ブログランキングに参加しています。よろしければ応援クリックお願いします。
1.別の道を選択したタッカー・カールソン
4月24日、アメリカの大手ケーブルテレビ局FOXニュースは、声明を出し、看板キャスターのタッカー・カールソン氏と「別々の道を行く」ことで合意したと、タッカー氏の降板を発表しました。
タッカー氏は21日夜放送の「Tucker Carlson Tonight」で、「また月曜に」と最後の番組を締めくくっていたことから、解雇とみられ、局の看板を長年務めたキャスターの退任につきもののお別れの挨拶なども特にありませんでした。
「Tucker Carlson Tonight」は、平日午後8~9時のゴールデンタイムに放送され、アメリカ・ケーブルテレビで最高の視聴率を確保していました。後任司会者が決定するまで、暫定的な代理司会者が何人か交代で番組を担当すると見られています。
このニュースは特に保守側から大きな反響を呼んでいます。
保守系若者の全米組織「ターニングポイントUSA」の創設者チャーリー・カーク氏「左派は、タッカー・カールソン氏がFox Newsを去ることで、彼の声が消えたと考えて喜んでいる。しかし、それは誤りだ」とコメント。
政治・文化評論家でコメンテーター・コラムニストのイアン・マイルズ・チョン氏は「タッカー・カールソンは、自分の考え方の変遷と、メディアが体制側の装置であることを理解するようになった経緯を説明している。そのため、彼らは彼を倒したいと思っている。彼は、主流派の放送局で、物語に反対する唯一の声なのだ」と述べ、コロラド州選出のローレン・ボーベルト下院議員は「タッカー・カールソンの行くところ、アメリカはついていく!保守運動における最も偉大で最もパワフルな声の1つであることに感謝します。次の展開が待ち遠しいです!」とコメントしています。
更に、100万人以上のフォロアーを持つ保守ニュースサイト「Human Events」シニア編集者のジャック・ポソビック氏は「タッカーは自分自身の番組を使って、あまりにも真実を語りすぎる人をどのように企業メディアが扱うのかを警告する典型的な例として、永遠に役立てることができます。彼は伝説的な存在です」と述べています。
2.FOXがタッカー・カールソンを解雇した5つの理由
FOXニュースは、タッカー・カールソン氏の降板の理由を説明していないこともあってか、色々と憶測を呼んでいるようです。
これについて、アメリカの政治専門紙「The Hill」は、「タッカー・カールソンとFox Newsが袂を分かった5つの有り得る理由」として次の5点を挙げています。
1)ドミニオンの件は、彼があまりにもコスト高になっていることを示した:FOXのオーナーであるマードック氏は、名誉棄損で訴えられたドミニオン社に7億8750万ドルも支払ったケースで激怒、同案件の中心的な人物であるカールソン氏を槍玉に挙げた。これらについて、ロサンゼルス・タイムズのステファニー・バタグリオ記者は「カールソン氏の番組のプロデューサーだったグロスバーグ氏は去る3月、カールソン氏とFOXを相手取って南部ニューヨーク地区検察局に訴訟を起こした」、「起訴状によると、同氏はたびたびカールソン氏からいじめに合い、反ユダヤ発言を浴びせられた。またドミニオン社との訴訟では上層部から偽証するよう強制された」、「グロスバーグ氏の弁護人、タンバー・ラーマン氏は『マードック氏はこのパワハラ訴訟を重視した。カールソン解雇の主因はこのセクハラ起訴にあると考えている』と話している」と2)の理由が大きかったことを「FOX内部情報」として報じています。
2)「その他」の訴訟:カールソン氏は、番組を担当していた女性プロデューサー、アイビー・グロスバーグ氏(ユダヤ系)にパワハラ、セクハラ、人種差別的な言動を繰り返したとして告発されている。カールソン氏のほかFOXニュース自体が「女性を嫌う空気が社内に充満している」として訴えられている。
3)彼は視聴者に二枚舌であることを暴露された:ドミニオン社の訴訟において、証拠開示の過程で明らかになったある文章で、カールソン氏はトランプ前大統領について「私は彼を熱烈に憎んでいる」と述べていた。にもかかわらず番組ではトランプ氏の主張を全面的に支持していた。
4)彼は大統領選に出馬する可能性がある:2020年当時、Politicoの記事では、彼が2024年のレースに参加することになれば、「共和党の予備選挙ですぐに有力候補になる」と考えている共和党関係者が多数いると示唆されていた。その後、カールソン氏が昨年アイオワ州で開催された社会的保守派の重要な会合に出席したことなどから、噂が広まりつつある。
5)アレクサンドリア・オカシオ・コルテス議員はカールソン氏を好まない:オカシオ・コルテスは日曜日に放送されたMSNBCのインタビューで、カールソンとフォックスは「非常に、非常に明確な暴力扇動」の罪を犯しており、こうした暴言を抑制するために何らかの「規制」を導入すべきだと言った。
3.あまりにも真実を語りすぎる人
タッカー・カールソン氏の解雇について、冒頭で紹介したインフルエンサーのジャック・ポソビック氏は「タッカーは自分自身の番組を使って、あまりにも真実を語りすぎる人をどのように企業メディアが扱うのかを警告する典型的な例だ」と述べていますけれども、「The Hill」が示した5つの理由の中には、「語りすぎた真実」というものはあまり見られません。
これについて、SKyNewsオーストラリアは「匿名の情報源」から入手したものだとして、「タッカー・カールソン氏は、ウクライナの米国の秘密生物学研究所について話したことで、FOXニュースのオーナーによって解雇された」と報じています。
SKyNewsオーストラリアのホストであるアンドリュー・ボルト氏は、カールソン氏について、ウクライナを「絶望的に腐敗しており、それを支持するバイデンチームは嘘つきである」とする「危険で明白に誤った陰謀論」を押し付けており、このような「プロパガンダ」は、「ロシアの暴君ウラジミール・プーチンにとって金科玉条」だとコメントしました。
そして、カールソン氏は、米国が「機密の核技術」と同様に「ウクライナのような原始的な国」に「秘密のバイオラボ」を維持していると主張したことで、「彼の視聴者の多くは、アメリカがウクライナの生物学的、秘密の生物学的、兵器研究、さらには核兵器を援助していることを暗に示していると受け取っただろう……それはたわごとだが、危険なたわごとだ」と述べ、カールソン氏はFox Newsそのものよりも大きな存在になろうとしたため、それが裏目に出てしまっのだと結論づけています。
カールソン氏が突然解雇されたのが、アメリカの秘密生物学研究所をFOXニュースで扱った直後であったことを考えると「あまりにも真実を語りすぎ」からだという疑念が出てくるのも分からなくもありません。
4.大打撃を受けるFOX
ただ、人気司会者であったタッカー・カールソン氏を解雇したFOXも無傷では済みません。
カールソン氏降板後、FOXの平日プライムタイムの視聴数が激減。ハリウッドレポーターによると、「フォックス・トゥナイト」と改名した降板初日の24日の視聴者数は、ライバルを上回りトップを維持したものの、過去8週間の月曜日の平均数330万人から260万人と21%も低下しました。
代わりに保守派ネットワークのニューズマックスが視聴数を伸ばし、「エリック・ボーリング・バランス」が53.1万、「グレッグ・ケリー・レポート」が54万を獲得。それぞれ今年の前四半期の平均と比較して3倍以上の数字を記録しました。
この状況に元FOXニュースの番組司会、メーガン・ケリー氏は、月曜日から水曜日までの同番組の視聴者数を示しつつ、半分の視聴者を失ったと説明。「大惨事だ」とツイートしています。
26日、解雇されたタッカー・カールソン氏は自身のツイッターを更新、降板後初めて声明を発表しました。
カールソン氏は、現在メディアで議論される内容は「信じられないほど愚か」「完全に見当違いで、全く意味をなさない」と批判。「戦争や市民の自由、信仰科学、人口動態の変化、企業の権力、天然資源」などのテーマを挙げ、両党とそのドナーの利益にならない内容について「会話を閉ざそうとしている」と指摘し、「真実は明らかになる」と締めくくったものの、解雇の理由には触れませんでした。
タッカー氏の今後については、他の保守派メディアに移るのではないかとも言われているのですけれども、著名国際派YouTuberの及川幸久氏は、タッカー氏は、FOXの契約に縛られていて、2024年の大統領選挙後まで他局に移れず、解雇理由も話してはいけない、とFOX内部情報が暴露されているとツイートしています。
これが本当であればとんでもないですね。
タッカー氏の解雇が発表された翌25日、バイデン大統領が2024年の大統領選で民主党から再選を目指すと発表しています。
2024年の大統領選挙後まで他局に移れず、解雇理由も話してはいけないという謎契約を結んで解雇した翌日にバイデン大統領の出馬宣言。タイミングをみると、トランプ前大統領を支持するタッカー氏をメディアから退場させることが確定したから出馬宣言をした、と穿ってしまいます。
ただ、タッカー氏が他局のインタビューに答える形式のテレビ出演もダメなのかは気になるところです。今後の推移を見守っていきたいと思います。
この記事へのコメント