解散を見送りした岸田総理と抱えた地雷

今日はこの話題です。
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1.解散見送り表明


6月15日、岸田総理は、記者団に対し、今国会で、衆議院の解散はしない方針を表明しました。

岸田総理は、「先送りできない課題に答えを出すのが政権の使命だ」と強調し、「立憲民主党が内閣不信任案を出すというのであれば、内閣の基本姿勢に照らして、即刻否決するよう、先ほど茂木幹事長に指示を出しました」と述べ、今国会で解散はしないということでいいかという記者の質問に「今国会での解散は考えておりません」と明言しました。

もっとも、岸田総理は内閣不信任案が出た場合、即日解散を表明することも検討し、党幹部らと協議してきたそうですけれども、関係者によると、幹部の多くは解散に反対だったとしています。

どうやら、直近の選挙情勢が予想以上に悪かったうえ、少子化対策を打ち出したものの、世論調査では、内閣支持率の下落傾向が続き、政権内に「このトレンドは変わらない」、「普通この状況では解散は打てない」との見方が広がったというとから、今国会での解散を見送ったものとみられています。


2.安定多数割れ予想


今回の解散見送りについて、日本テレビ解説委員の小栗泉氏は、次のように解説しています。

茂木幹事長は『様々な課題への取り組みを岸田政権として進めている途中で、それをさらに前に進めることを最優先する判断だ』と説明していますが、これは“公式見解”でしょう。実際には、マイナンバーカードのトラブルが相次いだり、首相の長男で秘書官だった翔太郎氏が、不適切な行動で辞職したりして、内閣支持率が下がってきていること。それから、連立を組む公明党と東京の選挙区調整がご破算となるなど関係が良くない中、公明党の支持母体である創価学会の関係者が『もし解散するなら、自公政権の崩壊になる』と牽制する声もあがっていたことなどから、今、解散して選挙をしても、議席を減らすという見通しに落ち着いたのだと見られています……ただ、今回の首相の言動には、自民党の中からも『解散風を吹かせて、解散権をもてあそんだだけだった』という声も聞かれて、今後の、首相の求心力にも影響しそうです

このように議席が減るのを嫌がったと指摘しています。

では、実際どこまで減るのかについては、マスコミで獲得議席予想が流れていました。

先週末、自民党は解散総選挙に備えて情勢調査を全国的に実施したのですけれども、解散総選挙を行った場合の最終議席予測は、以下のとおりでした。
自民党 220議席(42減)
公明党 23議席(9減)
立憲民主党 114議席(17増)
日本維新の会 75議席(34増)
日本共産党 13議席(3増)
国民民主党 9議席(1減)
れいわ新選組 6議席(3増)
参政党 1議席
その他 9議席
なんと自民党は42議席減の予測です。この情勢下で立憲が17議席増とはちょっと信じられないのですけれども、もし自民が42議席減らすと公明の8議席減含めて、与党過半数は維持するものの安定多数244を割り込むことになります。


3.落選危機の41人


今回の解散騒ぎで、永田町では、多くの議員が6月16日解散を信じていたようです。

自民党関係者は「岸田内閣の支持率は広島サミットで上がりましたが、年末までに、子ども対策の財源を確保するための増税を発表する必要があります。長男・翔太郎氏との “公邸宴会” 騒動でミソがついたものの、タイムリミットが決められたなかで、総理は傷の浅いうちに解散しようと目論んでいるという話でした……大方の予想では、自民党の議席は10~30弱減るとされました。苦しいですが、単独過半数を維持できるなら仕方がない。つい最近まで、議員同士で顔を合わせると『選挙の準備はできた?』と聞くのが挨拶代わりでした」と語っています。

その一方、解散を嫌がった議員もいたようで、ある政治部デスクは「翔太郎氏の一件で、岸田総理は一族の地位を守ることにだけ執心する “悪しき世襲議員” という印象が強まりました。その影響の大きさは楽観視できるようなものではなく、一部の議員からは戸惑いの声が出ています。選挙をやりたがっていた自民党議員は、岸田総理と、周囲のごく一部だけです」と明かしています。

また、政治ジャーナリストの野上忠興氏は、「日本人は、この種の政治家にまつわる身内びいき問題に敏感に反応しがちですから、選挙では世襲議員そのものに厳しい視線が注がれるでしょう。のほほんと『地盤、看板、鞄』だけでは、当選できなくなったということです」と指摘しています。

野上氏は、6月16日に解散した場合の当落予想をしているのですけれども、小選挙区選出の、自民党のおもな世襲議員93人のうちなんと41人が落選危機にある結果となっています。

野上氏は「そもそも、前回の総選挙で、次点との得票差が1万票以下だった議員が12人。2万票差以内で当選した議員は28人いました。公明党の票は1選挙区で1~2万票といわれますから、公明党が本格的に支援してくれない場合、2万票差以内で当選した議員は、それだけで赤信号です……橋本岳議員も、あの “橋龍” の息子でありながら、前回選挙ではわずか5000票差の勝利。逆風が吹くなかでの選挙ではかなり危ういですよ。林幹雄議員も以前から落選危機といわれてきましたが、今回は厳しいでしょう。元総務会長の佐藤勉議員も、前回は5000票以下の得票差で勝っていますから、落選の危機といえるかもしれません」と指摘しています。

また、野上氏は「明らかに潮目が変わった……自民党以外に、日本維新の会という新しい選択肢が増えた影響が大きいです。支持層が重なる維新に、保守票が流れる可能性が高いのです。そもそも、『10増10減』で地方の選挙区が減らされ、黙っていても自民党は7つか8つ選挙区を落とすことになるわけですからね。“G7人気” なんて一時的なもの。自民党は政権復帰以来、最大の『危機』に瀕しているのです」と述べていますけれども、当落線上の議員にとっては、保守票の行方は気になるところです。


4.LGBT法案可決


その保守票ですけれども、昨今、自民から岩盤保守層が逃げたと指摘されていますけれども、その原因の一つとも言われているのがLGBT法です。

6月16日、自民・公明両党と日本維新の会、国民民主党の4党が与党案を修正したLGBT法案が、参議院本会議で賛成多数で可決・成立しました。

様々な問題点が指摘されているこの法律ですけれども、前日15日の参院内閣委員会でLGBT法に関する質疑が行われています。

その主なやりとりは次の通りです。
自民・有村治子氏:「法案は女性トイレを解消し、『ジェンダーレストイレ』への代替を目指していないと断言できるか」
自民・新藤義孝氏:「合理的な男女の性別に基づく施設の利用の在り方を変えるものではない」
有村氏:「法案は性的マイノリティーの性行為について学校教育する趣旨ではないか」
文部科学省担当者:「児童・生徒に具体的な性交の方法を教えることを目的としたものではない」
有村氏:「先進7カ国でLGBTに特化した法律を持つ国はあるか」
外務省担当者:「性的指向・性自認を事由とした差別に特化した法律は把握していない」
有村氏:「米国のエマニュエル駐日大使がLGBT法案の制定を迫っているが、どう向き合うか」
外務省担当者:「国民の信頼の下、しっかり外交を進めたい」
自民・山谷えり子氏:「法案に記載された『不当な差別はあってはならない』をどう考えるか」
「女性スペースを守る会」事務局の滝本太郎弁護士:「活動家による一方的な差別主義者だと糾弾する闘争をできにくくした。言論の自由が守られる」
山谷氏:「(学校教育に関する条文で)『家庭および地域住民その他の関係者の協力を得つつ』と記述された」
滝本氏:「これがなければ、子供が親の知らないままに『性自認に食い違いがある』と導かれ、ホルモン治療や性別適合手術に進む危険性があった」
立憲民主党・打越さく良氏:「超党派議連の『差別は許されない』の表記は『不当な差別はあってはならない』に置き換わった」
連合・井上久美枝総合政策推進局長:「差別がより深刻化し、差別解消はおろか、理解増進すら逆行してしまう可能性を懸念している」
打越氏:「『民間の団体等の自発的な活動の促進』との表現が削除された」
井上氏:「公権力による民間の自由な活動への制限を想起させ、活動の萎縮を招きかねない事態を懸念する」
公明党・三浦信祐氏:「『民間の団体等の自発的な活動の促進』が削除されたが、民間団体の活動を止めるものなのか」
公明・国重徹衆院議員:「民間団体の活動を制限し、法律の対象から除外するものではない」
三浦氏:「『全ての国民が安心して生活できるよう留意』との文言が加わった」
国重氏:「留意事項で、自公原案から法制上の意味や法的効果が変わるものではない」
作家の森奈津子氏:「LGBT教育には非常に先鋭的で、日本社会が受け入れがたいものも存在する。そのようなLGBT教育を自発的な活動として促進してよいのか」
「LGBT法連合会」・神谷悠一事務局長:「性的マイノリティーの不利益や困難を解消することは、社会的損失や経済損失を回避することになる。安定的な社会保障費の確保にもつながる」
LGBT法は当初案から一部修正されているのですけれども、自民・有村治子氏と山谷えり子氏はこの法案に対し、保守層が懸念を示している点を指摘したのに対し、LGBT当事者である「女性スペースを守る会」事務局の滝本太郎弁護士が評価しているのが印象的です。

「活動家による一方的な差別主義者だと糾弾する闘争をできにくくした」、とか、学校教育に関する条文追加が無ければ「子供が親の知らないままに『性自認に食い違いがある』と導かれ、ホルモン治療や性別適合手術に進む危険性があった」とか、逆にいえば、条文の修正がなければ、こうした危険があったということです。

ただ、危険が減ったとはいえ、危惧された問題が無くなったわけではありませんし、LGBT法施行後にどんな混乱が起こるかも分かりません。

岸田政権は内閣支持率の下落傾向をどこかで食い止め、保守層を引き戻す時間を稼ぐために、今国会の解散を見送ったかもしれませんけれども、LGBT関連で問題が起これば、都度、蒸し返されることになります。

今後、欧米のように反LGBT法案を日本でも提出・可決していくならともかく、そうでなければ、今回のLGBT法は、自民党に、保守層を離反させる地雷として抱え込ませることになったのではないかと思いますね。




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