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1.北朝鮮弾道ミサイル発射
5月31日、北朝鮮が弾道ミサイルを発射しました。
この日、午前6時29分頃、韓国軍の合同参謀本部は、北朝鮮が主張する「宇宙発射体」1発が北朝鮮北西部の東倉里(トンチャンリ)付近から南方向に打ち上げられたと発表しました。
続いて午前6時半、日本政府はJアラートで沖縄県を対象に発出し、「北朝鮮からミサイルが発射されたものとみられます。建物の中や地下に避難して下さい」と伝えました。その後、午前7時4分新たに情報を発信し、「先ほどのミサイルは我が国には飛来しないものとみられます。避難の呼びかけを解除します」と避難指示を解除しています。
岸田総理は、午前7時半ごろ総理大臣官邸に入った際、記者団に対し「北朝鮮から弾道ミサイルと思われるものが発射された。現在、被害状況は報告されていない」と述べ、8時過ぎからNSC(=国家安全保障会議)の閣僚会合を行い、これまでに入っている情報を分析し、今後の対応を協議したようです。
2.発射は失敗したと明かした北朝鮮国家宇宙開発局
北朝鮮が発射した弾道ミサイルは、朝鮮半島西側の黄海にあるペンニョン島西側の海上上空を通過したところを確認。その後の飛行を追跡していたようなのですけれども、韓国の通信社、連合ニュースは韓国軍の消息筋の話として「北の宇宙発射体が予告された落下地点に行かず、レーダーから消失した」とし、ミサイルが空中爆発した可能性もあると伝えていした。
韓国軍によると、ミサイルは、韓国西部沖のオチョン島の200キロあまり西に落下したとのことで、
韓国軍はその後、オチョン島のおよそ200キロ西側の海上で「宇宙発射体」の一部と推定されるものを見つけ、引き上げていると明らかにし、画像を公開しています。
では、今回の発射は失敗だったのか。
これについて、31日、北朝鮮の朝鮮中央通信は、国家宇宙開発局が午前6時27分ごろに軍事偵察衛星を打ち上げたが、「事故が発生し黄海上に墜落した」と発表したと報じています。国家宇宙開発局は、ロケットの1段目を分離した後、2段目の異常により推進力を失ったと説明。ロケットの新型エンジンシステムの信頼性と安定性が落ち、使用された燃料の特性が不安定であったことに事故の原因があると見ているとした上で、対策を早急に講じ「できるだけ早い期間内に2次打ち上げに踏み切る」と発表しています。
今回の発射について、北朝鮮は、日本の海上保安庁と国際海事機関(IMO)に対し、5月31日午前0時から来月11日までの間に人工衛星と称するミサイルを、黄海、東シナ海、ルソン島の東方向に発射すると通告していました。
発射のタイミングについて、朝鮮労働党中央軍事委員会の李炳哲副委員長が、30日、国営メディアを通じた談話で、米韓の合同演習やアメリカの軍用機による偵察活動を強く批判し、衛星について「アメリカと追随勢力の危険な軍事行動をリアルタイムで追跡、監視し軍事的準備態勢を強化する上で必要不可決である」と主張、打ち上げのタイミングについては「6月にまもなく打ち上げられる」と表明していました。
ところが発射は「6月まもなく」ではなく、通告初日の5月のうちに発射したことから、関係国を混乱させる狙いもあったのでは、とも言われていますけれども、防衛省防衛研究所の高橋杉雄氏は、その狙いについて「狙いはアメリカ。成功すればアメリカ本土に発射可能になるのではないか……2016年の時より格段に進歩しているので、成功する可能性は十分にある。この発射での日本への直接的な影響は考えにくい」とコメントしています。
3.北朝鮮の核・ミサイル能力に関する認識
北朝鮮の核・ミサイル能力については、今年2月防衛省が「北朝鮮による核・弾道ミサイル開発について」という文書を出しています。
文書の「北朝鮮の核・ミサイル能力に関する認識」というページには、次のように知るされています。
○ 北朝鮮の究極目標は「体制維持」とみられるが、米韓の現代的な通常戦力や、核を含む米国の脅威に対抗するためには、独自の核抑止力構築が不可欠と認識。このため、北朝鮮は、核兵器とともに、その運搬手段である弾道ミサイルの開発を推進。このように、防衛省は北朝鮮が核兵器の小型化・弾頭化を実現し、中・短距離の弾道ミサイルに搭載して、日本を攻撃する能力を既に保有している可能性があると分析しています。
〇 これまでの核実験を通じた技術的成熟などを踏まえれば、核兵器の小型化・弾頭化を既に実現し、長射程のものはともかく、少なくともこれをノドン・スカッドといった弾道ミサイルに搭載して、我が国を攻撃する能力を既に保有している可能性。
〇 更に金正恩委員長は、「戦術核兵器」の開発や、「15,000km射程圏内」への命中率を向上させ、「核先制及び報復打撃能力」を高度化することを目標として提示するなど、引き続き核戦力の強化を継続。
〇 また、新たな傾向として、2019年5月以降、低空を変則軌道で飛翔可能な短距離弾道ミサイル(SRBM)などを繰り返し発射。一連の発射を通じ、急速に関連技術・運用能力向上を企図。発射台付き車両(TEL)や潜水艦、鉄道といった様々なプラットフォームからの発射により、兆候把握・探知・迎撃を困難にするなど、より実戦的なミサイル戦力を拡充。
〇 加えて、近年では長距離巡航ミサイルの実用化や、極超音速ミサイル、固体燃料推進方式のICBMの実現などを追求。北朝鮮は、2021年1月の党大会において「国防科学発展及び武器体系開発5か年計画」という計画が示されたことを累次にわたって明らかにしており、引き続きこれに沿って各種ミサイル等の開発に注力していくものとみられる。
〇 一連の開発・発射の背景には、体制維持・生存のため、核・長射程弾道ミサイルの保有による核抑止力の獲得に加え、韓国軍や米軍との間で発生し得る通常戦力や戦術核を用いた武力紛争においても対処可能な手段を獲得し、あらゆる段階で状況を主導的に管理するという戦略がある可能性。
〇 北朝鮮は、核を絶対に放棄しない旨表明し、かつてない高い頻度でのミサイル発射を繰り返すなど、核・ミサイル開発のための活動を継続する姿勢を依然として崩していないのみならず、今後、更なる挑発行動にでる可能性も考えられる。北朝鮮のこうした軍事動向は、我が国の安全保障にとって、従前よりも一層重大かつ差し迫った脅威であり、地域及び国際社会の平和と安全を著しく損なうもの。
今回の発射について、海上自衛隊で自衛艦隊司令官などを務めた香田洋二氏は「今沖縄の南に台風がいるが、実は発射地域の天候だけではなくて、1段目、2段目、3段目の飛行状態の確認のために遠いところの天候を気にする。それを気にせずに発射したということで、ある意味技術的に、あるいは飛行情報の収集に自信を持ったというふうに考えられる。初日に発射したということで、北朝鮮が技術的サイドは自信を持ったというふうに考えられる」とコメントしています。
北朝鮮の技術的サイドが自信を持ったわりに、失敗しているではないかという意見もあるとは思いますけれども、失敗したことを隠さず素直に認めたことは、自信の裏返しだと見ることも出来るかと思います。
香田氏は今回の発射失敗について「衛星の場合は打ち上げに必要な推力やスピードを得るために液体燃料を使っている。液体燃料は燃焼剤と液体酸素などを使うが混合の割合が悪いなど何らかの理由で2段目のエンジンが正常に燃焼しなかったことがありえる」と分析しています。
4.北朝鮮の人工衛星打ち上げは核弾頭の切り離し実験
先述の防衛研究所の高橋杉雄氏は、北朝鮮のミサイル技術について、格段に進歩していると述べていますけれども、自民党の杉尾水脈衆院議員は、髙橋杉雄氏が「北朝鮮は、ミサイル を正確に狙った場所に撃てる技術を既に持っている。が、核を搭載した場合、核弾頭を切り離して、目的地に落とす技術は未だないとみられる。『北朝鮮による人工衛星の打ち上げ』というのは核弾頭の切り離し実験である」と述べていたことをツイートで紹介しています。
防衛省は北朝鮮のミサイル発射に備え、4月22日、自衛隊にミサイル防衛(MD)による破壊措置命令を発令。沖縄・先島諸島の宮古島、石垣島、与那国島にPAC3を展開しようとしていましたけれども、高橋杉雄氏が指摘するように「北朝鮮による人工衛星の打ち上げ」が「核弾頭の切り離し実験」だとするならば、破壊措置命令を出すのは当然だといえます。
実際、4月中に宮古島、石垣島、与那国島には、PAC3関連の車両や機材が順次運び込まれたのですけれども、少なくとも石垣島については、PAC3は展開されなかったようです。
防衛省関係者によると、台風2号の強風でPAC3の迎撃ミサイル発射機が倒れる恐れがあったからだということですけれども、有事には台風がどうこうなんていってられません。
強風で迎撃ミサイル発射機が展開できないなんてことが本当だとしたら、北朝鮮にしてみれば、台風の時にミサイルを発射すれば、迎撃されないということになります。
それらを考えると、天候如何に関わらず、迎撃出来る体制をしっかりと構築する必要があるのではないかと思いますね。
【北朝鮮の人工衛星打ち上げは、核弾頭の切り離し実験】
— 杉田 水脈 (@miosugita) May 30, 2023
昨日の戦略研究会で、政策研究部防衛政策研究室長の髙橋杉雄氏が、正にこの話をされました。
「北朝鮮は、ミサイル を正確に狙った場所に撃てる技術を既に持っている。が、核を搭載した場合、(続く)https://t.co/xJfz2EVG7N
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