武漢ウイルス死者六万人と発表した中国の野望

今日はこの話題です。
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1.武漢コロナ死者六万人と発表した中国政府


1月14日、中国の保健当局は記者会見で、武漢ウイルスに感染して医療機関で死亡した人が先月8日から12日までに5万9938人になったと発表しました。

これまで中国政府は、感染しても基礎疾患などが原因で死亡した場合は武漢ウイルスによる死者として数えないとし、同じ期間の死者数は38人と発表していたのが一転して大幅に増えた訳ですけども、今回の会見では、感染した人が基礎疾患との合併症で死亡した場合は武漢ウイルスによる死者と判定していると説明しました。

発表では呼吸不全で死亡した人が5503人で、合併症で死亡した人が5万4435人と、死亡した人の9割が65歳以上だとしています。

会見では、このほか、12日の時点で全国の医療機関の重症者の人数が10万人余りで、重症者用の病床の使用率が75.3%に上っているとしています。

もっとも、この発表を中国人民は疑問視しています。

中国版ツイッターの「ウェイボー」には「このデータを誰が信じるのか。私の親戚は明らかに新型コロナで死亡したのに、死亡証明書には気管支炎と書かれていた」とか「入院していた人だけ発表されたが、家で死亡した人は病院より多い」など、実際の死者はもっと多いのではないかとする書き込みが相次いで投稿されています。

中国のネット上では、各地の火葬場で車の長い列が確認されるなど多くの人が亡くなったという情報が伝えられていて、死者数が一転して大幅に増えたことに国民から批判の声が高まっています。


2.更なる協力と透明性が重要だ


一方、今回の中国政府発表にWHOは感染状況や影響をより把握できるとして歓迎するコメントを発表。テドロス事務局長は「新型コロナの起源を理解するには中国のさらなる協力と透明性が重要だ」と改めて強調しました。

これまでWHOは、中国政府が公表する死者数などが実態と乖離していると指摘し、中国に対し、省ごとの詳細な内訳やウイルスの解析データの一層の共有を求めていました。

1月4日の定例会見では、WHOは、中国政府の発表する統計について「死者数については定義が狭いなどの問題があり、感染の影響が過小評価されている」と、実態を正確に反映していないと指摘していたのですね。

これに対し、中国外務省の毛寧報道官は、翌5日の記者会見で、「中国は一貫して速やかな公開と透明性の原則に従って、WHOと緊密な意思疎通を保ち関連する情報やデータを共有してきた……WHOには、科学的かつ客観的で公正な立場から、世界的な感染症の課題に積極的な役割を果たすことを期待する」と述べ、指摘はあたらないという認識を示していたのですね。

それが、今回、一転しての死者6万人の発表です。WHOの要請に折れた形です。


3.感染はピークアウトした


では、なぜ、いきなりこんな発表に方針を転換したのか。

これは筆者の単なる推測に過ぎませんけれども、習近平指導部は、14日の段階で、感染はピークアウトしたという判断をしたからではないかと思います。

北京大学の研究チームは中国での累計の感染者数が今月11日までに約9億人に達したとする推計を発表したと中国メディアが報じているとのことですけれども、これは中国の総人口の約64%にあたります。感染した人の割合は西部甘粛省で91%、南部雲南省は84%に上るとし、多くの地域では、すでに感染のピークを越えたとし、春節の大移動によって感染が広まるリスクは低いとの見通しを示しています。

つまり、感染がピークアウトしたから、死亡者が爆発的増加することはないだろうという判断で、ようやくそれらしい数字を出してきたのではないかということです。あたかも、戦争中は戦死者を公表せず、終戦してから戦死者数を発表するのに似ています。

感染拡大中に本当の死亡者数を公表することによる、人民の反発を恐れたのかもしれませんけれども、世界各国が中国からの入国規制をしている理由の一つに中国本土での感染状況が分からないから、というのがありましたから、このタイミングで公表することで、やはり世界各国の入国規制を止めさせようとする思惑があるのかもしれません。


4.中国が逆切れした理由


1月12日のエントリー「日本人を入国禁止にした中国」で、各国の入国規制に対し反発している中国は、日本に対しビザ発給停止という強硬措置を取ったことについて、筆者は陰性証明を提出するための検査費用が負担になっているのではないかと述べましたけれども、これら措置の理由について、いろんな説が出ています。

評論家の石平氏は、「自分たちがやられたと思えば条件反射的に反撃してしまう。その程度の話だろう……本来ならば中国にとっても日本との貿易関係を維持するのは大事。日本のビジネスマンの入国ビザ停止措置をとれば、中国経済にも良い影響はないはずだ。しかし、習近平主席にとってそれは二の次で、“メンツ”を保つことが何よりも大事なのだろう」と面子を潰されたから説をとなえています。

また、自民党の青山繁晴参院議員は、日本が入国規制すると、他のアジア各国に波及することを恐れたからだ、とする、いわゆる「日本の影響力」説を指摘しています。

更に、東京都立大学法学部准教授の佐藤信氏は「中国人観光客のコロナ前の渡航先は、日本が圧倒的に多く2番目がタイだった。このタイで、政府が中国側に対して入国時の陰性証明の提出を厳格化しようとした際、中国政府は外交的な圧力を掛けることで阻止したことがある。中国政府にしてみれば、“脅せば撤回する”という成功例が1つあることになる。今回、日本や韓国への対応も『上手くいくかもしれない』と思ってやっているのではないか……最初に韓国に出ている。韓国の外相と中国の外相が電話会談で折り合わず、その直後に短期ビザの停止措置が出た。それが日本に対しても拡大されている形だ。必ずしも日中関係の話ではなく、全体像として、東アジアを中心としたあらゆる国に圧力を掛ける中で、日本に対して極めて厳しい措置が出ている」と、過去の成功体験説を提示しています。




5.東アジアに於ける日中覇権争い


ただ、面子を潰されたから、とか、過去の成功体験があるからという理由だと、説明しにくい事があります。それは、ビザ発給停止にしても、中国は日本と韓国で対応を変えているという点です。

ビザ発給停止の中身を見ると、韓国への対抗措置は「同等」を意識しているのに対し、日本向けは「報復」を超える一方的なものです。

1月10日、中国駐韓国大使館は韓国人向けのビザ発給一時停止を発表したのですけれども、停止するビザは「訪問、ビジネス、旅行、診察、トランジット、私用などの短期ビザ」です。これは、韓国政府が中国人向けの短期旅行ビザの発給を停止したことから、同等の「短期」に絞って制限したと解釈できます。

これに対し、日本に対しては、中国駐日本大使館は「日本人向けの普通ビザの発給を一時停止する。いつ元に戻るかは追って通知する」と発表しています。

ここで言われている「普通ビザ」は、政府職員や政治家に発給される「外交ビザ」「公用ビザ」を除く幅広いビザを指し、長期滞在の記者ビザ、就労ビザ、留学ビザも含まれています。

日本は中国からの入国あるいは入国者に対し、検査や陽性者の隔離を行っているだけで、その対象は日本人も含まれ、中国人向けビザの発給も停止していません。

つまり、日本にだけ殊更に「報復」の度合いを強める理由があるということになります。

その意味では、青山参院議員が指摘する「日本の影響力を警戒した」説の方が、これをより説明できるのではないかと思います。

日本と韓国は、中国からの入国規制をしています。けれども、東南アジアの他の国もそうかというと必ずしもそうとは限りません。タイは1月9日に導入した、18歳以上の入国者に義務付けるとしていたワクチンの接種証明書の提示を、導入したその初日に撤回しています。これは、中国から脅されたからだという説もあるほどです。

例えば、日本の入国規制に続いて、東南アジアの各国がそれに続けば、やはり東アジアの盟主は日本だと見做される可能性が出てきます。

逆に日本が折れて、入国規制を撤廃すれば、東アジアの盟主は中国だということになります。この切り口で考えれば、東アジアの各国の政策に対し、日本と中国のどちらが影響力があるのか、言葉を変えれば、東アジアの覇権争いとして、日中どちらが覇権を握るのかの象徴になると中国が考えているかもしれません。

中国はWHOに折れる形で、”それっぽい”死者数の公表を始めましたことで、日韓、特に日本に対し、入国規制を取り下げさせる圧力を掛けてくると思います。けれども、その裏には、東アジアの盟主として覇権を握るという野心があるかもしれないことは頭の隅に入れておいてもよいかもしれませんね。


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この記事へのコメント

  • Naga

    中国がビザ発給を停止したのなら日本も同様の措置を取れば良いと思うのだが。
    対抗措置のあるこんなことにも抗議や遺憾ばかりなのが情けない。
    同等の措置をする法律がないのなら、こんな時こそ政令じゃないのか。
    2023年01月16日 23:57