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1.異次元の少子化対策
1月4日、岸田総理は、新年恒例の伊勢神宮参拝を行い、年頭記者会見に臨みました。
会見で岸田総理は、今後の優先課題として「異次元の少子化対策」や「インフレ率を超える賃上げ」の実現に取り組むと明らかにしたのですけれども、SNS上では「異次元の少子化対策」などの関連ワードがトレンド入りしました。
岸田総理が少子化対策について述べている部分を抜粋すると次の通りです。
そして、今年のもう一つの大きな挑戦は少子化対策です。昨年の出生数は80万人を割り込みました。少子化の問題はこれ以上放置できない、待ったなしの課題です。経済の面から見ても、少子化で縮小する日本には投資できない、そうした声を払拭しなければなりません。こどもファーストの経済社会をつくり上げ、出生率を反転させなければなりません。本年4月に発足するこども家庭庁の下で、今の社会において必要とされるこども政策を体系的に取りまとめた上で、6月の骨太方針までに将来的なこども予算倍増に向けた大枠を提示していきます。この岸田総理の発言について、国民民主党の玉木雄一郎代表は、言葉づかいはともかく、いずれも方向としては間違っていないとツイートしています。その一方、「当たり前の少子化対策もできてないのに『異次元』とか」、「多分素人には想像もつかない様な、とんでもない施策だよね」、「少子化対策、別に異次元ではなくていいので、とりあえす今の次元にいる子どもたちのことを大切にしてほしい」、「異次元の早期退陣願います」などと批判する声もあります。
しかし、こども家庭庁の発足まで議論の開始を待つことはできません。この後、小倉こども政策担当大臣に対し、こども政策の強化について取りまとめるよう指示いたします。対策の基本的な方向性は3つです。第1に、児童手当を中心に経済的支援を強化することです。第2に、学童保育や病児保育を含め、幼児教育や保育サービスの量・質両面からの強化を進めるとともに、伴走型支援、産後ケア、一時預かりなど、全ての子育て家庭を対象としたサービスの拡充を進めます。そして第3に、働き方改革の推進とそれを支える制度の充実です。女性の就労は確実に増加しました。しかし、女性の正規雇用におけるL字カーブは是正されておらず、その修正が不可欠です。その際、育児休業制度の強化も検討しなければなりません。小倉大臣の下、異次元の少子化対策に挑戦し、若い世代からようやく政府が本気になったと思っていただける構造を実現するべく、大胆に検討を進めてもらいます。
岸田首相会見に批判が出ていますが
— 玉木雄一郎(国民民主党代表) (@tamakiyuichiro) January 4, 2023
①中国からの入国者に対するPCR検査の実施
②異次元の少子化対策(言葉づかいはともかく)
③インフレ率を超える賃上げの実現(5%程度の賃上げ)
は、いずれも方向としては間違っていない。
国民民主党は、政府・与党を上回る実現に向けた具体策を出していきます。
2.需要不足と中間層衰退の悪循環
少子化の原因として、晩婚化・未婚化が進んだからとはよく言われることですけれども、それ以外にも経済的問題も大きいという指摘もあります。
2021年の日本の平均年収443万円は約30年前の1989年の平均年収452.1万円からずっと減少し続けている一方、物価は上昇し、社会保険料も引き上げられましたから、手取りとなると更に減っている訳です。
2022年、経団連は「中間層復活に向けた経済財政運営の大転換」という報告書を出したのですけれども、今の日本経済の現状分析と対策について次のように述べています。
図表 1-1 は、現状分析に関する全体のイメージである。まず、需要不足と中間層の衰退が悪循環を引き起こしており、需要不足は弱い消費や投資機会の縮小といった形で現れる。家計の経済状況が改善しない状況においては、消費を拡大することは困難である。また、需要が弱い中にあっては、企業は国内で設備投資を行うインセンティブに乏しいため、海外に活路を見出そうとするが、それにより国内設備投資は停滞し、さらなる需要の低迷を招くという悪循環の一因となる。さらに、このような環境下では、賃上げによって雇用者の維持・拡大に努めようというインセンティブも働かない。こうしたマクロの需要不足が、中間層の衰退につながるという悪循環を形成している。このように報告書では、日本経済の低迷の根本的問題は中間層の衰退と需要不足にあり、改善するためには積極財政が必要だとしているのですね。
こうした悪循環に陥ったのは、緊縮的な経済財政運営の継続にある。民需が総じて弱い中、「将来世代へのツケを回さない財政健全化」や「持続可能な社会保障制度改革の確立」を名目に、政府支出を抑制し、増税や社会保険料の引き上げも続けた結果、マクロの需要を押し下げてきた。また、政府支出のうち、公的セクターの賃金や雇用も抑制されてきたことが、中間層の衰退にも拍車をかけた。
図表 1-2 は、悪循環を起こしている現状を打開するための政策提言に関する全体のイメージ図である。まずは、根本的な原因となっているマクロの需要不足を打開すべく、財政ルールを見直さなければならない。これまで、財政破綻の懸念から、需要不足の中でも財政健全化のため、歳出抑制や増税・社会保険料の引き上げが進められてきたが、わが国のように、自国通貨建て国債を発行する国において、財政破綻の可能性は極めて低く、需要不足の状況の中ではむしろ十分な規模で財政出動をしなければならない。
財政出動の仕方は様々であるが、その一つとして、新たな価値観に基づく投資の活性化に向けた財政の活用が重要である。設備投資需要を拡大させると同時に、よりよい社会の実現に向けたイノベーションの創出やインフラ整備を進めるべく、長期計画的に財政政策を展開する。政府が長期の計画に基づいて投資し続ければ、企業も新たなイノベーション創出に向けて、国内投資を加速させる。
財政出動を起点に総需要の拡大を確実に賃上げにつなげ、中間層の底上げを進めることも不可欠である。ここでの「中間層の底上げ」とは、主に低・中所得者層の経済環境の改善を意味している。そのためにまずは、財政拡大による高圧経済1を継続することで賃上げ圧力をかけ続けるとともに、雇用流動化を進め、企業間の賃上げ競争を促さなければならない。雇用の流動化にあたっては、法制度の見直しに限らず、民間企業の雇用慣行の見直しも必要となる。また、公共部門の賃上げと雇用拡大により、直接的に中間層の底上げを図りつつ、民間企業においても賃上げせざるを得ない環境にしていくべきである。
一国のマクロ的な循環に限らず、国内の各地域における経済循環の改善も課題である。
財政支出によって各地に供給される資金が、その地域において循環し、経済成長していくことが望ましい。本社機能の分散化、地元企業の経営支援拡大、地域金融機関の役割強化等により、地域内の経済循環を改善させていく必要がある。
こうした一連の政策により、これまでの「需要不足と中間層衰退の悪循環」から、「需要拡大と中間層の底上げの好循環」へと移行させていく。
3.孫ができない団塊の世代
この経団連の報告書について、ジャーナリストで『年収443万円 安すぎる国の絶望的な生活』を上梓した小林美希氏は、「非正規雇用を増やし、所得格差を拡大する要因を作ってきた経団連が、ここに至って中間層の復活を訴えるようになった。皮肉なことです。このままでは本当に日本経済が立ち行かないと、現実的に捉え始めたのだと思います」と述べています。
小林氏は「コロナ禍による所得格差の拡大や、最近の円安がきっかけで気づく人はいると思います。特に最近の物価上昇によって初めて自覚する人も多いのではないでしょうか……団塊世代は高度経済成長期の日本を生き、若者の非正規雇用などの問題に対して『努力が足りない』と切り捨てることが多かったのですが、やっと気づく人が増えてきました。なぜなら、彼らに孫ができないからです。格差社会の影響で自分達の子供の収入が低く、生活が苦しいから出産をためらう。そこに問題の本質があることを理解し始めています」と指摘。
更に、これまで、自己責任論で片付けられがちだった非正規雇用や横這いの賃金の問題についても、「自己責任論については様々な見方がありますが、2001年からの小泉純一郎政権下で竹中平蔵氏が新自由主義の世界を作ろうとする中で労働者の間にまで広まっていきました。政府があらゆる業種で派遣労働を認めたことで非正規雇用が増え、正社員になった人が勝ち組で非正規は負け組と言われるようになった。その構造を作り出したのは政治なのです。自己責任論から抜け出すためには、どんな政策が行われてきたのか、その結果何が起こったのかを知ることが大切だと思います。それを知ることで自己責任論では済ませられないと、改めて理解できると思います」と述べています。
もはや高齢者の仲間入りしている「団塊の世代」の人達が、自分達の孫が出来ないことで初めて「若者が困窮に喘いでいる」ことに気づき始めたというのですね。
その意味では、昨今の少子化は、中高年層への、あるいは政府に対する若者の「無言の反乱」のように見えなくもありません。
4.相続税をゼロにする方法
若者が経済的に苦しんでいる現状では、子供どころか結婚すらままなりません。であれば、やはり若年層にお金を回すような政策が必要だと思います。
例えば、日本の年代別金融資産保有額をみると、60代以降の高齢者は30~40代の倍以上を保有しています。これを若年層に移転させることで大分かわると思うのですね。
例えば、相続税、贈与税をゼロにしてやれば、資産を持て余している高齢者は自分の子や孫に、その一部を贈与すると思います。
国の税収のうち、相続税が占める割合はさほど多くはなく、所得税、消費税、法人税に比べるとはるかに小さく、一般会計歳入における相続税収の割合は1.5%前後。額にして、3兆円に満ちません。
嘉悦大学教授の高橋洋一氏によると、相続税は元々、所得税を満遍なく取れない代わりに、死亡時に相続税として取っているだけであって、生きているときに漏れなく所得税を徴収できるならば、相続税などないのが相続の基本だと述べています。
今、政府はマイナンバーカードを発行し、銀行口座に紐づけることを進めていますけれども、例えば、国民全員がこれをやれば、所得税は100%補足できることになります。そうなれば、理論的には、相続税はゼロに出来る筈です。
そう考えると、マイナンバーカードに切り替えることを奇貨として、相続税と贈与税をゼロにする、仮にそれが無理でも大幅に引き下げることで、高齢層の金融資産を子や孫の世代に移転させるという手はあるのではないかと思います。
その方が国民資産をNISAだかなんだかに投資するよりずっと日本の為になるのではないかと思います。
果たして、岸田総理がいう「異次元の少子化対策」が何になるのか分かりませんけれども、万が一、相続税と贈与税を時限的にでもゼロにするようなことがあるのなら、それは「異次元の対策」と呼んでよいのかもしれませんね。
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