高市を守った岸田流モグラたたき式政権維持術

今日はこの話題です。
画像

 ブログランキングに参加しています。よろしければ応援クリックお願いします。


2023-03-25 130200.jpg


1.あまりにも論理が飛躍している


3月24日、参院予算委員会で、立憲民主党の石垣のり子氏は、放送法が定める「政治的公平」の解釈を巡る行政文書で、高市氏が自ら4が登場する枚は「捏造」と批判したことについて「明治開闢以来、部下の罪をかぶって辞職した閣僚がいたとしても保身のために部下を売り飛ばす閣僚はいなかった」と激しく批判し、岸田総理に高市氏の罷免を求めました。

これに対し、岸田総理は「正確でなければならない行政文書の正確性に疑義が呈されている。総務省で確認している状況だ……更迭というのはあまりにも論理が飛躍していると思う」と疑問を呈し、罷免を拒否しました。

また、日本維新の会の音喜多駿政調会長が、公文書のあり方について質すと、岸田総理は「将来の国民への説明責任を全うし、民主主義を支える重要なものだ。作成に当たっては萎縮することなく、正確性を確保することが必要だ」と答弁し、音喜多氏から「改竄や流出のような疑惑を発生させないためにはペーパーレスを原則とするなど法改正が必要だ」との質問には「法改正が直ちに必要と考えてはいない」と答えました。

正確でない文書、いわゆる「怪文書」を理由に更迭してしまえば、今後いくらでも好き勝手に更迭できてしまいます。岸田総理が拒否したのは当然といえば当然なのですけれども、これまで、国会で、高市経済安保相の反論の機会も碌に与えず、国会対策で政務が滞っていると泣き言をいう程までに放置していたことを考えると、更迭拒否をもっと早く示すべきだったのではないかとも思います。




2.総務省文書に関して参院予算委に提出した資料


岸田総理の更迭拒否発言と裏で示し合わせていたかどうか分かりませんけれども、同じく24日、高市経済安保相は、自身のウェブに、『総務省文書に関して参院予算委に提出した資料』と題する5つの記事を投稿しました。
2023.03.24 総務省文書に関して参院予算委に提出した資料⑤ 
2023.03.24 総務省文書に関して参院予算委に提出した資料④ 
2023.03.24 総務省文書に関して参院予算委に提出した資料③ 
2023.03.24 総務省文書に関して参院予算委に提出した資料② 
2023.03.24 総務省文書に関して参院予算委に提出した資料① 
記事では、高市経済安保相の反論が細かく記載されていますけれども、そこから、本人の「していない」等の否定した論点を除去し、理屈に照らして、小西怪文書の記載がおかしいと思われる箇所を筆者なりに抜き出すと次の通りです。
資料①:
⑤内容が正確ではないことに加え、4枚の文書のうち、3枚は「作成者不明」「配布先不明」であり、4枚とも「作成目的」が不明であることから、信頼に足る文書ではないと考えます。唯一、作成者名が記されている平成27年2月13日付の文書も「配布先」に当該レクの当事者とされる「大臣室」が入っていない上、大臣室のパソコンから情報流通行政局のフォルダは開けないことから、私も、同席したと記されている大臣室職員2名も、文書内容のチェックは不可能でした。

資料②:
④私の発言として、「官邸には『総務大臣は準備をしておきます』と伝えてください」との記載も、明らかに不自然です。私は、指示をする時には、「官邸」という曖昧な表現ではなく、相手が「総理」なのか「官房長官」なのか「副長官」なのかを明確に致します。そもそも当該文書に記された「補佐官からの伝言」(礒崎元総理補佐官と総務省情報流通行政局とのやり取り)なるレクは受けていませんので、平成27年5月12日の参議院総務委員会の答弁の「準備」と解される「準備をしておきます」という発言もあり得ません。
⑥そもそも、当該文書では15:45~16:00の15分間でレクが行われたことになっていますが、礒崎総理補佐官からの伝言を伺い、4枚の添付資料も含めて、放送法の解釈について説明を受けた上で、質疑応答を行ったとしたら、15分間では到底収らないはずだと考えております。

資料③:
②当時の安倍総理や今井総理秘書官に電話をする時は、自分の携帯電話から発信していましたので、平川参事官に依頼をする必要はありません。

資料④:
②常識的に考えて、仮に法律の条文解釈について総理に説明する場合、担当職員とともに官邸を訪問し、条文や逐条解説をお見せしながら説明しなくては総理の御理解を得られるものではなく、電話で済ませるような閣僚は居ないと考えます。
③「高市大臣と総理の電話会談」と表題にあるにも関わらず、文書には「政治的公平に関する件で高市大臣から総理に電話(日時不明)」と記載されており、平成27年3月6日付文書にあるように総務省大臣室の参事官が総理大臣室と調整してセットした会談であれば、「日時不明」ではなく、日時は確定しているはずだと思います。
④総理と大臣の電話による会話内容を、誰が、どのような方法でメモにできるのか、理解不能です。

資料⑤:
③総理秘書官室に居られた山田総理秘書官が総理日程を知らなかったとは考えられません。平成27年3月9日付「高市大臣と総理の電話会談の結果」という文書から4日も経過した3月13日になってから「高市大臣から総理か今井秘書官かに電話があったようだ」と出身官庁に曖昧な内容の連絡したことは不自然であり、文書内容が正確であるとは考えられません。
これらの内容は、文書形式や、日時の確定、高市経済安保相の仕事の仕方など、高市氏本人以外の当時の閣僚や、事務方にヒアリングするなど第三者的な検証・確認が出来るものであり、証人喚問せずとも、その内容の正しさが証明できるのではないかと思います。

これらの反論内容が正しいと確認できれば、件の行政文書が「不正確」なものであるという高市安保相の主張は認められるべきだと思います。




3.高市更迭を進言した2人の大物議員


今回の高市経済安保相の資料で、ほぼ勝負あったと思いますけれども、今回の騒ぎに関しては一部で高市潰しではないかとも囁かれていました。

そんな中、自民党の大物議員2人が高市氏の辞任を求めていた、と週刊新潮が報じています。

それによると、二人の大物議員について、官邸関係者が「一人は外相の林芳正さんです。林さんは昨年2月、ウクライナ情勢が緊迫する中でロシアの閣僚と会合を行いました。当時政調会長だった高市さんはそのことを“ロシアを利することになる”と批判。その因縁もあるのか、林さんは総務省問題が起きた後に岸田総理に“辞めさせた方がいい”と進言したそうです」と述べ、もう一人について「茂木敏充幹事長ですよ。周囲に“辞めてもらっていい”と語るほど、あきれかえっています」と語ったそうです。

林外相、茂木幹事長は確かに大物議員ではあるのですけれども、国民的人気はいま一つです。

1月21~22日に産経新聞社とFNNが実施した合同世論調査で、岸田総理の次の首相にふさわしい人はだれかを尋ねたところ、河野太郎デジタル相が19.7%でトップ。石破茂元自民党幹事長(15.1%)、小泉進次郎元環境相(10.9%)、菅義偉前首相(8.7%)、高市早苗経済安全保障担当相(6.4%)、林芳正外相(1.4%)、茂木敏充自民幹事長(1.1%)、泉健太立憲民主党代表(1.1%)、野田聖子前少子化担当相(0.5%)となっています。

河野太郎デジタル相含め、茂木幹事長、林外相、高市経済安保相は「ポスト岸田」をうかがう有力者ではありますけれども、林外相、茂木幹事長の支持は1%台と、河野デジタル相の19.7%はもとより、高市経済安保相の6.4%にも遠く及びません。

従って、林外相、茂木幹事長が、今回の騒ぎを「目ざわり」な高市経済安保相を潰す絶好の機会だとして、岸田総理に更迭を進言したと考えられなくもないのですけれども、高市経済安保相の反論資料を見るにつけ、こんな怪文書で閣僚を罷免する事例をつくってしまえば、いずれ自身にもその刃が向かってくるのではないかと思います。

その意味では、遅ればせながら、岸田総理が高市経済安保相の更迭を拒否したのは正解だと思います。


4.岸田流モグラたたき式政権維持術


「ポスト岸田」を巡っては先述した河野太郎デジタル相、茂木幹事長、林外相、高市経済安保相らが挙げられますけれども、中でも茂木幹事長が次期総理を意識した動きをしているとの見方もあります。

1月25日、岸田総理の施政方針演説に対するの代表質問で、茂木幹事長は「『すべての子どもの育ちを支える』という観点から、所得制限は撤廃するべきだ」と児童手当の所得制限撤廃を首相に迫り、子どもが多い世帯ほど所得税負担が軽くなるフランスの税制「N分N乗方式」をあげ、「画期的だ」と評し、議論を促しました。

元々、茂木幹事長は児童手当について、所得制限を訴えていましたから、それを覆す代表質問で、国会はどよめきました。

これについて自民党の幹部も、「どうなっているんだ」と訝しんだそうですけれども、茂木幹事長の側近議員は「首相がフラフラしていて、いま一つ何も言い切れずにいるからケツをたたいた……少子化対策は、自身が首相になったときにも向き合わなければならない課題だ。力が入るし、世論の動きにも敏感になる」とその真意を推察しているようです。

要するに、次期総理を視界に入れて動き始めたということです。

イトモス研究所所長の小倉健一氏は茂木幹事長について、「自分より下の人間に無関心などと厳しい声も向けられる茂木氏だが、類いまれな頭脳で政策立案能力に長けていることは永田町で誰もが認めるところ」と、その強みを挙げる一方、足りない要素として「その茂木氏に足りないのはリーダーシップであろう。これまでの茂木氏の書籍を読むと『優秀な課題解決法』は並べてあるが、リーダーに必要な『課題発見能力』については少し物足りないと言わざるを得ない」と指摘しています。

その視点からみれば、茂木幹事長が主張した児童手当の所得制限撤廃は、「課題解決法」に過ぎず、「課題発見」とはいえません。まぁ、このあたりは今後見えてくるのかもしれません。

岸田総理も、茂木幹事長が次期総理の座を狙っていると感じているのかもしれませんけれども、茂木幹事長、林外相から進言された高市氏更迭の進言を突っぱねたことで、結果として、両者を牽制することになりました。

岸田総理が最初から牽制するつもりで高市経済安保相を残したのか分かりませんけれども、岸田総理のやり方をみていると、どこか「モグラたたき」というか、自らの地位を脅かす相手が出てくると、その都度、頭をピコンと叩いて、引っ込ませる。それを繰り返しつつ絶妙なバランスを保ちながら、政権を維持しているような気がしてなりません。

普通は総理になると派閥を抜けるという慣例を無視して、未だに岸田派の会長に居座っているのは、林外相にその座を奪われ岸田派を乗っ取られるのを避けるためだとは、よく言われていますけれども、これなども、林外相の頭をピコピコ叩くことで、政権を維持しようとしていると見ることも出来ます。

そう考えていくと、「岸田流モグラたたき式政権維持術」は、意外と長持ちするかもしれませんね。


  twitterのフリーアイコン素材 (1).jpeg  SNS人物アイコン 3.jpeg  カサのピクトアイコン5 (1).jpeg  津波の無料アイコン3.jpeg  ビルのアイコン素材 その2.jpeg  

この記事へのコメント

  • 三角四角

     【 政界生き残りレース 三つの関門(1/2) 】

     高市早苗大臣は、今、政界生き残りレースの真っ只中にいる。
     彼女は三つの関門を突破しなければならない。

     第一関門 放送文書捏造辞任騒動問題
     第二関門 奈良県知事選保守分裂、維新漁夫の利問題
     第三関門 捏造ブーメラン・政治資金収支報告書及び領収書変造疑惑問題

     漸く、高市大臣は政界生き残りレースの第一関門を突破出来そうである。
     立憲民主党の小西議員の文書にいちゃもんを付け、言わずもがなの文書捏造を口走り、火のない所に火を付けて、捏造辞任問題を立ち上げた。
     今頃、不正確と言い訳するなら、最初から不正確と言って置けば良かった。
     国会を空転させた責任は高市大臣にもある。

     政界生き残りレースの第二関門は、高市大臣の調整不足、調整サボタージュにより発生した。

     現奈良県知事荒井正吾氏が4選挑戦を発表する前に、高市大臣は奈良県連の会議で総務相時代の秘書官・平木省氏の擁立を決めた。
     それが高じて、自民党は奈良県知事選で、保守分裂選挙に突入せざるを得なくなった。
     高市大臣が頭を低くして、荒井氏に仁義を切っていれば防がれた事態である。
     問題は、維新の山下まこと元生駒市長(3期)が奈良県知事選に出馬し、自民党候補より事前予想で上回っていることにある。
     自民党の世論調査によれば、山下氏が33%、平木氏が27%、そして荒井氏が18%と、維新の山下氏に6ポイントの差をつけられて、自民系の2人の当選は危うい状況となっている(注1)。
     事前調整がついていれば、平木氏27%+荒井氏18%=45% > 山下氏33% で自民党圧勝である。
     もし、自民党の二人の候補が負けて、維新の候補が奈良県知事に当選したら、高市大臣の影響力低下は計り知れないものになるだろう?
    2023年03月29日 20:51
  • 三角四角

     【 政界生き残りレース 三つの関門(2/2) 】

     でも悪い話ばかりではない。
     第一関門では敵だった立憲民主党が、第二関門では味方になってくれそうである。
     高市大臣が推すかつての部下の平木省氏を立憲民主党県連が支持してくれたのである(注2)。

     さて、蓋を開けてみるまでは分からない選挙の後は、第三関門が高市大臣を待ち受けている。

     本来は、政治資金収支報告書の修正が行われば、何の問題も発生しなかった。
     しかし、高市大臣側は、収支報告書の修正を行わず、収支報告書及び領収書の変造を行ったのではないかと疑われ、奈良地検に告発された。
     この事件は受理され捜査は始まっている(注3)。

     頑なに間違いを認めないという態度は、第一関門において、功を奏した様だ。
     しかし、第三関門では、間違いを認め、早めに、政治資金収支報告書の修正をしておけば良かった。
     頑なに間違いを認めない姿勢が、収支報告書及び領収書の変造疑惑を呼んで、政治生命が終わるかも知れないのだ。
     徳川家康公は、石橋を叩いても渡らない時があったのに、高市大臣は、石橋を叩きながら渡っている様だ。


     (注1)【 現代ビジネス 2023.03.27
     高市泣きっ面に蜂!奈良県知事選「維新勝利」の世論調査で、これから起こること《決起大会にもドタキャン》
     現代ビジネス編集部
     https://gendai.media/articles/-/108132
     講談社ホームページ 2023 ©︎KODANSHA LTD. 】

     (注2)【 読売新聞オンライン 2023/03/17 05:00
     <統一選2023>知事選 5氏臨戦態勢   選挙・奈良
     告示まで1週間 事務所開設や集会
     https://www.yomiuri.co.jp/local/nara/news/20230317-OYTNT50053/
     © The Yomiuri Shimbun. 】

     (注3)【 現代ビジネス 2023.03.16
     「捏造」を主張する高市早苗大臣が「変造」で刑事告発されていた件、ついに捜査開始へ
     伊藤 博敏 ジャーナリスト
     https://gendai.media/articles/-/107617
     講談社ホームページ 2023 ©︎KODANSHA LTD. 】
    2023年03月29日 20:53