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1.中国で有名人が相次ぎ死去
武漢ウイルスの感染爆発している中国で、有名人の死去が相次いでいるそうです。
先月、京劇俳優の儲蘭蘭氏が40歳という若さで死去し、中国社会に大きな衝撃が広がりました。元日には、20年以上続く人気テレビ番組に出演し、親しまれていた俳優の龔錦堂氏が死去したとのニュースが流れ、中国の多くのネットユーザーが悲しみました。
最近亡くなった著名人にはこのほか、映画「紅夢」(1991年)などに関わった脚本家の倪震氏、元ジャーナリストで南京大学の教授をつとめた胡福明氏などや、中国メディアによると、昨年12月21~26日には、国内トップの科学技術アカデミーに所属していた科学者が計16人死去したと報じています。
けれども、これらは武漢ウイルスが死因だとされなかったことから、ネット上では憶測が広がっています。
ネットユーザーの1人は、「この波は本当に多くの高齢者の命を奪った。みんなで家族の高齢者を守ろう」と、中国のSNSである微博(ウェイボー)に書き込み、倪氏の死去には、「彼も 『悪性のインフルエンザ』で死んだのか?」、「ネット全体を探っても、彼の死因に対する言及は見当たらないなどと投稿されています。
このように中国人民は政府の発表に懐疑的な見方をしているのですけれども、中国当局もそれは自覚しつつも、なるべくウイルスの深刻さを小さく見せかけようとしています。
中国当局は日別の感染者数の公表を中止。肺炎などの呼吸器系疾患で死亡した人だけをカウントする独自の厳しい基準に照らし、昨年12月以降の武漢ウイルスによる死者は22人だけだと発表しています。
北京の呼吸器疾患研究所の所長は、国営テレビのインタビューで、この冬これまでに死亡した高齢者の人数が例年より「間違いなく多い」ことを認める一方で、重症化しているのは患者全体のごく一部だと強調。共産党機関紙の人民日報も、ウイルスに対する「最終的な勝利」に向けた努力を市民に呼びかけるとともに、かつてのゼロコロナ政策への批判は相手にしない姿勢を示しています。
2.EUの入国規制ガイダンス
けれども、いくら国内を統制したとて、世界はそうはいきません。
1月4日、世界保健機関(WHO)は、中国政府による武漢ウイルス死者の定義は「非常に狭く」、「真の影響を過小評価」していると警告しました。
中国政府の集計方法によると、死者数には肺炎などの呼吸器系疾患により死亡した人のみで、この集計方法は世界保健機関(WHO)の指針に反するものです。
WHOの健康危機担当マイケル・ライアン氏は中国について、新型ウイルスによる死者の「定義が狭すぎると考えている」と指摘。中国の武漢ウイルス関連の数字について、「入院者数、ICU収容者数、とりわけ死者数に関して、この病気の真の影響を過小評価している」と述べ、中国がここ数週間でWHOとの関わりを強めているとして、「より包括的なデータ」を受け取れることを期待しているとコメントしました。そして更に「我々は、こうした死亡例や症例を報告することを医師や看護師に思いとどまらせたりはしない……我々には社会における、病気による実際の影響を記録できるオープンなアプローチがある」と強調しています。
中国では感染者が急増しているにも関わらず、新たな変異株は検出されていないことになっているのですけれども、WHOは中国国内でウイルス検査数が減少していることが要因である可能性があると警告しています。
こうした中、中国は入国者に義務づけてきたウイルス対策の隔離措置を今月8日に終了し、国境を再開すると発表しました。
これを受けて十数ヶ国が中国からの入国者を対象とした渡航制限を導入。1月4日、欧州連合(EU)の加盟27ヶ国は「統合政治危機対応(IPCR)」の会合を開き、全ての加盟国に対し、中国からの渡航者に出発前48時間以内の陰性証明の提示を義務づけることを強く奨励するガイダンスを発表しています。
その他の奨励内容は次の通りです。
中国発着便の全乗客によるフェイスマスク着用フランス、スペイン、イタリアはすでに中国からの渡航者を対象にウイルス検査を義務化。EUを離脱したイギリスも、5日からイングランドで、中国からの渡航者に出発前の検査を義務づけています。
中国からの航空機の無作為検査
空港での排水モニタリングを実施
もっとも、EU加盟国は独自の政策を設定できるため、今回のEUからの勧告を受けて、これら政策が各国に導入されることになるかは不明です。
3.逆切れの中国政府
こうした各国の中国からの入国者に対する陰性証明提示の義務付けや入国時検査の実施について、感染状況に関する「中国政府の情報開示が不十分」であることなどを理由に挙げているのですけれども、中国側は逆切れしています。
1月3日、中国外務省の毛寧・副報道局長は、「中国に対する入国規制には科学的根拠がない」として、中国政府は「政治的目的のために感染症予防・制御措置を操ろうとする試みに断固として反対し、相互主義に従って相応の措置を講じるだろう」と批判しました。
けれども、相互主義に従うというのなら、国内の感染状況も同じく公表すべきです。WHOから、中国政府は「真の影響を過小評価」していると指摘された以上、その情報公開は世界基準ではないということですからね。自分に都合のよいことをいくら言っても世界は相手にしません。
中国がこうした強硬な態度に出る理由について、中国問題に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏は次のように述べています。
中国は各国の措置を“中国叩きの一環”や“中国に対する嫌がらせ”と捉えています。ゼロコロナ政策時に中国も入国規制を行っていたのは事実ですが、特定の一国を狙い撃ちにしたものでなく、一律にやっていたとの思いがある。各国は規制強化の理由に“中国発の新たな変異株出現”のリスクも挙げましたが、それはあくまで可能性の話に過ぎず、また中国だけを対象とした入国規制が各国の感染防止にどれほど効果があるのかを本気で問うている。むしろ中国としては“ゼロコロナ政策により、これまで新たな変異株が国内で出現するのを防いできた”として、“世界に貢献してきたのは中国のほうだ”との自負すら持っています。
なんとも身勝手な認識です。2021年5月、習近平主席は党幹部との会合で、「友人を作り、大勢をまとめ、大多数の支持を獲得し、国際世論については常に友人の輪を広げていく必要がある」と述べ、国際社会とやりとりをする際には中国は「オープンで自信をもつと同時に、謙虚で控えめ」な姿勢を示すべきだと述べたと伝えられていますけれども、いったいどの口で、といいたくなります。
4.全人代の為にあえて放置
実際の中国の感染状況については、様々な憶測が為されていますけれども、中国事情に詳しい「infinity」チーフエコノミストの田代秀敏氏は次のように述べています。
広大な国土を持つ中国では現在、感染のピークと収束時期が都市によってズレを見せている状況にあります。中国最大の検索エンジン『百度(バイドゥ)』が公開している感染のピークと収束予測によると、北京は昨年12月12日にピークを迎え、今月13日に収束。他方、深圳は前月22日がピークで、収束は1月26日。広州のピークは前月21日、収束は2月1日と予測されています。感染がほぼ収束しつつある北京と比べ、深圳や広州は収束までにまだ時間がかかることが示唆されている。日本のメディアなどで火葬を待つ遺体が山積みになっている映像が流れましたが、それらの遺体の多くはコロナ感染死した人でなく、コロナ患者の急増で医療逼迫が起き、その煽りを食った基礎疾患などを持つ高齢者とされます。医療インフラが非常に脆弱な中国では、ゼロコロナ解除の影響として当初から予測されていた事態です。
中国では1月22日に春節を迎え大型連休に入るため、帰郷などで国内移動が活発化することが予想されています。現在の流行の主体は感染力は強い反面、重症化率の低いオミクロン株であることから、国営英語放送CGTNは“この冬に感染の波が中国全土を覆うことで86万6000人~104万人が死亡する”可能性に言及した後で、続けて“それにより集団免疫を獲得する”ことが予測されていると報じました。つまりゼロコロナ解除の先に、習近平政権は日本などと同じく“ウィズコロナ”へと移行する意図と見られています
このように、習近平政権は集団免疫を獲得させ、「ウィズコロナ」へと移行させようとしているというのですね。
これについて、評論家の石平氏は、習近平主席には、3月に行われる全人代までに、ウイルス禍を落ち着かせたいという思惑があり、ウイルス対策せずに中国人民に一度罹患させやればいい、と考えているというのですね。
そのためには感染拡大スピードは速ければ速いほどよく、政治的思惑で放置しているのだと述べています。
これに対し、石平氏は中国人民に「人道的犯罪」を犯しているとしか思えないと憤っていますけれども、筆者もそう思います。
けれども、人為で制御できないウイルスを全人代までに下火にさせるなんて考える方がどうかしています。都合がよいにも程がある。石平氏も3月までに収束するかは未知数であり、第2波・第3波の発生で3月の全人代は大混乱の中で開催される可能性もあると述べています。
ウィズコロナといっても、一足飛びで行けば苦労しない訳で、日本は現在第8波の最中です。
果たして中国でウィズコロナが出来上がるまでどれくらいかかるか分かりませんけれども、中国政府がきちんと情報開示して、その脅威度がはっきりするまで、世界各国は入国規制を続けるのが妥当ではないかと思いますね。
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