2025年の台湾有事

今日はこの話題です。
画像

 ブログランキングに参加しています。よろしければ応援クリックお願いします。


2023-02-02 183500.jpg


1.直感では2025年に我々は戦うことになる


1月28日、アメリカ空軍のマイク・ミニハン大将が、自分が指揮する将校たちに、アメリカが2年以内に中国と戦争になると予測し、目標に向かって ”一発 ”発射し、”頭を狙って ”準備するよう指示するメモを送ったことが明らかになりました。

メモには「私が間違っていることを望む……直感では25年に我々は戦うことになる……2024年に台湾とアメリカの両方で大統領選挙があるため、アメリカは”気が散り”、中国の習近平国家主席が台湾に動く機会になる」と記されていて、「第一列島線の内側で戦って勝利する準備ができており、強化され、統合された、機敏な統合部隊作戦チーム」を構築することを含む、準備の目標を示しています。

この署名入りメモは、航空機動司令部(AMC:Air Mobility Command)の全航空団長と他の空軍作戦司令官宛で、2月28日までに中国との戦いに備えるためのすべての主要な取り組みをミニハンに報告するように命じています。

具体的には、2月中は、航空機動司令部の全職員に「悔いのない殺傷力が最も重要であることを十分に理解した上で、7メートルの標的に弾丸を撃ち込むように……頭を狙え」と指示し、また、全兵士に記録と緊急連絡先を更新するよう命じています。

3月には、同じく航空機動司令部の全職員に対し、「個人的な事柄を考慮し、法的な準備と心構えができているかどうか、所属する基地の法務局を訪れるべきかどうかを検討する」ように指示。さらに「無謀にではなく、意図的に走れ……もしあなたが訓練へのアプローチに満足しているのなら、十分なリスクを取っていない 」と訓練ではある程度のリスクを受け入れるよう促しています。

航空機動司令部は5万人近い軍人と500機近い飛行機があり、輸送と給油を担当しているのですけれども、その全職員にこのような通達を出したということは、本気で戦争に備えだしているのだと見てよいのではないかと思います。


2.日本で行われた台湾有事シミュレーション


1月19日のエントリー「台湾をめぐる次の大戦の最初の戦い」で、アメリカのCSIS(戦略国際問題研究所)が台湾有事での戦争シミュレーションを行った報告書について取り上げましたけれども、CSISはこのシミュレーションを日本でも行い、日本からも専門家が参加したそうです。

その中の一人である地政学者の奥山真司氏はその様子を次のように語っています。
・アメリカのcsisが来日して台湾有事のウォーゲーミングを主催したので参加した。
・参加者の詳細は明かせないが、自衛隊OBとか中国専門家とか参加していた。各々名札を付けていた。
・そのウォーゲーミングはコンピューターもちょっと使ってる部分はあるが基本はボードゲームで、csisで使ったものと全く同じボードを使用。CSISでやった設定とほぼ同じだった。
・結論はアメリカでやったCSISのゲームと同じだった。
・やってみたら結局これしかないという結論だが、設定に少し無理がある。ゲームにしなきゃいけないしいきなり バトルが始まる。
・いきなり台湾が中国から攻撃をミサイルで受けて 台湾の海軍がほぼ消滅。台湾空軍がボコボコにやられた条件付きのところからスタートしている。
・コンサートでいえば、いきなり最高潮で、こうなっているところから始まっている。そこに至るまでのプロセスを全て抜いている。
・そこからのスタートだから中国側のプレイヤーも焦っちゃって。こっちもびっくりで。自衛隊が防衛出動するかどうか。重要事態認定などその辺の認定とかの話がいきなり最初のターンで始まる。
・全部で4ターンで、1ターンがだいたい3.5日分の想定でやる。だいたい2週間分ぐらいのオペレーションをいきなりやる。
・実際は、外交交渉などがどこから始まるかっていうのが一番大事
・戦略の階層で言うとオペレーションのレベルでもなくて いきなり戦術とかその辺のレベルになってちょっと問題じゃないか
・今回僕らがやったシミュレーションでは、アメリカの空母2隻が中国の潜水艦に沈没させられる。本来有り得ない。
・そこから始まったなら日本でやろうと大体同じ結果なるってのはまあわからなくもないが、設定に相当無理がある。
・日本チームの方々が言うには、自衛隊が相当見くびられている。想定がちょっと古いし、こんなに戦力無いっていう状態で見られていたのかと文句をいいたい人が結構いた。
・ゲームいいなと思った。うわーってなって、こう腕組みしてみんなでボード見てるっていうこの楽しさは何者にも代えがたい。
・やっている状況を見てて、安保法制の凄さを体感した。ゲームでも一応アメリカと一緒に行動できてるのは安保法制の功績。
・安保法制が結果的にグレーゾーンでの抑止力として担保している。
奥山氏はCSISの戦争シミュレーションの効果を認めつつも、いきなりドンパチとなる設定には無理があり、そこに至る過程や、外交交渉がどこから始めるかなど、戦略のより上位の階層での動きが重要だと指摘しています。




3.沖縄に新設される海兵沿岸連隊


冒頭のマイク・ミニハン大将のメモでも明らかなとおり、アメリカは台湾有事を睨んでその準備を進めています。

1月11日、アメリカのオースティン国防長官はワシントンでの共同記者会見で、在日米軍再編の計画の一部を見直し、新部隊を置くことを明らかにしました。

再編するのは、沖縄県に駐留する海兵隊の一部で、「海兵沿岸連隊(MLR)」にするとのことです。

海兵沿岸連隊(MLR)は海兵隊が近代化の一環として創設した部隊で、最初の部隊は2022年3月にハワイに置かれたばかりで、沖縄は二つ目になります。

海兵沿岸連隊(MLR)は機動力が高く、敵に捕捉されにくいことに加え、有事の際に島嶼部に分散展開できるという強みがあります。海兵沿岸連隊(MLR)の主な任務は敵艦隊に対する抑止力を高め、制海権確保を支援することになるのですけれども、アメリカ国防総省などによると、海兵沿岸連隊(MLR)には、これまでの部隊に配備された高機動ロケット砲システム(HiMARS)に代わり、新兵器の地上配備型対艦ミサイル「NMESIS(海軍海兵隊遠征船舶阻止システム)」が配備されるとのことです。

当初は2027年までの配置を計画していたとされていたところが、「2025年までに」と目標を前倒ししたのですけれども、この2025年は、冒頭のマイク・ミニハン大将のメモと符合しており、アメリカ政府あるいは軍は、最短で2025年に台湾有事が起こると見ているのではないかと思われます。

オースティン国防長官は、会見で2027年までの中国の台湾侵攻の可能性を指摘するなど、中国の早期侵攻には否定的な見解を示していますけれども、日本側からは「安全保障環境の厳しさに対する米国の切迫感が非常に強かった」と驚きの声が上がったそうです。




4.在比米軍基地再び


アメリカの備えはそれだけではありません。

1月30日、ワシントン・ポストは、中国の脅威に対抗し、インド太平洋地域で軍事態勢を強化するため、フィリピンに軍事基地使用権限を追加で確保する予定だと報じました。

アメリカ軍が新たに接近権限を持つことになる軍事基地は、フィリピン本島であるルソン島北部で、台湾と近い位置になるようです。既に2ヶ所は決定され、現在細部の詰めの交渉に入っていますけれども、近いうちにオースティン国防長官がフィリピンを訪問して、フィリピンのマルコス大統領、ガルベス国防相と会談して公式発表すると見られています。

これに先立ちアメリカのサリバン大統領補佐官は今月初めにフィリピンのアニョ国家安全保障担当顧問とこの問題を協議したと伝えられています。

フィリピン政府当局者は、アメリカとの軍事協力強化は自国の防衛態勢に役立つが、こうした安全保障強化の推進が特定の国を狙ったものではないと強調。その上で、マルコス大統領は台湾海峡と西フィリピン海の状況を綿密に注視していると述べています。まぁ、誰が見ても中国を狙った国防強化です。

これについて、アメリカ戦略国際問題研究所(CSIS)のグレゴリー・ポーリング上級研究員は「今回の措置は単に台湾や南シナ海の偶発状況に備える意味で重要なだけでなく、フィリピンが同盟の現代化に全面的に参加し現代的な同盟は彼らにも責任があるということを理解しているというシグナル」と評価しました。

1898年から1946年までアメリカの植民地だったフィリピンは、アメリカ1951年に相互防衛条約を結び同盟となりました。第2次世界大戦後にアメリカ軍の最大海外基地のうち2ヶ所がフィリピンに位置していたのですけれども、1991年にフィリピン議会が主権侵害を主張してすべての米軍基地に対する権利放棄を要求し、翌年アメリカ軍が撤収した過去があります。

アメリカ軍撤収後に生まれた東南アジア、南シナ海の「力の空白」に対し、それを埋めに掛かったのは中国です。1992年、中国は領海法を制定し、「東シナ海から南シナ海まで全部自分のものだ」と宣言。これを契機として、中国の海洋進出が活発化していきました。その後は皆さんよくご存じの通りです。

2014年、フィリピンとアメリカは、米軍のフィリピン展開強化を柱とする国防協力拡大協定(EDCA)を締結。これにより空軍基地4ヶ所と陸軍基地1ヶ所に兵力を循環配置することになりました。

けれども、この時は台湾と近いルソン島北部の基地は含まれていませんでした。

シドニー大学のマイケル・グリーン米国研究センター長は今回の措置に対し、「米国と日本のような同盟国に激励になる大きな進展であり、中国には強要の代償に対するシグナルを送るもの」と話していますけれども、明らかに台湾有事を想定したものだと思われます。

このようにアメリカは2025年を一つの目安として、台湾有事を想定しています。

2022年12月に岸田内閣が閣議決定した「国家安全保障戦略」の「策定の趣旨」に「国家としての力の発揮は国民の決意から始まる。国民の理解と協力を得て、国民がわが国の安全保障政策に自発的、主体的に参画できる環境を政府が整えることが不可欠だ」と記載されていますけれども、おそらく日本政府にも、アメリカ政府から台湾有事に関する内部情報が伝えられているのではないかのと思います。

望むと望まないとに関わらず、台湾有事は迫っている。日本は既に「新しい戦前」に突入しているのだという認識を強く持つべきではないかと思いますね。


  twitterのフリーアイコン素材 (1).jpeg  SNS人物アイコン 3.jpeg  カサのピクトアイコン5 (1).jpeg  津波の無料アイコン3.jpeg  ビルのアイコン素材 その2.jpeg  

この記事へのコメント