中国に幻想を抱くな

今日はこの話題です。
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1.期待外れの中国和平案


昨日のエントリーでロシア・ウクライナ戦争に対する中国和平案について取り上げ、ウクライナのゼレンスキー大統領が習近平主席と会いたいとの意向を示したことを紹介しましたけれども、同時にゼレンスキー大統領は、中国の「和平案」に不満も漏らしています。

ゼレンスキー大統領は中国の和平案について「いくつか同意できない項目がある」と述べ、ウクライナの領土保全や露軍のウクライナからの撤退などが明記されていないことを指摘。一方、習近平主席との会談について、「世界の安全保障のために有益だと考える」と前向きな姿勢を示しつつも、中国の対露軍事支援の可能性については、「ないと強く信じたい」とも述べ、習近平主席がプーチン大統領と会談する前に、先に会ってクギをさしておきたい思惑があるのではないかとも見られています。

また、ウクライナのクレバ外相は、同じく24日、地元メディアに対し、中国が和平案の項目に「一方的な制裁の停止」を盛り込んだことについて、「制裁は重要な手段で制裁停止には同意できない」と述べました。

こうしたことから、中国の和平案は期待外れだったのではないかとの指摘もあります。

評論家の石平氏は、中国の和平案について、発表される前に王毅国務委員が欧州を歴訪し、ミュンヘン安全保障会議にも出席するなどの動きがあり、アメリカのヌーランド国務次官が23日にて「中国の習近平主席がロシア軍をウクライナ から追い出すことができれば我々はみんな賞賛し平和の対価を与えるのではないか」と述べるなど、中国が本格的に調停に乗り出すのではないかとの期待感が一部にあったと述べています。

けれども、肝心の和平案の中味はただの立場表明に過ぎず、期待外れに終わった、第一、和平案とするものの題名からして「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」と考え方を示しただけだと指摘しています。

まぁ、確かに言われてみればその通りです。




2.中国に幻想を抱くな


2月24日、NATOのストルテンベルグ事務総長は中国の和平案について、「中国は違法なウクライナ侵攻を非難することができないため、あまり信頼できない」と記者団に述べ、EUのフォンデアライエン欧州委員長は中国について、和平案を共有していないが、いくつかの原則は共有しているとの見解を示しつつも、ウクライナ侵攻の直前に中国はロシアと「無制限の友好」を含む協定に署名し、すでにロシア側に付いていることを踏まえる必要があると指摘しています。

更に、ドイツのショルツ首相に至っては、23日の段階で、独公共放送ZDFのインタビューで、中国はこれまでロシアのウクライナ侵攻に反対したことがないと指摘し、「中国に幻想を抱いてはならない」と警告しています。

先述の石平氏は、中国の和平案は「羊頭狗肉」とし、これを出したのは単に、習近平主席を世界的指導者としてのイメージアップのための演出に過ぎず、他国が中国の和平案に冷たい態度を示していることから、失敗に終わったのではないかと指摘しています。

これが本当であれば、中国の和平提案は、自民党の青山参院議員が示したアメリカと示し合わせての和平交渉ではなく、たんなる中国のスタンドプレイだったということになります。


3.国連総会緊急特別会合の対露非難決議


NATOのストルテンベルグ事務総長からロシアを批判できないと指摘された中国ですけれども、現実に中国はロシアを批判できていません。

2月23日に開かれた国連総会の緊急特別会合で、ロシア軍のウクライナからの完全撤退や国際法上の重大犯罪への調査と訴追などを求めた決議案が採択されました。

ロシアのウクライナ侵攻を巡る総会決議は今回で6回目。今回の決議は国連憲章に基づき「ウクライナの包括的で公正、永続的な平和」を求める内容で、民間インフラへの攻撃停止や捕虜の全面交換なども求めています。

このウクライナが提案した決議案に対し、日米英仏など70ヶ国以上が共同提案国として名乗りを上げ、採択では賛成141ヶ国、反対はロシア、ベラルーシ、北朝鮮、エリトリア、マリ、ニカラグア、シリアの7ヶ国。中国やインド、南アフリカなど32ヶ国は棄権票を投じ、13ヶ国は無投票でした。

中国は棄権とロシア側ではないと主張したいのでしょうけれども、賛成票を投じられなかった時点で、ストルテンベルグ事務総長が指摘するとおり、ロシアを批判できなかったことになります。


4.ドローンをロシアに輸出する中国


2月19日、アメリカのブリンケン国務長官は、中国がロシアに武器提供を検討していると批判していましたけれども、23日、ブリンケン国務長官は中国企業による武器以外の「軍民両用」支援の提供を中国政府が恐らく承認したとの認識を示しました。

ブリンケン国務長官は、アトランティック誌が主催した対話で「いわゆる『中国企業』から武器ではない軍民両用の支援が若干あり、それはほぼ確実に国家の承認を得ている。実際には違いがないからだ。だが殺傷力を伴う軍事支援ではない……ただ中国が今、それを真剣に検討しているという情報もわれわれはここ2~3ヶ月に得ている」とし、世界の外交への関与拡大を目指す中国が、ロシアへの軍事支援によって国際的な評価を損なう恐れがあるとのメッセージを受け取ることを期待していると述べました。

ブリンケン国務長官は「中国がかなりはっきりした形でそのメッセージを受け取ることに期待を寄せている。それがわれわれだけでなく、ウクライナでのロシアの戦争を中国が実質的な形で支援・幇助してほしくない他の多くの国々からのものだからだ……中国が新型コロナから脱却する中で『チャーム・オフェンシブ(ほほえみ外交)』での他国への関与再開をこのところ目指している限りにおいて、ロシアへの武器供与でこれらの国をさらに遠ざける行為には関わらない方が良いだろう」と語っています。

更に、同じく23日、ドイツ誌シュピーゲルは、ロシアがドローン100機の購入について中国企業と協議していると報じました。

シュピーゲルによると、中国の無人機メーカー、西安冰果智能航空科技は自社の無人機「ZT-180」のプロトタイプ100機を製造する用意があると述べたそう。ZT-180は35~50キロの弾頭を搭載可能で、ロシアがウクライナへの攻撃に使用しているイランの無人機「シャヘド136」に類似しているそうです。

シュピーゲルによると、西安冰果智能航空科技冰果は月に最大100機の無人機を生産できる施設をロシア国内に設置する支援も計画しているそうで、以前には中国軍が管理する企業がロシアに戦闘機Su27用の予備部品を提供する計画もあったとされています。

中身に乏しい和平案を出した裏で、ロシアへ武器提供するのであれば、信用されなくて当然です。

筆者は、自民党の青山参院議員が主張している、アメリカと示し合わせて和平交渉をやっているのではないかと思っているのですけれども、その後の動きを見ているとちょっと疑問に思ってしまいます。もしも、中国の和平案が習近平主席がイメージアップのためのスタントプレイだったとするならば、石平氏の指摘するとおり、不発に終わる可能性は高いと思います。

この件は、習近平主席がプーチン大統領と会談できるのか含め、もう少し様子を見ていきたいと思います。



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