台湾をめぐる次の大戦の最初の戦い

今日はこの話題です。
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1.同盟の現代化と米軍の態勢


1月12日、アメリカのワシントンで日米安全保障協議委員会(日米「2+2」)が開催されました。

会談の概要は外務省のサイトで公開されていますけれども、地域情勢認識として、尖閣、台湾海峡、北朝鮮、ロシアウクライナ戦争について触れた上で、同盟としての抑止力・対処力を最大化する方策(同盟の現代化)と拡大抑止および米軍の態勢にまで議論されています。

その中から「同盟の現代化」と「米軍の態勢」について抜粋すると次の通りです。
3 同盟の現代化
 日本側から、日米双方の戦略は、抑止力を強化するため、自らの防衛力を抜本的に強化し、そのための投資も増加させること、そして同盟国や同志国等との連携強化を目指すといった点において、軌を一にしている旨発言した上で、そのような戦略の下、同盟としての抑止力・対処力を最大化する方策について議論を行った。

(1)日本側から、抜本的に強化された日本の防衛力を前提とした、日米間でのより効果的な役割・任務の分担を実現していく必要がある旨発言した。日米双方は、起こり得るあらゆる事態に適時かつ統合された形で対処するため、同盟調整メカニズムを通じた二国間調整を更に強化する必要性を改めて強調した。また、米側からは、日本による常設の統合司令部設置の決定を歓迎する旨発言があった。
(2)日米双方は、米国との緊密な連携の下での、日本の反撃能力の効果的な運用に向けて、日米間での協力を深化させることを決定した。
(3)日米双方は、情報収集、警戒監視及び偵察(ISR)活動並びに柔軟に選択される抑止措置(FDO)を含む二国間協力を深化させることを決定した。
(4)日本側から、装備・技術面での協力は、同盟の技術的優位性の確保、日本の防衛力強化の速やかな実現の双方において重要であり、更に加速する必要がある旨発言し、米側から、技術的優位性の確保に向け、日米で共に努力していきたい旨発言があった。
(5)日本側から、宇宙・サイバー領域における協力の進化は同盟の近代化における核となるものである旨発言した。日米双方は、宇宙関連能力に係る協力の深化にコミットした。その上で、日米双方は、宇宙領域に関し、宇宙への、宇宙からの又は宇宙における攻撃が、同盟の安全に対する明確な挑戦であると考え、一定の場合には、当該攻撃が、日米安全保障条約第5条の発動につながることがあり得ることを確認した。日本側から、本件は同盟全体の抑止力強化の観点で重要な成果である旨発言した。
(6)日本側から、多国間協力については、同盟国・同志国のネットワークの重層的な構築・拡大を図り、抑止力を強化していく旨発言した。

5 米軍の態勢
 日米双方は、地域における安全保障上の増大する課題に対処するために、日本の南西諸島の防衛のためのものを含め、向上された運用構想及び強化された能力に基づいて同盟の戦力態勢を最適化する必要性を確認するとともに、普天間飛行場の固定化を避けるための唯一の解決策である辺野古への移設を含め、在日米軍再編を着実に推進することの重要性について一致した。

(1)日米双方は、現下の厳しい安全保障環境を踏まえ、在日米軍の態勢見直しに関する再調整で一致した。日米双方は、厳しい競争環境に直面し、日本における米軍の前方態勢が、同盟の抑止力及び対処力を強化するため、強化された情報収集・警戒監視・偵察能力、対艦能力及び輸送力を備えた、より多面的な能力を有し、より強靱性があり、そして、より機動的な戦力を配置することで向上されるべきであることを確認した。そのような政策に即して、2012年4月27日の日米安全保障協議委員会で調整された再編の実施のための日米ロードマップは再調整され、第3海兵師団司令部及び第12海兵連隊は沖縄に残留し、第12海兵連隊は2025年までに第12海兵沿岸連隊に改編されることを確認した。この取組は、地元の負担に最大限配慮した上で、2012年の再編計画の基本的な原則を維持しつつ進められる。
(2)日本側から、厳しい安全保障環境に対応するための、在日米軍の献身的な活動への謝意を述べた。また、日本側から普天間飛行場代替施設の建設事業や馬毛島における施設整備が着実に進捗していることを紹介した上で、日米双方は、在日米軍の施設及び区域の再編を支える現在行われている事業の着実な実施並びに地元との関係の重要性を再確認し、普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策である、キャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域における普天間飛行場代替施設の建設継続へのコミットメントを強調した。また、馬毛島における自衛隊施設の整備の進展及び将来の見通しを歓迎した。
(3)日米双方は、沖縄における移設先施設の建設及び土地返還並びに2024年に開始される米海兵隊要員の沖縄からグアムへの移転を含む、米軍再編に係る二国間の取組を加速化させる重要性を確認した。日本側から、地元への影響に最大限配慮した安全な運用、早期の通報を含む事件・事故での適切な対応、環境問題などについても米側に改めて要請し、日米双方は緊密に連携していくことを確認した。
このように、日米は地域における安全保障上の課題に対処するために、強力を強化し一体化していくという内容となっています。


2.ウクライナは台湾の先行指標にはならない


目下、東アジア地域で有事の懸念が高いのは、いうまでもなく台湾ですけれども、2022年7月に行われたシカゴ外交問題評議会の世論調査では、中国が台湾に侵攻した場合のアメリカの対応として、76%が外交的な関与や経済制裁にとどまるべきだと考え、65%が追加支援として台湾へ武器を提供することを支持。中国による台湾封鎖を阻止するためにアメリカ海軍艦隊を派遣するべきだと考える人は62%だったものの、台湾防衛のためにアメリカ軍を派兵することを支持したのは40%となっています。

更に、この世論は、有事が長引くとネガティブに流れる可能性があり、バイデン政権のウクライナに対する軍事支援について、「アメリカはウクライナのためにやり過ぎている」と回答した人は、2022年3月のピューリサーチセンターの世論調査では7%だったのが、5月には12%に上昇。逆に「アメリカにはウクライナを守る義務がある」と答えた人は、50%から44%に下落しています。

無論、台湾はウクライナのケースとは違いますし、そういう専門家の意見もあります。

シンクタンク「ジャーマン・マーシャル・ファンド」のボニー・グレイザー・アジアプログラム部長は「ウクライナは台湾の先行指標にはならない」と断言。最先端半導体の生産拠点の92%が集中する台湾の戦略的重要性や、2021年の米台貿易総額が約1140億ドル(約13兆円)で、約44億ドル(約5000億円)の対ウクライナと比べ経済関係が強固であること、さらに、台湾への武器供与を含む安全保障規定に触れた「台湾関係法」により、アメリカが軍事的に関与する素地もあることなどを指摘しています。


3.次の大戦の最初の戦い


では、実際、台湾有事になったらどうなるのか。

これについて1月9日、アメリカのCSIS(戦略国際問題研究所)が報告書「次の大戦の最初の戦い」を発表しています。これについて国内マスコミはおおむね次のように報じているようです。
・シミュレーションは中国が2026年に台湾侵攻した場合を想定。
・中国軍は、約1万人の兵と155機の戦闘機、138隻の艦船を失い、台湾支配は失敗に終わる可能性が高い。
・アメリカ軍は3週間で兵士約3200人が死亡し、空母2隻が撃沈されるほか、台湾は約3500人の兵が死傷する。
・日本も大勢の自衛隊員が死亡する可能性があり、在日アメリカ軍基地が攻撃される。
けれども、これらは想定条件と結果だけであり、その中身がよく分からないですけれども、原文の報告書では次のようになっています。報告書(全158ページ。48万字超)からエクゼクティブサマリを拾うと次の通りです。
〇エクゼクティブサマリ
・もし中国が台湾に水陸両用で侵攻しようとしたらどうなるのか?CSISは、中国が台湾に水陸両用で侵攻した場合のウォーゲームを開発し24回実施した。
・ほとんどのシナリオで米国/台湾/日本は、中国による通常の水陸両用侵攻を撃退し、台湾の自治を維持することができた。
・しかし、この防衛には大きな代償が必要だった。米国とその同盟国は、数十隻の艦船、数百機の航空機、数万人の軍人を失った。台湾は経済的な打撃を受けた。さらに、この大きな損失は、長年にわたってアメリカの世界的な地位を損なった。
・中国も大きな損失を被り、台湾の占領に失敗すれば、中国共産党の支配が不安定になるかもしれない。
・したがって、勝利だけでは十分ではない。米国は直ちに抑止力を強化する必要がある。

〇課題
・中国の指導者は、台湾を中華人民共和国に統合することを強く主張するようになった。
・米国の高官や専門家は、中国の意図や紛争の可能性について懸念を表明している。中国の計画は不明だが、軍事侵攻はあり得ない話ではなく、中国にとって最も危険な「台湾問題」の解決策となるため、当然のことながら、中国の軍事侵攻が焦点となっている。
・そのため、アメリカの国家安全保障に関する言説の焦点となっている。
・米軍にとって「台湾有事は最重要シナリオ」であるため、そのような侵攻の作戦力学について、厳密かつ透明性のある理解を共有することが重要である。
・ちょうど冷戦時代のフルダ・ギャップ(Fulda Gap)でこのような理解が深まったように、アナリストも台湾侵攻シナリオを検討しなければならない。このような理解は重要である。
・防衛が絶望的な場合と防衛が可能な場合とでは、米国の政策は根本的に異なるからである。もし台湾が米国の支援なしに中国から自らを守ることができるのであれば、そのような事態を想定して米国の戦略を調整する理由はない。
・逆に、アメリカがいくら援助しても台湾を中国の侵略から救えないのであれば、アメリカの戦略をそのような事態に合わせる必要はない。
・極端な話、米国がいくら援助しても中国の侵略から台湾を救えないのであれば、米国は台湾を守るために奇想天外な努力をするべきではない。
・しかし、ある条件下で、ある重要な能力に依存して、アメリカの介入が侵略を阻止できるのであれば、アメリカの政策はそれに応じて形成されるべきであろう。
・このようにすれば、中国も侵略を思いとどまる可能性も高くなる。しかし、このようなアメリカの戦略形成には、政策立案者が問題意識を共有することが必要である。
・しかし、侵攻は極めて重要な問題であるにもかかわらず、その作戦力学と結果に関する厳密でオープンソースの分析は存在しない。
・これまでの非機密扱いの分析は、侵攻の一面に焦点を当てているか、厳密な構造になっていないか、軍事作戦に焦点をあてていない。
・機密扱いのウォーゲームは には透明性がない。適切な分析がなければ、公開討論は固定されないままである。
・そこで、このCSISプロジェクトでは、中国が2026年に台湾に水陸両用で侵攻した場合を想定したウォーゲームを設計した。ルールの一部は、過去の軍事作戦とのアナロジーを用いて設計された。
・例えば、中国の水陸両用砲は、ノルマンディー上陸作戦、沖縄上陸作戦、フォークランド上陸作戦の分析に基づき、過去の軍事作戦を類推してルールを設計した。
・また、次のような理論的な兵器性能データに基づいて作られたルールもある。例えば、ある空港をカバーするために必要な弾道ミサイルの数を決定するなどである。ほとんどのルールは、この2つの方法を組み合わせている。
・このように、ウォーゲームの戦闘結果は、個人の判断ではなく、分析に基づいたルールによって決定され、同じルールを適用することで、一貫性を持たせている。
・インタビューと文献調査に基づいて、プロジェクトは「基本シナリオ」を設定し、その中で最も可能性の高い仮定を設定した。その基本シナリオを3回実行した。
・その後、さまざまなケースを用いて、さまざまな前提条件の影響を調査した。
・これらの様々な仮定が予想される結果に与える影響を、台湾侵攻スコアカードで示した。このゲームの24回の繰り返しにより、紛争の輪郭が描かれ、台湾が直面する主要な脅威について首尾一貫した厳密な結果が得られた。

〇結果
・侵攻はいつも同じように始まる。開戦時の砲撃で台湾の海軍と空軍の大半を破壊する。
・中国海軍は強力なロケット部隊によって増強され、台湾を包囲する。包囲された島への船と航空機の輸送を妨害する。
・数万人の中国兵が軍の水陸両用船と民間の船で海峡を渡り、空襲部隊と空挺部隊が橋頭堡の背後に上陸する。
・しかし、最も可能性の高い「基本シナリオ」では、中国の侵攻がすぐに発覚する。
・ただし、中国軍の大規模な砲撃にもかかわらず、台湾の陸上部隊は上陸地点に殺到し、中国軍は物資の補給と内陸部への移動に苦戦する。
・一方、アメリカの潜水艦、爆撃機、戦闘機、攻撃機は、しばしば中国軍と交戦する。
・戦闘機、攻撃機が、しばしば自衛隊の援護を受けながら、中国の水陸両用艦隊を急速に疲弊させる。中国が日本の基地やアメリカの水上艦船を攻撃しても、結果は変えられない。台湾の自治は維持される。
・ここで、一つの大きな前提がある。台湾は抵抗し、降伏してはならない。
・もし台湾が降伏すれば、アメリカ軍は無益となる。
・この防衛には高いコストがかかる。米国と日本は、何十隻もの艦船、何百機もの航空機、何千人もの軍人を失う。このような損失は、何年にもわたってアメリカの世界的地位を損ねることになる。
・台湾の軍隊は壊れることはないが、著しく劣化し、電気も基本的なサービスもない島で、損なわれた経済を守ることになる。
・中国も大きな打撃を受けている。海軍は壊滅状態、水陸両用部隊の中核は崩壊し、数万人の兵士が捕虜となっている。

〇成功の条件
24回のゲームの繰り返しを分析した結果、中国の侵略に打ち勝つためには4つの必要条件があることがわかった。

1. 台湾軍が戦線を維持すること。
 提言:台湾の地上軍を強化する。
・中国軍の一部は必ず島に上陸するため、台湾の地上部隊は、いかなる上陸地点も封じ込め、中国の兵站が弱まったところで強力に反撃できるようにしなければならない。
・中国軍の兵站が弱まれば、強力に反撃する必要がある。
・しかし、台湾の地上軍には深刻な弱点がある。そのため、台湾は隊員を補充し、厳しい統合訓練を行わなければならない。陸上部隊は台湾の防衛努力の中心とならなければならない。

2. 台湾に「ウクライナ・モデル」は存在しない。
 提言:平時には米国と台湾が協力して台湾に必要な武器を提供しなければならない。
・戦時には、アメリカが台湾防衛を決定した場合、米軍は速やかに直接戦闘を行わなければならない。
・ウクライナ戦争では、米国と北大西洋条約機構(NATO)は、直接戦闘に部隊を派遣していないが、大量の装備と物資をウクライナに送っている。ロシアはこの陸路の流れを阻止することができないでいる。
・しかし、台湾では中国が数週間から数ヶ月にわたって台湾を孤立させることができるため、「ウクライナ・モデル」を再現することはできない。台湾は必要なものをすべて持って戦争を始めなければならない。
・さらに、米国による遅滞や中途半端な措置は、防衛を困難にする。米国の犠牲者を増やし、中国がより強力な宿営地を作ることを可能にし、エスカレーションのリスクを高める。

3. 米国は、日本国内の基地を戦闘行為に使用できるようにしなければならない。
 提言:日本との外交・軍事関係を深める。
・他の同盟国(オーストラリアや韓国など)も中国との広範な競争において重要であり、台湾の防衛において何らかの役割を果たすかもしれないが、日本が要である。日本の米軍基地を利用しなければ、アメリカの戦闘機や攻撃機が効果的に戦争に参加することはできない。

4. 米国は、中国の防御圏外から中国艦隊を迅速かつ大量に攻撃することができなければならない。
 提言:長距離対艦巡航ミサイルの兵装を増強する。
・爆撃機を発射できる爆撃機は、米国の損失を最小限に抑えながら侵略を撃退する最速の方法である。
・このようなミサイルの調達と、既存のミサイルの対艦能力向上は、調達の最優先事項でなければならない。

〇ピュロスの勝利を避けるために
・勝利がすべてではない。米国はピュロスのような勝利を収め、「敗北」した中国よりも長期的には多くの損害を被るかもしれない。
・さらに、コストが高いという認識は、抑止力を弱めるかもしれない。
・もし中国が、米国は台湾防衛のための高いコストを負担したくないと考えるなら、中国は侵略の危険を冒すかもしれない。
・したがって、米国は紛争が発生した場合に勝利するためのコストをより低く抑えるための政策やプログラムを導入すべきである。そのような方策には次のようなものがある。
 ◆政治と戦略
・戦争計画の前提を明確にする。戦争計画では、戦前の台湾や中立国への派兵を想定しているが、政治的な現実との間にギャップがあるように見受けられる。
・戦前の台湾や中立国への配備を前提とした戦争計画と政治的現実の間にギャップがあるように思われる。
・本土攻撃の計画を立ててはならない。核保有国とのエスカレーションは重大なリスクであるため、国家司令部が許可を出さない可能性がある。
・死傷者が多くても作戦を継続する必要性を認識すること。米国は3週間で、イラクとアフガニスタンでの20年間の戦争で受けた犠牲者の約半分の犠牲者を出すだろう。
・台湾の空軍と海軍を非対称化する。台湾は、「ヤマアラシ戦略」を採用すると豪語しているにもかかわらず、国防予算の大半を中国がすぐに破壊してしまうような高価な船舶や航空機に費やしている。
 ◆ドクトリンとポスチャー
・日本やグアムの航空基地を強化・拡大する。分散・強化でミサイル攻撃の効果を薄める。
・アメリカ空軍のドクトリンを改訂し、航空機の地上での生存能力を高めるための調達を再構築する。
・地上での航空機の生存率を高める。航空機の損失の90%は地上で発生している。
・中国本土の上空を飛行する計画を立ててはならない。中国本土の防空は強力であり、目標達成に時間がかかり、台湾周辺での航空任務が優先される。・海兵隊沿岸連隊や陸軍多領域任務部隊の限界を認識し、その人数に上限を設ける。これらの部隊は中国に対抗するために作られたものであり、ある程度の価値はあるが、政治的、作戦的な困難からその有用性には限界がある。
・脆弱性を生むような危機的展開は避ける。軍事ドクトリンでは、危機時の抑止力強化のために前方展開が求められているが、こうした部隊は魅力的なターゲットとなる。

〇兵器とプラットフォーム
・より小型で生存性の高い艦船にシフトし、不具合のある艦船や複数の沈没に対処するための救助メカニズムを開発する。水上艦は非常に脆弱であり、米国はゲーム中、通常2隻の空母と10~20隻の大型水上戦闘艦を失う。空母2隻と大型水上戦闘機10~20隻を失うことが多い。
・潜水艦やその他の海底プラットフォームを優先する。潜水艦は中国の防衛圏に進入し、中国艦隊に大打撃を与えることができるが、数は不十分だった。
・極超音速兵器の開発と配備を継続するが、ニッチな兵器であることを認識する。極超音速兵器はコストが高いため、在庫に限りがあり、膨大な数の中国空軍と海軍のプラットフォームに対抗するには数量不足である。
・戦闘機よりも爆撃機部隊の維持を優先する。射程距離、ミサイルのスタンドオフ距離、そして爆撃機の航続距離、ミサイルの対向距離、高い搭載能力は、人民解放軍に困難な課題を突きつけた。
・より安価な戦闘機を生産し、ステルス機と非ステルス機をバランスよく生産すること。紛争初期に多くの航空機が失われるため、空軍は戦闘機・攻撃機を使い果たす危険性がある。紛争初期に多くの航空機を失った空軍は、戦闘機・攻撃機が不足し、損失を維持できるだけの大規模な戦力がない限り、紛争における二次的存在となる危険性がある。
・最後に、このプロジェクトとその提言には、いくつかの注意点が必要である。侵略をモデル化することは、侵略が避けられない、あるいは可能性が高いことを意味するものではない。中国の指導者は、台湾に対して外交的孤立、グレーゾーンでの圧力、経済的強制などの戦略をとるかもしれない。中国が軍事力を行使するとしても、それは完全な侵攻ではなく、封鎖の形をとるかもしれない。
・しかし、侵攻のリスクは十分に現実的であり、破壊的な可能性があるため、分析する価値がある。
・このプロジェクトでは、台湾防衛のメリットが将来のコストを上回るのかどうか、また、どのように比較検討するのか、といった見解を示すものではない。その目的は、国民の議論を深めることである。この重要な国家安全保障上の課題に対して、国民がより良い情報を得た上で意思決この重要な国家安全保障上の課題に対して、国民がより良い情報を得た上で意思決定できるようにすることである。
サマリだけでこのボリュームです。内容も厚い。このなかでも特筆すべきは、台湾防衛を成功させるために4つの必要条件が提示されている点です。

それは、1)台湾軍が戦線を維持すること、2)台湾に「ウクライナ・モデル」は存在しない、3)米国は日本国内の基地を戦闘行為に使用できるようにしなければならない、4)米国は、中国の防御圏外から中国艦隊を迅速かつ大量に攻撃することができなければならない、の条件です。

この中の2)で台湾は、「ウクライナ・モデル」にはならないとした上で、「アメリカが台湾防衛を決定した場合、米軍は速やかに直接戦闘を行わなければならず、アメリカによる遅滞や中途半端な措置は、防衛を困難にし、アメリカの犠牲者を増やし、中国がより強力な宿営地を作ることを可能にし、エスカレーションのリスクを高める」と断じています。

これは先述の世論調査で、アメリカ軍を派兵することが40%しか支持されていないことと、対立する可能性があります。

また、3)では、台湾の防衛において日本が要であり、日本の米軍基地を利用しなければ、アメリカの戦闘機や攻撃機が効果的に戦争に参加することはできないとしています。

要するに、本当の意味で台湾有事は日本有事であるという認識を持たない限り、米軍といえども台湾防衛は出来ないということです。それも、日米台に多大の犠牲を出して、です。


4.台湾防衛の大前提


そして報告書は、更に、もっと重要な指摘をしています。台湾防衛の成功には大きな前提があり、それは「台湾は抵抗し、降伏してはならない」と強調している点です。

報告書では「台湾が降伏すれば、アメリカ軍は無益となる」としていますけれども、この裏を読めば、台湾があまり抵抗しないのなら、アメリカも介入しない。助けない、ということを示唆しているのではないかと思います。

要するに、もし人民解放軍が台湾侵略したとき、台湾政府がビビッて、話し合いでとかなんとか弱腰の姿勢を見せたら、アメリカは台湾を見捨てるかもしれないということです。

このCSISの報告書は当然中国政府も見ている筈ですから、逆に中国はここを突けばよいことになります。

つまり、台湾に世論工作をしかけ、先般のアメリカ軍のアフガン撤退を例に挙げて、アメリカは台湾を助けないと喧伝したり、政界工作をして、台湾に親中政権をつくらせ、有事のときに直ぐに白旗を上げさせるようにする可能性があるということです。

今の台湾の蔡英文総統、民進党政権のうちは、その心配は少ないかもしれませんけれども、2024年1月に予定される次期総統選で、もし国民党が巻き返して親中総統が誕生したら、それこそ、CSISのシミュレーションのように、2026年に台湾有事が発生してもおかしくありません。

それを考えると、たとえ軍事シミュレーションで日米台が勝利する予測が出たからといって安心できるものではなく、台湾が決して中国共産党の軍門に下ることのないように、日本もしっかりサポートする必要があるのではないかと思いますね。


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