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1.G7サミットに参加するゼレンスキー
5月19日、ウクライナ政府で安全保障を担当する国家安全保障 ・国防会議のダニロフ書記は、現地の公共放送のインタビューに対し、ゼレンスキー大統領が来日し、G7広島サミットに対面で出席することを明らかにしました。
ダニロフ書記は、「非常に重要なことがサミットで決まる。ウクライナの利益を守るためにも、ゼレンスキー大統領が現地に行くことが重要だ」とサミットに出席する意義を強調しました。
ゼレンスキー大統領のG7サミット参加は、今年3月に岸田総理がウクライナを訪問した際、岸田総理がゼレンスキー大統領にオンラインでの参加を要請し、大統領側も快諾していたということですけれども、オンラインではなく、直接羅日する形で応えたという訳です。
また、これに先立ち、ウクライナへの支援をより具体化するため、関係省庁によって立ち上げられた「ウクライナ経済復興支援準備会議」の初会合が15日に行われています。
会議は木原誠二官房副長官がトップを務め、経済産業省や国土交通省、農林水産省、環境省など10省庁の局長級で構成されています。
初会合の結果概要は次の通りです。
5月15日、総理大臣官邸において、冒頭、岸田内閣総理大臣の出席を得て、木原誠二内閣官房副長官を議長、森昌文内閣総理大臣補佐官を議長代行とし、関係省庁局長級から構成される「ウクライナ経済復興推進準備会議」の第一回会合が開催されました。このように、戦時下のウクライナへの民間投資はリスクがあるため、政府が音頭を取って支援をする方針を打ち出しています。
1 冒頭、岸田総理から、本年3月のキーウでの日・ウクライナ首脳会談の際にゼレンスキー大統領から日本に対する強い期待が表明されたウクライナ復興に、我が国としてもインフラ復興、産業復興等、官民が連携して、そして、日本の金融力も活かして貢献していきたい旨述べました。その上で、貢献の意欲のある方々が、戦争のリスクを感じることなく復興事業に参加できるように日・ウクライナ両国政府で協力して知恵を絞っていきたい、関係する民間企業や団体等に幅広く声を掛け、柔軟で大胆な「日本ならでは」の復興支援策を練り上げてほしい旨述べました。
2 その後、会合においては、ウクライナにおける経済復興を力強く推進する観点から、各関係省庁の取組を含め、日本の官民による復興の促進について議論を行い、関係省庁間で緊密な連携を図っていくことが確認されました。
3 会合の締め括りとして、本会議の議長である木原内閣官房副長官から、戦時下のウクライナとの貿易・投資は民間企業にとってリスクが高く、企業努力に委ねるのではなく、政府としても積極的にイニシアティブを取ってほしい、このために関係政府系機関の活用も含めた企業の投資促進やODAとのシナジーについて具体的に検討しつつ、同時に、現地での邦人の安全や法の支配の観点も重要であり、ビジネスを行うにふさわしい環境が整備されるよう、ウクライナ側と協力を進めてほしい旨の指示がありました。
さらに、同副長官から、国際的な連携の推進の観点から、6月後半のロンドンでの英国・ウクライナ政府共催ウクライナ復興会議への日本企業の参加を促進すべく関係省庁は調整するとともに、今週末のG7広島サミット及びウクライナ復興会議やその先を見据えて、ウクライナ側の要望と現地の状況を踏まえつつ、①投資環境整備、②投資促進、③第三国協力、④国際機関との連携、⑤ODAとのシナジー等をテーマとして扱う形で、オールジャパンで日本ならではの支援になるよう、日本側として可能な方途を検討するよう指示がありました。
政府関係者によると、阪神・淡路大震災など震災復興を経験した日本のノウハウを伝えるため、ウクライナからの使節団も受け入れているそうです。
ウクライナの地方国土インフラ発展省、復興インフラ開発省などの幹部や自治体の副市長ら復興に携わる関係者が使節団として来日。14~26日の日程で、東京都のほか神奈川、京都、大阪、兵庫、広島の各府県を訪問し、復興計画の策定や被災者支援などについて研修を受け、歴史文化遺産を生かしたまち作りの事例も学ぶようです。
2.欧州を歴訪するゼレンスキー
G7サミットに出席するゼレンスキー大統領は積極的に各国首脳と会談。支援を呼びかけています。ゼレンスキー大統領は昨年12月、アメリカ訪問を皮切りに、今年2月、ロンドンとパリ、ブリュッセルを歴訪。4月にポーランドを訪れ、5月に入るとフィンランドとオランダを訪問しています。
そして、5月13日、ゼレンスキー大統領は13日、イタリアのローマを訪問し、メローニ首相と会談しました。メローニ氏は会談後の共同記者会見で、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの武器供与などを「必要な限り続けていく」と強調し、支援継続を確認しました。
ゼレンスキー大統領のイタリア訪問は、昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻後初めてのことで、ゼレンスキー大統領は、自身のツイッターに「ウクライナの勝利のために重要な訪問だ」と投稿しています。
更に、ゼレンスキー大統領はローマ教皇フランシスコとも会談しています。
フランシスコ教皇との会談で、ゼレンスキー大統領はウクライナ侵攻を巡り、自らが提案した和平に向けた10項目への支持を教皇に要請。ロシアがウクライナから子どもを連れ去ったとされる問題について、帰還に向けて協力することで一致しました。
教皇庁やイタリアメディアによると、会談は約40分間で、ウクライナの人道状況などが議題となったそうです。会談後、ゼレンスキー大統領はツイッターで「犠牲者と侵略者は対等ではない」として、教皇にロシアを非難するよう求めたことを明らかにしました。
教皇はこれまで、対話を呼びかけるためにロシア、ウクライナ両国を訪問する意向を示し、4月30日には停戦に向けて独自に「取り組みを進めている」と述べていたのですけれども、イタリアのテレビ番組は、教皇の和平への努力に敬意を表した上で「仲介者は必要ない。プーチン大統領との仲介はどの国もできない」と強調しています。
そして、ゼレンスキー大統領は翌14日、ドイツを訪問し、ショルツ首相と会談を行っています。
ドイツのショルツ首相は会談後、ゼレンスキー大統領との共同記者会見で「ドイツはウクライナを今後も支え続ける」と述べ、支援を続ける考えを強調しました。これに対しゼレンスキー大統領は「ウクライナ国民の命が救われることに対して、ショルツ首相とドイツ国民に感謝する」と述べました。
会談前日の13日、ドイツ国防省はウクライナに対し旧式の戦車「レオパルト1」を30両のほか、歩兵戦闘車や防空システムなどを盛り込んだ新たな軍事支援を発表しています。総額は27億ユーロ、日本円でおよそ4000億円相当でドイツのメディアはドイツからウクライナへの軍事支援は倍増することになると伝えています。
3.近隣諸国からの支持を失うゼレンスキー
このようにみていくと、欧州はこぞってウクライナを支援しているように見えるのですけれども、そうとも限らないという見方もあります。ピューリッツァー賞を受賞したアメリカ人ジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏です。
5月17日、シーモア・ハーシュ氏は「ウクライナ難民の質問」という記事を自身のサブスタックに投稿。数百万人の避難民がヨーロッパに流入する中、ウクライナの近隣諸国はゼレンスキー氏に和平追求を求めている、と明かしています。
件の記事のさわりは次の通りです。
・先週土曜日、ワシントン・ポスト紙は、ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領がバイデン・ホワイトハウスに隠れて、今年初めにロシア国内のミサイル攻撃の拡大を強く求めたことを示すアメリカの情報機関の機密文書の暴露を掲載した。なんと、ポーランドがゼレンスキー大統領に対し、辞任してでも戦争を終わらせよと迫り、ウクライナの近隣諸国からの支持を失いつつあるというのですね。
・この文書は、現在拘束されている空軍の下士官兵がネット上に投稿した大量の機密資料の一部だ。バイデン政権の高官は、ポスト紙から新たに明らかになった情報についてのコメントを求められた際、ゼレンスキー氏は、ロシア国内を攻撃するためにアメリカの武器を使用しないという誓約を破ったことはないと述べた。ホワイトハウスの見解では、ゼレンスキーは何一つ間違ったことはできない。
・ゼレンスキーがロシアに戦争を持ち込もうとしていることは、ホワイトハウスの大統領や上級外交政策補佐官にはわからないかもしれないが、アメリカの情報機関の人々にとっては、彼らの情報や評価を大統領府で聞いてもらうことが難しいということなのだろう。一方、バクムート市での虐殺は続いている。モスクワ、キエフ、ワシントンの現在の戦争責任者は、恒久的なものの前段階となる一時的な停戦交渉にさえ関心を示さない。今、話題になっているのは、どちらかが春の終わりから夏にかけて攻勢をかける可能性についてだけである。
・しかし、ポーランド、ハンガリー、リトアニア、エストニア、チェコ、ラトビアの各レベルの政府関係者の働き掛けにより、アメリカの情報機関の一部が知っており、秘密裏に報告しているように、別の何かが起こってきている。これらの国はすべてウクライナの同盟国であり、ウラジーミル・プーチンの敵だと宣言している。
・ポーランドは、ウクライナでのロシア軍の活躍により、第二次世界大戦時のスターリングラードでの成功の輝きを失い、もはやロシア軍を恐れることはない。ポーランドは、ゼレンスキーに対して、必要なら辞任してでも戦争を終結させ、国家再建のプロセスを開始するよう、静かに促している。中央情報局(CIA)内部で知られる傍受情報などによると、ゼレンスキーは一歩も譲らないが、近隣諸国からの私的な支持は失いつつある。
ハーシュ氏は2月、アメリカのテレビ番組「デモクラシー・ナウ!」のインタビューで、ウクライナ政府は「非常に悪い状況」にあり、ウクライナ紛争にかかる時間は「ゼレンスキー大統領がどれだけ多くのウクライナ人を犠牲にするか」だけにかかっていると述べたそうです。戦争終結はゼレンスキー大統領の胸一つに掛かっているというのですね。
4.二重戦略を立てたゼレンスキー
戦争継続で一歩も譲らないというゼレンスキー大統領ですけれども、巷で噂されているウクライナの大規模反転攻勢はいつ始まるのか。
これについて、反転攻勢を開始できない理由は兵器不足ではないという指摘もあります。
フランス紙フィガロのルノー・ジラール記者は、5月16日、「ウクライナ大統領の二重戦略」という記事を自身のブログに掲載しています。
その内容は次の通りです。
・イタリア、ドイツ、フランス、イギリス。2023年5月13日から15日にかけて、ヴォロディミル・ゼレンスキーは大規模な欧州外交ツアーを行った。旧ヨーロッパの4大経済大国は、それぞれがかなりの兵器産業を持っており、15ヶ月前に隣国ロシアに攻撃されて以来、軍服を脱いでいないウクライナ大統領を歓待した。ジラール氏は、ロシアは既に、軍事的勝利を諦め、征服した領土を維持しようとしているだけだと前置きした上で、ゼレンスキー大統領は、軍事的な穏健さと外交的な積極性という二重の戦略を立てていると指摘しています。つまり、外交で欧米の長期的な支持を固る一方で、軍事的に強気な姿勢を打ち出すことで、ロシアとの交渉を有利に運ぼうとしている、というのですね。
・この4カ国は、2023年5月19日から21日まで日本の広島で開催されるG7のメンバーである。欧州理事会議長と欧州委員会委員長は、欧米の主要経済大国(米国とカナダを加えて7とする)が集まるこのサミットに招待されている。G7事務局が提供したリストでは、最初の議題は「ロシアのウクライナへの侵略」である。国際レベルでのパートナーとの対話、核軍縮と不拡散、経済の回復力と安全保障、気候・エネルギー・環境、食料・健康・開発」の前に記載されている。
・したがって、ウクライナ戦争は現在、欧米列強の第一の関心事である。G7サミットでは、キエフへの資金援助(予算、人道的、軍事的のいずれでも)を調整することになる。2022年2月24日以降、米国はウクライナに総額約720億ユーロの援助を行っている。欧州連合(EU)からの援助は約500億ユーロにのぼる。近代史において、戦争状態にある国に対するこれほど多額の資金・軍事援助は、1941年の米国による英国への援助、1942年のソ連への援助まで遡る必要がある。
・ゼレンスキーの欧州視察の動機は、ウクライナにとって次回のG7が重要であることにある。2022年12月末、ウクライナ大統領はすでにアメリカを凱旋訪問していた。
・2022年2月24日にロシア軍がウクライナ領内に侵入したとき、アメリカはゼレンスキーに避難場所を提供した。ウクライナ大統領は勇気と冷静さをもって、「タクシーはいらない、弾薬が必要だ」と応えた!2015年以来、アメリカ、イギリス、カナダ人によって十分に訓練された彼の軍隊がロシアの遠征軍に耐え、首都を救った後、政治的コミュニケーションの天才であるゼレンスキーは、国民を活気づけ、西側に武器を提供するように説得することがでた。2022年9月、彼の軍隊はイズムとケルソンで2つの勝利を収め、ウクライナは2月24日以降に失った領土の約4分の1を取り戻すことができた。それに伴い、大統領の国民や同盟国からの信頼も高まった。
・その後、ロシア軍は間隙を埋めることに成功し、ウクライナとの1400kmの前線を固め始めた。ドンバス地方に少し進出して、ソレダーを占領したが、バフムートで阻まれた。クレムリンに代わってバクムート戦線を担当するワーグナー民兵のトップ、プリゴジンは2023年4月、「ロシア軍は目的を達成した、したがって戦争は終結できる」と宣言した。これは、ロシア側が、もはやこの通常戦争に軍事的に勝利し、ウクライナを意のままにすることはできないと悟った証拠である。ロシア側は、征服した領土をマジノ線で囲み、それを維持しようとしているに過ぎない。
・ロシア軍の新たな防衛姿勢に直面したウクライナ大統領は、二重の戦略を打ち立てた。それは、軍事的な穏健さと外交的な積極性からなるものである。
・ゼレンスキーは、大規模な反攻を仕掛ける手段はあるが、ウクライナ人の命が犠牲になりすぎるため、待つと宣言した。大統領は、15ヶ月に及ぶ作戦で軍も国民も当然疲れていることを自覚している。
・外交面では、欧米の長期的な支持を固め、最も真剣な調停にチャンスを与えようとしている。中国の大統領と1時間以上電話で話し、ローマでローマ法王に会いに行った。
・これは、軍事作戦をあきらめたということなのだろうか。しかし、西側諸国の新兵器の扱いに精通し、訓練された部隊で、確実に攻撃することを望んでいる。
・ある時点で、ロシアとウクライナの間で直接、間接を問わず話し合いが持たれるのは必至だ。そのとき、ウクライナは敵対国から最大限の譲歩を引き出すために、強気の姿勢で臨まなければならないことを、ゼレンスキーは理解している。
もし、この通りであるとすれば、欧米が表向きウクライナ支援を継続するという裏で、近隣国がゼレンスキー大統領に戦争を終結させろと裏で圧力を掛けていることとも、話があうような気もします。
果たして停戦交渉が出来るのか。注目です。
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