立憲民主の参院問責決議案

今日はこの話題です。
画像

 ブログランキングに参加しています。よろしければ応援クリックお願いします。


2023-06-06 202800.jpg


1.立民の問責決議案


5月6日、立憲民主党は外国人の収容・送還ルールを見直す入管難民法改正案の参院法務委員会での採決を阻止するため、斎藤健法相の問責決議案を参院に提出しました。これにより参院法務委員会は流会となり、与党が予定していた6日の採決は見送られることとなりました。

問責決議案では、難民認定に関して、一部の担当者が極端に多くの審査を行うなど、入管当局による恣意的な運用の実態が明らかになったとして「立法事実が根底から崩壊しており、齋藤大臣のもとでの法案審議の継続は不可能で一刻も早く職を辞すべきだ」としています。

入管法改正案を巡って、立憲民主は6月1日に参議院法務委員会の杉委員長の解任決議案を提出していました。この時、立民は杉委員長が職権でこの日の採決を決めたとし、審議が不十分だと反発したのですね。

翌日の参院本会議で、杉委員長の解任決議案は、賛成票60、反対票181で否決。これを受け、杉委員長は6日の採決を決定しました。

これに対し、立憲民主党は、先述した、入管行政への齋藤法務大臣の対応が不十分として今度は斎藤健法相の問責決議案を提出したという訳です。

問責決議案を提出したあと、取材に応じた立憲民主党の斎藤参院国対委員長は「人権意識の欠如が甚だしい法案を、このまま可決、成立させていく勇気も傲慢さもない……暴挙だ……新たな事案が明らかになっている。世論の後押しも受けて廃案にしたい」と、徹底抗戦を続ける構えです。

これに対し、問責決議を出された齋藤法務相は、閣議のあとの記者会見で「問責決議案が出たことは承知しているが、国会でのご判断について、私がコメントするべきではない」「ただ、入管法改正の必要性については、もうこれまでも重々申し上げてきており、ぜひ一刻も早いご判断をいただいて、前に進めていきたい」とコメントしています。


2.型通りの齋藤法務相答弁


これだけみると、立民のいつもの引き延ばしか、と思ってしまうのですけれども、齋藤法務相の答弁も型通りだったりしています。

6月2日の記者会見で齋藤法務相は、杉委員長の解任決議案が出されたことについて次のような質疑をしています。
【記者】
 昨日、参院の方で、立憲民主党が法務委員長の解任決議案を出されました。おそらく理由の中には、政府の答弁への不満だったりがあると思いますが、受け止めをお伺いしたいのと、今回、解任決議が出されて、今後の国会の日程が、刑法改正案なども控えていますが、かなりタイトになってきますが、そこら辺も含めて、大臣の所感をお願いします。

【大臣】
 まず、委員長の件につきましては、国会審議の在り方ということでありますので、国会で決める事柄であろうと思いますので、政府の一員である私からの所感等を述べるのは、差し控えたいと思いますけれども、刑法改正、重要法案でありますので、丁寧な説明を尽くして、国会で御理解いただけるように努力をしていきたいというふうに思っています。
国会で決めることだから、コメントは差し控える、自身の問責決議とほぼ同じです。

まぁ、無難な回答といえばそうかもしれませんけれども、齋藤法務相が自身で述べているとおり「丁寧な説明を尽くして」いるかどうかには疑問がないとはいえません。


3.一人が極端に多くの難民審査


立民は齋藤法務省への問責決議の理由として「難民認定に関して、一部の担当者が極端に多くの審査を行うなど、入管当局による恣意的な運用の実態」を挙げていますけれども、実際、一部の担当者が極端に多くの審査をしていたという実態はあったようです。

5月25日の参院法務委員会で、難民審査参与員の柳瀬房子氏の2年分の審査件数が明らかとなりました。その件数は次のとおり
2021年:全件6741件のうち1378件(勤務日数34日)
2022年:全件4740件のうち1231件(勤務日数32日)
※勤務日数のうち一日は、審査をしない協議会
驚愕の数です。難民審査参与員は、法務大臣に指名され、入管の難民認定審査(一次審査)で不認定とされ、不服を申し立てた外国人の審査(二次審査)を担っています。2022年度でいえば、実質勤務日数31日で1231件。一日当たり40件、一日の勤務時間を8時間として1時間に5件。1件あたり12分しかありません。

難民審査参与員は全体で111人もいるにも関わらず、柳瀬氏が全体のおよそ4分の1以上を担当している形です。確かに「一部の担当者が極端に多くの審査」を行っています。

そして、当の柳瀬氏は「難民を探して認定したいと思っているのにほとんどみつけることができない」と述べているのですね。

111人もいる参与の中の一人が、「難民を見つけられない」といっても、ここまで一人に偏っていると、「じゃあ他の人が審査すればどうなのだ。一人で、全部の4分の1を見ているから、雑な審査しかできしてないのだろう」と疑いの目を向けられるのも理由なしとは言えないと思います。

勿論、1件あたり10分の審査であろうと、的確で間違いない審査が行われているのであれば、何も問題ないと思いますけれども、少なくとも法務省は、柳瀬氏一人にここまで偏って審査させている理由をきちんと説明し、その審査の妥当性を公表すべきではないかと思います。


4.今突然言われてもですね


実際、齋藤法務省は記者会見で、この点を記者に突っ込まれています。5月30日の記者会見では次のようなやり取りがありました。
【記者】
 難民審査参与員柳瀬房子氏の件についてお尋ねします。難民審査参与員の柳瀬房子氏、2019年11月の「収容・送還に関する専門部会」第2回、第1回ではなく第2回の会議録に、「私は4,000件の審査請求に対する採決に関与してきました。そのうち約1,500件では直接審尋を行い、あとの2,500件程度は書面審査を行いました。」と発言したと記録されています。第1回では1,000件以上と言っていたんですけれども、第2回では約1,500件と明言されています。2021年4月の衆議院法務委員会では2,000人と会ったと語っているので、この1年間で、2019年11月から2021年4月までの1年半の間で、対面審査が500人増えたということになります。どちらも立法に関わる重要な数字なので、疑惑のある以上、2021年・2022年の審査件数だけではなく、それ以前の審査件数も出す必要があるのではないでしょうか。もしまたこの数字が正しかったとしても、1年半で500人の対面審査を行うなどは、とても真っ当な審査をしたとは思えないのですが、かつ参与員の中でも異常な偏りがあるという点はどのようにお考えでしょうか。

【大臣】
 まず、色々数字をおっしゃったので、一つ一つ確認しなければ答弁できないですけれど、今突然言われてもですね。ただ、1年6か月で500件ですかという御発言がありました。この点について、私は、柳瀬氏の御発言は、様々な場所で様々な御発言をされているわけでありますので、各御発言の時期や経緯、これバラバラでありますので、参与員としての事件処理数を、そのときその都度お話しになっているのだろうと思いますが、いずれにしても、我々の審査の仕方は、事前に書類を送って見ていただくということをやっておりますので、ですからそれも含めての処理数ということでありますので、一般論として申し上げれば、1年6か月で500件の対面審査を行うということは、不可能であろうというふうに思っています。(※)
 それから、様々なデータについては、今、参議院の法務委員会において様々御要請いただいているところでありまして、精査をしたり作業が必要なものもありますので、全部出せるかどうか分かりませんが、御指摘のようなものも含めて、今、対応を検討しているところであります。

(※)法務大臣の発言においては、「可能」とありましたが、「不可能」と発言しようとして誤ったものであり、訂正しています。

【記者】
 先ほどの質問の続きになるわけなんですけれど、入管の信頼性に大きな疑問が持たれているわけですよね。先ほどの柳瀬参与員の言動の数字のぶれや、審査が適切に行われているのかと。500件という話もありましたけれども。西山入管次長も、国会で、仁比聡平議員に、送還忌避者の統計はないと虚偽答弁をしたりとか、ほかにも色々ありますけれども、大臣、入管の主張だけをうのみにして、その言いなりになっていることは、大臣にとっても、大臣の信頼にも良くないと思うんですけれど、そういったことに関して何の疑問も持たれていないのかということと、やはり難民認定申請者、当事者、その支援者とか、大臣自身がじっくり話を聞いてみるとか、そういうことも必要ではないかと思うんですけれど、いかがでしょうか。

【大臣】
 まず、やや失礼な質問があったとは思いますけれども、このことだけ事実関係を申し上げたいと思います。
 先日の記者会見でも申し上げましたが、平成30年から令和4年の5年間で、入管が難民不認定の判断をしたものの行政訴訟が行われておりまして、全部で109件あります。そのうち、国が勝訴したものが104件ということでありますので、難民認定について、全国の裁判所もそういう判断をしているということだけ申し上げておきたいと思います。
 私も色々な方の意見を聞きながら、本件、大変重要な話ですので、これまでもやってきておりますし、また今後も必要があれば、それは当然のことながら、色々な方と意見交換をしていきたいと思います。今この瞬間、国会で毎日何時間も質問を頂いて、丁寧に説明させていただいておりますので、まずはそこに集中していきたいというふうに考えています。

【記者】
 柳瀬さんの統計を出す御予定はありますか。2021年(より)前の。

【大臣】
 その点については、色々と今、委員会のほうで要請をされている数字がたくさんありますので。

【記者】
 答えるつもりはあるんですか。

【大臣】
 やれるものはやるということで、今、委員会の理事会とお話ししながら進めさせていただいております。
齋藤法務相は「突然言われても困る」とか、しどろもどろになっています。


5.いきなりデータをと言われても


また、6月2日の記者会見でも、再び入管法改正法案に関して記者から突っ込まれています。
【記者】
 昨日の法務委員会の後にも大臣にぶら下がりさせていただきましたが、仁比さんたちが聞いていた、2005年以降の16年間で2,000件、柳瀬氏がやったというのは、今の難民認定の現状を的確に表しているという、4月25日の記者会見での回答ですね。これも年間125件以上できることになってしまいます。柳瀬さんは2006年の2月までに、各班とも5から8件程度のインタビューを終え、それぞれ意見書を出したと、これ難民審査参与員制度について回答しております。つまり、2005年からスタートした7か月で、8件しか彼女は、対面審査を担当していないということを自らの発言で明言しています。ということは年間125件以上やらなければ、2005年からの16年間で2,000件は処理できなくなるわけですね。何度もこっちが取材をして、衆参の議員たちが調べて、柳瀬さんが年間何件、臨時班と常設班で処理したのかをいちいち出す必要はない。なぜなら審判課長は全ての記録を持っていますと、求められればそれがお出しできますということを明確に私の取材に答えております。毎年ですね、2021年、22年だけでなくて、それ以前の年間の処理件数、これしっかり出していただけませんか。

【大臣】
 前回私、あの答弁を言い間違えたというのはこういうことでありまして、突然、数字をたくさん並べられて、そしてすぐ答えよと、この場でお尋ねになられても、なかなか、難しいなと。今回また同じようなことを繰り返したくありませんので、事務的にきちんと答弁させますので、そこは御容赦いただきたいと思います。

【記者】
 出すか出さないか明言していただけますか。立法事実に関するデータ持っているんですよ。なぜ隠し続けるんですか。もう今日にも本会議で強行採決するかしないか、委員長の解任動議が出されます。なぜそういう数値を出さないまま、このように、法案審議を強行するんですか。

【大臣】
 出せる数値は全部出していますし、繰り返しますが、闇討ちのように聞かれても答えられませんので。

【記者】
 昨日から仁比さんが聞いていることです。

【大臣】
 それはちゃんと事前に言っていただかなければ、あらゆる数字を私が、全部この場で即答しろと言われても、それは難しいと思いますので。皆さんもそう思いますよね。

【記者】
 柳瀬さんのことでお願いします。まず、大臣が私の記事を御覧になったということ、非常に光栄に思います。これからもちょっとどんどん記事を書いていこうと思いますので、ぜひよろしくお願いします。さて、質問なんですけども、柳瀬さんのこれまで言ってきたこと、立法事実伝えたこと、控えめに言ってもかなり信ぴょう性に乏しいと、非常に問題があるということが、この間の会見や国会質疑でもわかってきています。こういったことを、立法事実としてしまったことに対して、何らか、処分なり、あるいは調査するべきだと思うんです。やっぱり入管は、非常にそこら辺が身内に甘いというか、今、首相もその身内の甘さが問題になっていますけれども、やはりここは毅然とした態度を大臣としてとっていただきたいんですけれどもいかがでしょうか。

【大臣】
 まず、私、度々申し上げていると思うのですけど、柳瀬さんは本当に難民認定に関して知識経験が豊富で、私どもとしては長年にわたって真摯に取り組んでこられた方であるというふうに認識をしています。様々な数字を御発言されているということはもちろん私も承知していますけれども、その柳瀬さんが、長年の経験に基づいて、自分が認定しようと思っても、なかなか見つけられなかったという御趣旨の発言をしているということについて、私は重く受け止めたいというふうに思っているのです。ここはもう見解の相違ということであれば、それはもうやむを得ないと思いますけれども。その上で、その先日の記者会見でも述べたんですけれど、難民認定をした後で、それがおかしいということでその不認定を争う行政訴訟というものがあります。ここで、難民認定の適正さについて司法が判断するという局面になるわけです。それが平成30年から令和4年までの5年間におきまして、そういう行政訴訟が109件提起されておりまして、そのうち104件、国の主張が認められたということもありますので、そういうことをトータルで考えますと、立法事実が崩壊したとか、(立法事実が)ないということには、私はならないのではないか。そこはもう見解のおそらく相違だということになってしまうと思いますけれども、御理解いただきたいと思います。

【記者】
 今のお答えに関することですが、要するに柳瀬さんが不認定したケースで、その後、例えばやっぱり認定されただとか、裁判で勝って認定されたりとか、あるいは在留特別許可だったりとか、そういったデータを出すべきだと。

【大臣】
 すぐには、またいきなりデータをと言われてもあれなんですけど。

【記者】
 出すべきではないんですか。

【大臣】
 突然の御質問なので少しデータを確認させてください。

【記者】
 全部年間の件数出してください。少なくとも。ずっと言っています。

【大臣】
 (指名を受けずに質問をした記者に対して)すみません。秩序を乱さないようにお願いします。

【記者】
 先ほどの御発言、109件のうち104件が国の勝訴、5件についてなんですけれども、これは多いという、それとも少ないということでしょうか。

【大臣】
 私は、自分の考えとしては1件もあってはならないというふうに思っています。5件だから良いとか、そういうことを言うつもりは全くなくて、それについては一つ一つ、なぜそういう結果になったかというものを検証して次にいかしていくということは、非常に大事だと思っています。

【記者】
 しっかり出してください。本当に。もう法案通っちゃうんですよ。人の命がかかっているんです。秩序を乱しても人の命をしっかり守るためには何を。

【大臣】
 私どもは一刻も早く通ることが命を守ることだと思っています。

【記者】
 いや、通る、だったらデータを出してください。課長が言っているデータを全て出してください。

【大臣】
 一つ私のほうからお願いですが、ちゃんと皆さんいるので、(質問は、指名されてから行うように)秩序立てて会見が行われるようにお願いしたいと思います。

【記者】
 火金以外でも、ってことですよね。ぜひお願いします。
ここでも、齋藤法務相は、いきなりデータだせといわれても云々、と「暖簾に腕押し」状態です。記者も大分苛立っています。データが纏められていないのか、それとも出したくないのか分かりませんけれども、このような答弁では、たとえ正しい法案だったとしても、立民が反発して問責を出す気持ちは分からなくもありません。

齋藤法務相は、難民参与員制度含め、難民審査を柳瀬氏に集中させていた理由について、きちんとオーソライズした上で公表すべきではないかと思いますね。


  twitterのフリーアイコン素材 (1).jpeg  SNS人物アイコン 3.jpeg  カサのピクトアイコン5 (1).jpeg  津波の無料アイコン3.jpeg  ビルのアイコン素材 その2.jpeg  

この記事へのコメント

  • 三角四角

     【 立憲民主党と社民党は何を勘違いしているのでしょうか? 】

     政党を選ぶに当たって、日本人の為に働く政党か、外国人の為に働く政党かを良く見極めることが大事です。
     立憲民主党や社民党が何方の政党か明らかです。

     日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、国政は、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する(日本国憲法 前文)。

     立憲民主党や社民党が、幾ら入管法改正を妨害して、外国人の為に働いても、日本国民はその福利を享受することが出来ません!

     日本国憲法前文に背く、政党は国政選挙によって、その報いを受けるべきでしょう?
    2023年06月07日 20:51