エマニュエル駐日大使の内政干渉と日本の文化力

今日はこの話題です。
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1.私の国をダメにする前にシカゴを直せ


5月2日、ジャーナリストの我那覇真子氏がアメリカFOXニュースの朝の番組「Fox&friends」で、駐日アメリカ大使のLGBT政策内政干渉について話したことが一部で話題になっています。

現在、政府が検討しているLGBT法案について、エマニュエル駐日大使が成立を促す発言をしているのですけれども、我那覇氏は、それが内政干渉だと批判したのですね。

我那覇氏とFOXキャスターとのやり取りの概要は次の通りです。
FOXキャスター:真子、おこしいただきありがとうございます。日本の一般市民からは、ラーム・エマニュエル氏に対してどのような反応がありますか?彼があなたたちに、男性が女性用トイレを使用することを許すよう求めているというのはどうでしょうか?

我那覇氏 :多くの日本人が、明らかな国内干渉に対して憤りを感じています。まず最初に言っておきたいのは、日本ではLGBTの人々に対する差別は存在していないということです。例えば、そういう人たちのための巨大なテレビ産業があることは知っています。その人たちは「おネエ」「オカマ」と呼ばれ、女の子っぽい、男の子っぽいという意味です。つまり、彼らはテレビの有名人なのです。しかし、日本でやっていることは、LGBTのイデオロギーをすべて押し付けることであり、私たちの文化を破壊しています。その例についてはもっとお話しできます。

FOXキャスター:エマニュエルが「平等のカウントダウンが始まる」と言ったので、このことについて聞いてみたいと思います。東京レインボーパレードで言ったように、すべての人のための平等な権利ということになると、誰も我慢してはいけないのです。今こそ、LGBTコミュニティのメンバーが、日本でくつろげる新しい時代の到来です」と。

我那覇氏 :はい。日本の国会では今、LGBTの権利を守るための差別禁止法の成立が検討されていますが、それはアプローチから来るもので、LGBTのイデオロギーは日本だけをターゲットにしているわけではないようです。もちろん、あなたの国も、世界中のヨーロッパの国々もです。つまり、それは私たちの国の破壊の一部なのです。5月にG7があるので、日本の政治家たちは、国際的な基準を満たさなければならないと言い訳していますが、そうではありません。そして、実際に起きているのは、私たちの文化の破壊なのです。例えば、銭湯をご存知ですか?多くの日本人は温泉や銭湯に行くのが好きです。でもゲイの人たちがそこに来て、公衆浴場でイチャイチャしして、多くのお客さんを失っている状況です。そこで、この公共施設は、「モラルやマナーのないLGBTは入店禁止」という看板を掲げました。これが私たちの状況です。だから、私たちはプロパガンダを語るのではなく、現実を見て、日本のハーモニーに抗議する必要があるのです。

FOXキャスター:実際にLGBTQコミュニティのメンバーの中には、ラーム・エマニュエルが進めようとしていることを支持していない人もいます。もう少し詳しく説明してください

我那覇氏 :実際に、以前は国会議員だったゲイの男性がいます。彼はずっと前から声を上げていたんです。つまり、彼らは、私たちが彼らを放っておくことを望んでいるのです。いや、話題にしないでほしい。それが彼らの気持ちなんです

FOXキャスター:日本のLGBTQコミュニティに対する法律を作成する場合、日本のLGBTQコミュニティを聞くべきであり、アメリカのシカゴ市前市長であるラーム・エマニュエルの声を聞く必要はないでしょう。これは意味がありません。我那覇真子さん、今朝は貴重なお時間とご見解をありがとうございました。
このように我那覇氏は、実に簡潔かつ、エマニュエル大使の言動の問題点を指摘しています。




2.米国内ですら民主党と共和党の対立案件となっている


4月10日、エマニュエル駐日米大使は、東京都内で開かれた内外情勢調査会で講演を行っているのですけれども、出席者から性的少数者に対する政府や自民党の取り組みについて問われ「日本の憲法は差別に関しては明確に提起している。差別に反対する国家だ……同性婚か異性婚かではなく、『結婚』しかないと思う。日本のためにもそれを受け入れるべきだ」などと答え、「LGBTQのために発言、行動するというのは、バイデン大統領の政策で明確なことだ」、「それを擁護するということは、私が大使として進むべき道の中に入っている」と回答。

更に、エマニュエル駐日大使は、シカゴ市長を務めた際に、性的少数者に対する政策やパートナーシップへの取り組みに尽力したことなどを紹介。「2人の人間が互いに愛し合っている。それをちゃんと認めるべきだ。結婚という制度に入りたがっている……私はアメリカの大使として気にしている。そして個人としてこの問題を非常に気にしている」と語りました。

そして、エマニュエル駐日大使は、国会で議論されているLGBT法案について、法案は日本自ら決定するものとの前提を強調しつつ「可決は難しくない……枠を超えるものではなく、強化しようとするものだ」と、憲法の理念を強化するものだと述べています。

これに対し、一部の議員や識者は反発。12日、山田宏参議院議員は「『期待』とは言え、大使の発言としては日米関係とは関係のない、不適切な内政干渉的発言だ。米国内ですら民主党と共和党の対立案件となっている」とツイート。また、龍谷大法学部教授の石埼学氏は「LGBTへの『理解増進』が憲法の『原則や価値、理想』を明示というのは論争的。憲法は個人を個人として尊重することを要請し、その属性ゆえに尊重することを要請していない」と指摘しています。

ネットでも「国内問題化してLGBT法成立できてない国が偉そうに内政干渉してくるんじゃない!!」、「同性婚は憲法の枠外。それを進めようとするLGBT法はその一歩手前」、「そもそも憲法の解釈をお前がするな。GHQか!!」、「共和党の州は反対してるし、そうなってないところも多い。勝手な解釈で他国に介入してくるな」、「法で人の内心まで縛ろうという考えが恐ろしいです」など内政干渉だとの反発の声が目立ちます。



3.勇み足のマスコミ


エマニュエル駐日大使はLGBT法案について憲法の枠を超えるものではないと述べていますけれども、では、実際のところ司法はどう判断しているのか。

5月3日の憲法記念日を迎えるにあたり、戸倉三郎最高裁長官が記者会見を行っているのですけれども、そこで、LGBTに関する質問を受け、次のように答えました。
記者:昨今、性別変更や同性婚といった多様性をめぐる裁判に注目が集まっています。今後の社会の在り方に影響を与える重要な判断を示すことになる裁判所、裁判官にはどのような視点が求められ、当事者の声にどう向き合っていくべきか、お考えをお聞かせください。

長官:この御質問は、いろいろな具体的事件との絡みがあり、具体的なお答えをすることは難しいわけですが、一般論で申し上げるならば、元来、裁判官は、広い視野と深い洞察力をもって、紛争の基礎にある多様な利害や価値観の対立の本質を柔軟に受け止めた上で、適切な事実認定や法令の解釈を行い、納得性の高い判断をする、こういった資質能力が求められております。その意味では、国民の価値観や意識の多様化に伴って生じる新たな社会問題についても同様のことが言えるわけであります。
そういった資質能力を身に付けるためには、裁判官は、日々の仕事・生活を通じて、主体的かつ自律的に識見を高めるよう努めることが重要ですが、裁判所としましても、各種の研修等を通じて、各裁判官の取組を今後とも支援してまいりたいと考えております。
メディアの一部では、戸倉長官の発言から「広い視野と深い洞察力をもって」の部分を切り出して、いかにもLGBTに絞って回答をしたかのように報じているところもありますけれども、どちらかというとLGBTは質問のマクラであって、質問の中味は「今後、裁判所、裁判官にはどのような視点が求められ、当事者の声にどう向き合っていくべきか」という一般的な質問です。畢竟、戸倉最高裁長官も「一般論で」と前置きして回答しています。従って、これをもって「LGBTQ巡る裁判、深い洞察力必要」と見出しを付けるのは、いささか勇み足な印象を拭えません。


4.同性婚は憲法の枠外


このあたりの報道について、嘉悦大学教授の高橋洋一氏は「同性婚は14条の平等に反するだけでなく、24条で想定しないとの下級審の見解もあると書けよ。最高裁長官がここまで言うならLGBT裁判の最高裁判決が出てから法整備するというのが普通なのになぜ急ぐ」とツイートしていますけれども、2021年3月、「法律上、同性同士が結婚できないことは憲法違反だ」として、複数の同性カップルらが国を訴えていた裁判で、札幌地裁は原告の訴えを棄却しています。

この裁判での原告の訴えは次の通りです。
〇原告の訴え(事案の概要)
本件は、原告らが、同性の者同士の婚姻を認めていない民法及び戸籍法の規定は、憲法13条、14条1項及び24条に反するにもかかわらず、国が必要な立法措置を講じていないことが、国家賠償法1条1項の適用上違法であると主張し,慰謝料各100万円及びこれらに対する平成29年法律第44号による改正前の民法404条所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
このように原告は、同性婚を認めていない民法と戸籍法は憲法に違反していると訴えたのですね。原告が憲法違反とした憲法13条、14条1項、24条は次の通りです。
第十三条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第十四条  1)すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
第二十四条 1)婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
      2)配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
これに対する判決の骨子は次の通りです。
◯判決骨子
1 同性間の婚姻を認める規定を設けていない民法及び戸籍法の婚姻に関する諸規定(以下「本件規定」という。)は,憲法24条1項及び2項には違反しない。
2 本件規定は,憲法13条には違反しない。
3 本件規定が,同性愛者に対しては,婚姻によって生じる法的効果の一部ですらもこれを享受する法的手段を提供しないとしていることは,立法府の裁量権の範囲を超えたものであって,その限度で憲法14条1項に違反する。
4 本件規定を改廃していないことが,国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない。
このように、札幌地裁は、民法と戸籍法は憲法24条、13条に違反せず、「異性婚に対して婚姻を認めているのに同性婚にそれを認めないのは、14条1項の『法の下に平等』に違反する」と判断しています。

その一方、24条に違反しないという判断では、「婚姻及び家族に関する事項は、国の伝統や国民感情を含めた社会状況における種々の要因を踏まえつつ、それぞれの時代における夫婦や親子関係についての全体の規律を見据えた総合的な判断を行うことによって定められるべき」ものであるので、詳細については、「憲法が一義的に定めるのではなく、法律によってこれを具体化することがふさわしい」としています。

そして、24条2項で、婚姻の具体的制度の構築については、国会の立法裁量に委ねられているため限界があるものの、24条1項は、現状を見る限り尊重されるべきもの、と判断しています。




5.同性愛も性自認も文化で吸収してきた


第24条1項については、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」となっていることから、素直によめば、同性婚は憲法上禁止されていると解釈しても良いのではないかと思うのですけれども、札幌地方裁が、国の伝統や国民感情を踏まえつつ、時代の要請に合わせ総合的な判断をすべし」と判断したのは、注目すべき点かと思いますし、この時点で既に、戸倉最高裁長官が述べた「広い視野と深い洞察力」をもって柔軟に判断したようにも見えます。

筆者自身は、LGBT法案など不要だと思っていますけれども、いまの日本社会の現状をみる限り、同性婚については、「認めても、禁じてもいない」すなわち、高橋洋一氏の指摘する「想定外」に陥っていることは否定できないのではないかと思いますね。

ただ、だからといって、拙速に法制化してしまうことは、5月3日のエントリー「LGBT法案の裏側と利権」で述べたように、LGBT当事者の声ではなく、LGBT活動家の声に耳を傾け、「性自認至上主義」を助長したり、LGBT利権を生む危険があります。

LGBT当事者団体である「白百合の会」が4月5日の会見で「日本は、同性愛も、性自認の食い違いも文化で吸収してきた」と述べていますけれども、これなども「国の伝統や国民感情」によって、同性婚を「認めても、禁じてもいない」状態にしている例だともいえるわけです。

今後LGBT法案がどうなるか分かりませんけれども、政治においても、不要な内政干渉など跳ね除け、「広い視野と深い洞察力」をもって、日本では、LGBTなど昔から文化的に解決していると判断していただきたいと思いますね。

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