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1.台所に料理人が多すぎてはならない
1月31日、イスラエルのネタニヤフ首相は、ロシアのウクライナ侵攻を巡り、両国とアメリカから要請があれば、双方の仲介役を務めることを検討する意向を示しました。
これはCNNのインタビューで語ったもので、ネタニヤフ首相は「あらゆる関係当事国から要請があれば、確かに検討するが、自ら進んで行うつもりはない」と発言。さらに「適切なタイミングと状況」でなければならないと語り、また、「台所に料理人が多すぎてはならない」とも述べ、アメリカからの要請も必要だと指摘しました。
また、ネタニヤフ首相は昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻開始直後に仲介役を頼まれたものの、当時は首相ではなく、野党党首だったため断ったと明らかにしました。では、首相になった今度は仲介をやるのかというと、要請されたら、検討するが自分からはやらないとか、リーダーが多いとまとまらないとか、一杯注文をつけています。一体、仲介する気があるのか、ないのか、どこか消極的な態度にも見えなくもないのですけれども、ウクライナは当時イスラエルの首相だったナフタリ・ベネット氏に仲介役を依頼したのですけれども、和平交渉を成立させるには至らなかった過去があります。
2.私はゼレンスキーを殺さない
そのベネット氏は2月4日、自身のYouTubeチャンネルで公開されたインタビューで、昨年3月5日、ロシアが侵略を開始した直後に仲介するためにモスクワに飛んだとき、プーチン大統領と会談したことについて語っています。
ベネット氏は「彼は私に 2つの大きな譲歩を与えてくれました……私は、ゼレンスキーが塹壕で脅威にさらされていることを知っていました……私は、『あなたはゼレンスキーを殺すつもりですか?』と言いました。彼は『私はゼレンスキーを殺さない』と言いました」と述べました。
ベネット氏は更に「ゼレンスキーを殺さないという約束は?」とプーチン大統領に尋ねると、プーチン大統領は「私はゼレンスキーを殺さない」と繰り返したのだそうです。
ベネット氏は、プーチン大統領との3時間の会談の直後にウクライナ大統領に電話会談し、そのプーチン大統領の言葉を伝えたのだそうです。
ベネットによると、プーチン大統領はウクライナの武装解除を要求しないことにも同意したそうで、実際、その週末、ゼレンスキー大統領はウクライナがNATOに参加するようにという自身の主張を取り下げています。
当時の報道を見直してみると3月16日付のイギリス「ファイナンシャル・タイムズ」紙は、「両国交渉団が去る14日、休戦合意草案について協議を行った。草案の中には、ウクライナがNATO加盟および外国軍駐留を望まないことを条件として、米英トルコなどいくつかの国による安全保障の約束とりつけ案などが含まれる」と報じ、ウクライナ大統領側近のミハイロ・ポドリャク氏は「われわれがロシア側と停戦目指し交渉していることは確かだ。ロシア軍撤退、他国政府による対ウクライナ安全確保の保証などが焦点だ」との見解を示していました。
一方ロシアのラブロフ外相もこの「ファイナンシャル・タイムズ」の報道に関し、「ウクライナの中立の立場に関して合意に近づいている」と前向きの発言をしていました。
ところがこれは結局のところ御破算になってしまいました。一説には米英が反対したためだとも言われています。
3.揺れるバイデン政権
2月4日のエントリー「引かないプーチンと及び腰のランド研究所」で、ランド研究所がロシア・ウクライナ戦争を終わらせるための提言を出したこと。そして翌5日のエントリー「ウクライナを極秘訪問したバーンズCIA長官の裏の裏」で、アメリカのバーンズCIA長官がウクライナを極秘訪問し、ウクライナに領土の一部割譲を含む和平提案を行ったと、スイスのノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング(NZZ)紙が報じたことを紹介しましたけれども、ここにきて、ネタニヤフ首相の仲介を検討してもよい発言に、ベネット前首相による昨年の仲介交渉の裏側が明かされたのは、なにか水面下でそのような動きがあることの表れなのかと思ってしまいます。
ただ、ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング(NZZ)紙は件の記事で、アメリカのバイデン政権内には、ロシア・ウクライナ戦争について、戦争を終わらせて対中シフトしたい、ジェイク・サリバン安全保障顧問並びにバーンズCIA長官と、平和秩序を破壊するロシアを許さないブリンケン国務長官とオースチン国防長官との間で対立がある、と報じています。
けれども、そもそも遡ってみれば、去年の3月の段階で、当時のイスラエルのベネット首相が仲介しての和平案が纏まりかけていたのです。もしも、そのときに合意していれば、ゼレンスキー大統領は殺されることなく、NATO加盟を捨て、中立化することで収まっていたかもしれません。
当時それで合意しなかったのは、そうするだけの理由があったことになります。
昨年4月、アメリカのオースティン国防長官はウクライナのキエフを訪問した後の記者会見で、「ロシアがウクライナ侵攻でやってきたようなことを繰り返す力を失うほどに弱体化する」ことを期待していると述べていますけれども、おそらく、戦争を続けることで、そうなると考えていたのではないかと思います。
それから1年近くたって、結果はどうなったか。
たしかにロシアは弱体化したかもしれません。けれども、「ウクライナ侵攻でやってきたようなことを繰り返す力を失うほどに弱体化」までしていないことも確かです。その一方、アメリカを初め、欧州各国は、終わることのないウクライナ支援に疲弊の色が隠せなくなっています。
だからこそ、去年の御破算になった停戦合意の話がまた表に出て来ているのではないかと思います。
去年のそれとは違い、ロシア・ウクライナ双方に多大な被害を出し、こじれにこじれた現状で、そう簡単に停戦合意が纏まるとは思いませんけれども、世界各国がイスラエルを後押しすることで、僅かにでも、停戦への望みが出てきたことは歓迎したいですし、そうなって欲しいと思います。
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