

1.大幅下落の内閣支持率
6月23~25日、読売新聞社が全国世論調査を実施しました。岸田内閣の支持率は41%と、前回5月20~21日調査の56%から15ポイント下落。不支持率の44%を下回りました。
政党支持率は自民党34%(前回38%)、日本維新の会6%(前回7%)、立憲民主党4%(前回5%)などで、無党派層は40%(前回37%)でした。
直近3回の内閣支持率を年代別にみると、40歳以上の中高年層で支持率の変動が激しく、前回5月の調査では、40~59歳が4月調査から9ポイント増の55%、60歳以上では同14ポイント増の64%とそれぞれ上昇する一方、18~39歳は4月調査の42%から5月調査では43%とほぼ横ばいでした。
それが、今回の調査では40~59歳で前月比17ポイント減の38%と大きく落ち込んだほか、60歳以上でも14ポイント減の50%となり、11ポイント減の32%だった18~39歳よりも下げ幅が大きい結果となりました。
マイナカード問題についても、トラブルに政府が適切に対応していると「思わない」人は、18~39歳で60%、40~59歳で70%、60歳以上で68%。今の健康保険証を2024年秋に廃止し、マイナカードに一本化する方針についても、「反対」は18~39歳で44%だったのに対し、40~59歳で56%、60歳以上では61%と半数以上を占めています。
また、少子化対策についても評価は低く、国民の負担増については、内閣支持層でも「反対」が49%と半数近くに上っています。
2.不安払拭が大前提だ
この岸田内閣支持率大幅下落について、政府・与党内では衝撃が広がっています。25日、自民党の茂木幹事長は、支持率低下について、「マイナンバーの問題が影響しているのではないか。国民の不安払拭に政府を挙げて、全力で取り組んでほしい」と語り、公明党の山口代表も「政府は後手に回っている」と苦言を呈しました。
政府は24年秋に健康保険証を原則廃止してマイナカードへ一本化し、25年秋までに全面廃止する方針ですけれども、与党内でも「急ぎすぎだ」などとの批判が出ています。
岸田総理は健康保険証の全面廃止について、「不安払拭の措置完了が大前提だ」と強調していますけれども、噴出する問題にマイナカードの専用サイト「マイナポータル」で情報を閲覧できる税・所得など全29項目について、河野デジタル相らに秋までの総点検を指示しています。
その河野デジタル相は25日、新潟県新発田市内での講演で、「いろいろとご迷惑をおかけしている」と陳謝したのち、「原因を特定したので、防ぐためにひとつひとつ対策を打っている」と述べる一方、「デジタル化を今、立ち止まってということができるかというと、なかなかそうはいかないだろう」とし、デジタル化を一旦停止する考えのないことを明らかにしています。
自民幹部は「このまま突破したいという河野氏の気持ちは分かるが、居直りともとられかねない」と漏らし、政府・与党内では、「マイナンバー問題が今後の政治日程全体に重くのしかかり、首相は解散時期を判断しにくくなった」との見方も出ているようです。
3.マイナンバー始めたの俺じゃねぇし
ある政治担当記者は、なぜ『紐づけミス』が起きたのかについて河野デジタル相は、銀行口座の名前はカタカナ表記だが、住民票や戸籍は漢字表記のみであったり、住所で『1丁目2番地3号』を『1―2―3』と省略したりすると、コンピューターは同じ人か判断できない、と指摘していることや、国会などで野党議員から批判されていることについて「マイナンバー制度は民主党政権がつくった制度。おまえが始めたんだろ、と言い返したくもなる」と、苦笑まじりに愚痴をこぼしていたと明かしています。
もっとも、この発言が野党に漏れるや、立憲民主党の蓮舫参院議員が、6月26日のツイッターで「はい? 確かにカードを始めたけれど、その後の制度設計や運用は自民党政権。 協力できることはしてきましたが、間違いは常に指摘と改善の提案。 が。昨秋、突然紙の保険証を廃止と言い出して地方自治体にカード普及を急がせた上に丸投げ。問題噴出されたのはどなたですか?」と、反発。
ネットニュースのコメント欄でも「だったら白紙に戻せばいいし、そもそも健康保険証などの強制廃止なんてなかっただろ」、「河野氏はやっぱり何も理解していないということを、この愚痴から読み取れる」「何年前に話を戻しているのかね?」とボロクソに叩いています。
政治アナリストの伊藤惇夫氏は、河野デジタル相の今後について、「岸田首相は『突破力』に期待して、情報総点検本部のトップに就けたのでしょうが、河野大臣にとっては“大きなつまずき”になりかけています。この問題をうまく処理できれば、将来、首相になる展望がありますが、しくじれば責任を一身に背負うことになる。岸田首相も河野大臣に責任を取らせるでしょう。国民的人気が頼りの大臣ですから、それが低下すると苦しいでしょうね」と指摘しています。
筆者は6月20日のエントリー「マイナカードに足を取られる河野デジタル相と静観の岸田総理」で、岸田総理は河野氏をデジタル相から辞めさせないのではないかと述べましたけれども、晒しものにしたまま人気が落ちるのを待っているのかもしれません。
4.LGBT法案が評価されることはない
茂木幹事長やマスコミは、内閣支持率が落ちたのは、マイナンバーカードのトラブルだ、と声高に叫んでいますけれども、不思議とLGBT法は口にしません。
一方、識者の多くはLGBT法を無理やり通したことで、自民党は岩盤支持層を失ったと指摘しています。
例えば政治学者の岩田温氏は自身の動画チャンネルで次のように述べています。
【前略】実に手厳しい。岸田総理のことを「権力者であり続けたいという人」だと斬って捨てています。そして帰す刀で河野デジタル相を「総理大臣の資質に欠いている」とブスリ。岩田氏は、岸田政権は保守から見放されたとした上で、解散のタイミングを見誤った岸田総理は人事、つまり秋に内閣改造をやるだろうとし、LGBT法案に協力した、稲田、新藤、古谷の三氏の処遇に注目すべきと述べています。
・マイナンバーカードの問題はありますけれどもこれだけじゃないということはやっぱり考えておいた方がいいだろう。
・支持率低下の要因は複合的だというこの読売の分析は当たってるでしょう。
・LGBT法案については大多数の国民は、残念でながら、事態を想像できてない。多くの人はね考えられない。実際に起きてからこういう問題についてね声を上げ始める。でもそれでは遅いんですよ。
・電気料金と全く同じなんです。再生エネルギーじゃないと、とかなんか色々言っていても、実際に電気料金がゴーンと上がるとですね何やってん だということになる。
・なぜその判断を事前にしないということが私には歯がゆい。
・憲法と同じですよ。憲法9条改正しないでねこのままの状態続けていてどっかのね国から侵略されてから憲法改正だと遅いんですよ。先に先にやらなくちゃいけない。
・私は政権というのは基本的に国民に支持されて当然だというふうに思いますが国民に支持されなくてもですねやらなくちゃいけない法律はある。
・例えば集団的自衛権の問題がそうでした。安倍内閣の時これはもう大反対でした。多くのマスメディアが大反対のキャンペーンをして戦争法案だとかいって扇動した。
・これに一歩も引かなかったのが安倍総理でした。
【中略】
・どんなに反対されてもやらなくちゃいけない問題がある。これは一方で真実なんです。
・常に国民 にの思う国民が望むことだけやってればいいかというとそうじゃ ない。政治にはそういう局面ってのはある。
・じゃあLGBT法案っていうのはそんなにねあの強い信念を持って通すべきものなのかどうか。後世から見て集団的自衛権も日米安保の改定もですね評価されました。
・だけど後世から見てもですねLGBT法案が評価されることはないと私は思います。
【中略】
・何か自分の信念があって例えば安倍政権だったら集団的自衛権とかありましたけれども、岸田総理は何かやるって言うよりもただただ権力の座についていたいという気がします。
・どう して総理大臣になろうと思ったのかとかなんかいう質問された時に、岸田さんが日本で一番権限のある人だからというふうに答えてたの昔ありましたけど、ここに岸田さんの特徴が出てくるように気がしますね。
・だから何かをやりたいっていうよりも権力者であり続けたいという人ですね。
・でその観点からすると、次の総裁選で対抗馬になってくるのは、今までの流れから言ったら河野太郎氏なんですよ。
・ここで河野太郎がですねマイナンバーのでコケてるわけです。
・今何だこいつもうデタラメじゃないか国民の多くが思っ てるんだけど岸田総理はですね表向きではもう大変な問題だと言ってるかもしれないけど、おそらく岸田さんとしてはですね 人気が落ちて良かった良かったということをですね感じさせるような事件ですよね。
・だからこのマイナンバーカードの問題について岸田総理は読んでる可能性があります。
・さらにね河野さんという人は、慎重さにかけるんですよ。今立ち止まってということができるかというとなかなかそうはいかないだろう。
・ということは強行突破ってことですよ。強行突破今の段階で国民がねおかしいんじゃないのという風に言ってる 時に強行突破だというのはね、多くの人から反発買えますよ。だっ てこれダメでしょと、もう国民の情報を漏れてるじゃないと。
・いやいやいやいや、それだからといってデジタル化を止めていいことにはならないんだ。
・いや情報が流出する方が問題でしょという話になりますからね
・だからこれは河野氏の命取りになった可能性があります。
【中略】
・私は岸田内閣もちろんこのLGBTの問題でですね大いに失望してるわけですけれども、じゃあ岸田さんやめて河野さんになればそれでいいのかって言ったらですねそれはない
でしょうということですよ。
・やっぱり総理大臣の資質に欠いているだろうって思うんですよ。
・国民が心配だというふうに思ってる時に、国民に寄り添って、いやこれこういうこういう風にやりますからどうぞ進ませていただきたいというようなね言い方するんじゃなくて やればいいんだとここで止まれるわけねえだろうというようなねことをね言っちゃうっていうね。
・だから危機意識にかけると言いますかね。まあちっちゃい頃から政治家ファミリーでしょ。自分が言うことは何でも通るというような環境で生まれてきたわけでしょ。
・官僚に対する喋り方一つ見てもですね。何やってんだよと言ってやってたじゃないですか。 あれがもう本当にね全てをね表してるというふうに思うんですよ。
・要するに自分がやりたい ことは絶対に通さなくちゃ嫌なんだと。どうして俺がやってんだよっていうね。
【中略】
・私が見るにですね内閣支持率はじゃあ上がるだろうかって考えると上がる見込みないですよね。
・マイナンバーカードの対策に注力したからって支持率上がらないでしょ。
・難しい局面に入ってる。ひょっとすると 岸田内閣ってのは解散できなくなるんじゃないかというふうに思いますね。
・来年の総裁選の前にですねそこまでずーっとタイミング見続けてねで総裁選も出られないっていう菅内閣とね同じような末路をたどる可能性があるというふうに思いますね。
・解散のタイミングを見るのがね絶妙だったのが安倍総理でした。だから安倍総理が勝ってるのはどうしてか。勝てるタイミングで打つんですよ。
・だけど岸田さんの場合はもう見誤ってますよね。
・もうこれは岩盤支持を失っちゃってるから。
・何言ってもあのLGBT法案通した内閣だよねというふうなことですね。
・やっぱ保守の中で言ったら、いくらあれでも、なんであんなの通したんだろうっていうねという ことになってきますよね。
・本当に私は保守層から見放されたなっていう気がしてます。
・だからもう一つやろうとしてるのは人事なんですよ。内閣改造を多分秋にですね行うということ。
・それからあと党の役員人事つまり茂木幹事長を更迭する とかですねそういったこともおそらくあり得るだろうと思います。
・これ結構、政治家にとっては大事なんです。政治家っての自己評価が非常に高い人たちの集まりですから、なんかもう次はいよいよ私の大臣の番だとねみんな100人ぐらい思ってるわけですよ。
・いよいよ大臣だとかって思って何にも来ないっていうね。恒例行事なんだけど政治家にとってみたら内閣改造ってのは大きいんですよ。
【中略】
・見てて面白いのは、今回のLGBT法案に協力した、稲田、新藤、古谷この3人がどこかに入閣したり、あるいは党役員人事で何かいいポストもらったりしたら、あー彼らがやりたかったの結局これなのねというのバレバレですよね。
・でもおそらくですね、岸田さんというのはもう多分ねすごくその辺、巧妙だから入れてくれないんでしょうね。
・なんかあの入れるようなねこと匂わせてそれでこのなんかみんな これは何賛成したらこれ大臣になれるんかみたいな感じでですね走ってた。やっぱあげないよみたいな感じで、結局大事にしてもらえないと。
・結局稲田さんとかね進藤さんとか古谷さんとかっていうのは利用されただけだというふうに思いますね。
【中略】
・私はね内閣改造ね結構見ものだと思ってるんですよ。
・内閣改造でこの中の3人の誰かが入閣したらね。その人はやっぱりポスト狙いでやってただけですことになりますよね・
・だけどもうそういう風に思われるのも嫌だから多分岸田さんとしてはポイっと捨てて何も知らんぷりとということじゃなかろうかなというふうに私には見えますね。
【後略】
筆者もこの部分は非常に注目しているところです。保守には目もくれず論功行賞の内閣改造を行うのか、それとも、失った岩盤支持を取り戻そうと保守に阿った人事をしてくるのか。岸田政権の足元は一気に危うくなったかもしれませんね。
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