紐づけしないマイナカードと保険証を廃止する理由

今日はこの話題です。
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1.資格確認書のプッシュ型交付検討


7月5日、厚生労働省は衆院特別委員会の閉会中審査で、「マイナ保険証」を持たない人に発行される「資格確認書」について、申請がなくても交付できる「プッシュ型」の対応を検討する方針を明らかにしました。

政府は、現在使われている健康保険証を来年秋に廃止し、マイナンバーカードと一体化する方針ですけれども、マイナカードを取得していない人らに対しては、健康保険証の廃止後も必要な保険診療が受けられる「資格確認書」を提供することにしています。

けれども、この資格確認書の有効期間は最長1年とし、更新も認めるとしていますけれども、申請をしなければ取得できないため、申請漏れによって、健康保険を利用できない状況が生じる可能性が残されていました。

これについて、前日の4日、公明党の山口代表は記者会見で、「マイナンバーカードの取得を進めることが大前提だが、取得は任意なので、カードを取得しない人が健康保険を利用できない状況は回避すべきだ……健康保険の利用に隙間が生じないよう、『プッシュ型』で積極的に届けることを検討してほしい」と求めていました。

そして翌5日に、伊佐進一副厚労相は「すべての被保険者が必要な保険診療を受けられるよう、隙間が生まれないように適切に対応したい」と述べ、今後、マイナカードを取得していない人や健康保険証とひも付けをしていない人を把握した上で、これらの人に職権で交付することなどを検討すると発言しました。

「資格確認書」の申請がなくても交付するのであれば、これまでの紙の健康保険証と何が違うのでしょう。この前は、マイナカードを持つ人に、紙の保険証も一緒に持ってきてほしいと呼びかけるなど、マイナカードの仕組み自体が破綻していると自分で白状しているようにしか見えません。

同じく5日、日本医師会の長島公之常任理事は記者会見で、「万が一、整備が間に合わない事態が生じた場合には、国民、患者に不利益が生じないよう、既存の健康保険証や資格確認書の有効期限、扱いについて延長を含めて必要な対応をお願いする必要がある」と健康保険証の猶予期間を政府方針の25年秋よりも延長する必要性に言及していますけれども、当事者からみれば、無用の混乱を避ける意味でも当然の要請だと思います。


2.紐づけしていないマイナカード推進議員


様々なトラブルに見舞われながらも、マイナカードの見直しも延長もしないでいる政府ですけれども、6月末に「週刊FLASH」が、衆院議員にマイナカードについてのアンケートを行っています。

尋ねたのはマイナカードを「取得したか否か」と「健康保険証や公金受取口座と紐づけているか否か」についてで、全衆院議員464人のうち206人から回答がありました。

回答した議員の取得率は89.3%と、総務省が6月25日時点で発表した、国民の取得率77.3%を上回りました。各党派別に取得率を見ると、自民党は回答した90人のうち、取得していないのは金田勝年議員のみで、公明党は回答した27人全員が取得。同じく推進派である維新の会は、回答した24人中22人が取得、国民民主党は回答した5人全員が取得していました。

そして、立憲民主党は回答した49人のうち39人が取得。また、共産党は回答した7人全員が未取得となっています。

取得した議員にその理由を聞くと、推進派の議員たちは「各種行政手続きの際に便利である。また、本人確認やワクチン接種証明書の取得にも必要であるため」、「利便性がよいから」、「マイナンバーカードの取得は国民として当然のことと考える」、「政府として全国民に取得をお願いしており、我が党としても推進をしているため」、「確定申告が電子でおこなえるので便利だから」と答える一方、「銀行や証券会社から求められたから」などの声もありました。

マイナカード問題に詳しい、法政大学社会学部の白鳥浩教授は、このアンケート結果もついて、「現時点の国民のマイナカード取得率より高い数字になっているのは、取得した議員は積極的にアンケートに答えるからでしょう。また、小沢一郎議員ら、立憲や共産、れいわなど反対している党の議員はわかりますが、与党で大臣経験者の金田議員が取得していないのには驚きです」とコメントしています。

その一方、もう一つの設問である「健康保険証や公金受取口座と紐づけているか否か」については、マイナカードを取得したものの、保険証や銀行口座への紐づけをおこなっていない議員がかなりいることが明らかになりました。

自民党はマイナカード取得者89人のうち、紐づけていない議員は16人(17.9%)、公明党は11.1%、維新の会は45.4%、国民民主党は40%、立憲民主党は61.5%と、取得した議員に占めるその割合は29.8%に上っています。

これについて前述の白鳥教授は「注目すべきは紐づけていない議員……アンケート結果では、取得した議員184人中55人と、3割近くが紐づけていません。しかも推進派である自民、維新、公明、国民の議員を合わせると31人もいる。紐づけていない議員のうち56.3%が推進派なのです」とコメントしています。

紐づけていない理由について、推進派議員の多くは「いずれ紐づける予定にしている」との回答しているのですけれども、一部には「定期検診を受けている病院が、健康保険証と紐づけできていない。いまだ保険証の提示を要する」とか「公金受取口座については、立場上受け取る意思がないので。健康保険証については、主治医診療所の準備がまだ整っていないと聞いていたため」との声も上がっています。

また、野党には、「リスクを考えたため。現時点でのトラブルの内容だけでも、誤処方など『命』に関わる深刻さについて総理もデジタル相も認識が甘すぎる」、「健康保険証はデジタル法案審議の担当者だったため、自ら体験してみようと紐づけした。公金受取口座は、安全性など状況を見て判断しようと考え、紐づけていない」、「『健康保険証』『公金受取口座』の紐づけはおこなっていない。制度が安全に運用されていることが明らかにならないと不安が残るから」と、セキュリティ面を不安視し、紐づけていない議員が多かったそうです。

前述の白鳥教授は「紐づけていない人のなかには、甘利さんや船田元さん、村上誠一郎さんなど、国務大臣経験者もいます。自民の議員にも、セキュリティ面で問題があると答えている人が多い。少なからぬ議員が紐づけは慎重にすべきと思っているということです」と指摘しています。

また、政治アナリストの伊藤惇夫氏は「マイナカード問題は、政権を揺るがす事態になる……アンケート結果を見ると、これほどトラブルが多発しているのに、政府が言うとおりにマイナカードを取得し、あとは政府がどうにかしてくれる、と考えている自民の議員が多い。きちんと問題意識を持って、党のなかから声をあげていかないとだめです。岸田総理は、秋までに総点検すると言っていますが、この2、3カ月でどうにかできる事態ではない。対応を間違えると、解散どころか政権自体を失いかねない。保険証は国民全員が持っているものですから」と警告しています。

更に、注目すべきは、マイナカード普及の総責任者ともいうべき岸田首相や河野大臣、松本剛明総務大臣をはじめとする自民の大物議員が、いずれも回答拒否だったのだそうです。

あんなに取得を促しておいて、自分はどうかを明らかにしない。河野デジタル相に至っては「今後問題は起きない」と啖呵を切っているのですから、回答すべきだったのでいはないかと思います。


3.保険証を強制廃止する理由


こんなにトラブルが続いても、政府はマイナカード普及、紙の保険証廃止をゴリ押ししています。なぜそこまでしてやりたいのか。

これについて、千葉商科大学教授で経済ジャーナリストの磯山友幸氏は「President Online」で次のように述べています。
【前略】

なぜ、こんなにデータの紐付けでトラブルが起きるのか。それは単なる「ヒューマンエラー」なのかというとそうではない。DXというのはデジタルトランスフォーメーションの略で、デジタル化と共に、それまでの仕事の仕組みを変えていくことを示している。デジタル化すれば仕事が変わる、というのではなく、仕事のやり方や流れをデジタル化できるように変えていくということが重要になる。この「X」(トランスフォーメーション)ができていないことが日本のDX化が進まない最大の原因なのだ。

例えば、マイナンバーカードに別人の公金受取口座が紐付けられてしまった最大の理由は、銀行口座の「氏名」が「カタカナ」になっていることだ。一方、マイナンバーに登録されている氏名は「漢字」のみ。カタカナの読みが入っていないので、システムで自動的に名寄せをすることができない。データの大本になる戸籍にはそもそも読み仮名がないのだ。住民基本台帳にはカタカナの読みを入れている市町村もあるが、検索する便宜上のもので、その読みが本当に正しいかどうかを示したものではない。つまり、銀行口座のカタカナ氏名と住民基本台帳の読みが一致するとも限らないのだ。

政府は急きょ、6月に閉幕した国会で法改正を行い、戸籍に読み仮名を必須とする戸籍法改正を行った。法律が施行されると1年以内に本籍地や住所地の役所に行って読み仮名を申請しなければならない。その時、誤った読み仮名を申請してしまう「ヒューマンエラー」のリスクは残る。預金口座のカタカナと戸籍上の読みが違っているケースもあるに違いない。名前の読みを証明しようにもパスポートはローマ字で、表記も複数認められているケースがある。

届出がなかった人には住民基本台帳などの読みを「了承したものとみなす」ことになりそうだが、混乱は必至だ。そもそも戸籍に使われている漢字には当用漢字や人名漢字以外のものもあり、誤字が登録されているものすらある。文字が違ったり、読みが違えば、コンピューターは同じデータとは判断せず、つまり別人と扱うわけだ。

そもそも、戸籍の人口と住民基本台帳の人口も大きく違うし、海外に1年以上赴任する場合など、転出で住民票はなくなる。そういう仕組みになっているのだ。

健康保険のデータを管理する健康保険組合のデータとマイナンバーのデータが一致しないのも同様の問題だ。健康保険証には読み仮名があるが、住民基本台帳の読み仮名と同じである保証はない。登録する時点で確認している組合はほとんどないからだ。また、健康保険証には写真もないし、名前も本名ではなく通称を保険証の表氏名欄に記載することを認めているケースもある。

つまり、個人を「本人」と特定する仕組みが年金や保険など制度ごとにバラバラでそれをきちんと整理する「X」、すなわち仕事の見直しをこれまでやってこなかったわけだ。それを一気にマイナンバーカードに紐付けて、従来の健康保険証を廃止するというから大混乱が生じているわけだ。健康保険証にマイナンバーを利用し、その保険証でもマイナ保険証でも問題なく保険が使えるようになってから、一体化すれば簡単に移行できたはずだ。

今回の不祥事を受けて、マイナンバーカードを返納する動きが広がっている。本人が役所に行って手続きをすれば、一度公布されたカードでも無効にできるのだ。それだけではない。実はマイナンバーカード自体に有効期限がある。カード自体は発行から10回目の誕生日を迎える日まで。カードの交付が始まったのは2016年1月なの、2025年1月以降失効するカードが出始める。さらにカードに付いているICチップの電子証明書の有効期限は5年なので、役所に出向いて更新しなければいけない人が出始めている。これを放っておくとカードは無効になってしまう。

河野大臣がNHKの日曜討論で、「マイナンバーカードという名前を変えるべきだと個人的には思う」と発言して、その後、松野博一官房長官が否定する場面があった。これは番号よりもICチップの電子証明書が重要なカギの役割をしているためだ。

つまり、ポイントを大盤振る舞いしてやっと8割に達したカードが、国民に使われなければ次々に失効していく。おそらく保険証を強制的に廃止しようとしているのは、利便性を増すためではなく、マイナンバーカードを存続させるためだろう。結局、デジタル化を進める「D」側の人たちは自分たちのペースで自分たちの考えるデジタル化を進めようとしているのだろう。一方で「X」側にいる役所などの職員も旧来の仕事の仕方を極力見直さないで済ませようとしている。

結局最後は、「世界で最も複雑なシステム」(政府に近いIT専門家)と言われる膨大な仕組みが出来上がるのだろう。複雑になればなるほど「ヒューマンエラー」は生じる。マイナンバーを巡る混乱は残念ながらまだ当分続くことになりそうだ。
磯山氏によると、トラブルの原因は、個人を「本人」と特定する仕組みがバラバラであるのをきちんと整理するという、仕事の見直しをこれまでやってこなかったことにあり、それでも保険証を強制的に廃止しようとしているのは、マイナンバーカードを存続させるためだと述べています。

さらに、磯山氏は、デジタル化を進める側の人たちは自分たちのペースで自分たちの考えるデジタル化を進めようとする一方、現場である役所などの職員は、旧来の仕事の仕方を極力見直さないで済ませようとしているとも指摘しています。

この磯山氏の指摘をみる限り、いまのままマイナカードを推進しても、保険証廃止を予定している来年秋でも、大して改善出来ない気がしてなりません。


4.日本の若者は半ば諦めている


7月5日、フジテレビ系『めざまし8』に出演した、お笑いコンビEXITの兼近大樹氏の発言が一部で話題になっているようです。

この日の番組では、フランスで起きている暴動を取り上げ、現地の若者がなぜここまで破壊行為をするのかについて、17歳の少年が警察官に射殺されただけではなく、その射殺の経緯に関して警察側がウソを言っていたことが分かったからだと説明していました。

これについて、コメントを求められた兼近氏は、「日本の若者は、半ば諦めている部分はあるというか、こんな大きなことにならないじゃないですか。そういう意味では、行動するということは、少しは日本の若者たちも見習うところがあると思います……やり方ですよね。いろんな所に迷惑を掛けるという状況は正しい主張をねじ曲げてしまうので、正しいものじゃなくされるというのは不安だと思います。もう少しやり方を考えてほしいです」と暴動を起こしている若者に、手段を完全に履き違えていると指摘しました。

この発言に対し、ネットでは「確かに日本の若者に比べて行動力はすごいけど兼近さんの言うようにやり方が残念だよね」と納得する声もある一方、「言葉の選び方言い方伝え方を全く考えない」「思考パターンが違う」「見習うことか」「暴動を煽るようなことは言わないでください」といった意見が寄せられたそうです。

おそらく、兼近氏が言いたかったことは「日本の若者は諦めるのではなく、ちゃんと声を上げる、行動するという意味でフランスの若者を見習うところがある。けれども、暴力に訴えるのは間違いだ」ということなのだと思います。

その意味で、若者が政治に対して、ちゃんと声を上げる手段として「選挙」というものがあるのですから、それを使っていくべきだということになります。

そのような環境があるにも関わらず、もしも兼近氏がいうように、「日本の若者は半ば諦めている」のであれば、そちらの方がずっと問題だと思います。

マイナカードのみならず、岸田政権の政策は国民に負担を押し付けるものが多く、それらは生活を直撃しています。

その現状を変えたい、なんとかしたいと思うならば、諦めるのではなく、足掻いてみる、自分の声を一票に託す。メディア等に流される自分で考え、判断する。そうした当たり前のことが、これからどんどん大事になっていくのではないかと思いますね。



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