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1.中国和平案は妥協のシナリオ
5月26日、欧州歴訪中の中国政府の李輝ユーラシア事務特別代表は、最後の訪問地モスクワでロシアのラブロフ外相と会談し、各国政府とのこれまでの協議内容を報告しました。
ウクライナ情勢を巡り、中国は和平案と称される12項目の「中国の立場」を提唱。李氏は仲介役として今月中旬からウクライナや欧州を歴訪し、その結果を最後に友好国ロシアで報告する形です。もっとも、中国の提案は「停戦」をうたう一方、G7などが求めるロシア軍撤退は明記していません。
これについて、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は西側当局者の話として、ロシアがウクライナ東・南部を占領した状態での即時停戦を呼び掛ける「和平案」を、李氏が仏独などに提示したと伝えています。
この報道を受けて、ウクライナのポドリャク大統領府顧問は、ツイッターに投稿し、「ウクライナ全土の解放を想定しない妥協のシナリオだ……民主主義の敗北、ロシアの勝利、プーチン政権の存続、国際政治での衝突急増を容認するのに等しい」と批判しています。
2.ゼレンスキーがフランス政府専用機で来日した理由
先日のG7広島サミットには、ゼレンスキー大統領がサプライズ来日しましたけれども、多分に中露を意識した演出をしていたとの指摘があります。
5月22日放送のBSテレ東「日経ニュース プラス9」で、明海大学の小谷哲男教授は、ゼレンスキーがフランス機で来日したことについて、次のポイントを指摘しています。
・インドの上空を通ってベンガル湾に入って北上。そこから中国の領空に入りそこから広島に入ってくるというルート。このように、小谷教授は、アメリカとウクライナで示し合わせた上でフランス機で来日させたと指摘しています。インドの上空を通ってベンガル湾に入ってから北上だなんて、インドはこっち側だと示した上で、さらに中露を強烈に牽制したとしか思えない飛行ルートです。
・普通に考えればありえないルートだが、あえて中国の領空を通ったというのがおそらくポイント
・米軍機にゼレンスキーが大統領が乗って東アジアにやってくるとなると当然極東ロシア軍は黙ってはいない
・米軍機で行くよりはどちらかといえば中国やロシアにやや近いアメリカに比べればフランスの方が行きやすいんじゃないか
また、同じ番組で、東京財団政策研究所主席研究員は、サミットでのゼレンスキー大統領について、次のように指摘しています。
・ポイント2つあって1つがロシアを孤立させた。ゼレンスキーさんがですね広島だけでなく、その前にサウジも行ったしヨーロッパも回ったわけですから、逆にプーチンがどこも行けないわけです。番組では、グローバルサウスの国の中には、ロシアがウクライナの占領してる状態を凍結してでも停戦するべきではないかという国が多い中、そうではないんだ、ウクライナのその領内からまずロシア軍が撤退することが平和を達成するために重要なんだということを直接訴えかけたと指摘してますけれども、G7サミットの首脳コミュニケを見る限り、その目論見は成功したように見えます。
・広島サミットやってる最中に実はあの習近平出席がカザフスタンなど5つのスタンの大統領を西安に集めてパーティーやったわけです。けれどもなぜプーチンを呼ばないのか。呼んでなかった。
・2番目がやっぱりね経済委員長と軍事援助なね供給してくれる国は一番ありがたいんだけれどもそれなければそれ以外の経済援助もぜひお願いしたい。今回直接対面で参加できてゼレンスキー大統領にとってものすごく収穫は大きかった。
3.サミットがウクライナ一色になることを避けた岸田政権
では、日本にとって、今回のG7広島サミットにどういう狙いを持っていたかというと、自民党の青山繁晴参院議員は次のように解説しています。
・日本は今回の広島サミットの狙いを2つ持っていたなるほど、なぜゼレンスキー大統領がサミットの途中で登場したのか、納得できる理由です。
・1つはウクライナ戦争についても自由と民主主義 を守り抜く発信をすると、これは中国に対してもそう。
・2つ目は グローバルサウスの国々にふさわしい場を作ること。
・それに合うようにゼレンスキー大統領に来てもらうというのは、サミットがウクライナ戦争一色になったら困るから。
・ゼレンスキー大統領はものすごく分かりやすい行動をする人で、彼の目的は2つある、
・1つはまさしく軍事力と経済力のある日本を含めたG7諸国に戦争は長引きますと、あるいは長引かせますと伝える。
・ウクライナはこのままだと防空能力を失ってしまうので、ロシアが今まで使えなかった戦闘爆撃機が大量にやってくる。
・そうなると形勢逆転してウクライナの 戦争を負けてしまうからちょっと防空能力を高めなきゃいけない。
・防空能力を高める能力を持っているのはアメリカをはじめG7だ。F16を持ってる国々に ウクライナに渡すことを許してくれ。
・バイデンは今まで慎重だったけど、これを変えた。
・もう一つ、インドを含めたいわゆるグローバルサウス の国々に対して、ロシアを助けるなとG7に対しては助けてくれ、G20に対してはロシアを助けるなこれを言いに来た。
・これに対し、日本側は、ゼレンスキーさんは後半だけにして、前半は岸田総理の指導力をたっぷり見せて、後半はゼレンスキー大統領に対してG7にも言えるし、G20にも言う場をちゃんと作れますよ、だから来てください、と。
・双方の利益一致してるけど、元々はこのサミットの主役を乗っ取られては困るって思惑が日本にあった。日本は見せかけの部分では非常にうまくやった。
4.歴史の転換点となったG7広島サミット
今回のG7広島サミットに対し、中国は激怒し、サミット閉幕日の21日、孫衛東外務次官が日本の垂秀夫・駐中国大使垂大使を呼び出し、サミットで中国に関する諸課題が話し合われたことは、中国への「内政干渉」に当たるとして強い抗議の意を伝えました。
これに対し、垂大使は「中国が行動を改めない限り、これまで同様にG7として共通の懸念事項に言及するのは当然……まずは中国側が前向きな対応を行うべき」とぴしゃりと反論し、話題になっています。
SNS上では「中国に対面で明確に反論した垂秀夫中国大使は立派」「言うべきは言う、是々非々の姿勢が外交官の仕事」「毅然としていて素晴らしい」などの声があがっていますけれども、今迄の日本ではちょっと、考えられなかったことです。
では、なぜ、中国がそれほど激怒したのか。これについて、経済評論家の渡邉哲也氏は、G7の共同声明で、中国を名指しで、しかも条令や協定を示して逃げ場を無くしたからだと指摘しています。
件の共同声明から、中国を名指しした部分を引用すると次の通りです。
<地域情勢>確かに、「パリ協定」、「香港における権利、自由及び高度な自治権を規定する英中共同声明及び基本法」、「ウィーン条約及び領事関係に関するウィーン条約」と条約名が並び、「成長する中国が、国際的なルールに従って振る舞うこと」、「南シナ海における中国の拡張的な海洋権益に関する主張には法的根拠がなく」と、中国が条約を守らない国であると指弾しています。
50. 我々は、より安全で豊かな未来を築くために、中核となる外交政策及び安全保障上の課題に関して結束する。また、我々は、差し迫ったグローバルな課題に対処し、国際システムがこれらの課題に効果的に対応できることを確保するために、幅広いパートナーと共に取り組むという決意を再確認する。
51. 我々は、G7のパートナーとして、それぞれの中国との関係を支える以下の要素について結束する。
・我々は、中国に率直に関与し、我々の懸念を中国に直接表明することの重要性を認識しつつ、中国と建設的かつ安定的な関係を構築する用意がある。我々は、国益のために行動する。グローバルな課題及び共通の関心分野において、国際社会における中国の役割と経済規模に鑑み、中国と協力する必要がある。
・我々は、中国に対し、パリ協定及び昆明・モントリオール生物多様性枠組に沿った気候及び生物多様性の危機への対処並びに天然資源の保全、脆弱な国々の債務持続可能性と資金需要への対処、国際保健並びにマクロ経済の安定などの分野について、国際場裏を含め、我々と関与することを求める。
・我々の政策方針は、中国を害することを目的としておらず、中国の経済的進歩及び発展を妨げようともしていない。成長する中国が、国際的なルールに従って振る舞うことは、世界の関心事項である。我々は、デカップリング又は内向き志向にはならない。同時に、我々は、経済的強靱性にはデリスキング及び多様化が必要であることを認識する。我々は、自国の経済の活力に投資するため、個別に又は共同で措置をとる。我々は、重要なサプライチェーンにおける過度な依存を低減する。
・中国との持続可能な経済関係を可能にし、国際貿易体制を強化するため、我々は、我々の労働者及び企業のための公平な競争条件を求める。我々は、世界経済を歪める中国の非市場的政策及び慣行がもたらす課題に対処することを追求する。我々は、不当な技術移転やデータ開示などの悪意のある慣行に対抗する。我々は、経済的威圧に対する強靱性を促進する。我々はまた、 国家安全保障を脅かすために使用され得る先端技術を、貿易及び投資を不当に制限することなく保護する必要性を認識する。
・我々は引き続き、東シナ海及び南シナ海における状況について深刻に懸念している。我々は、力又は威圧によるいかなる一方的な現状変更の試みにも強く反対する。
・我々は、国際社会の安全と繁栄に不可欠な台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認する。台湾に関するG7メンバーの基本的な立場(表明された「一つの中国政策」を含む)に変更はない。我々は、両岸問題の平和的解決を促す。
・我々は、強制労働が我々にとって大きな懸念事項となっているチベットや新疆ウイグルにおけるものを含め、中国の人権状況について懸念を表明し続ける。我々は、中国に対し、香港における権利、自由及び高度な自治権を規定する英中共同声明及び基本法の下での自らのコミットメントを果たすよう求める。
・我々は中国に対し、外交関係に関するウィーン条約及び領事関係に関するウィーン条約に基づく義務に従って行動するよう、また、我々のコミュニティの安全と安心、民主的制度の健全性及び経済的繁栄を損なうことを目的とした、干渉行為を実施しないよう求める。
・我々は、中国に対し、ロシアが軍事的侵略を停止し、即時に、完全に、かつ無条件に軍隊をウクライナから撤退させるよう圧力をかけることを求める。我々は、中国に対し、ウクライナとの直接対話を通じることも含め、領土一体性及び国連憲章の原則及び目的に基づく包括的、公正かつ永続的な平和を支持するよう促す。
52. 南シナ海における中国の拡張的な海洋権益に関する主張には法的根拠がなく、我々はこの地域における中国の軍事化の活動に反対する。我々は、UNCLOSの普遍的かつ統一的な性格を強調し、海洋における全ての活動を規律する法的枠組みを規定する上でのUNCLOSの重要な役割を再確認する。我々は、2016年7月12 日の仲裁裁判所による仲裁判断が、仲裁手続の当事者を法的に拘束する重要なマイルストーンであり、当事者間の紛争を平和的に解決するための有用な基礎であることを改めて表明する。
渡邉哲也氏は、今回のG7広島サミットについて、次のように述べています。
・今回のG7というのはもう一度新しい枠組みを作るという意味でも歴史的で完全な歴史の転換点。このように、渡邊氏はロシアの敗北はプーチンの失脚、習近平の責任問題になると指摘し、G7広島サミットは、完全な歴史の転換点になると評価しています。
・明確にルールを守らないやつはこいつとこいつだと言っている、こんな時も守らなかった、あんな時も守らないだから許さないということを言っている。
・ゼレンスキーがわざわざその書いた絵の中で日本に来てってあんな盛り上がって劇的に非常によくできたシナリオ。
・G20の議長国であるモディが来た。モディィが中立的な立場をとっているが、ここまで纏まられちゃうと中立でいられない状況に追い込まれていく。
・もしプーチンが負ける、ロシアが負けるイコールプーチンの敗北。プーチンの失脚になる。
・そうなってくると今度は習近平の立場もなくなる。
・習近平としてはプーチンとの関係を協力強化していくということで、電話会談を開きそして首相同士が新しい経済関係という同盟を結ぶということを表明した。
・もしこれでロシアが負けちゃうと習近平は責任を取らされる。
・ロシアが負けた場合何が起こるかというと必ずその後戦後賠償の話が出てくる。
・どこから取るかとなると国。国策企業たくさん作ってロシアから賠償金取る方法。油とガスを全部国際管理にしちゃって国際メジャーが入って、全部その利益を賠償に当てていけばいい。
・そうすると中国が狙ってるロシアからの石油やガスの調達というのが不可能になる。ヨーロッパのエネルギー保障もできてくる。
・そうなってくると中国としてはロシアから石油を買うガスを買うというこの根本の計画も根底から崩れていく
・ここでウクライナに頑張ってもらうとそのシナリオが全部動き出すので中国としても負けてもらったら困る。
・そういう微妙なところでG7の今回のその声明が出され、F16を供給し日本も設備を供給しG7の国々がいろんなものを提供するということでウクライナ軍が反撃を始めた。
5.恐怖の三人
冒頭で、中国はロシア寄りの停戦案をウクライナに提示していたことに触れましたけれども、G7サミットの結果を受けて、中国は停戦への仲介を辞め、完全にロシア側に立ったという指摘もあります。先に触れた、青山繁晴参院議員です。
青山参院議員は自身の動画で次のように述べています。
・サミットで中国ロシアはすごく追い詰められた。これは多分岸田さんが想像してる以上青山参院議員は、中露は「糞詰まり」に陥ったとし、かといって核を使うにしても使う場所がないと米軍の分析を紹介しています。
・中国はものすごい興奮して北京の日本の垂水大使を呼び出して、「馬鹿にしやがったな」と抗議した。
・中国の隣で、憲法9条を持ったままで何もできない日本、対するのは米軍だけ自衛隊はどんなに訓練したって実際には使えない。
・その程度の日本でサミットを偉そうにやってつまり中国は入れないサミットをやって、しかも徹底的に中国から見たらもう中国を侮辱してバカにして足蹴にすることに集中したサミットに見える。
・ロシアは中国の興奮ぶりに比べるとはっきりと茫然自立。
・よくわかったのはプーチン大統領始めロシアの情報機関も軍もまさかゼレンスキー大統領が戦地をしかも反転攻勢これからやるって言ってる時に極東の日本まで飛ぶとは夢にも思って
なかった。
・ゼレンスキー大統領がG7の首脳に対して日本にもアメリカにもイギリスにもドイツのフランスにもイタリアのどこにも戦争続けんだと、だから能力つけさせてくれって言って。
・バイデン大統領があれほど慎重だったらそれに答えてF16をアメリカが直接じゃないけども、アメリカからF16を受け取ってる国々でウクライナを渡すこと認めてしまった。
・これゼレンスキーさんの動きで起きた。このショック。
・中国はそのロシアに手を伸ばした。報道とは別に実際は中国がロシアに手を伸ばしてロシアの使者を呼んだ。
・本当は習近平さんからしたら格下のロシアの首相、何の権限もない首相を自分と合わせて、世界の前で堅く握手して見せた。
・中国はこのサミットでもう生き方変えますって宣言した。
・どう変わるかというと直前まではゼレンスキー大統領とプーチン大統領の間を取り持って双方の顔が立つような和平案を出してたのをやめると言ったに等しい。
・ロシアを全面支援すると、ロシアに戦争を勝たせるぞって言ったに等しい。
・中国は、やっぱりクリミアはもう諦めた方がいいとこれだけこの世界が真っ二つになってしまってクリミアにこだわるとどんな恐ろしいこと起きるかわからないよってことを水面下でもう早く
もそういう動きも本当はしてる。
・同時にこのはっきり中露対G7そして間に入ろうとしたインドやブラジルが例えばブラジルのルーラ大統領とゼネツキ大統領結局会わなかった双方が自分の自分相手の都合だと言ってるけど要は会談は実現しなかった。
・仲介者もなしインドもブラジルもどこもロシアとプーチン大統領と近い国々の仲介もなくてただただロシアは中国だけ頼むと、
・中国もいわばこの顔に泥を塗られてもうはっきりロシアに軸足を移す。
・アメリカ軍の分析では、結局核を使う場所がない。
・東部戦線でロシア軍、ワグネルも含めてロシア軍とウクライナがこうなってる状況で核なんか使ったらロシア側でどういう被害が出るかわからない。
・被害出てもいいと思っても風の向きから考えるとサンクトペテルブルグやもしくは西まで放射性物質が飛ぶことを考えなきゃいけないから東部戦線で使えない。
・じゃあキーウにこの状況で核爆弾落としてでロシアがそれでもう国やめますかというのなら別だけど、復興事業まで始まっているキーウに核爆弾を通して全部殲滅するって
ことは米軍から見てもこれとてもできない。
・なら、黒海の中の島に落とすんじゃないか、とでも島に落としてじゃあそれでロシア軍が何か有利になるかって全然ならない。
・むしろ不利になるだけであってゼレンスキー大統領が大胆に振る舞ってG7の支持を取り付け、G20をとりあえず黙らせ、その状況で無人島であれ何であれ核使ってしまうととにかく
もう全部ロシアが悪いんだってなってしまってもう立ち行かない。
青山氏は、中国はあの経済力でロシア全体支援するとなったら経済制裁はもう効果がない、戦争が長期化するだけじゃなくてクリミアがだんだん焦点になって、戦争が元の原点に戻っていく、とし、ゼレンスキー大統領とプーチン大統領と習近平国家主席が世界の恐怖の三人になると指摘しています。
その意味では、今回のG7広島サミットは恐怖の三人を生み出してしまった。たとえサミットが歴史的転換点であったとしても、その行く先は明るい方向とは限らないかもしれないことは留意すべきではないかと思いますね。
この記事へのコメント
おじじ
信用できる経済統計値がないので憶測だが、食料自給率もかなり低いだろう。
食料備蓄など、売り払われて役人の懐に入っているような国だから、戦争遂行力があるのだろうか。
そんな経済力で、ロシア全体を支援するような演技だけをするのだろうな。
プーチンの病状も悪化して余命いくばくである噂が立つ中、ゼレンスキ―は反転攻勢を匂わせながら、相手に自滅を促す持久戦に出ているのはないだろうか。
そして、西側は徐々にウクライナが勝利できると確信を高めながら、武器援助を進めている分けだ。
それが、長射程巡航ミサイルと、F-16の供与であろうと思う。