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1.プーチンのボルドグラード演説
2月2日、ロシアのプーチン大統領はロシア南部のボルゴグラード、かつてのスターリングラードを訪れ、戦勝80年を記念する式典に出席し、演説しました。
その演説内容は次の通りです。
ウラジーミル・プーチン:退役軍人の皆さんへ。親愛なる皆様へ内容は、さすがに旧レニングラードという土地での戦勝記念ということもあり、スターリングラードの戦いを褒め称えるものでした。ただ、ナチズムとレオパルド戦車を引き合いに出し、この度ドイツがウクライナにレオパルド2を供与することを決めたことを痛烈に批判しています。
今日、我々は、わが国と全世界の歴史において記念すべき日を迎えた。ちょうど80年前、ロシアの大河ヴォルガのほとりのスターリングラードで、憎むべき残酷な敵が止められ、取り返しのつかないほど後退し、長く、つらく、激しいスターリングラードの戦いが終結したのだ。
大祖国戦争だけでなく、第二次世界大戦全体の帰趨が決まっていたのだ。塹壕や後方にいた誰もがそれを感じ、実感した。我々の歴史の中で何度もそうであったように、我々は決戦の場で共に立ち上がり、勝利を収めたのだ。
スターリングラードの戦いは、大祖国戦争の決定的な転換点として、正しく歴史に刻まれている。ドイツ国防軍とその衛星の最大グループの敗北とともに、ヒトラー連合全体の意志が敗北した。ナチスドイツのヨーロッパの家臣と協力者は、スターリングラードで、ほとんどすべてのヨーロッパの従属国の代表として、その多くが戦い、必死に逃げる方法を探し始め、責任を回避し、すべての責任を元の主人に転嫁しようとし始めた。ナチスのわが国を破壊する計画、世界征服の構想はすべて失敗に終わるということが、ソ連国民が当初から知っていたことが、ついに誰の目にも明らかになったのである。
スターリングラードで200日間、瓦礫と化した伝説の街の通りで、2つの軍隊が死闘を繰り広げ、精神的に強いものが勝利したのだ。兵士や司令官たちの激しい、時には人間の能力を超えた抵抗は、彼らの祖国への献身、真実は我々の側にあるという確固たる絶対的な信念によってのみ理解され、説明されうるものである。祖国のため、真実のため、最後までやり抜く意志、不可能を可能にする意志は、我々多国籍の人々の血となり、性格となり、ナチズムを打破したのだ。
スターリングラードは、永遠にわが民族の不滅の象徴であり、生命そのものの強さの象徴である。1943年2月には、木一本、建物一棟も残っていなかったからである。
スターリングラード防衛隊と住民の並外れた不屈の精神と無私の精神は、今、核心を突き、心からの感謝と尊敬を呼び起こす。我々の道徳的な義務、とりわけ勝利した兵士たちに対する義務は、この功績の記憶を完全に大切にし、次の世代に伝え、ナチズムに対する勝利とこの恐ろしい悪からの全世界の解放におけるスターリングラードの戦いの役割を過小評価することを誰にも許さないことだ。
今、残念ながら、ナチズムのイデオロギーが-すでにその現代的な装い、現代的な現れで-わが国の安全に対する直接的な脅威を再び生み出しているのを目の当たりにし、我々は、西洋の集団の侵略を撃退することを何度も強いられているのである。
信じられない-信じられないが、事実だ。我々は再び、十字架を載せたドイツのレオパルド戦車に脅かされ、再び、ヒトラーの子孫の手で、バンデル人の手で、ウクライナの土地でロシアと戦おうとしているのである。
我々は、我々に友好的でない西側エリートによる宣伝の努力(公式なもの、悪徳なもの)にもかかわらず、アメリカ大陸、北米、ヨーロッパを含む世界中に多くの友人がいることを知っているのだ。
しかし、ドイツを含むヨーロッパ諸国をロシアとの新しい戦争に引きずり込み、いっそう無責任にそれを既成事実として宣言する人々、戦場でロシアに勝つことを期待する人々は、ロシアとの現代の戦争が彼らにとって全く異なるものになることを理解していないようだ。我々は戦車を彼らの国境に送っているわけではないが、答えるべきものがあり、それは装甲車を使うだけでは終わらない。誰もが理解できるはずだ。
我々を脅す人たちは、おそらく単純な真実を理解していないのだろう。我々の国民は皆、成長し、母の母乳とともに、我々の国民の伝統を吸収してた。勝者の世代は、労働と汗と血によってこの国を築き、我々にそれを引き継いできたのだ。
スターリングラード守備隊の不屈の精神は、ロシア軍と我々全員にとって最も重要な道徳的指針であり、我々の兵士と将校はこれに忠実である。世代、価値観、伝統の連続性がロシアを際立たせ、自分たちの正しさ、勝利に強く、自信を持たせているのだ。
この会場にいらっしゃる皆様、祖国を守る今日の皆様、すべてのロシア国民、海外の同胞の皆様、スターリングラードの戦いの勝利から80周年を迎えられたことを心からお祝い申し上げます。
生命と正義の勝利の祝祭に、幸あれ。
ご清聴ありがとうございました。
2.西側の侵略に対応する指導者
長引く露・ウクライナ戦争に、西側メディアはプーチン大統領を批判していますけれども、ロシア国内のプーチン大統領への支持は依然と高い水準を維持しています。
独立系の調査機関「レバダセンター」は毎月、ロシア全土のおよそ1600人を対象に世論調査を行っているのですけれども、2月1日に1月の結果を発表しました。
それによると、「プーチン大統領の活動」に対しては82%が「承認する」としていて、12月の調査から1ポイント上昇。一方で、「承認しない」と答えた人は16%で12月の調査から1ポイント減りました。
プーチン大統領の支持率はウクライナ侵攻後の3月に71%から83%に跳ね上がり、その後、ロシア軍への「部分的動員」を発表した9月からの3か月は70%台に落ちました。しかし、その後は再び80%台に回復していて、戦闘が長期化しているにもかかわらずプーチン大統領は高い支持率を維持しています。
また、同じ調査で「ロシア国内の物事が正しい方向に進んでいるか」との質問に対しては、66%の人が「正しい方向」と答えていて、こちらも12月の調査から3ポイント増えています。
この「レバダセンター」は2003年に設立され、独自の世論調査活動や分析を続けているのですけれども、2016年には、プーチン政権によって、いわゆる「外国のスパイ」を意味する「外国の代理人」に指定され、圧力を受け続けているそうです。それでも昨年9月には「部分的動員」によって、ロシア国民の過半数が不安や怒りを感じたことを報じるなど気概を見せています。
「レバダセンター」で長く所長を務め、2021年から研究部長としてロシア社会について独自の分析を続けていれうレフ・グドゥコフ氏は、プーチン大統領への高い支持率について次の様に述べています。
この数字はプーチン氏には責任がないことを示しています。人々はプーチン氏を問題の責任者だとみなしていません。国家の象徴であり、西側の侵略に対応する指導者だと考えているのです。
この状態は全体主義的であると言えます。インターネット上ではファシズム、ロシアファシズムと言う人がますます増えています。
実際に国家機構の活動はますます明白になっており、国家が従来はその管轄に入っていなかった、科学、芸術、家族生活、道徳、宗教、文化、教育などの部門へと管理を拡大していることは事実です。
西側がロシアを侵略している、というのはプーチン大統領が演説の度に口にしていましたけれども、ロシア国民もそういう意識だとするならば、プーチン大統領への支持が高いというのも理解できます。
3.戦車供与決定の遅れはウクライナ反撃のチャンスを奪った
一方、ウクライナはロシアの侵略に対して徹底抗戦していますけれども、それには西側の軍事支援の状況に大きく左右されるのは事実です。
1月29日、ウクライナのゼレンスキー大統領は29日、欧米諸国に兵器の供給を加速させるよう訴えていますけれども、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、欧米の軍事支援に関する分析を発表しています。その概要は次の通りです。
・西側の長距離射撃システム、高度な防空システム、および戦車のウクライナへの提供の遅れにより、ロシアの軍事作戦の欠陥と失敗によってもたらされる、より大きな反撃作戦の機会を利用したいウクライナの能力が制限されている。このように戦争研究所は、戦車供与の決定の遅れが、ウクライナ軍の目論む冬の反撃を制約していると指摘しています。
・想定される「行き詰まり」状態と、2022年にロシアが押収した領土の大部分をウクライナが取り戻すことの困難または不可能性に関する西側の議論は、必要な軍事装備の提供の遅れがこれらの問題をどのように悪化させたかを十分に説明していない。
・承認と援助の到着が遅いことだけが、ウクライナが大規模な反攻作戦を継続的に開始する能力を制限している要因ではない。ウクライナ軍とウクライナの政治的意思決定に内在する要因も、反撃を遅らせる一因となっている。
・ISWは、ウクライナのすべての軍事的決定が最適であったと評価する準備ができていない。(実際、ISWはウクライナの軍事意思決定をまったく評価していない。しかし、歴史家として、私たちはどの戦争においても完璧な軍事意思決定を観察したことはない)しかし、西側の支援がない場合、ウクライナには重要な国内軍事産業がない。戦時中の西側の武器供給への躊躇は、支援すると約束するとすぐに、ウクライナがソビエトから西側のシステムに移行させるという予測可能な要件を十分に考慮していなかったからだ。
・米国主導の西側連合による軍事援助は、ウクライナの存続に不可欠であり、このレポートの批判は、その援助の重要性と限界を示している。
・ 2月24日の侵攻前の西側軍の助言は、ウクライナ軍が最初のロシアの侵略に抵抗するのに役立った。
・ジャベリン対戦車ミサイルなどの西側の兵器システムは、ウクライナがその猛攻撃を打ち負かし、キエフに対するロシアの攻撃を出発点に戻すのに役立った。
・西側連合のメンバーによる重要なソビエト時代の武器システムと弾薬の提供により、ウクライナ軍は戦争中ずっと活動を続けてきた。米国製の 155mm砲兵 (4月)や HIMARS (6月)などのより高度な西側システムの納入により、ウクライナの反撃が促進され、ハリコフ州の大部分とヘルソン州西部が解放された。
・11月に西側のNASAMS防空システムが到着したことで、ウクライナの民間インフラを攻撃するロシアの無人機とミサイルの攻撃が鈍化した。
・戦争はこれまで 3つの主要な時期に展開されてきた。ロシア人は主導権を握り、2022年2月24日から7月3日まで攻勢に出ており、その後攻撃は最高潮に達した。ウクライナ人は主導権を握り、8月に大規模な反撃を開始し、11月11日にヘルソン州西部を解放するまで続いた。ロシアが再び主導権を握ろうとすれば奪還できる機会を与え、そうでなくても将来のウクライナ反攻の水準を上げている。欧米の援助の提供形態は、この紛争のパターンを強力に形作ってきた。
・西側がウクライナに高性能の西側兵器システム、特に戦車、長距離攻撃システム、防空システムを供給し始めることに消極的であるため、大規模な反撃作戦を開始し、継続するウクライナの能力が制限されている。
・健全な反攻作戦の設計とは、敵の攻勢を可能な限り迅速に阻止し、敵の攻勢が一段落した後に迅速に決定的な反攻作戦を開始し、敵の混乱とその後の大規模作戦への準備不足を利用し、さらに反攻作戦の間にできるだけ短い時間をおいて、敵が戦力を再構成して主導権を取り戻すのを阻止することだ。
・ほとんどの軍隊がこの理想的な基準を満たせないのには多くの要因があり、ウクライナ軍もそのために多くの内部課題に直面した。しかし、健全な作戦の立案と実行には、武器と補給品が常に中心となる。
・ウクライナは戦争開始当初、意味のある防衛産業を持っていなかったため、ロシアの最初の攻勢を阻止し、さらに反攻を開始し維持するために必要な資材の提供を、ほとんど完全に西側支援国に依存していた。このように、欧米の援助パターンが、ウクライナの健全な作戦計画策定・実行能力を大きく左右した。
もっとも、ロシア側は、ウクライナへの戦車の供与を決定した欧米側に反発。1月30日、ロシア外務省のリャプコフ次官は、国営のロシア通信とのインタビューで「こうした状況では、ウクライナだけでなく、ウクライナを操る国々とも話すことは無意味だ」と、停戦交渉ができる状況にはないと批判しています。
4.長期戦を回避するために
そんな折、アメリカのシンクタンクである「ランド研究所」が「長期戦を回避するために ~アメリカの政策とロシア・ウクライナ紛争の軌跡~」というレポートを発表しました。その報告書の序論は次の通りです。
・どのように終わるのか?この問いが、ワシントンなど西側諸国でロシア・ウクライナ戦争の議論を支配するようになってきている。このようにランド研究所は、西側諸国で、ロシア・ウクライナ戦争をどう終わらせようかの議論に入っているとし、ウクライナはロシア軍の戦争犯罪の犠牲となっているとしつつも、アメリカはこの戦争がアメリカの国益にどう影響するのかを示す義務があると述べています。つまり、ウクライナよりアメリカの国益を優先すると宣言している訳です。
・この問いは、ワシントンをはじめとする西側諸国の首都で、ロシア・ウクライナ戦争に関する議論を支配しつつある。2022年秋、ハリコフとケルソンでウクライナ軍の反撃が成功し、戦場でのキエフの見通しについて楽観論が生まれたが、9月21日にプーチン露大統領がウクライナ4州の一部動員・編入を発表したことは、この戦争がまだ解決にほど遠いことをはっきりと思い出させるものであった。約1,000kmに及ぶ前線では、いまだ戦闘が続いている。
・紛争終結のための交渉は5月以来中断している。もちろん、戦争の軌跡と最終的な結末は、ウクライナとロシアの政策によって大きく左右される。しかし、その行方を左右するのは、キエフとモスクワだけではあるまい。
・この戦争はここ数十年で最も重要な国家間紛争であり、その進展は米国に大きな影響を与えるだろう。この紛争がどのように進展するか、代替的な軌道がアメリカの利益にどのような影響を与えるか、そしてアメリカに最も適した軌道を推進するためにワシントンに何ができるかを評価することは適切である。
・アメリカの利益に最も役立つ道を進むために、ワシントンができることは何か。
・この戦争は、アメリカとウクライナにとって有益な結果に向かっているとする分析もある。ウクライナは2022年12月時点で、戦況に勢いがあり、ロシア軍を国外に追い出すことに成功するまで戦うことも十分考えられる。
・ウクライナから撤退させれば、懲りたロシアは隣国を平和的に去り、損害賠償をする以外に道はないだろう。
・しかし、過去の紛争を研究し、今回の紛争の経過をよく見てみると、この楽観的なシナリオはあり得ないことがわかる。
・そこで本論では、ロシア・ウクライナ戦争が取り得る軌道と、それがアメリカの国益にどのような影響を与え得るかを探る。また、ロシア・ウクライナ戦争の行方に影響を与えるために米国ができることを検討する。
・重要な注意点として、本論ではアメリカの利益に焦点を当てるが、それはしばしばウクライナの利益と一致するものでもない。
・我々は、ウクライナ人が、いわれのない、違法な、そして道徳的に非難されるべきロシアの侵略から自国を守るために戦い、死んでいったことを認めている。彼らの都市は破壊された。彼らはロシア軍の戦争犯罪の犠牲者であった。
・しかし、アメリカ政府は国民に対して、戦争の道がアメリカの利益にどのような影響を及ぼすかを判断し、その利益を促進するために戦争の行方に影響を与える選択肢を探る義務がある。
レポートでは、戦争が長期化した場合の利益とコストを一覧にしています。それは次の通りです。
一覧してこの戦争で得られる見返りに対して、支払うコストが膨大になっていることが分かります。
5.及び腰になったランド研究所
ランド研究度はこのレポートの結論として次のように述べています。
結論ランド研究所は、戦争の長期化を避ける政策として「ウクライナに対する今後の支援方針の明確化」、「ウクライナの安全保障に対するコミットメント」、「ウクライナの中立性に関する保証」、「ロシアに対する制裁緩和の条件設定」の4つを挙げていますけれども、このうち後ろの2つは元々ロシアが主張していたことです。
・ロシア・ウクライナ戦争の行方をめぐるワシントンなど西側諸国の首都での議論は、領土支配の問題を 特権化している。
・反対派は、これ以上踏み込むとエスカレートする危険性があるとして、2022年2月以前の制圧ラインを目標とするよう米国に求めている。
・アントニー・ブリンケン国務長官は、アメリカの政策目標はウクライナが「2月24日以降に奪取 した領土を取り戻すこと」であると述べている。
・領土の支配はウクライナにとって非常に重要であるが、米国にとって戦争の将来における最も重要な次元ではない。
・我々は、ロシアと北大西洋条約機構(NATO)の戦争やロシアの核使用へのエスカレーションの可能性を回避することに加え、米国にとって長期戦を回避することは、ウクライナの領土支配を大幅に促進することよりも優先度が高いと結論付けている。
・さらに、米軍は戦闘に直接関与していないため、米国が最終的にどこで線引きを行うかを細かく管理する能力は非常に限られている。
・また、ウクライナの領土支配を可能にすることは、米国が戦争の軌道に影響を及ぼすために利用できる唯一の手段とは言い難い。
・我々は、米国が戦争を米国の利益をより促進する方向に導くために使用できる他のいくつかの手段(潜在的により強力な手段)を強調した。米国は、戦争の領土的な帰趨を直接決定することはできないが、これらの政策を直接支配することは可能である。
・このような政策を直接コントロールすることができる。バイデン大統領は、この戦争は交渉の席で終結すると述べている。
・しかし、政権は、当事国を交渉の場に向かわせるような動きをまだ見せていない。アメリカの政策転換が交渉のきっかけになるとは到底思えないが、本論で述べたような政策を一つ以上採用することで、交渉の可能性はより高まるだろう。
・ロシアとウクライナが戦争に対して楽観的で、平和に対して悲観的である理由を明らかにする。戦争終結に関する文献によれば、こうした認識が紛争の長期化につながる可能性がある。そこで、米国がこのような力学を転換させるための4つの選択肢を挙げる。
・すなわち、ウクライナに対する今後の支援方針の明確化、ウクライナの安全保障に対するコミットメント、同国の中立性に関する保証、ロシアに対する制裁緩和の条件設定である。
・アメリカの政策を一夜にして劇的に変えることは、国内でも同盟国でも政治的に不可能であり、いずれにせよ賢明ではないだろう。
・しかし、これらの手段を今すぐ開発し しかし、これらの手段を今すぐ開発し、ウクライナや米国の同盟国との間で共有することは、この戦争を米国の利益にかなう時間内に交渉によって終わらせることができるプロセスを最終的に開始する触媒となる可能性がある。
・その代わり、米国にとって大きな課題となる戦争が長く続くことになる。米国、ウクライナ、そして世界の他の国々にとって大きな課題となる長期戦である。
筆者は昨年3月27日、「G7が主導するロシア排斥とランド研究所のレポート」のエントリーで、ランド研究所の「ロシアの過度の拡大と不均衡 ~コストを課すオプションの影響の評価~」を取り上げ、バイデン政権のウクライナ支援と対ロシア政策はこのまんまやっていると指摘しましたけれども、それがここにきて、長期戦を回避するように、などとしれっと提言したことになります。
件のレポートでは、ロシアにコストを課すことで弱体化させよと言っていたのが、1年も経たずにそれを否定する。何のことは無い、アメリカの方が自身のコストの負担に耐えかねて悲鳴を上げた訳です。
6.エスカレーションか停戦か
先述の「レバダセンター」のレフ・グドゥコフ氏はロシア国内の経済制裁の影響について次のように述べています。
実際に制裁の影響を感じているのは国民のおよそ18%、最大で20%です。これは中産階級、あるいは上位中産階級と呼ばれる人たち、大都市の比較的裕福で教育水準が高く、市場経済により組み込まれている人たちです。そういった人たちは、このプーチン氏の思惑がどのような影響をもたらすか、情報をより多く持ち、より理解しています。彼らは恐怖を感じています。外国へ去った人々の大部分がまさにこうした人たちなのは偶然ではありません。IT専門家、金融業、学術研究員、大学の教員などです。このように、経済制裁の影響を感じているのはロシア国民全体の2割程度であり、それ以外は何が起こっているのか分かっていないというのですね。
一方、大多数は貧しい生活をしています。農村や、農村での生活水準とあまり差のない小都市の住民です。とても貧しい住民で彼らの生活は悪くなりましたが、物価が上昇しても彼らの意識の中では戦争や制裁と、自分たちの経済的、物質的状況の悪化は関係がありません。この関係は完全に断ち切られています。
反対派がおらず、情報空間は完全に管理されており、人々には耳を傾けることのできる権威ある意見がないので、起きていることを解釈できないのです。
もし、この通りであるのなら、それこそ、ロシア国内に直接攻撃して被害でも出さない限りは、ロシア国民の大多数に何が起こっているのかを知らせることは難しいかもしれません。けれども、そんなことをしたら、本当に核戦争の危機になってしまいます。
とうとうランド研究所が、コスト負担に耐えかねてロシアの要求を飲んででも、戦争を終わらせよといいだした。露・ウクライナ戦争は大きな転換点を迎えているのかもしれませんね。
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