マイナカードに足を取られる河野デジタル相と静観の岸田総理

今日はこの話題です。
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1.マイナポイント登録支援窓口視察


6月17日、河野太郎デジタル相は、マイナンバーに他人の公金受取口座が登録されるミスが相次いでいることを受け、長野県松本市のマイナポイントの登録支援窓口を視察しました。河野デジタル相は視察後、記者団に対し、誤登録を防ぐためのシステム改修を18日の週にも終えるとの見通しを示しました。

一連の問題発覚後、河野デジタル相が自治体の窓口を視察するのは初めて。河野デジタル相は、実際にマイナンバーカードを受け取った市民が支援員の補助を受けながら共用パソコンを操作し、口座情報などを入力してマイナポイントを受け取る様子を視察。国が定めたマニュアルが徹底されているかどうか確認しました。

デジタル庁によると、住所も氏名も違う他人の口座がマイナンバーにひもづけられる誤登録が全国で748件確認されているのですけれども、自治体の登録支援窓口の共用端末で、住民に操作方法を教えるスタッフの支援員がログアウトを忘れ、次の人がそのまま上書きし入力したため、前の人のカード情報と次の人の決済サービスがひも付いて誤登録が発生するなど人的ミスが主因とされています。

ミスの背景について、デジタル庁は5月29日の参院特別委員会で、22年6月に本人確認を2回から1回に簡略化するようシステムを変更したことを挙げています。

ポイント付与の登録システムは、手続きの開始と終了時にマイナカードと暗証番号で本人確認する仕組みになっていたのですけれども、煩雑すぎるといった苦情が利用者から寄せられ、完了時の確認はやめていたのだそうです。

22年8月以降は他人の口座が登録されるケースが相次ぎ、今年4月にシステムを元に戻したそうですけれども、自治体運営やシステムに詳しい日本政策総研の若生幸也理事長は、政府のマイナカード普及促進策により、実務を担う市町村の現場は多忙な状態だったと指摘。「多忙な状態で登録完了時のマイナカードによる本人確認をやめると運用者(自治体)側にミスが起こりやすい状態となる。ミスを減らすには運用者に別の負担がかかる……苦情が来てもシステムを変更すべきではなかった」と指摘しています。


2.マイナ保険証のトラブル


マイナンバーカードを巡るトラブルはこれだけではありません。マイナンバーカードと健康保険証を一体化した「マイナ保険証」もそうです。

6月12日、岸田総理は、衆院決算行政監視委員会で、「マイナ保険証」について、「一体化にはメリットがある」と強調。「課題を一つ一つ解決し、来年秋の健康保険証の廃止に向けて取り組みたい」と、現行の健康保険証を2024年秋に原則廃止する方針に変更はないと明言しました。

マイナ保険証をめぐっては、2024年秋の一本化に向けた改正関連法が6月2日に成立したのですけれども、だが、医療機関が保険資格を確認できず、患者がいったん10割負担を請求されるなどトラブルが続出しています。

更に、「マイナ保険証」でも、他人の情報が紐づけられるトラブルが発生しています。

厚労省によると、医療保険を運営する健康保険組合などは被保険者からマイナンバーが未提出の場合、住民基本台帳からマイナンバーを確認することがあるのですけれども、その際、同姓同名や生年月日が同じ別人のマイナンバーを誤って入力し、保険証とひも付けていたという事例があったとのことです。

誤入力は2021年10月〜22年11月末で約7300件にも及び、こうしたミスが原因で、医療機関でマイナ保険証を利用した際や専用サイト「マイナポータル」のアクセス時に別人の医療情報を閲覧されたケースも5件あったと報告されています。

これについて、元総務官僚で立教大経済研究所研究員の平嶋彰英氏は「総務省などの担当部署はシステムの専門知識が分からないこともある。システム会社のミスが明らかな場合、そうした説明しかできないのだろう。問題は、国がマイナカードの普及に力を入れても、想定外のトラブルや異常事態が起きた際にどうするかといった危機管理の仕組みを整えてこなかったことでは」と述べています。

また、中央学院大の福嶋浩彦教授は「マイナカードは国の事業。委託先の会社などがトラブルを起こせば、担当省庁が国民に説明を尽くして最終的な責任は政府にあるとの姿勢を示してほしい。それが不十分に見えると国民は不信感を抱く……そもそも本当に必要ならば政府は正面から義務化を議論したほうがよい。これを避けて、一方でマイナポイントや保険証との一体化で、事実上の義務として国民を取得に追い込もうとしていないか。これではマイナンバー制度への信頼は生まれない」と指摘しています。もうメタメタです。


3.デジタル庁は責任を負わない


それでも政府は、6月9日にマイナカードの利用拡大に向けた工程表を作成。プライバシーに配慮した新しいマイナカードを2026年中に導入するほか、2023年度中に母子健康手帳とマイナカードの一体化を一部で開始。在留カードとの一体化も目指し、更に、2024年度末までの早い時期に運転免許証の機能も持たせることを盛り込んでいます。

トラブル続きにも関わらず、マイナカードの利用拡大にまっしぐらの政権の姿勢に世論は反発。ネットでは「トラブル続きで滅茶苦茶 でも、保険証は廃止します ただし、マイナカードは義務じゃないよって、何じゃそりゃ」とか「母子手帳の意味がまるでわかってない。母親証明書じゃないんだよ。あれに子どもの発達記録を残すの。それがその子の将来に役立つ記録なの。子育てもしてないんだな」とか「こんなに問題発覚しても悪びれること無く次々と。何を企んでるの。皆これは気持ち悪いと思おうや。便利とかじゃない、ここまでは怪しい!」との声が広がり、6月10~11両日、ANNが実施した世論調査では、政府が進めるマイナンバーの利用拡大に不安を「感じる」が76%で、「感じない」の18%を大きく上回っています。現状をみれば当然の反応だと思います。

ここまで国民を不安に陥れておいて、政府は何のフォローもサポートもしないどころか、責任逃れの仕込みをマイナカード利用規約に忍ばせています。免責事項です。

政府サイト「マイナポータル」の利用規約には、免責事項として26条に次のように記されています。
(免責事項)
第26条 マイナポータルの利用に当たり、利用者本人又は第三者が被った損害について、デジタル庁の故意又は重過失によるものである場合を除き、デジタル庁は責任を負わないものとします。
「故意又は重過失によるものである場合を除き、デジタル庁は責任を負わない」とはっきり書かれています。

では、どのような場合に、デジタル庁は責任を負うのか。これについて東京新聞は担当者への取材で、「例えばウイルスの存在を認識しながら放置するなどが重過失に当たる……基本的な考えは従来と変わっておらず、そういった事態はなかなか想定し得ない」と報じています。

これは、今問題になっている、他人の個人情報が紐づけられて閲覧できてしまうのをそれと認識しながら放置していれば責任があるということです。個人情報が駄々もれになっても、放置して始めて過失になる。なんだこりゃ、です。

名古屋大の稲葉一将教授(行政法学)は「行政と民間などの区別がデジタル社会に溶ける中で、責任の所在も不明確になっている。このままでは利用者の自己責任ばかりが膨らむ……本来は規約などではなく、政府の責任を法律で規定する必要があるのに、国会で十分審議されないまま利用拡大が進んでいる」と指摘。

また、マイナンバー制度に詳しい清水勉弁護士は「やり方が拙速すぎるため、国民や現場の職員、システム会社などが巻き込まれ、被害者でありながら加害者とされている……いまは特典があるから必要のないカードを一気に作ってミスが出ている。短期間で国民全体がカードを持たなければいけないという政策自体がトラブルの要因。本来、カードの取得や利用は任意であるという考えに立ち戻る必要がある」と述べていますけれども、政府のやり方は拙速かつ強引に過ぎると感じざるを得ません。


4.マイナカードのショック・ドクトリン


この「マイナポータル」の利用規約について、国際ジャーナリスト堤未果氏は警鐘を鳴らしています。堤氏はその著書『堤未果のショック・ドクトリン』で、次のように述べています。
「こっちの水はおいしいよ」と言わんばかりにメリットを強調し、最近では「そうだ! マイナンバーカード取得しよう」とプリントされたTシャツを着てテレビに出演し、あの手この手で全国民に作らせようとする河野太郎デジタル大臣。

マイナンバーカード機能を搭載したスマホが全国に普及すれば、私たちは生活の中のいろいろなサービスをすべてマイナポータル上で使うことになるでしょう。

「利権だなんだと言ったって、結局社会はどんどんデジタル化していくんだから、危ない危ないと騒ぐのはバカ。マイナポータルを便利に使いこなすほうが得策」

インフルエンサーたちは声を揃えてそう言い、便利ならいいやと思っている国民も少なくありません。ただし、1つだけ、絶対に知っておかなければならないことがあります。

みなさんは、政府が運営するマイナポータルのトップ画面の一番下に、目立たない色で小さく書かれている「利用規約」を読んだことはありますか?  そう、小さな文字でごちゃごちゃ書いてあるので、普段私たちのほとんどが面倒くさくて見落としてしまう、あれです。

なかでも特に重要な4項目を簡単に見てみましょう。

第26条 マイナポータルの利用に当たり、利用者本人又は第三者が被った損害について、デジタル庁の故意又は重過失によるものである場合を除き、デジタル庁は責任を負わないものとします。
第27条 デジタル庁は、利用規約の変更が、利用者の一般の利益に適合し、又は、変更の必要性、変更後の内容の相当性その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、本利用規約を改正することができるものとします。

(改正の7日前に公表、改正後に使った場合は自発的に新しい利用規約に同意したとみなされる)
第4条 (デジタル庁に対して自分の本人確認情報をいついかなるときでも閲覧されることに同意したとみなされる)
第11条 (金融機関に口座情報を照会することについて同意したとみなされる)

ここで大事なポイントは、規約というのは契約書と違い、双方向の合意ではないことです。だから第27条のように「これは政府にも国民にもメリットになるとこちらで判断したので、ルール変更しますよ」とできるわけです。

大事なことなので私も動画や新聞の連載記事などで知らせましたが、いまだにほとんどの国民は知りません。けれどネットの一部で騒がれていることを素早く察知した河野大臣は、すかさずこんな動画をアップしました。

「ネットでそういう心配が出ていることは承知していますが、一般的なインターネットサービスの利用規約と読み比べても、特に特殊な要素はないと思っています」

普通の民間サービスと同じ規約だから大丈夫! という河野大臣。ちょっと待って、本当にそうでしょうか? 

たしかに、Facebookなどのソーシャルメディアや、携帯電話サービスの規約には、ほとんどの場合「何かあったら自己責任ですよ」と書いてあります。けれど民間サービスは、自己責任である代わりに、マイナンバーカードのように強制的に全国民に義務化させることはありません。

本来保護されるべき個人情報にアクセスできる国の公的サービスと、同列にはできないのです。クレジットカードなら、盗まれたら凍結させ、新しく別の番号をもらえます。

けれどマイナンバーは原則として番号が変えられないうえに、名前と住所と家族構成、年金や税金の支払い状況や、銀行の預金に生命保険に住宅ローン、所得に不動産、株といった資産情報、学校の成績から職歴、今までに受けてきた治療と飲んでいる薬の種類、公営住宅や失業保険、児童扶養手当をはじめとする各種手当の受け取り記録、犯罪歴まで含むので、悪用されたときの被害が比になりません。

今後マイナンバーカード機能のスマホ搭載が進めば、各種ポイントカードや図書カードなど、ますます多くの民間サービスが紐づけられていくでしょう。

【中略】

デジタル化に関して中国と熾烈な競争を繰り広げているアメリカではどうなっているでしょう? 

アメリカには社会保障番号という一生変わらない個人番号があるのですが、まず絶対にカードは持ち歩きません。私が住んでいたときも、「カードは金庫の中だよ」という同僚が何人もいたのを覚えています。

社会保障番号が書かれたカード自体にも、2017年には、消費者の信用度を計算する信用調査会社大手エキファックスが大規模なハッキング攻撃に遭い、1億4500万人分の番号が個人情報とともに漏洩してしまった事件がありました。

流出したのは、名前と住所と生年月日、運転免許証番号と社会保障番号、そして20万9000件にものぼるクレジットカード番号です。一生変わらない個人番号は強固な身分証明になり高い値段がつきますから、あっという間に闇市場で売買されてしまいます。

アメリカ政府は番号が盗まれた人たちに向かって、「今後何年にもわたって犯罪被害に遭うリスクがあるので油断しないように」「1年間はエキファックスが提供する『なりすまし犯罪保険』を使い、2年目からは自腹で保険を更新しなさい」などの注意を呼びかけていました。

パンデミックのようなショックで、国民が思考停止になっているときは、こうした犯罪が起きやすくなります。コロナ禍のアメリカでも、やはり個人番号関連の犯罪は一気に増えました。

連邦取引委員会(FTC)によると、2020年、ニューヨーク州では個人情報盗難事件が急増し、IDを盗撮されたという苦情が6万7000件を超え、被害総額はなんと10年前の4倍以上。約2万5000人のニューヨーカーが個人番号を盗まれ、勝手にクレジットカードや銀行口座を作られてしまったのでした。

「利便性と引き換えに、一生変わらない個人番号がもたらす被害は大きすぎる」として、見直しを求める声が高まっているのです。
このように、マイナンバーは番号が変えられないうえに、ありとあらゆる情報が紐づくために、悪用されたときの被害が甚大になるというのですね。


5.辞任はさせない


6月9日、河野デジタル相は参院地方創生・デジタル社会特別委員会で「責任は大臣たる私にある。何らかの形で私に対する処分はやらなければいけない」と度重なるトラブルに自身の処分を検討する考えを示しました。

この発言について、ある自民党関係者は、「実際問題、国民の不信感は最高潮に達しています。12日、岸田首相は、『引き続き、マイナンバーカードの信頼確保、デジタルガバメントの推進に向け、職責を果たしてもらいたい』と述べ、河野大臣の更迭を否定しました。たしかに河野大臣の突破力に期待する部分はありますが、これだけトラブルが続けば辞任も否定できません」と述べています。

河野デジタル相は、具体的にどんな「処分」を自分に下すのかは明らかにしていませんけれども、ネット上で、「最低でも大臣は辞任すべき。トラブルを知りつつゴリ押しして個人情報はダダ漏れ、確認と修正に年単位の時間がかかるとか話にならない」などと、批判が噴出。

自民党関係者は「マイナンバーカードのトラブルは簡単に終息しないのではないか。拡大していく恐れがある。実際、毎日のように新しい問題が発生しています。少なくとも、このままでは健康保険証の廃止は無理でしょう。河野大臣も、大臣を続けていたら火ダルマになる、いま辞任した方が傷が小さいと計算している可能性があります」と、河野デジタル相も辞任したいと考えているフシがあると述べています。

けれども、ある政界関係者によると、「岸田首相は、マイナンバー関連のトラブルが起きても困っていないと思う。それどころか、内心、ニンマリしているに違いない。問題が大きくなればなるほど、総裁選のライバルだった河野太郎に批判の矛先が向かうからです。ライバルを完全に潰せる。高市大臣が国会で集中砲火を浴びていた時も、岸田首相は困っていませんでしたからね」と、岸田総理は、河野デジタル相の辞任を認めないのではないか、ともみられているそうです。

筆者は3月26日のエントリー「高市を守った岸田流モグラたたき式政権維持術」で、岸田総理は、自身の政権維持のために、「自らの地位を脅かす相手が出てくると、その都度、頭をピコンと叩いて、引っ込ませる。それを繰り返しつつ絶妙なバランスを保つという「モグラたたき」なやり方をしていると述べたことがありますけれども、今回もこの方式で、河野デジタル相の頭を叩いている節すら感じられます。

ただ、こんなやり方で、いつまでもうまくいくのか。どこかで何かしっぺ返しがくるような気がしてならないですね。


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