韓国の命運を決めるG7広島サミット

今日はこの話題です。
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1.韓国政府が元徴用工問題の解決案を提示


1月12日、韓国政府はいわゆる元徴用工問題を巡って公開討論会を開き、政府傘下の財団が賠償を肩代わりする方策を有力案として公表しました。

討論会は韓国外務省などが主催し、日韓関係に詳しい大学教授やメディア、経済団体の関係者らが参加。韓国外務省の徐旻廷(ソ・ミンジョン)・アジア太平洋局長が対日交渉の経緯や検討中の有力案を説明しました。

韓国政府の有力案は公益法人「日帝強制動員被害者支援財団」を活用するもので、債務者が第三者と共同で債務を負担する民事手続き「併存的債務引受」の手法などにより、日本企業の代わりに財団が賠償する案です。減資は韓国企業から寄付を募って集めるとしています。

討論会で徐旻廷局長は、日本が既に表明している痛切な謝罪と反省を誠実に継承することが重要だと表明したのですけれども、発言者からは日本側が賠償や謝罪に加わる姿勢を示さないまま解決策をまとめようとする韓国政府を批判する意見が出たり、観覧者が大声で反発し、騒然とする場面もあったようです。

韓国政府は解決策の正式決定と原告への賠償を急ぐ構えと見られています。


2.許容できる限度はここまでだ


韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は、昨年8月の記者会見で、日本との外交対立を避けて補償をする方針を明示。昨年11月に岸田総理と正式な首脳会談を開いた際、この問題の早期解決をめざす方針で一致していました。

とはいえ、この尹錫悦政権の案で解決できるのかという問題があります。

これについて、読売新聞の飯塚恵子編集委員は、1月12日放送の日本テレビ「深層NEWS」で、今回の解決案は日本側からムン政権時代に『これが日本側が許容できる限度』として提案していたものだったと明かしています。

飯塚氏は、 政府関係者から聞いた話として、「日本側が文政権時代に水面下で 唯一受け入れ可能性を検討できる案として韓国側に授けた……逆に言うとこれしかないという 案だったと、ただ、当時のムン政権はこれは、被害者中心主義の方針に合わないということで、検討の素性にものってこなかった。それが今回、尹政権になって有力案として検討してきて……日本側とずっと水面下でということで今日ようやくそれが出せた」と述べ、ある意味、日本側もこの辺りだったら行けるかなということで握っていると述べています。

このとおりだとすると、尹錫悦政権が元徴用工裁判原告団や世論を説得し、国内問題として処理できれば、解決に大きく近づくことになります。




3.国内を纏める以外ない


この韓国政府の動きについて、元在韓国特命全権大使の武藤正敏氏は、尹大統領は、仮に徴用工が満足しない案であっても、それに基づいて問題を解決する意思を固めたようだとし、次のように述べています。
韓国政府にとって、現在検討中の解決策に徴用工側が反発することは想定の範囲内であろう。韓国政府の外交当局者はメディアの取材に「すべての被害者が完ぺきに賛成できる案を持ってくるのは現在では不可能に近い。ひとまず被害者の要求の半分でも満たすために両国が交渉中」と指摘している。

その意味するところは、韓国政府として日本側に「誠意ある対応」を求める一方、まず韓国側が解決策を提示し、日本側の対応と合わせて徴用工を個別に説得する方式に切り替えたのではないかと思われる。

文在寅政権時代の韓国政府は徴用工の声や国内世論をできる限り反映した解決策となるよう日本側と交渉を行ってきた。しかし、「韓国が強く出れば、日本側が妥協する」というような事前のような展開を期待できないことが累次の接触で明らかになったはずである。

これまで韓国には、労働組合や市民団体が国益とは関係なく、自分たちの権利を声高に主張する傾向があった。韓国政府はそれに抗することができなかった。日韓の懸案事項解決に向け日本政府と合意した後になって、それに反対する国民の声に押しまくられて態度を一変、「ゴールポストを動かして」日本側に新たな要求を突き付けるような所業を繰り返してきた。日本政府が徴用工問題について妥協できないとするのはこうした経緯に由来する。

しかし、尹錫悦大統領は、過激労組である民主労総・貨物連帯が昨年11~12月に行った強引なストに対し、「法と原則」を貫き、妥協することなく収拾を図った。

もちろん徴用工問題については韓国の国民感情があるので、必ずしも同様な対応ができるとは限らないが、いったん日本側が納得する解決策を出し、それをもとに日本側の好意的な反応を期待した上で、個別に徴用工を説得し、納得させる姿勢と解釈できる。
武藤氏は、昨年11~12月、韓国の民主労総・貨物連帯が行った強引なストにも尹錫悦大統領が「法と原則」を貫き、妥協することなく収拾を図ったことを指摘していますけれども、元徴用工問題についても、同じような"指導力"を発揮できれば、あるいは説得できるかもしれません。

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4.このままスムーズにいくとは思えない


実際、尹錫悦政権は昨年7月以来、日本との交渉、国内世論の取りまとめに努めてきました。それを時系列で並べると次の通りです。
2022年7月~9月:徴用工問題を討議する官民協議会を開催。しかし、徴用工及びその支援団体の歩み寄りがなく、議論は平行線に終わる。
      9月:朴振(パク・ジン)外相が徴用工と個別に面談。
      9月:日韓外相会談で「民間財源による賠償」を提案。
      9月:日韓首脳会談
     10月:日帝強制動員被害者支援財団の新理事長に沈揆先(シム・ギュソン)前東亜日報編集長・駐日特派員が就任。沈氏は主要新聞出身の実務型トップで、問題解決に影響力を発揮することを期待
     11月:日韓首脳会談
     12月:朴振外相主宰の「賢人会議」を開催。有識者と徴用工問題などについて意見交換を行う。
確かに精力的に動いています。

もっとも、この尹錫悦政権の動きにも、日本政府は冷静に見ています。

1月12日、外務省の幹部は「尹錫悦政権が徴用工問題の解決に本気なのは間違いない」と評価しつつも、「韓国内の反応がどうなるか分からない。このままスムーズにいくとは思えない」と疑問を呈し、「日本の立場と相いれないものは駄目だと、繰り返し韓国側に伝えている」と話しているそうです。

日本政府が特に注目しているのは、被告企業に対して賠償を求める「求償権」の放棄をどうやって法的に担保するのかという点だそうで、これがクリアにならない限り、解決は出来ないものと思われます。

それでも日本政府は尹錫悦政権に対し、一定程度の配慮は見せています。12日、松野官房長官は記者会見で、昨年11月の日韓首脳会談で懸案の早期解決を確認したことに触れ、「日韓関係を健全な形に戻し、さらに発展させていくため韓国政府と緊密に意思疎通する」と、述べています。


5.韓国の命運を決めるG7広島サミット


それにしても、あの”ムービングゴールポスト”の韓国が、自身が肩代わりする形での解決案を出してでも収拾を図っているのは何故か。

もちろん、アメリカのバイデン政権から日本と対立をしないよう強く求められているであろうことは容易に想像できますけれども、それ以上に新しい国際秩序を見据えた上での決断ではないかと思います。

昨年起こった、ロシア・ウクライナ戦争この方、国際社会は大きく揺れ動いています。欧州は戦時下ですし、東アジアは米中対立を背景に「新しい戦前」を迎えつつあります。

どちらが勝つか云々は脇におくとして、戦争や対立が終わった後は、国際勢力は新しく塗り替わっている筈です。

既に各国はそれに向けて動き始めているのと思います。

2021年2月のエントリー「イギリスD10構想の弱点と中国の策謀」でイギリスのジョンソン元首相のD10構想を取り上げましたけれども、先日の日英円滑化協定にしても、D10構想の一環であると思いますし、その先には新しく組み直される国際秩序をも見据えていると思います。

仮に、今後新しく構築される世界秩序がD10構想に近いものになるとすれば、少なくとも経済的には中国をデカップリングしたものになる可能性が高いでしょう。畢竟、中国経済に大きく依存している韓国は、大きく影響を受けることになります。

つまり、見方を変えれば、今、韓国は西側諸国につくのか、中国につくかの二拓を世界から迫られているともいえる訳です。

そして、おそらく韓国の尹錫悦大統領は西側諸国につくことを決断したのだと思います。そしてそのためには日本との関係改善がその足掛かりである、と位置付けたのではないかとさえ。

1月7日、日本政府は、5月に広島で行われるG7サミットに韓国の尹錫悦大統領を招待する方向で検討に入ったと報じられています。これについて、マスコミは、民主主義や法の支配など価値観を共有する日韓・日米韓の連携は重要性を増していることから、実現すれば連携強化を内外に示す好機となると分析していますけれども、上述した、新世界秩序にむけて各国が準備を始めているという観点でみると、さらに違った意味も見えてきます。

というのも、もし、韓国がG7に招待されて出席すれば、新たな世界秩序での西側陣営に受け入れて貰えたという象徴的な意味が含まれるからです。

つまり、今年のG7は韓国にとって、新し世界秩序での自身のポジションが決まるかもしれないという、いわば韓国の命運が決まるサミットになるかもしれないということです。

となると、韓国は何が何でもG7に参加したい筈です。しかも議長国は日本。ここは、徴用工問題の解決を手土産に自国の立場を確固たるものにしたいと行動してもおかしくありません。

もし、韓国の大統領が保守派の尹錫悦氏ではなく、左派の李在明氏だったらどうなっていたか。少なくとも、今の尹錫悦政権のような元徴用工問題の解決には動いていないと思われます。畢竟、その先の新世界秩序での韓国の立場はいうまでもありません。

このようにみてくると、今の韓国は、西側諸国という土俵の中で、徳俵に足を掛けてギリギリで踏ん張っているようにも見えてきます。果たして尹錫悦大統領は、韓国を土俵の内に留まらせておけるのか。

次のG7に招待されるのか。要注目ですね。


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