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1.ブーメランとして跳ね返ってきて脅威にならないところ
2月8日、自民党の甘利明・半導体戦略推進議員連盟会長は、ロイターのインタビューに応じ、日本が米蘭と合意した半導体製造装置の対中輸出規制について、最先端品は対象になる一方、それ以外の規制は3カ国で差が出る可能性があるとの見方を示しました。
甘利氏は「一番最先端のハイエンドの物は絶対に出さない。何世代か遅れたものをどうするかは、これから日米欧で協議をしていくのだろう……米国は今回ものすごく厳しくやっている。そこまで同じく厳しくするかというと、全く同列に並ぶということはないとは思う……米国が懸念しているものについては認識を共有するということになると思う」と語る一方で、中身について政府から説明を受けているとしつつ、詳細は明らかにしていませんでした。
2月1日、国際半導体製造装置材料協会(SEMI)は、アメリカと同水準の厳しい規制を同盟国が導入しなければ効果が不十分になる恐れがあると懸念を表明していますけれども、甘利氏は「汎用品とハイエンド、この間のどこに線を引くのかというのは、ブーメランとして跳ね返ってきて脅威にならないところ」と述べるにとどめています。
2.日本製中古半導体製造装置
日本の半導体生産装置の対中出荷規制に焦り始めたのが中国です。
2月9日、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)は「日本が中国に対する半導体製造装置・技術関連規制を強化すると伝えられたことから、不確実性を背景に、生産拡大やアップグレードするため外国製機器が必要な中国の工場は不安に駆られている」と伝えていますけれども、今、中国で日本製中古半導体製造装置に対する問い合わせが急増しているようです。
日本とオランダはアメリカの対中国半導体輸出規制に参加すると伝えられていますけれども、日本企業がどの半導体製造装置を中国に販売しないのかなど、具体的な内容は分かっていません。
中国・深セン市にある中古装置会社の営業管理者ジョニー・ラオ氏は「新たな輸出制限に関する憶測から、この2週間は日本から輸入した特定の装置の価格が急騰し、顧客からの問い合わせも大幅に増加した」と語り、ニコンとキヤノンが作った成熟ノード中古装置を販売している中国・上海南部の寧波市にある販売業者も「最近、顧客の問い合わせが増えている」と漏らしています。
2022年に日本が中国に輸出した半導体機械は前年比1.7%減の97億4000万ドル(約1兆2800億円)を記録していますけれども、サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)は「日本が先端半導体機器に対する中国の接近を断てば、日本やオランダなどから代替品を調達してサプライチェーンを多角化しようという中国の半導体業界に大きな打撃を与える可能性がある」としています。
3.安全と金の二者択一
中国政府もてサプライチェーンの維持に日本に圧力を掛け始めています。
2月11日、北京で「第16回日中省エネルギー・環境保護総合フォーラム」が開催されたのですけれども、中国政府の国家発展改革委員会の何立峰主任が講演し、「中国と日本は半導体分野で緊密につながっており、日本がサプライチェーンの安定を維持することを期待する…中国は世界最大の半導体市場だ…」と述べました。
何立峰主任は昨年10月の中国共産党大会で政治局員に昇格。香港メディアによると、3月に任期満了となる劉鶴副首相の後任に有力視されています。
国家発展改革委員会主任の何立峰氏が、中国の経済政策の司令塔だった劉鶴副首相の後任となると、そのまま中国経済の舵取りを任されることになる可能性は高いでしょう。その何立峰氏が日本に向かって、サプライチェーンの安定を維持しろ、なんていうことは要するにここが断たれることが大きな痛手になるということです。
要するに、日本が最先端半導体製造装置の対中輸出規制をすれば、中国がそれに見合った対抗措置を取ってくるかもしれないということです・
今日、日本は輸入する1000以上の品目で輸入額に占める中国シェアが5割を超え、特にコンピューター関連の部品、ノートパソコンやタブレット端末での対中依存度が高くなっています。中国は日本の対中依存度の強い分野を中心に、輸出停止や関税の大幅な引き上げなどで対抗してくる恐れがあるとも囁かれています。
けれども、その一方で日本は安全保障では、アメリカに大きく依存しています。
結局は「安全」と「金」の二者択一となり、選択せざるを得ません。既に日本政府はアメリカ・オランダと協調歩調を取ると決めました。つまり日本は「安全」を取ったということです。
4.どうする韓国
日本が安全を選択したのに対し、フラフラしているのが韓国です。
2022年2月のウクライナ侵攻に伴う対ロシア制裁の時も、アメリカは金融制裁に加え、半導体など7分野の対ロシア輸出の中断を西側諸国に要請しました。
このときの韓国の対応について、韓国ウォッチャーの鈴置高史は次のように述べています。
日本や欧州など西側の32カ国は直ちに応じましたが、韓国だけが色よい返事をしませんでした。対ロ封鎖網に世界最大のメモリー生産国の韓国が加わらなければ意味がありません。鈴置氏は、アメリカは「韓国には要請ではなく恫喝しかない、との思いを増した」はずだと述べていますけれども、今回の対中半導体製造装置輸出規制に対し、韓国は米中双方を恐れた結果、「選ばない」という選択をすると指摘し、次のように述べています。
そこで米国は7分野に関し、韓国の対ロ輸出を全てチェックすると宣言。それらの製品は米国の技術によって生産されているとの理屈です。輸出1件ごとに米国にお伺いをする羽目に陥った韓国は困り果てました。
国務省傘下のVoice of America(VOA)も「[ワシントン・トーク]韓国、ウクライナ事態に微温的…米国との同盟から離脱するな」(2月26日、韓国語版)で核軍縮の専門家、M・フィッツパトリック(Mark Fitzpatrick)CSISフェローの言葉を借りて韓国を以下のように罵倒しました。
・今回のロシア侵攻に対する国際的な対応の特徴の1つが米国とほとんどの同盟国がひとつの心、ひとつの意思で行動した点だ。ある1国[韓国]を除き、すべてがロシアに対し厳格な制裁を加えた。
・韓国の小心で微温的な手法は率直に言って恥ずかしいものであり、愚かである。恥というのは、韓国は過去に侵略の被害者として大々的な援助を貰ったし、それが再び起これば助けをまた受けるからだ。
・韓国の経済規模はロシアよりも大きい。それにも関わらず、じっと座りこんで多者間の措置だけをとるつもりだと言っている。
・しかし、多者的な制裁はすでに施行されている。米国のほかのすべての同盟国はその措置をとった。そのうち、一部は独自の措置をとっている。韓国も前に出て同じようにせねばならない。
米国の怒りに驚いた韓国は3月になって要求を受け入れました。が、米国は「肝心な時に裏切る韓国」に改めて気付きました。韓国には要請ではなく恫喝しかない、との思いを増したことでしょう。
韓国には奥の手があります。米国の命令通りに、先端半導体の対中輸出は止める。しかし、先端半導体を製造するための装置と素材は中国の半導体メーカーに横流しする――です。こうすれば中国に「封鎖」の実害は及ばず、韓国も中国の怒りを買うこともなく「封鎖」参加に対する報復を受けなくて済みます。このように、韓国は半導体製造装置を中国に横流しする、というのですね。
韓国の横流しには実績があります。日本が対韓輸出管理強化に動くきっかけとなった事件です。韓国の貿易統計によると韓国は例年、半導体製造用のフッ化水素(HSコード2811111000)を年間4万トン強輸入していました。ほぼ日本製です。
ところが2018年には輸入量が2倍の8万3300トンに跳ね上がったのです。
危険な国家への横流しを疑った日本政府が韓国政府に問いただしたのですが、答は一切ありませんでした。そこで2019年7月にフッ化水素など3品目の対韓輸出を1件ごとにチェックする仕組みに変更。翌8月には輸出に制限を設けないホワイト国(現・Aグループ)から韓国を外しました。
5.韓国をホワイト国に戻したらアメリカに怒られる
こんなことをされたら、折角築いた対中輸出規制に穴が開きます。日本は今まで以上に対韓輸出管理を強める必要があります。
ところが、日本の外務省はそれに逆行しようとしている動きがあります。先述の鈴置氏は次のように述べています。
ところが、2023年に入って日本の外務省が「対韓輸出の管理を緩める」とリークし始めた。こんなことをやれば、韓国に連座します。外務省の国会議員への説明は以下です。日本のマスコミは政府が韓国をホワイト国に戻す検討をしているとかなんだとか言っていますけれども、現実はそんな状況にはないということです。
・韓国政府は輸出の仕向け先をチェックする体制を整えた。それを受け、日本も一度は厳格化した韓国向け輸出管理を緩めようとした。
・しかるに韓国がWTOに日本を提訴したのでそのままになっている。今後、韓国が提訴を取り下げれば、日本も対韓輸出の管理を緩めるのが筋だ。
米国が韓国の横流しに疑惑を持ち、その輸出先の監視を強化する時に日本が監視を緩めるというのですから「ピンボケも極まれり」です。まず、「韓国がチェック体制を整えた」は理由になりません。韓国政府が横流しする意図があれば、制度などいくら整えても関係ないのです。
それに対韓輸出管理の強化は、横流しを防ぐのだけが目的ではありません。半導体封鎖網が典型ですが、韓国は今、米中どちらの陣営に入るか、あるいは中立を維持するか、で岐路に立っています。
安倍晋三元首相が始めた対韓輸出管理の強化――フッ化水素など半導体関連3品目の対韓輸出の1件ごとの審査と、ホワイト国からの排除――こそは、韓国の喉元に突き付けた匕首です。
これは「自称・徴用工」判決を引き金とした日韓歴史摩擦を背景に生まれましたが、今や「韓国がどんな分野であろうと米日を裏切るなら、いつでも生命線を断つぞ」と脅す、極めて強力な戦略兵器となったのです。
だからこそ、韓国は安倍元首相が亡くなったのにつけ込んで日本に対韓輸出管理の緩和を要求し始めたのです。外相時代に2度も騙せた岸田文雄氏が首相になったことも、韓国の目にはまたとないチャンスに映っているでしょう。
韓国に近い外交官や学者、記者は「韓国に譲歩しないと米国に怒られる」と言って回っていますが、現実は正反対です。「今、韓国をホワイト国に戻したら、米国に怒られる」のです。
6.心をひとつにして当たりたい
外務省の寝言を他所に、自民党の保守派議員は、韓国に妥協しないよう声を上げています。
2月10日、外交部会・外交調査会・国際協力調査会の合同会議が開かれましたけれども、その模様を青山繁晴参院議員が自身のブログで次のように記しています。
・きょう2月10日金曜の朝8時から、自由民主党本部で開かれた外交部会です。 韓国との根深い問題を議論する、たいせつな部会ですが、参加議員はとても少ないです。このように青山議員は、韓国をホワイト国に戻してはならないと求めたとのことですけれども、先述の鈴置氏の説をくみ取るなら、「日本から韓国への輸出物資が北朝鮮と中国に流れる恐れがあるからだ」ということになります。
・その冒頭から参加していた議員は、雛壇の堀井巌・外交部会長、衛藤征士郎・外交調査会長、牧島かれん国際協力調査会長を別にすると、佐藤正久参議院議員、松川るい参議院議員、高村正大衆議院議員らとわたしの計5人でした。記者も多くはなかったから、同じぐらいですね。
・おそらく、金曜で、かつ衆参両院とも本会議がたまたま無く、さらに雪ですから、早めに地元に帰る議員が多かったのでしょう。わたしは、地元をつくらないので、帰りません。 (献金ゼロ、パーティ開催ゼロ、支持団体ゼロ、後援会作らない、後援会長いない、完全無派閥、そして地元も作りません。財務省も中国も、付け込む隙がありませぬ)
・逆に言うと、そういう情況でも、ちゃんと参加して議論をしようという議員は居るということでもあります。そして終了までには、杉田水脈衆議院議員、櫻田義孝衆議院議員、鈴木馨祐衆議院議員も、おそらく他の部会などから駆けつけてこられました。
・わたしは、おおまか以下のように政府・外務省に求めました。
( 1 ) 韓国をホワイト国 (グループA)に戻してはならない。日本から韓国への輸出物資が北朝鮮に流れる恐れがあるからだ。現在、韓国を輸出管理の「グループB」にしていることも決して差別ではない
( 2 ) 応募工問題に関連して、「痛切なお詫びと反省」を再び、述べたりしてはならない
( 3 ) 応募工問題を、日本企業の何か責任を認めるような解決にしてはならない
・外務省からは「 (今の意見と) 心をひとつにして、当たりたい」という印象的な答弁がありました。
アメリカが韓国の横流しに疑惑を持っているのならば、その疑惑が晴れない限り、ホワイト国に戻すことはあってはなりませんし、もしそうしたら、鈴置氏ではないですけれども、それこそ「連座」になります。
青山参院議員によると、外交部会の場で、外務省は「心をひとつにして、当たりたい」と答弁したそうですけれども、日本政府は経済安全保障をしっかり意識して当たっていただきたいと思いますね。
この記事へのコメント
白なまず
また、半導体製造装置だけでなく半導体検査装置(いわゆるテスターやWfの検査装置など)も輸出禁止にすべきです。
最悪、何等かの方法でチャイナが製造装置を入手できても、試験できなければ真面な製品になりません。2重、3重にチャイナが半導体を製造できない手を打つべきだと思います。
naga
いったいマヌケなほどのお人よしだと思います。・・・誰か何かの利権を持ってるのか?青山議員等には声を大にして文句をいうのも良いですが、そういうところを解明して欲しいと思う。