

1.拡大するColabo問題
Colabo問題が急速に拡大しています。
1月6日、加藤厚労相は記者会見でこの問題について質問され、「必要な対応を行っていきたい」との考えを示しました。年末からSNSで騒がれてきた問題で、厚労相が言及するのは初めてのことです。
その質疑内容は次の通りです。
記者:厚労省の若年被害女性等支援事業をめぐり、東京都で委託先の団体の不当会計疑惑が告発され、先日監査請求結果も出ました。厚労省は事業を委託している以上、無関係とは言い切れません。同様のことが他の団体でも起きてはいないのか、全国調査する必要性も含めた国の対応を今後どうされるのでしょうか。また、これまでの事業対応に問題点や手抜かりはなかったのか、制度の見直しの必要性についてはどうお考えになるのかにつきまして、大臣の見解をお聞かせください。暇空茜氏の住民監査請求とその監査結果について、どちらに味方するでもなく、事実だけを押さえた無難な回答だと思いますけれども、必要な対応を行っていくと明言したのは大きいと思います。なぜなら、国として座視しないということを意味するからです。
大臣:若年被害女性等支援事業ですが、昨年議員立法により成立した困難な問題を抱える女性への支援に関する法律において、民間団体との協働による支援の重要性が位置付けられており、こうした協働を深めていくために重要な事業であると認識しているところであります。本事業を含め、国の補助金については補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律に基づいて、適正な執行を行う必要があります。
ご指摘の東京都の若年被害女性等支援事業の委託先団体に係る住民監査請求について東京都の監査委員会からは、当該団体に係る委託契約や契約履行については特段の問題が認められず、事業費総額が委託料上限額を超えており都に損害をもたらす関係にないとした上で、委託費の精算の一部については妥当性を欠くものと指摘され、令和5年2月28日までに再調査および返還請求等の適切な措置を講じることと勧告されたと承知しております。厚労省としては東京都における再調査結果などの報告を踏まえ、必要な対応を行っていきたいと考えております。
2.暇空茜氏への独占インタビュー
「Colabo問題」は依然としてネットで注目を集め、暇空茜氏も次々と話題(爆弾)を投下するものですから、展開が早すぎて付いていけなくなりそうなのですけれども、デイリー新潮は、1月6日付で、暇空茜氏への独占インタビュー記事を掲載しています。
件の記事から見出しだけ拾うと次のとおりです。
・フェミニスト活動家・仁藤夢乃氏が立ち上げた団体この記事で紹介されている暇空茜氏は、自身を「無職一般富裕オタク男性」と呼んでいますけれども、2013年に9億円の損害賠償裁判を起こし、7年かけて最高裁まで争った末、6億円の賠償命令を勝ち取った人物です。
・「無職一般富裕オタク男性」
・最高裁まで争い6億円をゲット
・「作品を燃やすな」
・トレンド入りした「リーガルハラスメント」
・潤沢な支援金で「最強弁護団」を結成
・事実上の「勝利宣言」を出したColabo弁護団
・法廷で決着をつけるのみ
それについて、暇空氏は次のように述べています。
これだけ高額な損害賠償請求を起こすには莫大な弁護士費用がかかります。僕は勝訴するまでは、約2000万円の借金を抱えているピンチにありましたが、途中、相手方が提案してきた3億円の和解案も蹴ったうえで、勝利を収めたのです。弁護士は『100人中100人が和解します』と青ざめていましたが、僕は納得できない理由で妥協ができない性格です。この姿勢はColabo問題でも貫いています。まるで「金持ち喧嘩せず」を真逆でいく人です。納得できなければ3億の和解金すら蹴ってしまう。ある意味、徹底的に「正義」を貫く人でもある訳です。
昨年12月31日のエントリー「2022年を振り返って」で、筆者は、暇空氏は、裁判所に救済を求めているのではなく、正義を求めていると述べましたけれども、実際、このデイリー新潮のインタビューで暇空氏、Colabo問題について「ロシアとウクライナの戦争と同じで、話し合いなど通用しない。法廷で白黒つけるしかないのです」と述べています。ですから、和解も妥協もなく、最後の決着がつくまでやるのだと思います。
3.国民から監視されるマスコミ
今回の住民監査請求から一連の流れについて、暇空氏自身がSNS等で情報を流してはSNS等でバズり、ネットユーザーの多くの注目を集めていました。
けれども大手新聞、テレビは中々取り上げなかったことで、いつになったら報道するのかとユーザーの間で話題になっていました。中には「報道をしない自由」を発揮して、黙殺するのではないかという声さえありました。
東京都は1月4日に暇空氏の監査請求に対する回答を一般公開し、それを機にマスコミも報じ始めたのですけれども、ネットでは、暇空氏のハンドルネームを伏せ、「一般男性」とするなど、その報じ方にバラツキがありました。それもまたネットで突っ込まれていたりしたようです。
この件に関しては、暇空氏自身が先行して、次々と情報発信しつづけており、マスコミがそれを後追いする状況となっています。その過程でマスコミがどこを報じ、どこを報じないかといった、一種のマスコミをネットユーザーが監視する構図が出来上がりつつあるように感じます。
これまでマスコミは自身を権力を監視するのだ、と位置付けていたかと思いますけれども、逆にこの件においては監視される立場になってしまったということです。
4.ニュース卸売業の生き残り戦略
こうなってしまったのも、もちろん、暇空氏が自身が一次ソースとなってSNSで広く情報を拡散したからです。一次ソースがネットユーザーとマスコミの記者に同時に供給されたことでネットユーザーとマスコミとで差がなくなった。マスコミが情報を独占して編集という名の取捨選択ができなくなった。やっても直ぐバレるようなっているということです。
これは、例えば、ニュースを情報商品と捉えるならば、これまで商品を独占販売していた「情報問屋」たるマスコミをすっとばして、生産者が仲介卸売り業者をすっとばして、直接消費者に小売り又はネット販売することに似ています。肉や野菜、地方の特産品といった業界では当たり前に行われていることです。
この切り口でみていくと、いろいろと面白いことが見えてきます。実際、卸売業界では、問屋や卸売業は消滅するのではないかとは昔から言われていました。
東京商工会議所の商業卸売部会・卸売経営活性化研究会は2005年7月に「卸売業の生き残り戦略」という報告書を出しています。その報告書では5つの戦略ポイントを提言しているのですけれども、それは次の通りです。
・第1の戦略ポイント-消費者ニーズの徹底分析この提言が出されていたのは18年も前なのですけれども、今の新聞・テレビにもかなり有効な戦略ポイントではないかと思います。
当然のことながら卸売業の直接の販売対象は小売業であるが、この小売業を介して最終的には卸売業は消費者に販売していることになる。この当たり前のことが日常の
卸売経営活動の中で忘れられがちなため、消費者のニーズや購買動向を継続的かつ徹底的に把握し分析する卸売業が意外に少ないのが現状である。周知のように今日の消費者のニーズや購買行動等は多様な方向に大きく変化しつつある。したがってこの消費者の変化をコンピューター等を活用し科学的に把握・分析して、データベースを構築し、自社の品揃え等のマーチャンダンジング活動の革新、さらに販売先小売業への売場提案活動に生かしていくことが今日の卸売経営の戦略にとって最も重要な課題である。
すなわち、消費者起点型卸売経営への転換が生き残りへの最も基本的な条件である。
・第2の戦略ポイント-自社のマーチャンダイジングの総点検と改革
今日一般的に卸売経営の最大の問題点の1つとして、売れない在庫を過剰に抱えて売上不振に陥っていることが挙げられる。この問題は、消費者の需要低迷や得意先小売業の売上不振に起因するところが大きいかもしれないが、むしろ自社の取扱商品が最終の消費者ニーズや得意先小売業の売場ニーズに不適合なこと、さらに自社の商品構成がマンネリ化していたり、むやみに取扱商品の幅を広げたりした結果など、いわゆる自社のマーチャンダイジング活動の後れや問題点から生じているものと受けとめるべきだろう。
つまり、マーチャンダイジング活動は卸売経営にとって生命線であるので、自社の取扱商品、商品構成の継続的な総点検とその革新が最も重要な課題といえる。卸売業の業種・業態・規模などによって卸売業のマーチャンダイジングの適切な方向は異なり、多様な方向がある。その中でもとくに厳しい競争環境下において、しかも消費者の個性化、多様化が進展している今日において、中小卸売業におけるマーチャンダイジングの1つの重要な共通方向は、絞り込みによる専門性の追求にあるといえるだろう。専門性の追求が効率的経営にもつながるものといえる。
同時に、これからの卸売業のマーチャンダイジングにとって重要なことは、ライバル他社との差異性や特異性であり、そのためには卸売業も積極的に商品開発に挑戦し、自社開発型の商品を増加すべきである。その場合自社だけで商品開発に挑戦することも重要だが、同業種卸売業同士、あるいは異業種卸売業同士などの複数の企業間による共同商品開発への取組みもこれからの重要な方向である。
さらにマーチャンダイジングの差異性や特異性を実現するためには、海外商品の取扱いの拡充や海外メーカーや商社等との連携を強化することも重要である。
・第3の戦略ポイント-新しい営業・販売システムへの改革
最近の卸売経営における売上不振の原因は厳しい競争の結果にもよるが、むしろ自社の営業・販売の方法やシステムの後れに起因するものと反省することが重要だろう。
ともすれば従来からの小売店に対する押し込み型な営業方法やリベート、販促金依存型の営業形態から脱していない中小卸売業が今だに少なくない。今日小売業から求められている卸売業の営業・販売の形態は、①小売店売場で的確に需要創造を実現する方法を提案する営業、②売場での最適な消費者ニーズに適合したマーチャンダイジングとその管理を約束する、いわゆるカテゴリーマネジメントと呼ばれる提案型営業、③小売業の経営問題を解決する、いわゆる問題解決型営業活動などである。
これらの方向はいわゆるリテールサポート型販売活動と呼ばれるものであって、そのためにはコンピューターを駆使した新しい営業・販売システムの開発、さらには営業マンへの再教育などが不可欠な条件といえる。
・第4の戦略ポイント-協働によるサプライチェーンの確立
卸売経営にとって物流活動が最も重要な活動であることは過去も今日も変わらないが、物流活動は今日の卸売経営にとって大きな問題を投げ掛けている。つまり、在庫コスト、配送コスト等を含む物流コストの上昇が今日の卸売業の利益を圧迫する大きな原因となっているからである。したがって物流活動を効率化させ、物流コストを削減するための改革が緊急課題である。そのためには取引企業間における情報ネットワークを基軸とした受注・発注管理、在庫管理、配送管理などのシステムの確立、いわゆるサプライチェーンのシステム確立が重要な課題である。
さらに卸売業同士による共同配送システムの開発や物流機能の統合化についても真剣に取り組むべき段階に至っている。これからの卸売業は物流・情報システムの抜本的改革のためにメーカー、小売業との協働によるサプライチェーンの確立、そして卸売業同士の共同化、統合化などの構造的な改革に挑戦すべきであろう。
卸売企業が集結する問屋街や卸売センターにおいても、集結のメリットを活かした革新的な協働活動、連携活動を本格的に推進すべき段階に来ている。
・第5の戦略ポイント-卸売経営者の基本姿勢と目標
上記したような経営システムの改革が進展するかどうかは、卸売経営者自身の意欲、信念、ビジョンにすべてかかっている。卸売業に明日がないと思い込んで、意欲を喪失している卸売経営者が近年増加しているように思われる。たしかに今日、卸売業をめぐる環境はかなり厳しいものがあるが、わが国の流通にとって、将来的にも卸売業による中間流通の機能なくして商品流通は不可能であるという信念を再確認すべきである。
現在わが国には約38万の卸売事業所が存在しているが、厳しい競争の結果、事業所の数、卸売企業の数が減少していくことは避けられないであろう。しかし、例え卸売業が半減したとしても、半分の卸売業は社会的に絶対に必要な卸売業として生き残ることになる。したがって、わが国においては卸売業は将来にわたって絶対に必要な存在であるという強い信念をもつことがまず重要であり、同時に競争に勝って、生き残り組として将来も存続していく、という強靭な目標を持つことが重要である。とくに東京都に拠点を置く卸売業の役割の重要性は将来も変わりないので、生き残り、さらに発展していくという目標に向かって果敢な挑戦を試みることが重要だと思われる。
要は、自社の将来を決する鍵が卸売経営者自身の中に存するという当たり前の結論を再確認することに尽きるであろう。
5.卸売り業界から20年遅れているマスコミ
次に、これら5つの戦略ポイントをマスコミに置き換えてみていきたいと思います。
第1の戦略ポイントは顧客のニーズをつかむこととなっています。ともすれば、反日メディア、反日番組だと批判される現状をみるまでもなく、今の大手マスコミがどこまで視聴者のニーズを拾い上げているかには疑問が残ります。
顧客ニーズであれば、たとえばSNSのトレンドランキングを拾うだけでも、リアルタイムでニーズを拾えそうなものですけれども、つい先日のツイッター社のイーロン・マスクCEOの改革でツイッタートレンドが、社内の人で恣意的なキュレーションが行われていたことが明らかになりました。
顧客ニーズを掴むどころか、自分の都合の良いように歪めていた訳です。これでニーズが掴める筈もありません。
第2の戦略ポイントは、売れない在庫整理して、商品を絞り込むこととなっています。ニュースの構成やそのソースがマンネリ化していないか、あれもこれもと手を広げた結果、誰の心にも響かないものになっていないとか、各社横並びで差別化ができていない、といったものだと思います。これも今のマスコミにとっては参考になる提言かもしれません。
第3の戦略ポイントは、営業・販売システムへの改革です。これまで新聞なら販売店による配達、テレビはテレビ電波を主にニュースを届けていました。けれども、今や新聞発行部数は激減。若年層はテレビ自体を持たなくなり、むしろ情報はネットで取るようになっています。
提言では、当時の卸売業について「小売店に対する押し込み型な営業方法やリベート、販促金依存型の営業形態から脱していない中小卸売業が今だに少なくない」と指摘していますけれども、新聞販売店での押し紙問題など、正に今のマスコミが陥っている問題のように見えます。
第4の戦略ポイントは、協働によるサプライチェーンの確立です。物流コストの上昇が卸売業の利益を圧迫する原因としていますけれども、ネットの出現によって、新聞はコストで敵わなくなり、ネット動画の興隆によってテレビ番組にも、同じ波が押し寄せています。
そして、第5の戦略ポイントとして、経営者の基本姿勢と目標が掲げられています。卸売業は半減するだろうが残りは「社会的に絶対に必要な卸売業として生き残る」と謳われています。おそらく、これはマスコミにも当てはまるだろうと思います。なぜなら、ニュースそのもののニーズは、社会から消えることはないからです。
今のマスコミ各社が「社会的に絶対に必要なマスコミ」という自覚があるのかどうか分かりませんけれども、少なくとも、その意識がなければ、やがて淘汰されるであろうことは容易に予想できます。
この提言をみていくと、あるいは、マスコミ業界は卸売り業界から20年近く遅れているのかもしれません。
今現在、卸売業は消え去ってはいません。もちろん、この全てがマスコミに当てはまるとは限りませんけれども、最低限、視聴者のニーズを掴み、それに応える努力をしなければ、生き残っていくことは難しいのではないかと思いますね。
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