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1.人事は政策課題の進み具合を見ながら考える
6月21日、岸田総理は、国会閉会にあたり、記者会見を行いました。今国会での解散総選挙は見送りとなりましたけれども、質疑応答では、次の焦点とされる内閣改造・党人事について質問があがりました。
件の質疑について、該当部分を拾うと次の通りです。
(記者)このように、岸田総理は内閣改造・党人事について「様々な政策課題を前に進めることに専念する。その進み具合を見ながら人事を考えていく」と、政策実現のための人事を行う、と明言しています。
日経新聞の秋山です。よろしくお願いします。
【中略】
また、今国会で取り沙汰された衆議院解散を見送った判断の理由と、今後、衆議院の解散時期を検討するに当たって何を考慮するのかを教えてください。自民党役員の任期満了に伴う内閣改造、党役員人事をいつに予定しているのか。また、その際、茂木幹事長ら注目となる顔ぶれについての処遇をどのように考えているのかも併せてお答えください。
(岸田総理)
【前略】
そして、もう一つの解散・総選挙あるいは人事に関する質問ですが、先日、あれは13日の記者会見でありましたが、私は解散について問われて、岸田政権は先送りされてきた困難な課題に答えを出していくことが使命と覚悟し、政権運営をしてきた、そして、解散・総選挙についても、こうした基本方針に照らして諸般の情勢を総合して判断していく、こうお答えいたしました。
会期末に一部野党に内閣不信任案提出の動きがあり、内閣が重要法案としています防衛力抜本強化のための財源確保法の成立が不透明な状態となっていました。そうした動きを背景として、国会の情勢をよく見極めたいと申し上げたところです。15日には重要法案としている財源確保法の成立のめどが立ったと判断し、一貫して申し上げてきました先ほどの基本姿勢に沿って、この国会での解散は考えていない、不信任が提出されたら即刻否決するよう幹事長に指示をした、こういった次第であります。
そして、今後の解散や役員人事などについての御質問については、これはいずれも先ほど申し上げました岸田内閣の基本姿勢、先送りできない困難な課題に一つ一つ答えを出していく、この基本姿勢に照らして判断していく、これに尽きると思っております。現時点でこれ以上申し上げることはありませんが、この基本姿勢に基づいて御指摘の点についても考えていきたいと思っています。
以上です。
【中略】
(記者)
共同通信の鈴木です。
内閣改造・党役員人事について、基本姿勢に照らして判断していくというお答えでしたが、基本的なお立場として、昨年の改造と同様に、政権の骨格というものは維持されるとお考えなのでしょうか。
【後略】
(岸田総理)
まず最初の人事についての質問ですが、今現在、まだ人事、時期等について、全く具体的なものを考えているわけではありません。よって、まずは引き続き、先ほど申し上げているように、先送りできない様々な政策課題を前に進め、結果を出していく、これに専念してまいります。そして、これらの進み具合を見ながら、こうした結果を出すためにはどういった人事を考えるべきなのか、こういったことを考えていく、これが順番だと思っています。よって、骨格を維持するかどうかという御質問でありますが、まずは政策を進めて結果を出していく。結果を出していくためにどういった人事・布陣を考えるべきなのか、この順番で考えていきますので、その人事の内容については、今、何か申し上げるものは持っておりません。是非、政策を進めながらしっかり考えていきたいと思っています。
【後略】
実際、今国会では、2023年度当初予算は22年度内に成立し、防衛費増額の財源を確保するための特別措置法(財源確保法)などの重要法案も成立。成立率は96.7%に上りました。
ただ、財源確保法について、成立の目途がたったから、今国会での解散はしないと表明できたと述べているのは気になるところです。なぜなら、裏を返せば、解散権を振りかざさなければ成立が危ぶまれたと考えていたことになるからです。
また、LGBT法成立への進め方など、結構強引にやった感は否めません。
2.ポスト岸田の処遇
マスコミは、内閣改造・党人事について、夏から秋にかけて行うのではないかと報じていますけれども、その理由の一つに、衆院解散を挙げています。
自民党内では、次の衆院解散のタイミングとして、衆院議員の任期の折り返しを迎える秋が最速との見方が出ているそうなのですけれども、その前に内閣改造をやっておけば、支持率を浮揚させられるという思惑があるというのですね。
もちろん、そんな目論見どおりにいくのかについては、意見が分かれているようです。
党内からは、有権者へのアピールとなるような若手や女性の大胆な起用など「サプライズ」を求める声がある一方、昨年8月の内閣改造後、初入閣3人を含む4閣僚が不祥事で相次いで辞任した苦い経験があり、結果として今の内閣で大過なく国会を乗り切ったことから、「骨格は変えずに小幅改造にとどめた方がいい」との意見も根強くあるとのことです。
マスコミは、河野デジタル相の処遇が焦点となる見通しだと報じていますけれども、目下のところ、マイナンバーカード問題で注目を集めているからだと思われます。
既に、河野デジタル相に対する、マイナンバーカード問題への責任論が浮上。ネット界隈の一部でも炎上していますけれども、党内からは知名度や突破力から「代役はなかなか見つからない」との評価もあるそうです。
また、河野デジタル相は、前回の総裁選でも総裁の座を争った「ポスト岸田」の一角とも目されていることから、岸田総理が「閣内に取り込んだ方が得策」と判断する可能性も取り沙汰されています。
3.日本語分かる奴出せよ
河野デジタル相について、内輪の評判はあまりよくありません。
ある官邸スタッフは、「河野さんの”弱点”は、イラつくと官僚を怒鳴り散らすことなんです」と語り、最近は、マイナカードでのトラブルを追及されることが多いことから「悪い癖が出ないといいんですが」と心配を口にしています。
実際、2021年9月に「文春オンライン」が河野氏のパワハラ疑惑報道を行っています。
これは、河野氏が、内閣府の山田正人参事官と、エネ庁の山下隆一次長、小澤典明統括調整官の3人が参加した3年に一度見直しが行われる「エネルギー基本計画」の会議の様子を録音した約28分間の音声を入手し、河野氏が山下氏と小澤氏を大声で怒鳴りつける様子を報じたものです。
件の記事を一部引用すると次の通りです。
議題となったのは、3年に一度見直しが行われる「エネルギー基本計画」だ。10月の閣議決定を目指す中、エネ庁は8月4日に素案を発表していた。当時、このやり取りについて、ネットでは割と話題になっていたように記憶していますけれども、河野氏は、文春で報じられた直後、日刊スポーツのインタビューで、次のように答えています。
経産省関係者が語る。
「エネ庁の素案では、2030年に総発電量のうち、再生可能エネルギーの比率を『36~38%程度』にすると記されています。これは2019年度の実績(約18%)の2倍に相当する、極めて高い目標値です。ただ、規制改革相として再エネ推進に取り組む河野大臣は『36~38%』が『上限』ではないという意味で、『36~38%以上』と明記するよう求めてきました」
会議の場で行われたのは、「程度」と「以上」という文言を巡る攻防だ。
河野「日本語では、36~38以上と言うのが日本語だろ」
小澤「え、え、えっと。えっとですね、政策的な裏付けを積み上げてですね……」
必死で「程度」という文言について説明しようとする小澤氏に対して、河野氏はあくまで同じ言葉を繰り返す。
河野「だから36~38以上だろ!」
小澤「いや、積み上げて36~38程度……」
河野氏はなおも説明しようとする小澤氏の発言を遮り、ドスの利いた声でこう怒鳴った。
河野「積み上げて36~38になるんだったら、以上は36~38を含むじゃないか! 日本語わかる奴出せよ、じゃあ!」
【前略】あれから2年。少しは変わったのかというと、筆者が傍から見る限り、そのようには見えません。
河野氏:言葉遣い、気を付けなくちゃいかんところはある。そこは反省しなくてはいけない。やる気がない。サボタージュとは言いませんが、規制改革の現実を見ずに役所の理屈というは通らないということは厳しく指摘していきたい。言葉遣いは、丁寧に丁寧にやらにゃいかんのかなと思う。
質問:パワハラ疑惑について反省する一方で、ネガティブな官僚体質を批判した。総理総裁となった場合の政権運営で安倍・菅政権からの脱却か、継承かを目指すかについて。
河野氏:何から脱却するのか。何から継承するのか。よく分からない。
質問:森友学園を巡る公文書改ざん問題について。
河野氏:再調査については先日、申し上げた通り。1人1人のお気持ちに向き合って、受け止めることは政治として大事。
質問:政治とカネの問題について。
河野氏:党のガバナンスをしっかりと規定していく必要があるのかなと思う。(菅首相は)どこかで正当に評価していただきたい。背中で語る、昭和のオヤジみたいな感じなのかな。
質問:父洋平氏は自民党総裁となったが総理の座には就けなかった。洋平氏への思いや、父からの応援について
河野氏:まったく関係ないです。かけられた言葉もありません。全然、関係ないです。
政治アナリストの伊藤惇夫氏は、「マイナンバーをめぐる河野大臣の一連の対応には、批判を拒絶するような発言が目立ち、世論の人気という点では陰りが見え始めているように思えます」とコメントしていますけれども、今年4月、お笑い芸人のビートきよし氏が、「虫は食べたくない」とツイートしたら河野太郎氏からブロックされた、と明かすなど、ツイッターで、気に入らないコメントがあれば、いまだにブロックしたりしているようです。
4.内政が駄目なら外交でという常套手段
河野デジタル相の処遇はさておき、内閣改造・党人事をして、それで支持率が回復するのかどうか。
筆者が特に注目しているのは、例のLGBT法に絡む論功行賞人事を行うかどうかです。もし、LGBT法可決に”尽力”した人物を重用するようであれば、自民党保守層からは完全に見放されてしまうのではないかと思いますし、党内の結束にすら影響しないとも限りません。
内政はといえば、防衛増税とかマイナンバーカードとか、国民に負担を押し付けるものばかり目立ちます。一方、外交は、広島サミットが終わって、目玉となるようなものも見当たりません。内閣支持率という点でみればジリ貧の可能性が見えてきています。
そんな中、北朝鮮による拉致問題をめぐり、岸田総理が、拉致被害者の曽我ひとみさんらと来月上旬にも面会する方向で調整が進められていることがわかりました。
岸田総理は、曽我さんから政府に対する要望を聞いた上で、拉致問題解決に向けた決意を伝えるものとみられていますけれども、これについて、法政大学大学院教授の白鳥浩氏は、次のように述べています。
内政が上手くいかないとすれば、外交に国民の焦点を集めてそれで問題の過ぎるのを待つということは、常套手段として使われるものである。なるほど、今、北朝鮮と外交的に交渉を行うことで何らかの反応を引き出すことができれば、それは首相の支持率の向上に影響を及ぼすものと考えられる。正にその通りです。拉致問題解決に対する何の見通しもないまま、拉致被害者に会ったところで、それは単なるパフォーマンスにしかなりません。
しかしながら、それは内政の問題を目を転じることによって回避したと受け取られるのではないか、ということを危惧する。拉致被害者の問題にかかわる方も、単なる首相の支持稼ぎに利用されたとされては、残念なことではないだろうか。しっかりと実効的な結果を期待したい。そして何よりも重要なことは、こうした問題にかかわる人に寄り添う形で、問題の解決を目指すことだ。
岸田総理は13日の記者会見で「日朝間の懸案を解決し、両者がともに新しい時代を切り開いていく観点からの私の決意を、あらゆる機会を逃さず、金正恩委員長に伝え続けるとともに、首脳会談を早期に実現するべく、直轄のハイレベル協議を行っていきたい」と、北朝鮮との早期の首脳会談を目指す考えを示していましたけれども、これについてコリア・レポート編集長の辺真一氏は次のように述べています。
日朝首脳会談に向けた岸田首相直轄のハイレベル協議の話が持ち上がっていますが、一人歩きの印象が否めません。岸田首相が拉致関連集会で発した北朝鮮へのメッセージに北朝鮮の外務次官が2日後に反応し、「日本が新たな決断を下し、関係改善の活路を模索しようとするならば、会えない理由はない」との談話を出したことでどうやら期待感が高まっているようですが、反応したのが外務次官というのが気になります。このように辺氏は、岸田総理の発したメッセージに北朝鮮側で反応したのははるか格下の外務次官であり、金与正副部長も「米国とその手先らとは対話する内容もなければ、必要性も感じない」と述べていることから、岸田総理の「一人歩き」だと断じています。
金正恩総書記の妹の金与正党副部長か、崔善姫外相、もしくは日朝交渉を担当している宋日模・日朝国交正常化担当大使ならば、大いに期待が持てるのですが、総理の発言に外務次官では位が低すぎます。外務次官の談話から2日後に与正副部長は軍事偵察衛星関連で発表した談話の中で「米国とその手先らとは対話する内容もなければ、必要性も感じない」と言っています。日本がよほど譲歩しない限り、日朝ハイレベル協議は難しいでしょう。
そもそも、これまでずっと解決してこなかった拉致問題が岸田総理になったから解決するとは思えませんし、その理由も見えません。
岸田内閣は、このまま、国民の声に耳を傾けない間は、支持率はジリ貧の展開になっていくのではないかと思いますね。
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