ブログランキングに参加しています。よろしければ応援クリックお願いします。
1.デジタル庁への立ち入り検査
6月7日、政府の個人情報保護委員会が、マイナンバーカードを巡る相次ぐトラブルを受け、デジタル庁への立ち入り検査を検討していることが明らかになりました。
公金受取口座の登録制度で、他人の情報がひも付けられた事案を踏まえ、デジタル庁の責任は重大と判断。検査は早ければ月内にも実施し、行政指導も視野に入れるようです。
個人情報保護委員会は、2016年に内閣府の外局に設置された第三者機関で、消費者問題やITに詳しい有識者らで構成されます。独立性の高い立場で、行政機関や事業者が個人情報を適切に管理しているかどうかを監視・監督する業務を担っています。
立ち入り検査について、7日、松野官房長官は記者会見で、「今後、独立した専門的見地から個人情報保護委員会で判断されるものと認識している。一連の事案を重く受け止め、政府一丸となって総点検、再発防止、国民の不安払拭のための丁寧な対応を強力に推進していく」と強調しました。
また、河野デジタル相は閣議後の記者会見で、「現時点で何か決まっていることはないが、デジタル庁としては、個人情報保護委員会の求めに応じて適切に対応してまいります」と述べ、松本総務相も「政府に対して、調査や報告の求めがあるのであればしっかりと答えさせてもらう。その上で、個人情報保護委員会の対応や、政府の説明を通して、国民の皆さまに納得してもらえるようにしっかりとやっていきたい」とコメントしています。
2.マイナンバーカード等に係る各種事案に対する個人情報保護委員会の対応状況
個人情報保護委員会は、月2~3回の頻度で会合を開催されているようですけれども、今月5日に行われた会合ではマイナンバー問題の対応が取り上げられました。
その配布資料には、事故事案毎に問題点の指摘がなされています。一部引用すると次の通りです。
①コンビニでの住民票等誤交付問題の根本原因が分かっているかと思いきや、「安全管理の品質が確保されていないまま運用した」とか「徹底を怠っていた」とか「確認手順又は運用に不備があった」とか、精神論というか、「人の問題」にしているにとどまり、システムや制度設計としてのミスがなかったのか、という切り口での指摘は見当たりません。
事案)住民票の写し等の証明書を取得する「コンビニ交付サービス」において、別人の又は本人により廃止済みの証明書(特定個人情報又は保有個人情報を含む。)を誤交付した。
問題)得する「コンビニ交付サービス」において、別人の又は本人により廃止済みの証明書(特定個人情報又は保有個人情報を含む。)を誤交付した。
地方公共団体は、コンビニ交付サービス等を提供する証明書発行システムを富士通Japan株式会社にシステム開発をさせたが、漏えい等を防止する安全管理のために必要かつ適切な措置に関する品質が確保されていないまま、同システムを運用し、住民に提供していた。
②各種サービスにおけるマイナンバーの紐付け誤り
②-1)健康保険証
事案)複数の健康保険組合等(個人情報取扱事業者)において、被保険者とは別人のマイナンバーを誤登録し、マイナポータルやオンライン資格確認システムを通して別人に医療情報等(個人データを含む。)を漏えいした。
問題)健康保険組合等が、本人から提出された届出書にマイナンバーの記載がない場合、基本4情報(氏名、生年月日、性別、住所)を確認してマイナンバーを特定することとなっていたが、その徹底を怠っていた。
③ 公金受取口座等の誤登録
③-1)①公金受取口座(マイナポータル)
事案)各地方公共団体の支援窓口における本人又は手続支援員による操作ミス(ログアウトの失念)に起因する公金受取口座・マイナポイント等の誤登録により、別人のマイナンバーと本人の銀行口座情報等を誤って紐付けた結果、銀行口座情報(保有個人情報を含む。)を漏えいした。
問題)デジタル庁が、公金受取口座の登録等に関する事務において各地方公共団体の支援窓口の共用端末を利用するに際して、正確な操作手順の徹底のほか、操作手順に伴うリスクの軽減等について、リスク管理及びその対策ができていなかった。
③-2)公金受取口座(国税庁 確定申告時)
確定申告書の登録時に銀行口座情報を公金受取口座に登録を希望した者について、国税庁がデジタル庁に情報提供をした際、登録希望者のマイナンバーと別人の銀行口座情報を誤って紐付けた結果、銀行口座情報(保有個人情報を含む。)を漏えいした。
問題)国税庁が、デジタル庁に情報提供した銀行口座情報について、誤登録を防止するために必要な確認手順又は運用に不備があった。
これでは、いくら点検とか対応とかをしたところで、「人はミスをする」という大前提に立つ限り、またぞろミスが起こらないかという不安は拭えません。
3.11月とかに遅らせることは十分ある
7月6日、河野太郎デジタル相は、全国知事会長の平井伸治鳥取県知事(詐欺容疑で逮捕された平井伸治県議と同姓同名)と会談し、マイナンバー総点検の完了時期を「例えば11月とかに遅らせることは十分ある」と述べました。
総点検は、岸田総理が6月13日の記者会見で「秋までを目途に行う」と表明、6月30日には河野デジタル相ら関係3閣僚を官邸執務室に呼び、中間報告の期限としていた8月末を待たず、8月上旬にも実施するよう指示していていました。
こうしたことから、知事会側は9月末ごろの完了を想定していたとのことですけれども、河野デジタル相は、11月になるかも、と予防線を張った形です。
総点検の対象は税金、医療、児童手当や生活保護など29項目の個人情報で、自治体や健康保険組合など約3600機関が作業を担当、人海戦術による膨大な作業を強いられます。近畿地方の市長は、点検完了までの期間が短いため民間への事務委託は難しく、市職員を動員しなければならない可能性が高く「夏休み返上で作業をしてもらうことになる」と零しています。
この日、デジタル庁はマイナンバーカードの廃止枚数が制度を開始した2016年1月から今年6月末までの累計で約47万枚となったことを明らかにしました。これは、本人の希望による「自主返納」に加え、引っ越しの際に手続きをせずに失効したケースなどが対象で、取得者の死亡などに伴う廃止は入っていません。
6月末時点の廃止枚数は5月末時点の約45万枚から約2万枚、3月末時点の約42万枚と比べると約5万枚増えています。ただ、総務省が出している住民基本台帳人口移動報告の2023年5月度によると、日本人移動者は73万人程度ありますから、仮に6月の移動も同じ73万人程度だとすると、2万枚は2.7%程度です。
総務省はマイナカード廃止の理由の内訳は把握していないとのことですけれども、2.7%が丸々返納だとも考えにくく、メディアがいうような「返納祭り」が起こっているのかどうかはなんともいえません。
4.個人情報保護委員会を口実にマイナカードの延期はあるのか
ただ、マイナンバー制度の所管庁であるデジタル庁が立ち入り検査対象になったという事実は衝撃的です。
永田町関係者は、「マイナンバー制度の所管庁たるデジタル庁が『個人情報を保護できていない』との烙印を押されたも同然で、河野大臣のメンツは丸潰れ。“クビ宣告”に等しいと思います。9月前半を軸に検討されている内閣改造で、河野大臣は交代させられるのではないか。岸田首相にしてみれば、立ち入り検査は河野大臣を更迭する十分な理由になりますから」と語ったそうです。
先述の永田町関係者は「マイナンバーカードと保険証の一体化に賛成している日本医師会すらも、『現行の保険証の有効期間延長』を言い始めました。政権が『保険証廃止』に突っ走るか、仕切り直すのか、決めるタイミングは今しかない。そこで、独立性の高い個情委の立ち入り検査が『保険証廃止の延期』へ方針転換する理由になり得るワケです」と、「河野デジタル相のクビ」と「保険証廃止の延期」に、この立ち入り検査を利用しようとする思惑があるのではないかというのですね。
その一方、個人情報保護の問題などに詳しい南山大の實原隆志教授は「個情委は行政機関などへの立ち入り検査や勧告・命令という強い権限を有していますが、多くの場合、調査対象への報告徴収にとどめる特徴があります。今回は立ち入り検査なので、従来よりも積極的な姿勢を示したことは評価できます。しかし、個情委はあくまでもマイナンバー制度の運用を監視・監督する立場であり、制度そのものの問題を指摘する立場にない。したがって、政府が推し進めている制度を後押しする検査に終わってしまわないかが懸念されます。デジタル庁の対応の問題をあぶり出して提言を出しても、いわば“対症療法”に過ぎません。本当に厳格な監視・監督の役割を果たせるのか、立ち入り検査の結果が問われます」と指摘しています。
筆者は、個人情報保護委員会のデジタル庁への立ち入り検査は、人為ミス以外の制度設計やシステムのミスがないのかという観点からのチェックと指摘をしてくれるのではないかとも期待していたのですけれども、實原教授の指摘に従えば、結局は「確認を徹底する」とか「運用を徹底する」など「人の問題」で片付けられてしまう懸念が拭えません。
現状を見る限り、保険証廃止を延期、または、マイナカードの一部都市での限定的な試験運用をする辺りが落としどころではないかと思いますけれども、果たして岸田政権がどういう判断を下すのか。見ていきたいと思います。
この記事へのコメント
簑島
だいたい、健康保険証と紐づけしたうえで、健康保険証を廃止するのだから、この国は国民皆保険なのだから、実質強制なのだ。
実態は強制なのに、いやいやこれは国民の側で取得の可否は選択可能とかいう扱いにするから、まず行政の対応の方でも無責任になり、国民の側でもどう対処するか迷う。
今回のトラブルはこのような状態が招いた必然であるといえる。
みどりこ
「盗まれて悪用されたら困るから」と無理に返しましたが、もし職員の言葉が本当なら、カードを貰わなくても影響は同じではないかと思いました。
また、ご存じと思いますが、改定後の条文を見ると分かるように、自民党が今回しようとしている憲法改正は、九条改正ではなく、「基本的人権の最高法規からの削除」と「緊急事態条項の制定」が肝と思われます。
マイナンバーカードのゴリ押しは、国民の情報把握目的もあるのでは、と。
このカードも、生活保護の多重受給など外国人の不正の炙り出しや、パソナなど中抜き企業が不正をできにくくするには誠に有効と思います。
ただ、国籍が明記されないなど、そのような目的のために使われないのではないかと疑われる不備も多い。
おまけに自民党は公明と手を組んだ時点で真正保守ではなく、今までの実績からも、日本と日本人のための政党とは思われない点に不安が残ります。
以下、自民党が保守ではないことを示す、ごぼうの党の奥野氏の動画の紹介です。
長いですが、画像という証拠が根拠として有効と思われます。宜しければご覧になられますよう。
https://ameblo.jp/shinjirou17/entry-12811370416.html