風にさらされる中、中国がピークを迎えたかどうか、多くの議論が交わされることが予想される。成長が鈍化しているため、中国の経済規模が米国を追い越すことはないかもしれない。
5.分断されたアメリカ
共和党は中間選挙で予想よりも悪い成績を収めたが、一連の最高裁判所の判決が論争の的となった後、中絶、銃、その他のホットな問題に関する社会的および文化的格差は拡大し続けている。2024年の大統領選挙へのドナルド・トランプの正式な参加は、火に油を注ぐだろう。
6.注目すべき引火点
ウクライナでの戦争に集中することで、他の場所での紛争のリスクが高まる。ロシアが気を取られている間に、その裏庭で紛争が勃発する。中国が台湾に進出する絶好のタイミングと判断するかもしれない。ヒマラヤでインドと中国の緊張が高まる可能性もある。
7.同盟の変化
地政学的な変化の中で、同盟関係も変化している。ウクライナ戦争で活性化したNATOは、2つの新加盟国を迎えることになる。サウジアラビアはアブラハム協定という新興勢力に加わるのだろうか。その他に重要性を増しているグループとして、QuadとAUKUS、I2U2(インド、イスラエル、アラブ首長国連邦、米国を結ぶ持続可能性フォーラム)などがある。
8.リベンジツーリズム
ロックダウン後の旅行者の「リベンジ」観光により、旅行者支出は2019年の1兆3400億ドルの水準を回復するだろうが、それはインフレが物価を押し上げたからにすぎない。実際の国際旅行者数は16億人で、2019年のパンデミック前の18億人の水準を下回るだろう。企業がコストを削減しているため、出張は引き続き低迷するだろう。
9.メタバース リアリティ チェック
仮想世界で仕事をしたり遊んだりするというアイデアは、ビデオゲームを超えて普及するだろうか? 2023年には、Appleが最初のヘッドセットを発売し、Metaが株価の低迷に合わせて戦略を変更するかどうかを決定するため、いくつかの答えが得られるだろう。一方、それほど複雑ではなく、すぐに役立つ変化として、パスワードに代わる「パスキー」の台頭があるかもしれない。
10.新年、新しい専門用語
NIMBY(Not In My Backyard:我が家の裏庭には置かないで)は”出ろ”、だし、YIMBY(Yes In My Back Yard:僕の裏庭に来てくれ)は”入る”だ。暗号通貨はクールではなく、ポスト量子暗号はホットだ。しかし、凍結された紛争、または合成燃料を定義できるだろうか?
これは、これまで「マイナー」で一部の人しか知らなかった、そして知る必要もなかった概念や知識が、「世界的に必要なもの」になったことを意味するのだと思います。裏を返せば、それだけ世界が激変しているということでもあり、ごく一部の概念や知識が世界をひっくり返すかもしれないことを示唆しているということです。
2.各国リーダーの目線
一方、今年の『The Economist』の表紙に描かれた主要国とそのリーダーは次の通りです。
・台湾の蔡英文総統これら6ヶ国が2023年の世界をリードしていくことを示唆しているように見えますけれども、やはりというかなんというか、岸田総理は世界をひっぱる要素としては見られていないようです。
・中国の習近平国家主席
・ウクライナのゼレンスキー大統領
・アメリカのバイデン大統領
・イタリアのメローニ首相
・ロシアのプーチン大統領
ここで、筆者が気になったのは、各国リーダーの目線の方向です。
バイデン大統領とゼレンスキー大統領は向かって右。習近平大統領、プーチン大統領、蔡英文総統は向かって左。メローニ首相は正面向かってやや左を見ているように見えます。
これを仮に、向かって右を民主国家、左を共産(独裁)国家とみると、今の世界の陣営を表しているように見えなくもありません。けれども、そういう切り口でみると、台湾は左を向いており、中国、ロシア陣営に入ることになります。あるいは、中国の台湾併合が成功して、台湾が中国に飲み込まれてしまうと見ているのかもしれません。
また、イタリアが微妙に左を向いているのも民主国家陣営からの離脱を予感させなくもありません。

3.分断と破壊、そして内省
では、筆者はどう見ているか。
昨年大晦日のエントリー「2022年を振り返って」で、2022年を「分断と破壊の始まりの年だった」と述べましたけれども、2023年も表面的にはそれが継続あるいは加速していくように見えるのではないかと思います。
ただ、一人一人の内面では、このままでよいのか、または、これでよかったのか、という内省というか、振り返る気持ちが生まれていくようにも思っています。
なぜなら、昨年このかた、ウクライナ戦争にしても、武漢ウイルス禍にしても、特定の方向からの情報の洪水に多くの人が飲み込まれていった側面があったかもしれないと思うからです。
とかく、主流と異なる意見は「陰謀論」とレッテルが張られ、それがまた対立と分断を生む一因になった訳ですけれども、昨年秋にツイッターを買収したイーロンマスクCEOによるツイッター・ファイルと呼ばれる暴露によって、「陰謀論」が必ずも陰謀ではなかったことが明らかになりつつあります。
今、日本のネットを騒がせている「colabo」問題もそうですけれども、そうした、世の中の闇や”陰謀”が暴かれていくにつれ、当然混乱も起こるでしょうけれども、その反面、一人一人が、これはどういうことなのだ、と立ち止まって考えるようになるのではないかと思うのですね。
それが、これでよかったのか、ここままでよいのかといった自問自答を促し、やがて、「正しさ」を求めるようになるのではないかとさえ。
無論、個々人が考える正しさは人それぞれでしょうから、表向きには、対立や軋轢、あるいは分断が加速していくかもしれません。けれども、「正しさ」を求める気持ちでは共通している。
となると、あるいは、混乱する世界の中で、いち早く正しさを示し得た個人、地域、国が現れるならば、それが一つの指針となって注目を集め、世界を引っ張っていくのではないか。
その意味では、個々人から国のレベルまで、いままで「是」としていたことが本当にそうなのか。いったん立ち止まって考えてみることが、未来に繋がる鍵になっていくのかもしれませんね。
【イーロン・マスクのぶっちゃけ】
— オリバー (@sasuke2000tw) December 27, 2022
ぶっちゃけて言うとさぁ。。。(笑)#イーロン・マスク #ツイッター #陰謀論 pic.twitter.com/RMum7Wao7c
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