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1.ロシアは失敗した
2月20日、アメリカのバイデン大統領は、ウクライナの首都キエフを事前の予告なしに訪問し、ゼレンスキー大統領と会談しました。バイデン大統領がウクライナを訪問したのは、ロシアが昨年2月24日にウクライナ侵攻を開始した後では初めて。侵攻から1年となる直前に、対露連帯を強調した形です。
両首脳は会談後、共同で記者会見を行ったのですけれども、その中でバイデン大統領発言は次の通りです。
・大統領、どうもありがとう。私たちが電話で話したのは、1年前のことだった。ワシントンの夜遅く、ここキエフの朝はとても早かった。ロシアの飛行機が空中を飛び交い、戦車が国境を越えてきていた。あなたは私に言った。「バックで爆発が聞こえた」と。それは忘れられない。そして、世界は変わろうとしていた。ところどころに修辞的表現をまぶしているような発言の気がありますけれども、要するに、民主主義は勝利している、ロシアは失敗した、ウクライナへは支援を続ける、という内容です。
・私は鮮明に覚えている。私はあなたに尋ねた--「何かありますか、大統領閣下? 私に何かできることはありますか? どうしたらお役に立てるでしょうか?」と。
・あなたが私に何と言ったか覚えているかどうかわからないが、あなたは、こう言ったのだ。「世界の指導者たちを集めて、ウクライナを支援してくれるよう頼んで欲しい」と。
・そして、いつまた話せるかわからないといっていた。1年前のあの暗い夜、当時世界は文字通り、キエフの陥落に備えていた。1年よりずっと前のことのように思えるが、その年を思い返してみてほしい……おそらくウクライナの終わりでさえも。
・1年後、キエフは倒れず、ウクライナも倒れなかった。 民主主義は健在だ。
・アメリカはあなたたちとともにあり、世界はあなたたちとともにあるのだ。
・キエフは私の心の一部を捉えたと言わざるを得ない。私はこれまで副大統領として6回、大統領として1回、この地を訪れた。2009年に副大統領として、初めてここに来た。2014年、「尊厳の革命」の余波で3回来た。そして、2015年に再びやってきて、強い民主主義を構築するための作業についてラダで演説した。そして2017年、私が副大統領を辞める直前にも来た。
・また来るだろうとは思っていたが、確かめたかったのだ。選挙が終わり、バラクと私は退任したが、次の大統領が就任する前に、もう1度キエフを訪れることにしたのだ。
・ゼレンスキー大統領、今日、キエフで軍や情報機関、外交チーム、地域のリーダーたちと会い、国を助けるために必要な時に立ち上がってくれたことを、私は大変光栄に思っている。
・誰が立ち上がったか、それは驚くべきことだ。みんなだ。女性も、幼い子供も、みんな何かをしようとしているのだ。ただ、何かをしようとしているのだ。砲撃されたアパートから人々を引っ張り上げ……文字通り戦争犯罪だと思うのだ。
・驚くべきことだ。 全世界が……全世界がそれを見ている。
・これはヨーロッパにおける過去4分の3世紀で最大の陸上戦争であり、あなた方は自分たち以外のすべての、そしてあらゆる予想に反して成功しているのだ。我々は、あなた方が今後も勝利を収め続けることを確信している。
・1年前の秋に初めて情報報告を受けたときから、私たちは決断することに集中していた。どうすれば世界中の人々を説得できるのか。世界を結集するために私に依頼した約束を、私はどのように手助けすればよいのか。
・どうすれば成功するのか。繁栄する経済、自信に満ちた民主主義、安全で独立した国家に、世界が反応するようにするにはどうしたらいいのか。
・団結したとき、すべての政治的背景を持つアメリカ人は、ステップアップすることを決定した。米国民はそれが重要であることを知っている。歯止めのない侵略は、我々全員にとっての脅威だ。
・私たちは、大西洋から太平洋に至るまで、国家間の連合を築いた。大西洋ではNATOが、太平洋では日本が。つまり、世界中で、50を超える国々が立ち上がり、前例のない軍事、経済、人道的支援によってウクライナの自衛を支援したのだ。
・我々は、世界の主要な経済諸国を束ね、ロシアの経済的ライフラインを圧迫する前例のないコストを課した。
・我々は、700台近い戦車と数千台の装甲車、1000台の砲兵システム、200万発以上の砲弾、50以上の最新ロケットシステム、対艦・防空システム、すべてをウクライナ防衛のために提供してきた。このほかにも、今日と明日、5億ドルの資金を提供すると発表している。 これは、この中ではアメリカだけだ。
・今日発表したのは、HIMARSや榴弾砲のための砲弾、ジャベリンの増設、対人兵器システム、空爆からウクライナの人々を守るための航空監視レーダーなどだ。
・今週末には、制裁を逃れ、ロシアの戦争マシンを補強しようとするエリートや企業に対する追加制裁を発表する予定だ。
・また、議会での超党派の支援のおかげで、今週、我々は数十億ドルの直接予算支援を行う。数十億ドルの直接予算支援は、政府が直ちに使用することができ、市民の基本サービスを提供するのに役立つものだ。
・ウクライナが負わなければならないコストは非常に高く、犠牲はあまりにも大きい。その犠牲は満たされたが、あまりに大きすぎた。
・残忍で不当な戦争で失われた方々のご遺族とともに、私たちは追悼の意を表する。この先、非常に困難な日々、数週間、数年が待っていることは承知している。
・しかし、ロシアの目的は、ウクライナを地図上から消し去ることだ。プーチンの征服戦争は失敗している。ロシア軍はかつて占有していた領土の半分を失ってしまった。若くて優秀なロシア人は、ロシアに戻ることを望まず、何万人も逃げ出している。軍からだけでなく、ロシアそのものから逃げているのだ。ロシア経済は今や僻地と化し、孤立し、苦境に立たされている。
・プーチンは、ウクライナは弱く、西側は分裂していると考えていた。ご存知のように、大統領、私は冒頭で、彼は我々が団結しないことを当てにしている、と申し上げた。 彼は、NATOの結束を維持できないことを当てにしていた。彼は、我々がウクライナ側に他国を引き込めないことを計算に入れていた。
・彼は我々より長生きできると考えていた。今はそんなことは考えていないだろう。彼が何を考えているかは神のみぞ知るが、そんなことは考えていないと思う。彼は明らかに間違っている。明白な間違いだ。
・1年後、その証拠はこの部屋にある。私たちは共にここに立っている。
・大統領、あなたの我が国への訪問に報いることができ、嬉しく思う。
・少し前にワシントンで、あなたは私たちに、議会でこう言った。「私たちには怖いものはない、世界の誰にも恐れがあってはならない」と。
・あなたやすべてのウクライナ人は、「勇気」という言葉の意味を、毎日、世界中に思い起こさせてくれる。驚くべきこと、驚くべきことだ。
・あなたは、自由はかけがえのないものであり、そのために必要な限り戦う価値があることを私たちに気づかせてくれる。そして、それが私たちがあなたと一緒にいる理由だ。大統領、それが必要である限り。ありがとうございました。 (拍手)
ただロシアが失敗したという根拠は、ロシア軍が占有地域の半分を失った、ロシア人が逃げ出したというものですけれども、依然としてロシアはドンバス地域の半分を支配していますし、兵も次々と動員できていますから、まるっきりの失敗というのは少し苦しいかもしれません。
2.キエフ電撃訪問の舞台裏
今回、バイデン大統領が、キエフへの電撃訪問を成功させ、話題になっていますけれども、それは、前準備と徹底した情報管理があってこそです。
当初、ホワイトハウスは2月19日の夜に、バイデン大統領がポーランドを訪問するため、20日の午後6時40分にホワイトハウスを出発するとメディアに伝えてていました。
ところが、17日の時点ですでにキエフ訪問を最終決定していたバイデン大統領は、19日の午前4時15分にワシントン近郊の空軍基地を極秘に出発。およそ7時間の飛行の後、給油のため、現地時間19日の午後5時13分にドイツ南西部ラムシュタイン米空軍基地に到着していました。
バイデン大統領は、そこで1時間ほど滞在した後、現地時間19日の午後6時29分に飛び立ち、午後7時57分にポーランド南東部のジェシュフ・ヤションカ空港に到着。その後、車に乗り換え、ポーランド南東部プシェミシルの駅に向かいました。
バイデン大統領を乗せた車を目立たないように、車列にはミニバンやSUVなどが混在し、走行中もサイレンは一切鳴らさなかったそうです。
一行は、高速道路をおよそ1時間移動して、19日の午後9時15分頃にプシェミシル駅に到着。ここで列車に乗り換え、午後9時37分に出発。国境を越え、およそ10時間かけてウクライナの首都キエフに現地時間午前8時頃に到着しました。
通常、バイデン大統領に同行する記者は10人以上になるのですけれども、ホワイトハウスは情報漏洩を防ぐため、キエフ訪問に同行する記者を2人に限定しています。
アメリカ東部時間の17日、記者2人とホワイトハウス記者会代表の計3人は、報道担当幹部に呼び出され、その場でバイデン大統領のキエフ訪問と、同行記者を2人に限ることが告げられました。同行記者に到着時間や場所を示したメールが届いたのは18日。件名を「ゴルフ大会の案内」と偽装されたメールには、19日未明にワシントン近郊のアンドルーズ空軍基地に来るよう指示がありました。時間通りに到着すると携帯電話を取り上げられ、バイデン氏とウクライナのゼレンスキー大統領の会談などの一連のイベントが終わるまで返却されなかったそうです。
列車での移動では、キエフ到着まで同行記者でも一度もバイデン大統領の姿を見ることはなかったそうです。
3.国益を考え報じない
これで、G7のなかで首脳が現地を訪れていない国は日本だけとなった訳ですけれども、果たして岸田総理が「検討」しているというウクライナ訪問は、実現できるのか。
これについて、2月21日、ニッポン放送『辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!』のパーソナリティを務める辛坊治郎氏は、「正直言って、日本の総理大臣が行ったところで、さして役に立つわけでもなし。やはりアメリカは軍事でバックアップしている」と言及し、アメリカはこれまでに約4兆円規模の軍事援助を行ってきたが、日本は憲法上の制約で、軍事用ではないドローンの提供などに限られていると指摘。「将来的に戦争が終わって復興する時には、日本のいくつもの大震災に耐えて復興したノウハウが役に立つが、足元でまだ戦争が続いている状況のなかで、日本の総理大臣が行っても、できることは限られている。私はあえてそんな無理して行くことはないと思うけれども、現実としてG7のなかでウクライナの地を踏んでいない、ゼレンスキー大統領に直接会って話していないのは日本だけ」とコメントしました。
辛坊氏は、日本の総理大臣は“国会軽視“との指摘を恐れ会期中は国会に縛られ、記者団も常に動きを監視しているため、外国を事前に周囲へ明かすことなく電撃訪問することは「無理」と断じています。
いわれてみればその通りだと筆者も思いますし、また、メディア側、記者の側にも問題があるとの指摘もあります。
立命館大学客員教授でキャノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦氏は、テレビ番組で、岸田総理のキエフ訪問の可能性について問われると「電撃ってのは、みんな知ってて報じないんですよ。同行記者がみんな知ってて同行してんですから。それを日本のこの国が出来るのか?」とズバリ答えました。
キャスターが「国と言うのはメディアという意味ですか?」と確認すると「メディアも含めて」と答えた宮家氏は、アメリカでは同行記者は国益だと思って報じない。それが日本で出来るのだったら訪問できる、と付け加えました。
筆者はこれを聞いて、岸田政権では絶対無理だな、と思いました。長男翔太郎秘書官の土産がどうこうで大騒ぎする日本のメディアに国益を考えて報じないことを期待するのは無理だと思います。
メディアも、もしかしたら自分達が日本の外交の足を引っ張っているのかもしれないと振り返るのであれば、まだ希望があるのですけれども、そんな日はくることはしばらくはないのではないかと思いますね。
オフレコ会見の内容を世間に〝リーク”しちゃう日本の『マスゴミ』では成立しない話だね
— 慈圓(ジェーン)feat. 峮峮 🎌 (@Jane_ajyari) February 21, 2023
宮家「電撃ってのは、みんな知ってて報じないんですよ。同行記者がみんな知ってて同行してんですから。それを日本のこの国が出来るのか?」
松原「国と言うのはメディアという意味ですか?」
はいそうです pic.twitter.com/Py2CjEsWys
この記事へのコメント
国益はあちら側にあり、です。