日本人を入国禁止にした中国

今日はこの話題です。
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1.邦人ビザ発給を停止した中国


東京にある中国大使館は、中国を訪れる日本人へのビザの発給を10日から一時的に停止したと発表しました。

中国政府は、ビザの発給停止の理由について明らかにしていないのですけれども、中国外務省の汪文斌報道官は10日の記者会見で「少数の国は、科学的な事実や自国の感染状況を考慮せず、中国に対して差別的な入国制限をとっており、われわれは断固として反対し、対等な措置をとる」と強調したことから、日本政府による水際措置の強化への対抗措置とみられています。

昨年12月29日のエントリー「日本の水際措置見直しについて」で取り上げましたけれども、日本は、先月30日から臨時の水際措置を始め、8日からは、中国本土からの直行便で入国する人に、出国前72時間以内の陰性証明の提出と入国時にPCR検査などを実施。今月12日からは中国本土だけでなく、マカオからの直行便で入国する人に対しても同様の措置を求めることにしています。

時系列でみると、日本は昨年12月27日に、第一弾の水際措置発表後、12月29日、1月4日、1月9日と立て続けに水際措置の強化を行っています。これに対し、中国は昨年12月27日に次の措置を行うと発表しています。
2022-12-27 15:26
中国国内の最新対処方針に基づき、2023年1月8日をもちまして、日本から中国へ渡航する際、出発時刻から48時間以内にPCR検査を1回行っていただき、その陰性証明書をもって中国税関出入国健康申告を事前に行っていただく必要があります。2023年1月8日から健康コードの申請は必要ありません。PCR検査で陽性反応が出た場合、陰性が確認次第中国へ渡航することができます。
この時点では、出国時にPCR検査をして、陰性証明を取ればよかったのですけれども、それから今度のいきなりの入国禁止措置です。

昨年12月27日の段階では、日本は出国前の検査証明を求めていなかったのに対し、中国側は出国前の検査証明を求めていますから、中国の方がより厳しい措置となっていました。これに対し、日本は1月9日発表の措置で、ようやく出国前の検査証明を求めることとして、中国側と同じレベルの水際対策に追いついたのですね。(厳密には72時間前と48時間前の差はありますが)

ところが中国は、この日本の措置に逆切れして、ビザ発給停止という強硬措置にでた訳です。


2.圧し掛かる陰性証明の費用負担


今回の中国の入国禁止措置について、日本政府関係者の1人は「ある程度は想定していたが、日本側は水際措置で入国を禁止したわけではないので、今回の対応は少しやりすぎではないか」と述べています。普通に考えればその通りです。

ではなぜ、中国はそうしたのか。中国政府はその理由を明らかにしていませんけれども、筆者は中国出国時にPCR検査を始めとする陰性証明を求めたことが中国にクリティカルになった可能性もあると思っています。

今の中国において、PCR検査にかかる費用は軍事費を超えるという説があります。

昨年5月、ゼロコロナ政策を取っていた中国国家衛生当局は、主要都市で「徒歩15分圏内に1カ所以上の簡易検査所を設置し、定期的に検査を行う」という検査常態化政策を提唱し、昨年5月下旬には、北京や上海など31都市がこの政策を採用し、河南省など一部では省全体で導入しました。

この検査常態化政策が打ち出された当時、中国の証券系シンクタンクが、仮に国内の全ての主要都市(人口計約5億人)が、全市民に2日に1回の検査を義務付けた場合、検査所は約17万ヶ所、検査人員は120万人以上となり、検査所設置や検査試薬、人件費などで最大で年間約34兆円が必要になると試算しました。

これは、国と地方を合わせた予算規模の約8%にあたり、国防予算である約29兆円を上回る額です。

勿論、抗原検査キット配布など、検査所など儲けなくとも個人で検査するようにして、費用削減を図る手段もなくはありませんけれども、日本が要求している出国前証明の検査方法は「拡散増幅検査」「抗原定量検査」と指定されていて、普通の「抗原検査」や「抗体検査」は不可となっています。

つまり、日本が中国に、出国前の陰性証明を求めたことは、中国にPCR検査を義務づけるのとほぼイコールであり、それは中国に財政負担を強いることになっているということです。

もちろん、日本にくる中国人は、シンクタンクが試算した5億人には程遠く、武漢ウイルス禍前の2019年2月の訪日外客数が260万4000人であったことを考えると微々たるものでしょうけれども、地方財政が厳しい中国地方政府にとっては、これですら、重い負担になっているのではないかと疑っています。

だからこそ、入国禁止という圧力をかけてでも、日本に出国前検査を止めさせようとしているのではないか。

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3.影響は今のところ限定的


今回の中国のビザ申請停止措置について、林外相は訪問先のアルゼンチンで記者団に「わが国が新型コロナ対策を目的として、国際的な人の往来を止めるものとならないよう可能なかぎりの配慮を行って水際措置を実施している一方で、中国が新型コロナ対策とは別の理由でビザの発給の制限を行うということは極めて遺憾で、中国側に対して外交ルートで抗議するとともに措置の撤廃を求めたところだ」と述べ、日本としては中国の感染状況や情報開示のあり方などを見極めながら、適切に対応していく考えを示しました。

ただ、国内の大手商社や自動車メーカーにしてみれば、今回の措置による影響は限定的のようです。

日本の大手商社の間では、中国で「ゼロコロナ」政策が終了したことを受けて現地への訪問を検討する動きが出始めていたのですけれども、実際の出張者は多くなく、中国に工場がある日本の自動車メーカーも、中国で感染拡大が続いていることから現地への出張はすでに減らしている企業が多く、今回の措置による影響は限定的だとしています。

一方、水際対策による中国人観光客の影響についても、もとより過度は期待はないようです。

東京都心に店舗を構える大手百貨店の担当者は「中国人客が戻ることへの期待はあるが、徐々にという形になるだろう」とし、別の大手百貨店も「中国国内での感染急拡大や日本政府の対中国の水際対策厳格化といった流れの中では、どの程度戻ってくるかは読みにくい。もう少し様子をみたい」と答えています。

また、日本航空は予定していた増便を取りやめており、担当者は「残念ながら何も状況は変わらない。中国の状況が少しでも落ち着いてくれれば…」とコメント。旅行大手JTBの担当者は、「現地の旅行会社から問い合わせは受けているが、予約には至っていない……さまざまな要素が複合し、予測不能な点もあるため答えるのは難しい」と淡々としています。

更に、訪日客の取り込みに力を入れている大手外食企業も「中国人客は客単価などの購買力が高く、期待値は大きい」とする一方、「中国国内での感染拡大が顕著だと伝わる中では、諸手を挙げて歓迎という状況にはない。政府は、日本への入国に当たってしっかりと審査してほしい」と注文していますし、京都市西京区の老舗旅館では、昨年10月の日本政府による水際対策の大幅緩和以降、他のアジアや欧米諸国の観光客からの予約で満杯で、中国からの問い合わせはなく、旅館の支配人は「特に期待していない」と話しています。


4.日本国民の命を守るために必要なことは行う


なにかと「検討使」だとか「増税だけ前向き」だとか批判される岸田総理ですけれども、今回の水際対策強化は早かったと思います。

これについては、自民党の青山繁晴参院議員が強烈に申し入れていたようです。

青山参院議員は昨年12月28日、自身のブログで次のように述べています。
【前略】

▼やむを得ず、露骨に、ありのままに、赤裸々に申しあげます。

▼岸田文雄総理、林芳正外務大臣に直接、中国からの入国規制をすぐさま実施するように申し入れたのは、すくなくとも国会議員としては わたしひとりです。
 総理と外相の反応から、それは明瞭に分かっています。
 そしてこのエントリーに記したように、総理と外相は、申し入れから2日後に、まずは、すぐにできることの実施に踏み切られました。
 エントリーをアップしたのは、その緊急措置の発表前です。

 今まで中国製の効かないワクチンを3回打っただけで、無検査で入国できていたのを、入国希望者の全員に検査を実施すると同時に、中国から入国できる空港を全国で4空港に絞るという緊急措置です。

▼総理は、わたしが「さらに根本的な対策が必要です」と問うのに応えて、「これはあくまで緊急の措置であり、中国の感染状況の把握に努めながら、より強い措置も準備する。中国からは早速、強い抗議も来ているが、日本国民の命を守るために必要なことは行う」と仰っています。

 わたしは防衛増税に一貫して反対し、それをはじめ岸田総理と大きく考えが違うところがあります。林外相とも対中、対韓のいずれについても考えが違います。
 しかし、どんなに違っていても、与党議員の責任として総理や閣僚に働きかけるべきことはすべて働きかけています。

▼入国規制を実施するには、当然ながら、広範で周到な準備が必要です。
 感染症に適した規制、なおかつすぐにやれる規制を考え、準備すること ( 厚労省 ) 、相手国と外交交渉を行うこと、また、相手国内で日本へ行きたいと考えている人々に対し、大使館や領事館を通じて入国規制の周知を行うこと ( 外務省 ) 、法に沿って世界に説明できる入国管理を行うこと ( 法務省 ) 、航空会社と、当該国とのルートについて減便交渉を行い、使用空港も限定すること ( 国交省 ) 、総体的な調整を行うこと ( 内閣官房 ) が最低限、必要です。

 ですからわたしも、まずは、短期で上記の準備のできる緊急措置を行うこと、そしてさらに、全面入国停止を含めた根本措置を求めているのです。

▼この経緯の一端は、上述のように、この無条件に公開しているブログであっても、このエントリーで明記しました。
 無条件の公開の場で提供する情報は、当然、外国の工作員や反日勢力などもそのまんま、入手できます。
 それでも、ギリギリの線を模索して、主権者・国民のみなさんのために常に情報を提供しています。

▼そして情報の提供だけでは無く、実際に、今まで中国のひとびとが仮に感染していても実質的にノーチェックで入国できていたのを、中国の当局が昂奮して抗議してくるぐらいまでには、規制強化を実現しました。
 さらに、前述の通り、より根本的な対策が取られるよう、きのう12月27日火曜に、議員会館の青山繁晴事務所へ上記の関係省庁全部に集まってもらい、厚労省、外務省、法務省、国交省、そして内閣官房の行政官・官僚に、真の危機意識を持つよう促し、中国の現状について深く議論し、それらに基づいて、緊急措置に留まらず、総理の指示にもあるように根本対策も準備するよう、前を向いて協議をしました。

【中略】

▼そして、中国からの入国規制について「今の緊急措置では甘い」、「直ちにすぐ、全面入国禁止にし、中国人はひとりも入れるな」という要求ばかりが、やはり怒声のような表現で山積みです。

 ですから、根本対策を求めて、ずっと休まず、交渉を続けているのです。
 わたしは中国のひとびとを差別することは、どなたが何を言おうと、絶対にしません。あくまでも中国共産党の独裁、独裁者である習近平国家主席の誤りについて対峙します。
 そのうえで、日本国民の安全と命を守ることを絶対最優先にして、根本対策を求め、疲れも体調も仕事納めも関係なく動き続けています。
 なぜ、それが想像すらできないのでしょうか。

【後略】
青山参院議員は昨年12月25日に岸田総理と林外相にそれぞれ人を介さず、直に、中国共産党の独裁と習近平国家主席の失敗がもたらしている異常な感染爆発の実態を述べて、国民に新たな犠牲者を出さないための入国規制を求めたのだそうです。

この申し入れに岸田総理は「これはあくまで緊急の措置であり、中国の感染状況の把握に努めながら、より強い措置も準備する。中国からは早速、強い抗議も来ているが、日本国民の命を守るために必要なことは行う」と答え、厚労省 、外務省、法務省、国交省、内閣官房とも調整した上で、2日後の12月27日に、まずは出来る措置を行ったというのですね。

もちろん、これは「緊急の措置」でしたから、年明けからも、随時水際措置を強化していっているという訳です。

今後、更に水際対策が強化されるか分かりませんけれども、中国で蔓延している株が何であり、新たな変異はないのか。これらは到着時検査の検体を解析すれば分かる筈ですから、実質的かつ有効な対策を出来る限りとっていただきたいと思いますね。




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この記事へのコメント

  • HY

     入国禁止という「過激すぎる」決定は出国前検査のPCR検査費用という繊細な財政事情というよりは「ゼロコロナ政策から革新的転換をした習政権のメンツを潰した」という単純明快な理由だと思いますね。ゼロコロナ政策の失敗から拙速な緩和策による感染爆発。追い詰められた習近平に必要なのは叩いても反撃してこない「サンドバッグ」ですから。対象が日本と韓国というのも象徴的です。
    2023年01月12日 09:41