

1.大切な人を守るため
1月29日、加藤厚労相は、フジテレビの「日曜報道 THE PRIME」に出演し、3月で期限を迎える武漢ウイルスワクチン接種の無料接種について、「これからワクチン接種をお願いするときに、今無料か有料かで、これだけ割れるということ。そのへんもよく踏まえながら、進めていきたい。当面は、必要な場合には、自己負担なしで打っていただける環境をつくっていきたい」と当面は無料接種を続ける考えを示しました。
番組内の視聴者アンケートでも、「無料なら打つ」が44%、「有料でも打つ」が30%、「いずれでも打たない」が26%と3つに割れています。それでも有料だと7割が打たないと答えているところを見ると、国民はワクチンにいうほど効き目がないと認識しているるということだと思います。
けれども、加藤厚労相は、ワクチンについて「ワクチンは元来スタートは重症化予防だった。ワクチンの効果が見えてきた」と述べその効果を強調したのですけれども、この発言がネットで炎上しています。
なぜなら、ワクチン接種当初は、感染を抑える効果がある、大切な人を守るために接種しましょうと推奨しまくっていたからです。
ネットでは「大切な人を守るためって言ったろ。嘘つくな!」、「2発で集団免疫で罹患しないと言ったろ!」、「世界一人が死んでるがどんな効果だ?」、「これは辞任レベル」とボコボコに叩いています。
加藤厚労大臣(2023.1.29)
— Yuiko (@wotakumame) January 29, 2023
ワクチン接種について
「元来【重症化予防を中心に】ワクチンスタートしたわけですけれども」
え⁉️
ホントに⁉️ pic.twitter.com/Np53XH12Wu
2.デマと謝罪
1月28日、終盤に入った愛知知事選挙で、自民党県連、立憲民主党、公明党、国民民主党推薦で現職の大村知事の応援に入った河野太郎デジタル相は、名古屋市で街頭演説し、武漢ウイルスのワクチン接種に反対する運動について「運動を行っている方々のほとんどは科学的に根拠のない話を繰り返している。デマを通じて接種を妨げるのは慎んでいただきたい」と述べました。
ところがネットに投稿された動画をみると、河野太郎デジタル相に対して、「謝罪しろ」の大合唱が起こったそうで、河野氏は憮然とした表情をしていました。
翌29日、河野デジタル相は自身のブログで「続コロナワクチンについて」という記事を上げ、次のように主張しました。
最近、一部のマスコミがワクチンに関するセンセーショナルな記事を書いています。確かにメディアはワクチン接種後死亡した方の遺族の声を記事にしていたりもしていますけれども、それでも、こんな記事を直ぐに載せるあたり、やはり前日の謝罪しろコールが堪えのかもしれません。ただ、ワクチンの治験で何らかの有害事象が出ていることは事実であり、それは河野デジタル相も認めています。
しかし、記事の内容は、相変わらず、ワクチンを接種した後に何人が死んでいるといったワクチンの危険性を煽るような記事で、科学的とは言えず、HPVワクチンの二の舞にならないかと危惧しています。
ファイザーのワクチンの治験では、2020年7月から11月の間に21,621人がワクチンを接種し、重篤な有害事象が出たのはそのうち0.6%にあたる126人、死亡したのは0.1%未満の2人です。
これだけみると、ワクチンで死亡者が出た、重篤な有害事象も100人以上に出ていると、反ワクチン派が騒ぎそうですが、治験では、同じように21,631人がプラセボ(偽薬)を接種し、0.5%にあたる111人に重篤な有害事象が出て、やはり0.1%未満の4人が死亡しています。
つまり、2万人の中には、一定期間にワクチンと関係なく重篤な有害事象にあたる人や死亡する人がある程度の数は出ているわけで、ワクチン接種と有害事象や死亡との因果関係はないと言えます。
モデルナの場合も、2020年5月から11月の間にワクチンを接種した15,185人のうち、重篤な有害事象は89人、死亡は2人、プラセボ(偽薬)を接種したのは15,166人、重篤な有害事象は93人、死亡は3人で、やはり、ワクチン接種と重篤な有害事象や死亡との因果関係はないと言えます。
【中略】
そしてこのワクチンに関する多くの研究が行われ、論文が書かれ、科学的な分析が行われています。
メディアには、私の知っている誰々がどうしたというエピソードではなく、しっかりとした研究の成果による科学的なエビデンスに基づいた記事を書いてほしいと思います。
厚労省が収集している有害事象でも死亡者の報告がされていますけれども、その殆どは、「因果関係がない」、ではなく、「評価できない」です。「評価できない」と「因果関係がない」はイコールではありません。にも関わらず、河野デジタル相が「ワクチン接種と重篤な有害事象や死亡との因果関係はない」と言い切るのはいささか乱暴な議論だと思います。
『謝罪しろっ💢謝罪しろっ‼️』
— @Koume®🇯🇵 愛と光のカケラ✨💖🇺🇦 (@Koume4444pompom) January 28, 2023
もの凄い謝罪しろコール❣️
わたしもその場に行きたかった🇯🇵📣
愛知県の有志の皆さま💖
勇気ある抗議をありがとうございます
👏👏👏🇯🇵
大村さん、河野デジタル大臣聞こえましたか⁉️
これが愛知県民の民意だ‼️#山下しゅんすけを愛知県知事に pic.twitter.com/hbnPMM5XpF
3.エビデンスのアップデート
現在、政府は武漢ウイルスを5類に落とすことを検討していると報じられていますけれども、感染対策を緩和することについて、「8割おじさん」こと西浦博・京都大教授は、次のように述べています。
感染対策に少しでも不満を持つ方の立場に立つと、本当は感染症の専門家から「感染対策の習慣化」なんて言われたくないと思います。
「これをしようよ」と私たちが言うと、特にコロナ対策に批判的な考えを持つ人たちの間では反発する気持ちが生まれます。
そういう人がいることも意識しなければいけません。
また、緩和を進めるには科学的なエビデンスを更新しながら議論しなければいけない。
今、飲食店からパーテーションが一気に消えるとします。そうなると、皆さんは「良かった」と思うと同時に、「あれだけやらせていたくせになんで手のひら返しでもういいよと言うのか!」とか、「今までの感染対策はなんだったのか。意味がなかったじゃないか」とか思うでしょう。
これは流行中にエビデンスがアップデートされて、合理性がなくなったので整理するということなのですが、コミュニケーションを間違うと科学に不信感を抱かせてしまうかもしれません。
だから、仮に緩和が前のめりで進むにしても、この話は絶対に拙速にやるべきではないです。時間をかけた、丁寧なコミュニケーションが必要となります。
だって、僕らの未来の日常のことなのですし、不快な暮らしをしない一方で妥協点を見つけることでもあるのですから。「西浦が言うことなんて俺は絶対しないよ」という人だっているでしょう。
「エビデンスがアップデートされて、合理性がなくなった」なんて何やら格好いいセリフを述べていますけれども、アップデートというのは、「機器やアプリの不具合の改善や、新しい機能の追加、セキュリティの向上を目的として、ソフトウェアを追加したり修正したりする」ことで、これまでの流れを維持しながら、よりよいものにするという意味合いで使われます。
けれども、武漢ウイルスの感染対策の場合は、たとえば、マスクは有効だ、いや無効だと、右にいったり左にいったり。ワクチンにしても、「感染を予防する効果がある」、とか「2回接種すれば集団免疫ができる」、が今では「重症化を予防する」に変わっています。感染予防が重症化予防になるというのは、主張の後退であって、どちらかといえば「ダウングレード」に相当するものではないかと思います。
ですから、感染対策を十把一絡げにして「エビデンスがアップデートされた」なんていうのは、どこか誤魔化しが入っているのではないかとさえ思えてきます。
要するに、エビデンスに一貫性がなく、真逆の内容に上書きされるような「アップデート」は、いくら丁寧にコミュニケーションしたところで簡単に解消するものではないのではないか。もっと、ぶっちゃけていえば、河野太郎デジタル相の街頭演説で起こった「謝罪しろ」の大合唱ではないですけれども、しかるべき責任者の総括なり謝罪なりがなければ、そもそものコミュニケーションの土俵にも立てないのではないかということです。
4.オペレーションズ・ノンリサーチ
先程、河野太郎デジタル相が自身のブログでワクチンについてマスコミにエビデンスに基づいた記事を書くよう要請したことを取り上げましたけれども、その記事の前日に「オペレーションズリサーチとトイレットペーパー」という記事があります。
記事そのものは左程特筆すべきものではないのですけれども、注目すべきは「オペレーションズリサーチ」という考え方です。
オペレーションズリサーチとは、数理的な解析手法やアルゴリズムを駆使して、現実の問題をモデル化し、計画や意思決定を最適化する方法論です。第2次世界大戦中のイギリス軍の作戦研究から発展した分野で、分析方法としては、数理モデル、統計的な手法、アルゴリズムなどがあるとされています。現代では戦争だけではなく、ビジネスや学術研究などあらゆる場面やオペレーションの検証にオペレーションズリサーチが使われるようになっています。
前述の西浦教授がなぜ「8割おじさん」と呼ばれるようになったかというと、武漢ウイルスのパンデミック初期に8割の接触減が必要だと主張していたからです。
当時、西浦教授は「42万人死亡説」を発表したり、「2週間後はニューヨークになる」と述べるなど、世間に衝撃を与えました。けれども、蓋を開けてみれば、そんなことは起こらず、結果として大外れに終わりました。
これは、要するに、西浦教授が立てた仮説や数理モデルが間違っていたということです。
競馬の当たり外れ程度であればともかく、人の生き死に関係し、国民全体の行動制限にまでおよぶ予測を大外しした。「テヘペロ」で済ますにはあまりにもインパクトが大きすぎました。これに対して、西浦教授はなんらかの説明なりあったのでしょうか。
もし、そんなことをせず、しれっと「エビデンスがアップデートされた」で済むと思っているのだとしたら、それはちょっと甘いのではないかと思います。
ワクチン接種について、当初感染予防効果があるといっていたのが、いつの間にか「ワクチンは元来スタートは重症化予防だった」と厚労相が発言するのを聞くにつけ、果たして政府のワクチン政策は、「オペレーションズリサーチ」されているのかどうか不安になってきます。
世界一ワクチン接種しているのに、世界一感染者が出続けている。この現実をモデル化して対策を立てることをしないのなら、そこにあるのは「オペレーションズ"ノン"リサーチ」です。
5類に落とすという判断は別によいとしても、どのような「オペレーションズリサーチ」の結果によってそうなったのか。そして、今の現状を迎えたことについての説明を国民にきちんと行っていく。いまこそそれが必要なのではないかと思いますね。
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