ウクライナの強襲とロシアの守り

今日はこの話題です。
画像

 ブログランキングに参加しています。よろしければ応援クリックお願いします。


2023-05-14 194000.jpg


1.ストーム・シャドウ


5月12、13の両日、ウクライナ東部ルハンスク州の州都ルハンスク中心部ロシア軍の司令部などで大規模な爆発が起きたと報じられています。

州都は最前線から約100キロ後方にあり、アメリカが供与した高機動ロケット砲システム「HIMARS」の射程約80キロの外になることから、ロシア国防省は13日、ウクライナがイギリスから供与を受けた長射程巡航ミサイル「ストーム・シャドウ」(射程250キロ超)を使ったと主張しました。

実際、イギリス国防省は、11日にウクライナに「ストーム・シャドウ」を提供済みだと発表し、ロシアの地元当局は12日の爆発に関し、現場付近で「ストーム・シャドウ」の刻印が入った部品などが見つかったとする写真を公表しています。

また、5月13日に公開された位置情報映像では、ルハンシク市西7キロのユビリンに対するウクライナ軍の攻撃の余波が映っていて、ロシア情報筋はウクライナ軍がその後の攻撃でも「ストーム・シャドウ」を使用したと広く主張しています。

これに対し、ロシアの軍事ブロガー(ミルブロガー)は、「ストーム・シャドウ」があればもっと大きな被害が出ただろうとし、ルハンシク人民共和国内務省は、ウクライナ軍が5月12日の攻撃には「フリム2」ミサイルを使用したと述べているようです。

もっとも、ロシアの軍事ブロガー達は、今回の空爆は、ウクライナ軍がこれまで完全に安全だと考えられていた地域の飛行場や後方展開・兵站センターを標的にできる可能性があることを示していると主張しているとのことです。

ただ、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、ウクライナ軍が「ストーム・シャドウ」を使用したことを目視で確認していないとのことです。


2.ロシア軍機四機同時墜落


ウクライナの反撃はこれだけではありません。13日、ロシアの有力紙コメルサントは、ウクライナと国境を接する露西部ブリャンスク州で、ロシア軍のヘリコプター「Mi8」2機と戦闘爆撃機「Su34」、戦闘機「Su35」、それぞれ1機の計4機がほぼ同時に墜落し、うちヘリ1機はSNSで拡散している動画などに基づきミサイルで撃墜されたとの見方を報じました。この4機はウクライナの首都キーウ近郊のチェルニヒウ州を攻撃するためチームを組んで出撃していたとされていて、コメルサントは乗員全員が死亡した可能性が高いとしています。

位置情報を取得した映像では、ウクライナ国境から約50km離れたスレストスキー・ムラヴェイとクリンツィ近くで墜落事故の余波が映っているそうで、ロシアの軍事ブロガーは、チェルニーヒウ州の国境地帯に引き寄せられた防空システムを使用したウクライナ側の攻撃の結果、4機すべてが墜落したのではないかと推測しているようです。

モスクワ議会下院議員のアンドレイ・メドベージェフは、ウクライナの反撃行動は機械化戦争のみで現れるものではないと警告し、ロシア当局はより広範なウクライナの反撃戦略の一環として、さらなる攻撃の準備をすべきであると示唆しています。

更に、タス通信によると、ウクライナ南部クリミアでも12日、ロシア軍の攻撃ヘリ「Mi28」が訓練中に墜落し、乗員2人が死亡したと報じています。ただ、ロシア国防省は機体の異常が原因との見方を示しているようです。


3.対独戦勝記念日のプーチン演説


この数日前の5月9日、ロシアの戦勝記念日のこの日、プーチン大統領は、モスクワの赤の広場で演説し、ウクライナへの軍事支援を強める欧米側を非難した上で、ロシアによる軍事侵攻を続ける姿勢を強調しました。

この演説について、防衛省防衛研究所の兵頭慎治研究幹事はNHKのインタビューに対し、次のように答えています。
NHK:ロシアの一連の行事の中で、軍事パレードが中止された都市もありました。なぜなんでしょうか。
兵頭氏:先日、首都モスクワのクレムリンの上空で、無人機が爆発する事件がありました。こうした安全上の問題のほかに、今ウクライナで戦闘を続けているロシア軍の軍事的な余力がなくなってきていることも関係してるのではないかと思います。ロシア全土で軍事パレードができなくなり、モスクワではせめて去年並みの規模で実施しようとしましたが、結果的に去年の規模よりも小さくなったとみられます。モスクワの軍事パレードも、戦車は第2次世界大戦で使われた古い「T34」1両だけが展示されましたが、それ以外の最新式のものや、実際にウクライナで戦闘で使われているものなどの展示はありませんでした。
 プーチン大統領としては、最低限の軍事パレードを実施して、年に1回の愛国的イベントを何とか乗り切って、政治的な体面を保とうとしたのでしょうが、軍事的には追い込まれたパレードになったという印象を持ちました。

NHK:演説でプーチン大統領は、今後もウクライナへの軍事侵攻を続ける姿勢を強調しました。どう聞きましたか?。
兵頭氏:去年の演説と比較して、特段新しい要素はありませんでしたが、去年と同じ3つの要素が演説の中で確認されています。1つ目が、今の軍事侵攻を正当化するフレーズ、2つ目は、引き続き西側を批判し、これは西側が仕掛けた戦争だというレトリックを強めていること。それから3つ目は、国民の結束を促す発言です。これら3つの要素により、プーチン大統領はきょうの演説の中で、ロシアとしては長期戦の構えで、軍事侵攻を続けていくという意志を改めて示したのではないかと思います。
 ただ、クレムリン上空の無人機攻撃などに言及はありませんでした。ウクライナや欧米諸国に対するかなり強硬な発言が飛び出すのではないかという見方もありましたが、来年3月には大統領選挙が今のところ予定されていて、必要以上にロシア国内、国民をあおってしまうと得策ではないという観点から、去年並みの淡々とした、ある意味、新鮮味のないような演説にとどまったのではないかと思います。

NHK:ロシアの民間軍事会社「ワグネル」のプリゴジン氏の意向がはっきりしないようにも見えますが、バフムトから撤退するつもりはあるのでしょうか。
兵頭氏:ワグネルは、民間軍事会社で、ロシアの中では非合法組織ですが、今回のウクライナ戦争では、バフムトの制圧など、ロシア軍以上の戦果を示す存在です。プーチン大統領は5月9日の対独戦勝記念日までにバフムトの完全掌握を目指していたと伝えられ、大半はロシア側が掌握しましたが、完全掌握はできなかった。
 プリゴジン氏としてはその責任をロシア軍に転嫁して、軍から砲弾などの供給を得られなかったからうまくいかなかったという発言ではないかと思います。ただ結果的にロシア軍からは砲弾が提供されたと主張していて、今後も戦闘を続けていく姿勢を見せています。ですからロシア軍とともに、プーチン大統領に戦果のアピール合戦をしているようなところがあり、今後も軍との足並みの乱れが、ロシア側の戦闘に悪影響を及ぼす可能性があるのではないかと思います。

NHK:兵器不足などによりロシア側の劣勢が伝えられる一方で、ウクライナ側は反転攻勢に乗り出す構えを見せています。今後の戦況はどうなるでしょうか。
兵頭氏:今後の戦況は攻守逆転し、ロシア側が守りに転じることになります。一般に、攻める側が守る側の3倍以上の兵力が必要ですが、ロシア側も兵士の士気や練度が大幅に低いとみられています。
兵頭氏は、ロシアに軍事的余力がなくなっていることから、パレードも追い込まれたものになっていると指摘した上で、長期戦の構えで戦闘を続けていく姿勢をしめした、と述べています。


4.指導者層と国民を分けたプーチン


このプーチン大統領の演説後、ウクライナのゼレンスキー大統領と欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長はウクライナの首都キーウで記者会見を開きました。

ゼレンスキー大統領は、ここ数週間で増加しているウクライナに対する攻撃について、「彼らは何かを破壊したことを示さなければいけない状況にある」と述べ、戦勝記念日を前に東部の都市バフムートを奪えなかったロシアが、軍や政治指導者に「何かを提示」しようとする取り組みの一環だと指摘。フォン・デア・ライエン氏は、ロシアは戦争で「劇的に失敗」しており、「侵略者たちは刑務所から引きずり出された」と批判しました。

ゼレンスキー大統領はこの日のビデオ演説でも「78年前の侵略者と同様、現在の侵略者が敗北するのは時間の問題だ」と非難しています。

ゼレンスキー大統領はロシアのウクライナ攻撃について「何かを破壊したことを示さなければいけない状況にある」と述べていますけれども、冒頭で取り上げたルハンスク中心部の大爆発もウクライナのミサイルによるものであったとすると、そこにもウクライナの意図があると筆者は見ています。

というのも、プーチン大統領の9日の演説では、次のようなくだりがあるからです。
われわれの祖国に対して再び本当の戦争が開始されたが、われわれは国際テロを撃退し、ドンバスの住民も守り、われわれの安全を確保している。

われわれ、ロシアにとって、非友好的であったり敵対的であったりといった人民は、西側にも東側にもいない。この地球上における大多数の人々と同様に、われわれは平和で自由な、安定した未来を望んでいる。

われわれは、優越志向のイデオロギーは本質的に嫌悪すべきものであり、犯罪であり、致命的だと考えている。しかし、世界制覇をねらう欧米のエリートたちは、依然として自分たちは特別だと繰り返し、人々の対立をあおり、社会を分裂させ、流血の衝突やクーデターを引き起こし、憎悪、ルソフォビア(反ロシア感情)、攻撃的なナショナリズムをまき散らし、人間を人間らしくする家庭や伝統の価値観を破壊している。

すべてはその先自分たちの意志や権利、ルール、そして事実上、強奪、暴力、抑圧のシステムを人々に押し付けるためだ。

ナチスの無謀な世界征服の野望が何をもたらしたか、彼らは忘れているようだ。誰がこのぞっとするような絶対悪を打ち破ったのか、誰が祖国のために立ち上がり、ヨーロッパの人々の解放のために命を惜しまなかったのか、彼らは忘れてしまっている。
このように、プーチン大統領は、ロシアにとって敵対的であるのは、他国の国民ではなく、「優越志向のイデオロギーに染まった世界制覇をねらう欧米のエリート」だとし、「ドンバスの住民も守り、われわれの安全を確保している」と述べているのですね。

つまり、プーチン大統領は欧米の指導者層と国民を分け、欧米の指導者層を敵対者だとした訳です。

けれども、ウクライナを始め、欧米にとっては、プーチン大統領は侵略者であり、戦争犯罪者であり、虐殺者です。他国の国民をも護る存在であると認める訳にはいきません。

その観点からみれば、ルハンスク中心部への攻撃は、プーチン大統領のいう、「ドンバスの住民も守り、われわれの安全を確保している」ことを否定したことになります。

つまり、ウクライナはドンバス地域を直接攻撃することで、プーチン大統領は嘘つきだ、アピールできる訳です。ただ、これもやり過ぎるとドンバスの住民を殺しているのはウクライナの方じゃないのか、という疑念と反発を生む可能性も考えられます。同様にプーチン大統領にしても、ウクライナの軍事施設以外を攻撃して、ウクライナ国民を殺害してしまうと、ロシアの敵は欧米の指導者層であって、国民ではない、とした自分の言葉を裏切ることになります。

その意味では、プーチン大統領の演説は、戦闘に対し微妙に枠をはめるよう誘導するものであり、それを大きく踏み外せば外すほど、外した方が世論から批判を受けるようになる可能性がでてきます。

前述した、防衛研究所の兵頭氏は、今後の戦況は攻守逆転し、ロシア側が守りに転じることになる、と述べていますけれども、ロシア・ウクライナ双方とも、住民の犠牲者をどこまで抑えることが出来るのかという点には注意すべきかもしれませんね。


  twitterのフリーアイコン素材 (1).jpeg  SNS人物アイコン 3.jpeg  カサのピクトアイコン5 (1).jpeg  津波の無料アイコン3.jpeg  ビルのアイコン素材 その2.jpeg  

この記事へのコメント